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第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜
48. 呪返し side エイダン
しおりを挟む「か・・・完成したー!!」
ジルが過去見の映写機である水晶玉を天に掲げて喜びの舞を踊っている。
魔法師団の団長執務室には、ジルの他にげっそりしてソファに座っているエイダンと、執務机でサンドイッチを頬張りながら執務に励むレオンハルトの姿があった。
「エイダン様、マジでありがとうございます!制作始めて苦節2年!何度も何度も魔法陣書いては失敗を繰り返してやっと僕の苦労が実った・・・っ」
喜びの舞の次は感極まったのか泣き出した。
「ちょっと大きい声を出さないでくれないか。魔力操作のし過ぎで頭痛がするんだ。まさかこんな魔力を吸い上げられるとは思わなかった。それ量産無理だろう」
「そこはまた改良の余地有りですが、とにもかくにも第1号が出来たわけです。これで邪神教の奴らの犯罪の証拠掴めますよ」
「それは一刻も早く実験したいところだが・・・おいレオンハルト。陛下への謁見はいつになるんだ?」
「来週に予定してるよ。謁見の間で行う予定だったけど、先日の上級精霊からの話もあるし、防音仕様の王の会議室で話し合う事になった」
「ああ、あの絵空事みたいな壮大な話か。未だに現実の話なのか実感が湧かない」
「精霊が実在してるんですから、神がただの象徴じゃなくて実在しててもおかしくないでしょう」
「それはそうだが・・・それに子供達が巻き込まれているのが解せない。何故ウチの子達なんだ。何ならお前らでいいだろが」
「さあ、それは神の思し召しですからねぇ」
「とりあえず、お前の子供達は今後帝国の庇護もつくだろう。精霊の言うように邪神教の奴らに力を持っている事をバレないようにしなきゃならないってのが骨折りそうだが・・・」
「元々の人の魂が穢されたって言ってましたもんね。あ、あれですか。そっちを隠れ蓑にするって事なんですかね?」
「相手は邪神とはいえ、神なんだろ?そんな小細工で本当にウチの子供達を守れるのか?人間がどうやって?」
はあ・・・と、エイダンはため息をつく。
守らねばならないのは邪神教からだけじゃない。
あれから目覚めた子供達に改めて魔力判定を行った所、上級精霊の言った通り複数の魔力属性が判明した。
クリスフォードは闇と水。
ヴィオラはなんと光と水と、マリーベルの土属性を引継いでいた。
属性の複数持ちはバレンシア王国の中では王族くらいしかいない。
もしこれが社交界にバレでもすれば、またマッケンリー公爵のような高位貴族に目をつけられるのではないかとエイダンは気が気じゃなかった。
ただ、イザベラの魔力判定の偽証を証明するには王家に本当の事を言わねばならない。
どうすれば双子を守れるのか、エイダンはそればかりを考えていた。
(──王太子に助力を願い出てみるか?それとも爵位返上していっそ国を出るか・・・)
「大丈夫だ。とは一概には言えないけど、双子達には皇家の影をつけるつもりだ」
「皇家の影?」
「裏皇家と呼ばれる諜報部隊だ。幹部は精霊付きの奴らだから、ただの人間よりは守れると思う。俺が言える事は今はそれしかない。悪いな・・・。」
レオンハルト達も、双子に課せられた重すぎる枷に思うところはあるのだ。原因の一つグレンハーベルの前皇帝なだけに。
精霊の話で、もう国内で縄張り争いをしている場合ではなくなった。
実際に邪神が犯人の可能性が高いミイラの死体が量産されている以上、国一丸となって邪神に対抗する術を考えなくてはならない。
それらを考えただけでレオンハルトたちも頭を悩ませていた。
精霊の存在は一部の人間にしか認識されていないゆえ、こちらがいくら理由を話して協力を願い出ても、先程のエイダンのように絵空事として笑われかねない。
エイダンもレオンハルトも悩み過ぎて深みにハマっていると、ジルの疑問の声が降ってきて顔を上げた。
「そういえば、呪返しって起こってるんですかね?魔法陣壊れかけてたから半分は自爆でしょうけど」
「呪返し?」
聞きなれない言葉にエイダンは説明を求める。
「ええ。あれだけ強力な呪いですよ。元々解呪できたのが奇跡みたいなもんなんですから、壊れかけてた魔法陣とはいえ、解呪による呪返しは相当なもんだと思います。下手したら死んでるかも」
「────それはイザベラが死んでいるかもしれないということか?」
「うーん。基本的には実際にかけた術師が返されると思いますけど、奥さんがどれだけ関わっていたかによるんじゃないですかね?」
「まだアイツの罪を何も明るみにできていないのにか?」
次から次へと考える事が増えて、
エイダンは再び頭を抱えた。
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