【完結】影を使って婚約者の秘密を暴いたら、とんでもないことになりました。

ハナミズキ

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浮気野郎撲滅の会発足②

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*前話でキャサリンとコンラッド第一王子の設定がプロット変更前とごっちゃになっていたので変更しました。
キャサリンには兄がいるのでコンラッドは婿入りしません。キャサリンが王宮に上がる予定です。混乱させてしまい申し訳ありません(汗)
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デイジー・バロー男爵令嬢。


ここにいる彼女達の婚約者共通の浮気相手。

アリアやキャサリン様は既に知っている様子で動じていなかったけど、アデライド様やモニカ様は驚いたようで「え!?共通って??」と言いながら私達の顔を見回している。



「初めに結論から言わせていただきますと、私、婚約破棄をするつもりでいますの」


「「「え?」」」



アリア以外の3人が驚愕した顔で私を見ている。

まあ、そうでしょうね。私の婚約者であるイアン伯爵令息は、傍目から見れば私を溺愛しているように見えるはず。

私もただの令嬢ならきっとイアンの愛を信じて疑わなかったと思うわ。でも私はただの令嬢ではなく

その伴侶も王家の信頼に値する者であるか、女王と王家の影当主お母様の監視下に置かれる。


プロの諜報部隊が調べれば、学生である伯爵令息の秘密を暴くなど造作もない事だった。



そりゃ、傷つかなかったと言えば嘘になる。
これでも、私はイアンを愛していたから。


政略だったけれど、人生のパートナーとして支え合える夫婦になりたくて、子供の頃から仲を深めてきた。情熱的な愛ではないけれど、お互い穏やかな愛情は育めていると思っていたのだ。

お母様からこの事実を知らされたのは、私も薄々感じていた違和感を調べ、イアンとデイジーが市井の宿で逢引している事実を見つけた最中さなかだった。

お母様から渡された調査書には、私の想像よりもずっと以前から、───学園入学時から既に裏切りの兆候は出ていたのだ。


そして、お母様が私に調査書を渡したという事は、自分で真実を突き止め、次期当主として対処しろという事だ。



───つまり、女王とお母様はイアンを王家の影の伴侶に相応しくないと三行半を突きつけたということ。

そして、イアンを惹きつけておけなかった事や、こんな事になるまで早く気づく事ができなかった私の責任も少なからず問われている。


イアン本人の資質に問題があったのは大前提ではあるけれど、何故もっと早く・・・と悔いてしまうのは私の未熟さゆえなのだろう。

私が早く気づいてバロー男爵令嬢を何とかしていれば、目の前の彼女達も、ここまで傷つく事もなかったのかもしれないのだから───。




『まだ貴女は子供で、正式に影としての経験を積んでいないのだから気に病む事はないわ。これは私の仕事よ。ただ、これらの証拠だけでは彼らの父親達を動かすにはまだ弱い。私がこのまま仕上げてもいいけど、貴女にやる気があるなら今後のイアン達の動向調査は同じ学園にいる貴女に指揮を任せても良いと思ってる。影を使っていいわ。どう?影としての初仕事、やってみる?』



母にそう言われて、私はイアンに責任を取らせる事を決意した。そして、自分の手で決着をつけるわ。


そしてこれを機会に、マライア様の治世を支えられる優秀な臣下となり得る彼女達を、あの男共から救いたい。

地獄に落ちるのは、やらかした男達だけでいいのよ。


私は彼女達の顔を1人ずつ見て、本題を切り出した。


「婚約破棄をする為に、私の婚約者であるイアン伯爵令息を調べました。そして調べを進めるうちに、デイジー・バローに関する見過ごせない所業の証拠を入手しました。それが貴女達の婚約者との不貞関係です」


全員の体の一部がピクリと反応を返す。


「第一王子とリックがあの女にのぼせ上がってるのは知っていたけど、あの女、ブリジット様とモニカ様の婚約者にまで手を出していたのか?」


キャサリン様の幼馴染であり、女性騎士見習いのアデライド様が拳を握り締め、表情を怒りで染める。


「私もエルナンド様の不貞は知っていましたが、まさか相手の女性が皆様の婚約者ともだなんて・・・なんて不潔なの・・・っ」


モニカ様が悔しさで涙が滲んだのか、ハンカチで目頭を抑え、感情を吐露する。


「ブリジット様・・・。我がマクガイア公爵家でも多少の事実を掴んでいますが、まだ判断を決めかねております。父は王弟なので、女王に遠慮して甥である殿下に甘い部分もあり、様子見の立場をとっています。でもワタクシとしては───」


「・・・キャサリン様は───婚約破棄したいのですね?」


私がハッキリと意思を聞くと、キャサリン様は悲しそうに顔を歪めた。


「───殿下に会いに王宮に行った時、聞いてしまったのです。殿下の私室で睦み合う2人の声を・・・」


全員が息を飲む。

どんな時も凛とした佇まいで、百合の花のように気高くあり続ける高貴な彼女が、声を震わせ、傷ついた心のうちを吐き出したのだ。


「ワタクシはもう、それで心が折れてしまいました。子供の頃からマライア様とコンラッド様を支える為に厳しい王子妃教育に耐え、やっと学園でコンラッド様と一緒に過ごすことが出来ると楽しみにしておりましたのに、あの人はワタクシの事なんてちっとも見てくれない。挙句に下位貴族の女性と不貞関係を結んだ。もう・・・ワタクシは疲れてしまったのです・・・。コンラッド様の為に・・・これ以上頑張れない・・・っ」


ずっと我慢していたのだろう。堪えきれないというように次から次へと彼女の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。


「ブリジット・・・、私、私も婚約破棄したい。あんな女を抱いたジョルジュ様と結婚しなければならないなんて・・・、あんな男との子供をサージェス家の跡取りにしなければならないなんて・・・、想像しただけで吐き気がするわ」


キャサリン様に続き、アリアもジョルジュ様に対して怒りを露わにし、涙を流した。

気がつくとアデライド様とモニカ様も泣いている。


皆ずっと、婚約者の裏切りに傷ついてきたのだろう。

それでも政略結婚である以上、貴族令嬢として役目を果たさなくてはならない。

仮面夫婦などどこにでもいるのだと、自分を言い聞かせて来たのだろう。


そして擦り切れていく心と、貴族令嬢としての務めに板挟みになり、ずっと苦しんで来た。彼女達も私と同じく、入学当初から裏切られて来たのだ。


「私も!私もリックと結婚するのは嫌だ・・・っ。何が悲しくて私を蔑ろにする男の妻にならなければならないんだ。アイツは私をエスコートした事もなければ贈り物一つ送ってくれた事もない。口を開けば『女のクセに』と私を侮辱するだけ。あんな男の子供を産むくらいなら生涯独身で騎士として生きた方が何倍もマシだっ」

「私もエルナンド様と結婚したくありません・・・っ、お金と女性にがめつくて下品で、隙があれば寝室に連れ込もうとする所も、自分より立場が下の者に横柄な所も大っ嫌いだったのです!」



アデライド様とモニカ様も想いの丈を吐き出した。

これでいい。


彼女達の本音を聞き出す事が出来た。彼女達の心はまだ完全に壊れていない。

───きっと、戦える。





「それなら、皆様も私と一緒に婚約破棄しませんか?」
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