悪役令嬢は主人公に告白されました?!

たいやき さとかず

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御令嬢はずるいです?!

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「リリィーアル様、私と違ってずるいとこあるじゃないですか。見てましたよ、人目の多いところでディアゴ様にお話を持ち掛けたの。あんな所でリリィーアル様に頼まれたら、誰も断れないですよ」
 罰が悪そうに目を逸らすリリィーアル。
マキアはふふっと楽しそうに話を続ける。
「あと、私がディアゴ様にプロポーズされたって話した時も。リリィーアル様は権力や、家の使い方をよくわかっている方なんだなって」
「……マキアさんだって、わたくしにその件について相談しに来たじゃありませんか」
「私の場合は違いますよ。リリィーアル様だから、頼ったんです。あなたは絶対、ディアゴ様のことをだれにも言ったりしないだろうって、思ったから」
 マキアが目を細めて笑みを浮かべた。
 優しいその微笑みに、リリィーアルの鼓動は凪のようにゆるやかに、それでいて音だけが大きくとくり、とくりと鳴った。
 今まで感じていた訳が分からなくなる感情ではない、穏やかで心地良い想いが溢れてくる。リリィーアルの頬は自然と緩やかに上がり、普段は吊り上がっている目じりが下がった。
「……マキアさんは、優しい方ですね」
「優しくなんかないですよ。ただ臆病なだけです」
「自分を困らせる相手を思いやれることを、〝優しい〟といいますのよ」
「そう、なんでしょうか」
 少しだけ俯いたマキアを見上げ、リリィーアルはマキアの手を撫でる。
 マキアが顔を上げて、「リリィーアル様」と囁くように言った。
「なんでしょう、マキアさん」
「私にはまだ誰にも言えていない、秘密があるんです。それを、いつか……今はまだ決心がつかないけど、決心がついた時に、聞いてくれませんか?」
「いいですわよ」
 リリィーアルが軽く頷くと、マキアが目をぱちくりとさせた。
「え、そんなに簡単に、いいんですか……?」
「いいもなにも、わたくしは聞くだけですし。マキアさんの方こそ、よろしいので?」
「私はリリィーアル様になら、言える気がして……」
「光栄ですわね」
 いやいやいや、とマキアは掌を突き出し、もう一度ぱちくりと瞬きをする。
「よく考えてください、リリィーアル様。もしかしたら私の秘密が、リリィーアル様を傷つけるかもしれないんですよ……?」
「マキアさん」
 ちらちらと怯えた様子で目をよこすマキアに、リリィーアルは溜息をついた。
「マキアさんの秘密がどんなものであれ、わたくしがマキアさんを嫌いになることはありませんし、もしその秘密がわたくしを傷つけるものでも利用して見せますわ」
 リリィーアルは口元に弧を描き、マキアを見上げる。
「どうやらわたくしは、〝ずるい〟ようですから」
 小首を傾げてリリィーアルはふっと笑った。何故だか自信が溢れてくる。例えどんな難題でも、今なら簡単に解けてしまそうだ。
(マキアさんが、わたくしのことを理解してくれていたからかもしれませんわね)
 きっとマキアは意識していないだろう。リリィーアルが王妃となるために孤独となった心を、彼女は照らしてくれたのだ。
 目を細めて微笑むと、マキアが目を見張り、口元を抑えた。
「よ、妖艶で聖母……これはアリ……!」
「ま、マキアさん……?」
 突然体を震わせだしたマキアが心配になって、リリィーアルはマキアの顔を覗き込む。
 リリィーアルと目が合うと、マキアは「ぐへへ」と奇妙な笑い声をあげた。
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