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第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜
41. 邪術
しおりを挟む「さて、グラディス。君に頼みがある。下級精霊達に呪いの解呪が可能か聞いてもらっても良いかな?」
ジルが頼むとグラディスは頷き、ヴィオラ達に近づいて下級精霊達の方に向き合った。2人がグラディスに触れると精霊達がグラディスの周りを飛び交ってしきりに何かを伝えているような姿が見えた。
しばらくして話が終わったのか、グラディスがジルの元に戻り、屈んでいる彼と視線を合わせる。
グラディスは一言も発していないのだがジルは相槌を打って時折険しい顔をし、「マジか」と呟いたりしている。
どうやら念話で会話をしているらしい。
そして一通り会話が終わったのか、ジルが「わかった」と答えるとグラディスは再びジルの影の中へ消えていった。
「ジル、アイツらなんだって?」
レオンハルトがジルに尋ねる。
「そうですね。良い話と悪い話があるのですが、どちらから聞きます?」
「良い話から聞こうか」
「まず、呪いの解呪は可能です」
「本当か!それは良かった」
「解呪・・・可能・・・」
クリスフォードが噛み締めるようにそう呟き、一瞬泣きそうに眉を歪めた。安堵したのだろう。
「呪いの魔法陣は既に壊れかけているので僕の消滅魔法で魔法陣を消せば解呪出来るらしいです。ただ、やはりどうしても魔力暴走は起こしてしまうみたいで・・・」
「何!?それが防げないと本末転倒だろ!」
レオンハルト曰く、昨日の鑑定魔法の結果、ヴィオラ達の魔力量は10歳の時点で測定不能と出ており、数値が未知数なので2人が同時に魔力暴走を起こしたら、今宿泊している宿を含めた近隣の土地が一瞬で消し飛ぶくらいの威力があるのでは。という見立てだった。
だから自分達の命を守るのはもちろん、周りの被害を抑えるためにもどうにかして暴走を止めなければならないのだと。
自分達にそんな力を持っている実感は全くないが、暴走によって自分どころか周りの人間も死に至らしめる可能性があると言われては、震え上がるほど恐怖を感じても仕方ないだろう。
「話は最後まで聞いて下さい。それに関しては精霊の力を借りれるそうです。今は魔力封じで力を使えないけど、2人の魔力が解放されれば精霊達が干渉できるらしいんで、解呪した直後に彼らが2人を守ってくれるそうですよ」
精霊達が守る・・・?
(さっきの子達が守ってくれるの──?)
思わずクリスフォードに顔を向ける。ヴィオラの視線に気づいたクリスフォードも視線を合わせ、笑顔を向けてくれた。
(私達・・・生きられるの?)
ヴィオラ達の胸に僅かな希望が湧く。
「本当なのか?精霊達が・・・助けてくれるのか?」
エイダンも念押しとばかりにジルに確認を取る。
「ええ。ただここからは少し厄介な話になります。まず、そもそも呪いの術というのは魔法ではなくて神術の一つなんです。だから本来なら解呪出来ないんですよ。神の力なので」
「呪いが神術?」
「ええ。まあわかりやすくいうと天罰とか、そんな類いのものです。我が国は多宗教国家なので色々な神が信仰されています。その中で国が危険視している宗教があり、それが今回貴方の子供達に降りかかった呪いの原因でもあります」
「呪いの原因?」
「邪神教をご存知ですか?」
「いや、初めて聞いた」
「まあ文字通り邪神を信仰している民族なんですけどね、その彼らが扱う神術こそが『邪術』と呼ばれる呪いです。彼らには先の戦争や内乱でもかなり苦しめられましてね。貴方の子供達にかけられた呪いもその邪術によるものだと思われます」
レオンハルトとジルとの出会いで知らされる数々の情報に、クリスフォードも頭が混乱せざるを得なかった。
わからないことが多すぎる。
邪術──。
本来なら解呪できない呪い。
それが何故綻びが出来たのか。
何故自分達に測定不能な魔力が授けられたのか。
何故精霊が自分達を守ってくれるのか。
何故ヴィオラは前世を思い出したのか。
一見繋がってなさそうで、繋がっている。
全てが誰かに糸を引かれている。
クリスフォードはそんな気がしてならなかった。
(これから一体何が起きるんだ・・・)
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