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第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜
44. 光と闇の精霊
しおりを挟む翌日、魔法師団の演習場に着き、エイダンがドーム型の結界を張ってヴィオラ達を包んだ。
念のためジルとレオンハルトも結界を囲むように立ち、不測の事態備える。
父が放つ水色に光る粒子を放ったその魔力は、やっぱりキレイだと思った。
「へえ、流石エイダン様。噂通り緻密な魔力操作はもうプロですね。医者なんか辞めて聖者になればいいんじゃないですか?」
ジルが感心したように父の結界を見つめている。
「そんなもの興味ない。無駄口叩いてないで早く隠蔽魔法とやらでコーティングしてくれ」
「そう急かさないで下さいよ。これだってコントロール命なんですから、集中しないと失敗しちゃいます」
「失敗は許さん」
「こわっ。はいはい。頑張りますよ」
『コンシール』
ジルが詠唱するとエイダンが張った結界に沿って黒いキラキラした魔力が覆い被さっていく。
そして、結界内にいるヴィオラ達に視線向け、
「それじゃ、準備はいいかな?双子ちゃん達」
結界内にはヴィオラとクリスフォード、そしてジルの相棒のグラディスがいる。
2人がグラディスに触れるとヴィオラ達の周りに光と闇の下級精霊達が寄り添うに飛んでいた。
(人間は私とお兄様しかいないのに、何でだろう。精霊達の事は無条件で信じられる。怖くない)
勇気づけるように、ヴィオラは兄の手をそっと握る。クリスフォードもヴィオラに視線を移し、大丈夫だというように頷いた。
「「お願いします」」
「よし、じゃあ行くよ~」
ジルが双子に向かって手をかざし、黒い魔力を体から発して集中力を上げる。そして、
『ディスペル』
バチン!!
という衝撃と共に、体内からものすごい勢いで何かが身体中を駆け巡る。
「がっ・・・!ぐっ、あああ!」
「うぐっ、ふっ、うううっ!」
熱いっ、痛い!!
何かが皮膚を引き裂いて飛び出てきそうだ。
2人の体から衝撃波が飛び出し、結界を内部から押し開こうとする。
「ヴィオラ!!クリス!!くそ、どうなっている!精霊が守ってくれるんじゃないのか!?このままだと結界が弾かれる!」
「エイダン様落ち着いて!きっとすぐに収まる!精霊は嘘つかないから結界維持に集中して!」
「なんだこりゃ・・・っ、すごい魔力量だな!」
レオンハルトも子供が発する規格外の魔力量に驚きを隠せない。
その後、突然ヴィオラ達の周りを渦巻き状の突風が駆け巡り、2人を覆い隠した。
「ヴィオラ!!クリスー!!」
エイダンが叫んだその時、内部からの圧力がフッと消える。
「衝撃が消えた!?」
結界内に目をこらすと、ヴィオラ達を取り囲んでいた渦巻き状の風が砂を巻き上げながら面積を広くしていき、中心からヴィオラ達が現れる。
そして、男神かと思うような類稀なる美貌を持った2人が、ヴィオラ達を抱え込んでいた。
艶めく薄い金髪に黄金色の瞳と、白磁の肌を持つ中世的な男性がクリスフォードを抱え、
同じく中性的で流麗な黒髪と黄金色の瞳、白磁の肌を持つ男性がヴィオラを抱え込んでいた。
2人とも腰より下まで髪が伸びており、ストレートの髪が風で揺らめくたびにキラキラと光を放っていた。
顔立ちはとても似ていて、彼らも双子のような外見をしている。
そしてその2人の周りを下級精霊達が嬉しそうに飛び回り、グラディスが黒髪の男の腕に頭を擦り付けてゴロゴロと喉を慣らしていた。
先程の地面を削り取るような風と衝撃波が嘘のように、今は凪いでいる。そして彼らの腕の中で双子は気を失っているようだった。
「クリス!!ヴィオラ!!」
結界を解いてエイダンは2人に駆け寄る。口元に耳を近づけると呼吸をしているのが確認出来た。安堵して膝の力が抜け、思わずその場にへたり込んでしまう。
「よかった・・・っ」
完全に暴走を起こしていて、もうダメだと一瞬思ってしまった。
激痛で顔を歪める子供達に何も出来ない自分が歯痒い。本当に自分は無能だと自嘲する。
へたり込んだエイダンの後ろから、唖然としたジルがゆっくり近づいて震えながら長髪の2人に話しかけた。
信じられない者を見たように、これでもかと目を見開いて2人を凝視する。
「嘘でしょ・・・っ、光と闇の精霊──しかも上級の人型精霊じゃないか・・・っ」
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