禁じられたアリス

右藤秕 ウトウシイナ

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Ep03 赤黒の月2

Ep03_08 倫子の願い

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―――――――――――――――――――
◆秕とクロウ
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「てめーら、ぶっとばす!!」

 幼稚園児のクロウが、小学生の悪ガキ2人を叩きのめした。その横で、いじめられて泥まみれのシイナが泣きじゃくる。

「く、くろうー、あ、ありがとうー」

 幼い頃からいじめられ体質だった秕は、よくクロウに助けられたものだった。かつてのクロウは正義感の塊で、弱い者いじめを決して見過ごしはしなかった。
 泣き虫だった秕は、いつもクロウやアリスを頼っていた。この3人は特に仲がよく、いつも一緒だった。そこにやがて倫子リンコ菜乃ナノも加わって、日が暮れるまで幼い日々を遊んで過ごした。

「うらー! 10年はえーんだよ!!」

 小学生になった頃。対戦ゲームなど勝負事では、秕は全くクロウに歯が立たなかった。クロウは容赦なく、全力で秕を叩き潰した。もはやトラウマレベルで秕は負け続けた。何度やっても勝てなくて、彼はよく泣かされたものだった。
 喧嘩もよくしたが、それでも2人は兄弟の様に育った。それは、幼いころにしか培うことの出来ない、かけがえのない思い出だった。

 それが、いつの頃だろう。中学校に上がる少し前からだろうか。秕とクロウの関係がギクシャクし始めたのは。
 原因は明白である。彼らといつも一緒にいたアリスが、奇跡のように美しく成長し、2人の少年は、それを意識せずにはいられなくなったのだ。

 やがて2人は、アリスを奪い合うライバルとして互いを見るようになった。
 特に、クロウはその傾向が強かった。クロウは恐れていたのかもしれない。秕が、自分と同じぐらいアリスに近いことを。

 さらに、秕が実力が無いにもかかわらず浦上学園に入学したことや、スサノオの力を手に入れた事、それらが原因で2人の関係は崩壊した。


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◆つばぜり合い
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 クロウの操るマガツカミ・クロトーがスサノオに向かって突進して来た。すさまじいスピードに、スサノオの機動力をもってしてもかわすのが精一杯だ。

「コロス……」

 クロトーはすぐさま振り返り、同時に雷撃のような蹴りを繰り出す。スサノオはとっさにガードしたが、体がバラバラになりそうなほどの衝撃がパイロットを襲った。
 秕が悲鳴を漏らす。

「コロス!」

 衝撃で動きの止まったスサノオに、クロトーはさらに追い討ちをかける。大きく腕を振りかぶると、力任せにスサノオを殴りつけた。
 なすすべもなく、秕の絶叫と共にスサノオは弾き飛ばされていく。

「な、なんなんだあの敵!!?」
「スサノオが全く手を出せないなんて!!」

 兵の間に動揺が広がっていく。

「思い知れ!!! てめえごときにオレは倒せねえ!!!!」
「……く、クロウ!」

 勝ち誇ったクロウの声が、通信モニタを通して秕に届く。スサノオもクロトーももともとPMプレイトメイルである。通信機能が生きていても不思議はない。

「ちっ! やはりクロウは強い。二週間程度の修行で、秕が技術的に追いつくのは不可能だということか」

 アリスには二人を見守る事しか出来なかった。いくら彼女が天才と呼ばれているとはいえ、スサノオとクロトーの戦いにPMで参戦するのは不可能だった。それほど性能に開きがあるのだ。前回のようにクロウが正気にもどってくれるかどうかも分からない。

「それにしても、スサノオの動きがイマイチだ。いや、修行の成果で動き自体はよくなっている。だが、迫力が無い。この前、地上で私を助けたときのような迫力が……。なぜだ?」
「迷いがあるようだな。秕には」

 第四艦上機兵部隊、通称、四機隊シキタイ杉藤スギトウがプライベート回線でアリスに話しかけた。

「迷い?」
「ああ。冷静にあの二人の力を比較してみろ。戦闘技術はクロウのほうが圧倒的に上だが、しかし、機体の性能や、『式神を使う能力』はスサノオと秕が一枚上だ。総合して考えると、秕にも決して手に負えない相手じゃあないはずなんだが」

 杉藤の分析に、アリスも頷いた。今の秕は、2週間前より強くなっている。

「それなのに、こうまで一方的にやられるのは、やつに迷いがあるからだ。自分のクラスメイトと戦わなければならないという、迷いが。秕も自覚してるはずだ」
「…………秕」

 アリスは唇を噛み締めた。

「やっぱりダメだ。お兄ちゃんには無理よっ!!」

 火星艦隊旗艦ルゥケイロルのブリッジで戦いの様子を見ていた菜乃が、半ば叫ぶようにして言った。彼女には、現状の秕の不利が前回の戦いと重なって見えていた。このままいけば、もう、兄に会えなくなるかもしれないと、そう思ったのだ。

「もうやめて!!」
「そうはいかないよ」

 呼吸を整えながら秕が言う。

「無理でも……やらなきゃいけないんだ」

 秕はスサノオに対霊仕様のショートソードを装備させた。PM用なので攻撃力は低いが、藁にもすがる思いだった。


―――――――――――――――――――
◆惨劇
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 なおも一方的なクロトーの猛攻は続く。スサノオも必死でその攻撃に耐えている。なんとか反撃のチャンスを見出すために。
 クロウの、狂気をはらんだ笑い声がスピーカーを歪ませる。笑いながら、壊れた機械のようにクロトーは攻撃を繰り出し続けた。

「しね、シネ、死ネェェ!!!!」

 足を鞭のようにしならせるクロトーの撃蹴げきしゅうが嵐のごとくスサノオを痛めつける。
 強烈な一撃が、スサノオをとらえた。秕が叫び声を上げる。スサノオに大きな隙が出来た。

「ああ、もう、見ちゃいられねえ!!!!」

 我慢の限界を突破した杉藤機が2体の間に割って入った。両腕でクロトーの重い蹴りを受け止める。

「す、杉藤大佐!!」
「よう。苦戦してるようだな」

 驚いて秕が声をあげる。ただのPMであのクロトーの攻撃を受け止めるとは。
 杉藤は、攻撃を受けた瞬間、絶妙のコントロールで力を受け流していた。とてつもない操縦技術だ。
 しかし、それもつかの間。
 杉藤機の右腕が悲鳴を上げながら砕け散った。すぐさま杉藤は間合いを取る。

「クソッ! 一回ガードするだけで腕一本か。――どうした秕、しっかりしろ!! あまり時間は無いぞ!!」

 スサノオの力が発動して、すでに45分が経過していた。
 このままでは、限界時間をオーバーするのは避けられない。もしそれまでに決着をつけられなければ、その瞬間に秕は殺されてしまうだろう。

「で、でも、そんなに簡単には」
「たく、しょうがない。第二小隊、スサノオを援護するぞ」
「ヤレヤレ、困った奴だな」
「俺たちに任せな!!」

 ダニエル・オニール少佐とジャック・ジャクソン中尉が通信モニタに顔を見せた。秕の特訓に付き合ってくれた部隊の2人だった。

「かかれ!!」

 四機隊、第二小隊が一斉にクロトーに仕掛ける。見事な連係プレイでクロトーを翻弄する。一糸乱れぬライフルの一斉射撃。その間にオニール機とジャクソン機が接近戦を挑む。

 しかし。

「ジャマだ……」

 クロウの目は完全に正気を失っており、もはやヒトのそれではなかった。

「――外道・怨ゲドウ・エン!!」

 クロトーの右手が、巨大な亡者の顔に変化した。亡者と言ってもそれは爬虫類のような形で、鋭くとがった牙が禍々しく光っており、口からは呪詛を含んだ瘴気を垂れ流している。

「(またあの技!!?) まずい!! だめです、近寄っちゃ!!」

 秕の警告もむなしく、クロトーの技が第二小隊に襲い掛かる。一瞬で接近戦を挑んだ2機が砕け散った。

「オニール!! ジャクソン!!」

 杉藤が叫んだ。

「そんな……!!」

 オニール少佐とジャクソン中尉が、別れを告げる間もなく帰らぬ人となった。ついさっきまで通信モニタの先で笑っていたのに、いともたやすく2人の命は失われた。まるで煙が掻き消えるように。
 秕は足が震えた。死の恐怖が彼の背後に忍び寄る。死とは、これほど身近にあったのだ。

 そこへ、スサノオを援護しようと火星艦隊の航宙駆逐艦が一隻近づいて来た。見事な操艦でクロトーを主砲の射線軸に捕らえたが、艦砲を食らうほどクロトーは遅くはない。
 雄叫びを上げて、クロウはその駆逐艦に殴りかかった。勢いに任せて、一気に艦首から艦尾までを突き破る。巨大な衝撃波を巻き起こしながら、その駆逐艦は爆散した。

「くそっ!!」

 杉藤がコクピットの壁に八つ当たりをした。

「なんて強さだ。あのマガツカミ。このままじゃ本当にヤバイぞ!!?」

 たくさんの魂が消えていく。その最後の叫びが秕の心に津波のようになだれ込んで来た。秕は自分の能力を呪った。オガミヤであるということは、人の死を感じることが出来るということである。彼の心は、今にも押しつぶされそうだった。

「ああ……。どうして、なんで、こんなことに…!! 一体どうすれば、クロウを倒せるんだ!!?」

 その時突然、こんな場所で聞こえてくるはずのない声が聞こえてきた。

「くろう君、もうやめてっ!!」


―――――――――――――――――――
◆倫子の願い
―――――――――――――――――――

「…………!!?」

 クロトーのコクピットの中で、クロウがほんの一瞬だけ眉をしかめた。

「りんこちゃん!!?」

 秕の13番機の通信モニタが開いて半泣きの倫子の顔が現れた。同時にレーダーが小型艇の接近を告げ、スクリーンの一部が拡大モードになってその小型艇を映し出した。
 倫子も、落ちこぼれとはいえ浦上学園の生徒である。小型艇を動かすぐらいの知識はあった。――もっとも、スムーズな操縦とはとてもいえなかったが。

「倫子がなぜこんなところに!!?」

 ヨルガミをまた一体、切り伏せながらアリスが言った。彼女は倫子の方に移動しようとしたが、際限なく現れるヨルガミに阻まれて近寄れなかった。
 倫子の小型艇自体は、ヨルガミには相手にされていなかった。

「いつのまに!? さっきまでここにいたのに!!」

 ブリッジを見回して、菜乃が言った。
 倫子の専門が戦闘以外であることは菜乃も知っている。そのような素人が戦闘のまっただ中に出て行くとは。最悪の事態が容易に想像出来た。菜乃の背筋に悪寒が走る。

「あれは、わが艦の作業用小型艇ですね」

 艦隊司令ソン・ヨシュウ少将が、困惑気味に言う。連れ戻しに行こうにも、いまは余分な戦力は無い。

「くろう君、聞こえる!? りんこだよ!」
「……りんこ?」

 クロウが倫子の声に反応し顔を歪めた。クロトーの動きがわずかに止まった。

「ねえ、くろう君、もうやめようよ。そんなのくろう君らしくないよ」
「……うるさい」
「あのね、実は渡したいものがあるの。だから戦いなんかやめて、こっちへ来て。……ね? ……お願い」

 小さな子供を諭すように、つとめて優しく倫子は言った。

「うるさい!! 邪魔だ消えろ!!!」

 クロトーは大きく手を振るった。倫子が悲鳴を上げる。
 幸い距離があったため小型艇には当たらなかったが、秕は生きた心地がしなかった。

「りんこちゃん、どうしてこんな!? 危険だよ、すぐ離れて!!」

 倫子が通信モニタの秕に向き直った。

「秕くん! お願い、くろう君を助けて!!」

 真剣な表情で哀願する。こんなに必死な倫子を、秕は今まで見たことがなかった。

「……クロウを……助ける?」

 秕は、クラスメイトの不動と古尾を思い出した。あの2人も、クロウを助けてくれと言っていた。

「お願い……。今の秕くんならきっと助けられる。あんなのホントのくろう君じゃないわ。ホントのくろう君は、不器用だけど……優しくて……。強くて……」

 後半はもう言葉にならない。そのまま彼女は泣き崩れてしまった。

「お願い……。お願いよぅ……」
「りんこちゃん」

 そんな倫子の姿を見ていると、秕も胸を締め付けられる思いだった。

 そして。

 秕は気が付いた。迷いの原因に。今、自分がしなければならないことに。
 今、秕がすべきことは、クロウに勝つことではない。

「ドイツもコイツも勝手なこと言ってんじゃねえ!!」

 倫子の願いはクロウにはまったく届かなかった。それどころか、クロウはさらに苛立ちをつのらせていった。

「わかるか? お前にオレの気持ちが」
「……え?」

 その苛立ちを、クロウは秕にぶつけてくる。

「永遠に最強になれないと知った時の気持ちが……!!」
「…………」
「オレの今までの努力は全て無駄だったんだ。遊ぶ暇もなく、PMの特訓に明け暮れる毎日……。最強になるため、オレがどれだけ努力してきたことか!! それが、おめーみてーなノロマにあっさり最強の座を奪われた……。スサノオなんていう、反則技を使われてなあ!!」

 クロウは尚も続けた。

「もういまさら、人が何人死のうが関係ねえ!! このオレが――」

 大きく手を広げ、オーバーなアクションをとって見せながら、クロウは言った。

「――このオレが最強になれればそれでいい!!」

 スサノオのコクピットにクロウの狂気じみた笑い声が届いた。あまりの音量に音が割れる。その笑いは発作のように、しばらく収まらなかった。

「……ダメだ。呪いによってクロウの心の奥底の『願い』が歪められて増幅されている。そんなのが、クロウが目指していた『最強』であるはずがないのに……!!」

 クロトーの更なる猛攻が続く。スサノオがじりじりと後退する。ショートソードによる反撃も、クロトーにはかすりもしなかった。

「どうしてこんなことになったんだ……。クロウだって、ホントは悪いやつじゃないのに……!!」

 幼い日の事を思い出す。みんなと一緒にカンケリをした事。いじめられた時にかばってもらった事。兄弟のように幼い日々を共に過ごした事。
 秕は悔しかった。クロウが憎くて、ではない。クロウのプライドや信念が、クロウ自身の手で汚されていくのがやるせなかった。
 ここ最近、秕とクロウはろくに口もきかなかったが、だからといって、自分の幼馴染がこれほどおとしめられるのに絶えられなかった。

「こんなのは、本当のクロウじゃない。クロウのこんなみっともないところ、もう見たくない!!」
「すぐに見なくて済むようになるぜ!! お前はここで死ぬんだからなァ!!!!」

 小馬鹿にしたように笑いながら、クロウが言った。
直後、クロトーが爆発的な瞬発力で宙を蹴り、突進した。音速を超える拳が唸りを立てて繰り出される。

――くろう君を助けて!!

 倫子の言葉が再びよみがえる。

「(そうだ。今、僕がすべきことは、クロウに勝つことじゃあない)」

 スサノオがギリギリで攻撃をかわし、クロトーとすれ違い間合いが開く。

「無駄だ無駄ァ!! テメェはオレには勝てねえ!!」
「……違う」

 微かな声で、秕がつぶやく。
 2体が向き直り互いに宙を蹴った。

「テメェなんかが、このオレに勝てるわけがねえんだあああ!!!!」
「ちがうちがう違う!!!!」

 頭を振りながら、今度は大声で秕が叫んだ。

「僕はクロウに勝ちたいんじゃない――」

 顔をあげ、まっすぐクロトーを睨みつける。その瞳には、かつて無い力が宿っていた。

「――助けたいんだ!!!!」

 同時に、スサノオとクロトーが激突する。宇宙空間を凄まじい霊子の波動が駆け抜け、次の瞬間、形容しがたい衝撃音を発して、クロトーは吹き飛ばされていた。

「なっ!!!!!?」

 クロウが信じられないという顔をして、声を漏らした。
 アリスと杉藤が目を見張る。

 スサノオが振るったショートソードがまばゆい光を発していた。そして秕の目の前には、地下遺跡で発見した用途不明の呪符が浮かんでいた。あれ以来、他の呪符と一緒にしたまま忘れていたものだ。
 その、呪符に書かれていた神代カミヨの文字が、不意に秕にも理解できた。

式武シキブ召喚・八束剣ヤツカノツルギ!!!!」

 轟音とともに、呪符が激しい光を放ち、ショートソードを包み込んだ。

「これは……!?」

 逆巻く光の結晶がショートソードを分解し、渦のように回りながらツルギを再構築していく。やがてそれは、スサノオの身長と同じぐらいの巨大な剣に変わっていった。
 スサノオが剣を取り、構える。凄まじい神威シンイが周囲を圧倒する。近くにいた弱いヨルガミが巻き込まれて蒸発した。
 杉藤他、兵達が言葉を失って、その光を見つめていた。

「そうか。これがスサノオの隠された『真の力』!!」
「いえ、そのうちのひとつにすぎません」

 専用回線を通してヨシュウが解説する。

「ソン提督」
「おそらくそれは、幽機憑依ユウキヒョウイの一種『式武シキブ』と呼ばれる技です。通常の武器と呪術用の呪符が結合したものと思われます」

 原理はスサノオと同じというわけだ。

「『クロウを助けたい』……か。どうやら、迷いは吹っ切れたようだな」

 我に返った杉藤が言った。
 秕の新しい力を、アリスは複雑な心境で見守っていた。

「クッ、おのれ!!」

 クロトーが態勢を立て直す。スサノオがヤツカノツルギを構えなおす。
 前回の戦いでクロトーに呪術が効かないのは分かっている。だが、このツルギがあれば十分に不利を補える。

「これならいける。クロウに勝てるかもしれない!!!」
「勝てるものか!! お前は今まで一度もこのオレに勝ったことがないんだからな!!」

 クロトーが再び宙を蹴る。

「――勝てるよ。だって、『お前』はホントのクロウじゃない。勝って、『本当のクロウ』を助ける!!!!」
「ほざけぇええ!!!!」

 再び2体は激突した。スサノオのヤツカノツルギをクロトーがかろうじて受け止める。2体がしばし睨み合う。

「りんこちゃん、下がってて。あとは僕に任せて!!」
「……お願い」

 倫子の小型艇が、ルゥケイロルに向けてゆっくりとその場から離れていった。心配そうに、秕はそれを見送った。


 【続く】

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