43 / 63
揺れる金の瞳 *微R18
しおりを挟む「ダメ…っ、エゼル!!ちょっと、冗談やめて!」
エゼルが私の両手を絡め取り、顔の横に縫い止める。
「冗談じゃないけど。大丈夫。本番は初夜に取っておくから安心して」
何一つ安心出来ないんですけど!?
そう言おうとしたけど、エゼルに口を塞がれて封じられてしまった。
慣れた様子で口内に自分の舌を滑り込ませ、エゼルに知られてしまった私の弱い所を的確に刺激してくる。
室内に二人の乱れた吐息と水音が響き、羞恥と高められる熱に頭がのぼせきた。体に力が入らない。
どれくらい時間が経ったのだろう──。
不意にエゼルの唇が離れ、やっと解放された。
名残惜しむように、お互いの唇を唾液の糸が繋いでいる。
唇を濡らした目の前の男の色気に、クラクラと眩暈がした。
でも、その金の瞳は不安に揺れている。
「……亮介って奴の事、そんなに愛してたの?」
口付けの合間に聞こえた声は、先程の強引さは皆無で、とても弱々しいものだった。
「…………」
否定はできない。
亮介の事は──愛してた。
香澄の時は、私の世界は亮介を中心に回っていたのだ。
だから結婚したし、不貞を知って絶望した。
「──前世の時の話よ。今は違うわ」
「でも、お前とイアンには、前世で愛し合った記憶があるんだろう?それなら……いつまたその時の感情が戻ってくるかわからないじゃないか。現にイアンはブリジットを愛してる」
私の体を全て囲い込むように抱きしめられ、エゼルが首元に顔を埋めた。彼の体が微かに震えているのがわかる。
まるで子供のように縋り付くエゼルに、胸が締め付けられた。──エゼルの愛は真っ直ぐだ。
こんなに不安にさせているのは、求婚の返事を保留にして中途半端な状態にしている私のせいだ。
エゼルは何度も私に愛を伝えてくれているのに、私は一度も返していない。
「エゼル」
私が名を呼ぶと、ビクッと体が揺れた。
そしてゆっくりと顔を上げ、恐る恐る私に視線を向ける。
目元が少し潤んでいた。
「お前は……香澄じゃないよ」
「うん」
「香澄じゃない。ブリジットだ」
「うん」
「亮介のことは……忘れてくれよ…っ」
額同士を合わせて間近で訴えられる。
「どこにも行くな」
聞き逃してしまいそうな程の小さな声が、私の胸に突き刺さった。
私がイアンを追いかけて隣国に行くかもしれないと思っているのだろうか。
そんなことあるわけないのに。
「エゼル」
力なく縫い止められた両腕を解き、エゼルの両頬を包んで引き寄せ、私から口付けた。
そのまま、いつもエゼルがしてくれるように舌で唇を舐め、開いたエゼルの口内に舌を入れて彼を求める。
最初は驚いて固まっていたエゼルも、私が舌で唇を舐めて合図を送ったあたりから、またあの蕩けるような深い口付けをくれた。
今までの一方的なものではなく、私からもエゼルを求めた。
吸われるままにエゼルの舌と絡め合う。
彼が私にするように歯列をなぞり、精一杯舌を伸ばして上顎をなぞると、エゼルの体がピクリと反応した。
そこを何度も擦り上げながら、お互いの熱を分け合う。
エゼルが私を強く抱きしめ、お互いの体を隙間なく密着させると、下腹部に固いモノが当たっている事に気づいた。
「ちょ……っ、エゼル!」
恥ずかし過ぎて腰をズラすと、口付けの合間にエゼルの艶めかしい吐息がこぼれ、私は顔が沸騰する。
エゼルは私の反応を見て口角を上げると、素早く簡易ドレスの下に手を入れて、私の膝裏を掴んだ。
そのまま足を左右に広げて体を滑り込ませる、
そして今度は、私の秘部に固くなったそれをトラウザーズ越しに擦り付け、上下に体を揺らした。
「あっ、あっ……ああ…っ」
「ブリジット、なんで口付けてくれたの?」
私を上下に揺さぶりながらエゼルが質問をしてくるけど、その合間にも下腹部を刺激してくるので勝手に甘い声が漏れ、言葉を上手く紡げない。
「やっ…、とま……止まって……んんっ!答え…る、んっ、答える…から……っ!」
脱力した体でなんとかエゼルの胸を押すと、漸く動きを止めてくれた。
乱れた息を整えるまで少し時間を要する。
その間も、擦りはしないものの、下腹部を押しつけてくるので睨みを利かせた。
「早く教えてよ。なんで?」
口付けた時点で分かってるくせに、エゼルは焦がれるように私を見つめて、私の言葉を希う。
「──好きだからよ」
その言葉に一瞬目を見張り、次第に金の瞳に透明の膜が張っていく。
「ほんとに?」
「ほんとよ」
「それは男として?」
「そうじゃなきゃ口付けないし、ここまで触らせるわけないでしょ?」
「いつも俺の一方通行だと思ってたから……」
今にも溢れそうな涙を必死に堪えるエゼルにキュンとしてしまう。イアンの話を聞いて、本当にエゼルは子供の頃から私だけを見てくれていたのだと知り、素直に嬉しいと思った。
思い返せば、私の側にはずっとエゼルがいた。
前世の記憶に苦しんでいる時も、カーライル商会の新商品を考えている時も、影の後継者としての厳しい教育も、エゼルが従者のように支えてくれたから今の私がいるのだ。
ただの再従兄弟として側に居続けてくれた。
小言が多いけど、いつも私を、大事にしてくれた。
何故今までそれを見ようとしていなかったのだろう。
きっとエゼルは、ずっと不安だったはずだ。
今ならエゼルの愛を、正面から受け止められる。
それをちゃんと、エゼルが信じられるまで、言葉と行動で伝えなくちゃ。
エゼルがそうしてくれたように────。
「エゼル」
首の後ろに手を回し、再び愛しい人を引き寄せる。
「愛してるわ。エゼル」
私が愛を告げると、金の瞳から一筋の涙が溢れた。
240
お気に入りに追加
2,512
あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる