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第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜

37. 呪いをかけたのは

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翌日、父の部屋で親子3人での話し合いを設けた。


昨夜はヴィオラ達の疲労が限界になり、また改めて話し合いをする事にして解散となった。


レオンハルトは魔法師団に一度戻り、この国唯一の闇属性の魔法士がいるのでその方を捕まえてまたここに戻ると言って去っていった。

やっと部屋が静かになったヴィオラ達は、その後電池が切れたように夕食も食べずに寝落ちしてしまったのだ。



そして今に至る。




「───呪いをかけたのは、母上ですか?」


「・・・・・・・・・・・・そうだと思っている」


「何故?と聞いても?父上は理由に見当ついてるんですよね?」


「・・・・・・・・・・・・」


「お父様。私も知りたいです」


「・・・・・・・・わかった」




「本当は子供に聞かせたくないが・・・・」と前置きして、エイダンはマリーベルとの結婚、イザベラとの再婚にまつわる話をヴィオラ達に聞かせた。率直に言って気持ちのいい話ではなかった。


エイダンとマリーベルが婚約していた頃からイザベラが横恋慕していたこと。

ヴィオラ達が魔力判定で魔力無しと判定され、不貞を疑い夫婦関係が壊れていったこと。


そして父に信じてもらえず、絶望したまま生みの母マリーベルは亡くなり、愛する妻を失った父は自暴自棄になったこと。

その後、自暴自棄のままイザベラの求婚に応じてヴィオラ達の養育を押し付け、自分は王宮に逃げたこと。

そして、つい最近までヴィオラ達の事を妻の不貞で出来た子供だと思っていたこと。それらを謝罪を挟みながら話してくれた。


「つまり、母上が呪いをかけてまで魔力判定の偽証をしたのは、生みの母の不貞をでっちあげて父上との仲を壊すためだったと?」


「・・・・・たぶんな」

「・・・・・すごく下らなすぎて不愉快な理由ですね」


クリスフォードは心底軽蔑したような冷たい視線を父親に送り、どす黒いオーラを出している。

今思うと、時々こうして兄が黒く見えるのは闇属性の魔力を持ってるからなのだなと妙に納得した。


「何故そんな下らない理由で呪われなければならないんです?本当の母上も気の毒ですね。愛した夫がこんなに愚かな父親になるなんて思いもしかなったでしょう。ああ、やはり愚か者同士、今の母上とお似合いなんじゃないですか?」


「・・・っ、俺が愛してるのは今もマリーベルだけだ」


「だったら何で再婚したんですか。そこから既に間違いだらけなんですよ。何故そのとばっちりを受けて僕らが呪われ、虐げられなけらばならないんだ。何で常に死と隣り合わせで生きていかなくちゃならないんだ!理不尽だ!」


「・・・・・・・・・・・・」


クリスフォードの怒りは当然だ。

昨夜の魔法士団団長の話で、自分達がいつ魔力暴走を起こして死ぬかわからないと言われ、生まれてから今が1番死の恐怖を感じている。

この国に来たのは何とか生き延びる方法はないかと縋る思いで来たのに、その頼みの綱であるレオンハルトから死の宣告を受けたも同然なのだ。



───怖い。

───怖い。



自分の隣に座るクリスフォードの手を握る。

その体温からクリスフォードも同じく死への恐れを感じているのだと察した。


本当に理不尽だ。



でも理由を聞いて、あの人ならやりかねない。と納得してる自分もいる。


全てはイザベラがエイダンに恋をしたのが始まりだったのだ。

そんなに昔から父に絡みつき、執着してきたのかと思うと、あの人の狂愛にゾッとした。



だからといって父のした事を考えると同情する気にもならない。父もまた、私達に酷いことをしてきたのだから。

いくら不貞の子だと思って愛せなかったとしても、育児放棄していいという免罪符にはならない。血の繋がりは無くとも親の責任を果たしている人はいくらでもいるのだから。

ましてや父は当主だ。後継であるクリスフォードを守る立場にいるのだから。



ああ、本当に理不尽だ。



(何故私達なの。呪うならお父様にすればよかったじゃない)


そんな思いが込み上げる。



(怖いよルカ・・・・・・)






死にたくない。

またルカの元に、帰りたい───。
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