【完結】惚れ薬の調合に失敗したので、何故か花嫁のフリして白銀王子に溺愛された魔女の話。

偽りの花嫁

　りんごんと鐘の音が鳴り響く。
　改装したての真新しい教会は、どこを見渡してもキラキラしていた。その中で、大勢の人が拍手で祝福してくれている。
　私は覚悟を決めて、足を踏み出した。ヒールなんて履いたことないから、足元がおぼつかない……けど大丈夫。

「そんな緊張しなくていいんだよ。みんな、君を祝福しているのだから」

　と、腕を組んだ初対面のおじさまが支えてくれるから。
　ステンドグラスが美しい教会を一歩ずつ着実に足を進めて――女神アリスティア様の下で、銀髪の眩しい王子様……改、新郎が私に手を差し伸べてくれた。

「綺麗だよ――スカーレット」

　その完璧な微笑に、ぎこちない笑みしか返せない。だって、私の本当の名前はスカーレットじゃない。視線の端に映る自分のゆるやかな金の髪も、この綺麗な花嫁衣装も……何もかも、他人のモノ。

　それでも新郎は私の腰を引き寄せて、蕩けるような青い瞳で私を見つめた。

「愛している。きみと結婚できるなんて夢のようだ」

　奇遇ですね、ルーファス王太子殿下。
　私もこの結婚式が夢ならばと、何度願ったことでしょうか。

　あぁ、どうしてこうなったの……⁉
　私は、私じゃない新婦として、女神様のお膝元で永遠の愛を誓うキスをする――。