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第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜
52. 皇弟 ノア・オーガスタ
しおりを挟む「これは・・・なんと神々しい──」
ヴィオラ達の後ろに現れた光と闇の上級精霊の美しさに、皇帝は感嘆の息を漏らす。
だが精霊2人はこの国で最も尊い人物であろうとお構いなしに冷たい眼差しを送り、あからさまに敵意を向けていた。
闇の精霊クロヴィスが問う。
「貴様は皇帝か・・・?ようも抜け抜けと我らに顔を見せようなど出来たものだな。貴様の父親がした愚行を我らが知らぬと思っているのか?」
その容赦ない責めに皇帝は立ち上がり、床に跪いて頭を下げ、精霊達に敬意と謝罪の意を表した。
「己が業は重々承知しております。だからこそ私は父の犯した罪を自分の手で祓いたい。今、邪神という人ならざる者が民達の安全を脅かしているのであれば、皇帝として私は立ち塞がねばなりません。どうか力の足りない我々に助力を願い出たい」
精霊が言葉を発するまで皇帝は頭を下げ続けた。その間、誰も言葉を発しない。
部屋に沈黙が流れる。
しかし数秒後、
光の精霊ディーンが何かに反応した。
「・・・火の精霊・・・イグニスか」
そう呟いた後、部屋の外から複数の足音が響き、この部屋の前でピタリと止まる。
コンコン。
「陛下。ノアです。只今戻りました」
「入れ」
扉が開き、ノアという名の若い美男子と、その後ろに2人の青年が入室してきた。
そして部屋に入るなり3人が固まる。
皇帝が床に膝をついているのだから無理もない。
(皇帝や団長と同じ色・・・この人も兄弟や従兄弟かしら・・・?)
ヴィオラがノアを見ていると、
ふいに目が合った。
琥珀色の瞳に捉えられる。
そしてその視線はディーンとクロヴィスに移り、
彼は驚愕に目を見開いた。
「え・・・?──人型・・・まさか、上級精霊!?」
「驚いたろノア。彼らがレアキャラだ。しかも、その目の前にいる双子達が彼らの契約者であり、エイダンの子供だ」
レオンハルトがニマニマしながらノアに説明する。
「エイダン殿の?」
「お久しぶりです。ノア様」
どうやら彼も父と顔見知りらしい。
「お久しぶりです・・・え? エイダン殿の子供が・・・?上級精霊と・・・?」
精霊2人とヴィオラ達に交互に視線を滑らせ、上級精霊が自分よりも年下の子供と契約している事にひどく混乱しているようだった。
クリスフォードがノアの前に立ち、頭を下げる。
彼の風貌と、父エイダンの対応を見て瞬時に王族に並ぶ高位貴族だと判断した。
「お初にお目にかかります。バレンシア王国オルディアン伯爵家が長男、クリスフォード・オルディアンです」
「お初にお目にかかります。同じくオルディアン伯爵家が長女、ヴィオラ・オルディアンです」
ヴィオラもクリフォードに並び、カーテシーをする。
「・・・魔法士団副団長のノア・オーガスタです。面を上げて下さい」
「クリス、ヴィオラ。彼は皇弟殿下だ」
(やっぱり・・・陛下の弟・・・年の離れた兄弟なのね)
ヴィオラは皇帝とノア、レオンハルトを見て、彼らの色が王族特有のものだと気づいた。
「殿下はやめてください、エイダン殿。俺はもう臣下に下りて王子じゃありませんよ。───それにしても、これは今どういう状況ですか?」
ノアは精霊2人を見つめる。
「やはりお前は火の精霊、イグニスの愛し子か」
「──はい」
光の精霊ディーンの問いに答え、ノアは精霊2人に臣下の礼を取った。
「いちいち話すのが面倒だ。頭を貸せ」
眉を顰めながら闇の精霊クロヴィスがノアの額に手をかざし、エイダン達に話した邪神の情報をノアの記憶に植え付けた。
「・・・・・・っ!?」
突然入り込んでくる情報量にノアは目眩に襲われ、よろめいた所を目の前にいたヴィオラに支えられた。
「大丈夫ですか!?」
「・・・っ、すまない。大丈夫だ・・・っ」
ノアは痛そうにこめかみを抑えながら「なるほどね」と合点がいった表情を見せる。
そしてクロヴィスを見やり、訪ねた。
「あのミイラの死体は邪神の仕業ですか?」
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