9 / 10
御令嬢はずるいです?!
しおりを挟む
「リリィーアル様、私と違ってずるいとこあるじゃないですか。見てましたよ、人目の多いところでディアゴ様にお話を持ち掛けたの。あんな所でリリィーアル様に頼まれたら、誰も断れないですよ」
罰が悪そうに目を逸らすリリィーアル。
マキアはふふっと楽しそうに話を続ける。
「あと、私がディアゴ様にプロポーズされたって話した時も。リリィーアル様は権力や、家の使い方をよくわかっている方なんだなって」
「……マキアさんだって、わたくしにその件について相談しに来たじゃありませんか」
「私の場合は違いますよ。リリィーアル様だから、頼ったんです。あなたは絶対、ディアゴ様のことをだれにも言ったりしないだろうって、思ったから」
マキアが目を細めて笑みを浮かべた。
優しいその微笑みに、リリィーアルの鼓動は凪のようにゆるやかに、それでいて音だけが大きくとくり、とくりと鳴った。
今まで感じていた訳が分からなくなる感情ではない、穏やかで心地良い想いが溢れてくる。リリィーアルの頬は自然と緩やかに上がり、普段は吊り上がっている目じりが下がった。
「……マキアさんは、優しい方ですね」
「優しくなんかないですよ。ただ臆病なだけです」
「自分を困らせる相手を思いやれることを、〝優しい〟といいますのよ」
「そう、なんでしょうか」
少しだけ俯いたマキアを見上げ、リリィーアルはマキアの手を撫でる。
マキアが顔を上げて、「リリィーアル様」と囁くように言った。
「なんでしょう、マキアさん」
「私にはまだ誰にも言えていない、秘密があるんです。それを、いつか……今はまだ決心がつかないけど、決心がついた時に、聞いてくれませんか?」
「いいですわよ」
リリィーアルが軽く頷くと、マキアが目をぱちくりとさせた。
「え、そんなに簡単に、いいんですか……?」
「いいもなにも、わたくしは聞くだけですし。マキアさんの方こそ、よろしいので?」
「私はリリィーアル様になら、言える気がして……」
「光栄ですわね」
いやいやいや、とマキアは掌を突き出し、もう一度ぱちくりと瞬きをする。
「よく考えてください、リリィーアル様。もしかしたら私の秘密が、リリィーアル様を傷つけるかもしれないんですよ……?」
「マキアさん」
ちらちらと怯えた様子で目をよこすマキアに、リリィーアルは溜息をついた。
「マキアさんの秘密がどんなものであれ、わたくしがマキアさんを嫌いになることはありませんし、もしその秘密がわたくしを傷つけるものでも利用して見せますわ」
リリィーアルは口元に弧を描き、マキアを見上げる。
「どうやらわたくしは、〝ずるい〟ようですから」
小首を傾げてリリィーアルはふっと笑った。何故だか自信が溢れてくる。例えどんな難題でも、今なら簡単に解けてしまそうだ。
(マキアさんが、わたくしのことを理解してくれていたからかもしれませんわね)
きっとマキアは意識していないだろう。リリィーアルが王妃となるために孤独となった心を、彼女は照らしてくれたのだ。
目を細めて微笑むと、マキアが目を見張り、口元を抑えた。
「よ、妖艶で聖母……これはアリ……!」
「ま、マキアさん……?」
突然体を震わせだしたマキアが心配になって、リリィーアルはマキアの顔を覗き込む。
リリィーアルと目が合うと、マキアは「ぐへへ」と奇妙な笑い声をあげた。
罰が悪そうに目を逸らすリリィーアル。
マキアはふふっと楽しそうに話を続ける。
「あと、私がディアゴ様にプロポーズされたって話した時も。リリィーアル様は権力や、家の使い方をよくわかっている方なんだなって」
「……マキアさんだって、わたくしにその件について相談しに来たじゃありませんか」
「私の場合は違いますよ。リリィーアル様だから、頼ったんです。あなたは絶対、ディアゴ様のことをだれにも言ったりしないだろうって、思ったから」
マキアが目を細めて笑みを浮かべた。
優しいその微笑みに、リリィーアルの鼓動は凪のようにゆるやかに、それでいて音だけが大きくとくり、とくりと鳴った。
今まで感じていた訳が分からなくなる感情ではない、穏やかで心地良い想いが溢れてくる。リリィーアルの頬は自然と緩やかに上がり、普段は吊り上がっている目じりが下がった。
「……マキアさんは、優しい方ですね」
「優しくなんかないですよ。ただ臆病なだけです」
「自分を困らせる相手を思いやれることを、〝優しい〟といいますのよ」
「そう、なんでしょうか」
少しだけ俯いたマキアを見上げ、リリィーアルはマキアの手を撫でる。
マキアが顔を上げて、「リリィーアル様」と囁くように言った。
「なんでしょう、マキアさん」
「私にはまだ誰にも言えていない、秘密があるんです。それを、いつか……今はまだ決心がつかないけど、決心がついた時に、聞いてくれませんか?」
「いいですわよ」
リリィーアルが軽く頷くと、マキアが目をぱちくりとさせた。
「え、そんなに簡単に、いいんですか……?」
「いいもなにも、わたくしは聞くだけですし。マキアさんの方こそ、よろしいので?」
「私はリリィーアル様になら、言える気がして……」
「光栄ですわね」
いやいやいや、とマキアは掌を突き出し、もう一度ぱちくりと瞬きをする。
「よく考えてください、リリィーアル様。もしかしたら私の秘密が、リリィーアル様を傷つけるかもしれないんですよ……?」
「マキアさん」
ちらちらと怯えた様子で目をよこすマキアに、リリィーアルは溜息をついた。
「マキアさんの秘密がどんなものであれ、わたくしがマキアさんを嫌いになることはありませんし、もしその秘密がわたくしを傷つけるものでも利用して見せますわ」
リリィーアルは口元に弧を描き、マキアを見上げる。
「どうやらわたくしは、〝ずるい〟ようですから」
小首を傾げてリリィーアルはふっと笑った。何故だか自信が溢れてくる。例えどんな難題でも、今なら簡単に解けてしまそうだ。
(マキアさんが、わたくしのことを理解してくれていたからかもしれませんわね)
きっとマキアは意識していないだろう。リリィーアルが王妃となるために孤独となった心を、彼女は照らしてくれたのだ。
目を細めて微笑むと、マキアが目を見張り、口元を抑えた。
「よ、妖艶で聖母……これはアリ……!」
「ま、マキアさん……?」
突然体を震わせだしたマキアが心配になって、リリィーアルはマキアの顔を覗き込む。
リリィーアルと目が合うと、マキアは「ぐへへ」と奇妙な笑い声をあげた。
1
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。

義弟の為に悪役令嬢になったけど何故か義弟がヒロインに会う前にヤンデレ化している件。
あの
恋愛
交通事故で死んだら、大好きな乙女ゲームの世界に転生してしまった。けど、、ヒロインじゃなくて攻略対象の義姉の悪役令嬢!?
ゲームで推しキャラだったヤンデレ義弟に嫌われるのは胸が痛いけど幸せになってもらうために悪役になろう!と思ったのだけれど
ヒロインに会う前にヤンデレ化してしまったのです。
※初めて書くので設定などごちゃごちゃかもしれませんが暖かく見守ってください。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。

乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。

目には目を歯には歯を!ビッチにはビッチを!
B介
恋愛
誰もいないはずの教室で絡み合う男女!
喘ぐ女性の声で、私は全て思い出した!
ここは乙女ゲームの世界!前世、親の借金のせいで若くして風俗嬢となった私の唯一のオアシス!純愛ゲームの中で、私は悪役令嬢!!
あれ?純愛のはずが、絡み合っているのはヒロインと…へ?モブ?
せめて攻略キャラとじゃないの!?
せめて今世は好きに行きたい!!断罪なんてごめんだわ!!
ヒロインがビッチなら私もビッチで勝負!!
*思いつきのまま書きましたので、何となくで読んで下さい!!
*急に、いや、ほとんどR 18になるかもしれません。
*更新は他3作が優先となりますので、遅い場合申し訳ございません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる