【完結】影を使って婚約者の秘密を暴いたら、とんでもないことになりました。

ハナミズキ

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揺れる金の瞳 *微R18

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「ダメ…っ、エゼル!!ちょっと、冗談やめて!」


エゼルが私の両手を絡め取り、顔の横に縫い止める。


「冗談じゃないけど。大丈夫。本番は初夜に取っておくから安心して」


何一つ安心出来ないんですけど!?

そう言おうとしたけど、エゼルに口を塞がれて封じられてしまった。


慣れた様子で口内に自分の舌を滑り込ませ、エゼルに知られてしまった私の弱い所を的確に刺激してくる。

室内に二人の乱れた吐息と水音が響き、羞恥と高められる熱に頭がのぼせきた。体に力が入らない。

どれくらい時間が経ったのだろう──。
不意にエゼルの唇が離れ、やっと解放された。


名残惜しむように、お互いの唇を唾液の糸が繋いでいる。
唇を濡らした目の前の男の色気に、クラクラと眩暈がした。


でも、その金の瞳は不安に揺れている。



「……亮介って奴の事、そんなに愛してたの?」

 

口付けの合間に聞こえた声は、先程の強引さは皆無で、とても弱々しいものだった。


「…………」



否定はできない。


亮介の事は──愛してた。
香澄の時は、私の世界は亮介を中心に回っていたのだ。

だから結婚したし、不貞を知って絶望した。



「──前世の時の話よ。今は違うわ」

「でも、お前とイアンには、前世で愛し合った記憶があるんだろう?それなら……いつまたその時の感情が戻ってくるかわからないじゃないか。現にイアンはブリジットを愛してる」


私の体を全て囲い込むように抱きしめられ、エゼルが首元に顔を埋めた。彼の体が微かに震えているのがわかる。


まるで子供のように縋り付くエゼルに、胸が締め付けられた。──エゼルの愛は真っ直ぐだ。

こんなに不安にさせているのは、求婚の返事を保留にして中途半端な状態にしている私のせいだ。

エゼルは何度も私に愛を伝えてくれているのに、私は一度も返していない。



「エゼル」


私が名を呼ぶと、ビクッと体が揺れた。
そしてゆっくりと顔を上げ、恐る恐る私に視線を向ける。

目元が少し潤んでいた。


「お前は……香澄じゃないよ」

「うん」

「香澄じゃない。ブリジットだ」

「うん」

「亮介のことは……忘れてくれよ…っ」


額同士を合わせて間近で訴えられる。


「どこにも行くな」  


聞き逃してしまいそうな程の小さな声が、私の胸に突き刺さった。

私がイアンを追いかけて隣国に行くかもしれないと思っているのだろうか。


そんなことあるわけないのに。



「エゼル」


力なく縫い止められた両腕を解き、エゼルの両頬を包んで引き寄せ、私から口付けた。

そのまま、いつもエゼルがしてくれるように舌で唇を舐め、開いたエゼルの口内に舌を入れて彼を求める。


最初は驚いて固まっていたエゼルも、私が舌で唇を舐めて合図を送ったあたりから、またあの蕩けるような深い口付けをくれた。

今までの一方的なものではなく、私からもエゼルを求めた。

吸われるままにエゼルの舌と絡め合う。

彼が私にするように歯列をなぞり、精一杯舌を伸ばして上顎をなぞると、エゼルの体がピクリと反応した。


そこを何度も擦り上げながら、お互いの熱を分け合う。

エゼルが私を強く抱きしめ、お互いの体を隙間なく密着させると、下腹部に固いモノが当たっている事に気づいた。


「ちょ……っ、エゼル!」


恥ずかし過ぎて腰をズラすと、口付けの合間にエゼルの艶めかしい吐息がこぼれ、私は顔が沸騰する。


エゼルは私の反応を見て口角を上げると、素早く簡易ドレスの下に手を入れて、私の膝裏を掴んだ。

そのまま足を左右に広げて体を滑り込ませる、

そして今度は、私の秘部に固くなったそれをトラウザーズ越しに擦り付け、上下に体を揺らした。


「あっ、あっ……ああ…っ」

「ブリジット、なんで口付けてくれたの?」


私を上下に揺さぶりながらエゼルが質問をしてくるけど、その合間にも下腹部を刺激してくるので勝手に甘い声が漏れ、言葉を上手く紡げない。


「やっ…、とま……止まって……んんっ!答え…る、んっ、答える…から……っ!」


脱力した体でなんとかエゼルの胸を押すと、漸く動きを止めてくれた。

乱れた息を整えるまで少し時間を要する。

その間も、擦りはしないものの、下腹部を押しつけてくるので睨みを利かせた。



「早く教えてよ。なんで?」


口付けた時点で分かってるくせに、エゼルは焦がれるように私を見つめて、私の言葉をこいねがう。




「──好きだからよ」


その言葉に一瞬目を見張り、次第に金の瞳に透明の膜が張っていく。


「ほんとに?」

「ほんとよ」

「それは男として?」

「そうじゃなきゃ口付けないし、ここまで触らせるわけないでしょ?」

「いつも俺の一方通行だと思ってたから……」


今にも溢れそうな涙を必死に堪えるエゼルにキュンとしてしまう。イアンの話を聞いて、本当にエゼルは子供の頃から私だけを見てくれていたのだと知り、素直に嬉しいと思った。

思い返せば、私の側にはずっとエゼルがいた。


前世の記憶に苦しんでいる時も、カーライル商会の新商品を考えている時も、影の後継者としての厳しい教育も、エゼルが従者のように支えてくれたから今の私がいるのだ。

ただの再従兄弟として側に居続けてくれた。
小言が多いけど、いつも私を、大事にしてくれた。

何故今までそれを見ようとしていなかったのだろう。
きっとエゼルは、ずっと不安だったはずだ。


今ならエゼルの愛を、正面から受け止められる。


それをちゃんと、エゼルが信じられるまで、言葉と行動で伝えなくちゃ。

エゼルがそうしてくれたように────。



「エゼル」


首の後ろに手を回し、再び愛しい人を引き寄せる。



「愛してるわ。エゼル」



私が愛を告げると、金の瞳から一筋の涙が溢れた。

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