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粛清②
しおりを挟むデイジーとバロー男爵は、一番騒いでいた。
「漫画はこんなエンディングじゃなかった!!ハーレムでチヤホヤされながらアブノーマルなエッチライフを送る主人公だったのに!何で殺されなきゃいけないの!?殺されるなら悪役令嬢たちでしょう!?」
「うるさい!!全部お前のせいだ!!お前が自分は王子たちの寵愛を受けて王子妃になる運命だとでまかせを言うからこんな事に!!お前のせいでとんでもないことに巻き込まれた!!」
──漫画ってどういうこと?
この世界が漫画の世界だったとか?
私、漫画の世界に生まれ変わったの?
しかもハーレムでアブノーマルなエッチライフって何このふざけたキャッチフレーズ……。
まさかあの変態プレイを楽しむ18禁漫画とか……?
うわ……だとしたら私モブで良かったわ。
いろいろ悩んだけど、私は結局デイジーに会わなかった。
イアンがデイジーはあの略奪女の生まれ変わりだと言っていたけど、実際にその人だったとしても今更どうでもいいし、彼女と前世の話なんかしたいと思わない。
私はもう香澄じゃないし、今愛しているのはイアンではないから、あの略奪女とイアンの前世である亮介の真相なんて、ブリジットにとっては興味がないのだ。
だから前世を振り返る必要などない。
デイジーとバロー男爵は、王族と高位貴族に違法薬物を盛った罪と、キャサリン様を陥れて婚約破棄させたこと、コンラッド元第一王子の反逆を幇助したとして、最期の瞬間まで喚きながら生涯の幕を閉じた。
これで、全ての処刑は終了した。
残りの者は殆どが家の取り潰しや降爵の目にあっている。
おむつ野郎のリック様は家が取り潰しになり、騎士道に反する犯罪を犯したとして、鉱山に強制労働者として送られた。
露出狂のジョルジュ様も家が取り潰しになり、平民となったので学園を退学。祖父母や親戚の家には受け入れてもらえなかったようで、現在は船の積荷の仕事をしていると風の噂で聞いた。
変態仮面のエルナンド様は、父親のマルセル男爵が宰相と騎士団長が不正で得たお金の金庫番をしていたようで、架空の口座などを作って不正金を誤魔化し、彼らから賄賂をもらっていたとして懲役五年の実刑判決が出た。
爵位と商会は兄夫婦が継いだが、醜聞のせいで経営が悪化。兄夫婦の恨みをかってエルナンド様は廃嫡され、下男として冷遇されながら働いているらしい。
彼らは投獄されている間、実は反省していなかった。
媚薬の影響もあったのか、禁断症状で気性が荒くなり、私たちへの恨み言を叫び続け、ついには殺害予告までしていた。
逆恨みも甚だしいので、私たちは三人に反省してもらうため、例の映像を牢の中で延々と流してやった。
そう。あの変態プレイ映像ね。
個々ではなく、三人の恥ずかしいプレイを同時に流してやった。
すると三日で三人は静かになり、一週間経つと「やめてくれ!!映像を止めてくれ~!!」と発狂し、二週間経つと「許してください」とすすり泣く声が聞こえ、一ヶ月後に牢から出た時はげっそりとした陰気な男が三人出てきた。
愛した女はとんでもない淫乱で、誰にも見られたくない恥部を晒され続け、牢番たちにも見られ、ドン引きされて心がボキボキに折れたらしい。
まあ、その甲斐あって三人とも今のところは大人しく真面目に働いている。あの映像の所有者が私たちだとわかっているはずなので、もう馬鹿な真似はしないと信じたい。
全てのことが終わり、スッキリしたのかといえば、後味が悪いというのが正直な感想だ。
現に有力貴族が次々と失脚したことにより、社交界は今とても荒れている。新たな勢力図を作り上げようと皆必死になっているのだ。
引き続き両親は彼らを監視することになり、以前よりももっと忙しい毎日を送っている。
そしてコンラッド元第一王子の件は、両陛下やマライア様、第二王子のシリル様にも暗い影を落とした。
彼らはきっと、救えなかったことをずっと悔いて生きていくのだろう。
騎士団長やホルスト、コンラッド元第一王子のせいで仮面舞踏会や学園で純潔を散らされた令嬢は、縁談が潰れて心を病んでしまった者もいるという。
事件は終わったけれど、それぞれの心に大きな傷跡を残す結果となった。
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