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りた

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まだ暑さの残る、ある9月の昼下がり。

「どういうことかご説明頂けますか、師匠せんせい

「?どういうこともなにも、先程説明した通りだ」

しれっとこちらの望まない返答をしてくる自身の恩師が憎らしい。
しかし無駄だとわかっていても反論してしまうのが人間というもの。

「しかし、せんせ──」
「これは命令だ」

どうして?急にこんな・・・

「ですが、私は・・・!」

つい声に焦りが出てしまう。

「ローゼンクロイツ魔法魔術学校は、我が国屈指の名門校。アメリア、君にもきっと学べることがあるだろう。・・・なんの不足がある?」

・・・たしかに、ローゼンクロイツは我がチェルノ王国で屈指の、いや、それどころか世界でも指折りの、トップを争えるほどの魔法学校と言っても過言じゃない。
まだまだ未熟な私には師匠の言う通り、学べることが沢山あるだろう。
だけど・・・

「不足、などありません、が・・・」

そもそも私はまだ学校に通える年齢じゃない。だけどこの様子だとそれを言っても無駄、かな。
はぁ・・・でも、また人と関わることになる。嫌だ・・・でも、でも・・・・・・

悶々としている私を見て、師匠がため息をついた。
ちらりと師匠を伺うとイライラしているのかまとってる色が灰色だ。
あ、やばい。やらかした?
びくりと肩を震わせる。

「何度も同じことを言わせるんじゃない。私の判断が間違っているとでも?それとも、私の命令が聞けないか?」

氷のごとくものすごく冷たい目で睨まれる。美人だからか迫力がすごい。
師匠の命令は絶対だ。わかってる。

「いえ、・・・申し訳ありません、生意気を言いました」
「・・・ならいい。では準備ができ次第ローゼンクロイツに向かいなさい。丁度今頃が入学式のはずだから、急いで準備を進めれば間に合うだろう。制服はあちらが用意してくださるそうだし、他に必要なものがあったら言いなさい」
「・・・・・・承知致しました」

感情を押し殺す。
滅多にしない師匠の命令だ、自分の心に何度も言い聞かせながら、私は師匠の書斎を後にし、私室として与えられている部屋へと向かった。


ローゼンクロイツにはたしかに憧れていた。

魔法という才能に恵まれた者のみが入学を許される完全実力主義の学校だ。高度な教育が生徒たちには保証される。
全寮制で、中でも成績優秀者には特別な処遇が与えられると聞く。
憧れてはいるが、だからといって行きたいかどうかはまた別の話だ。人と関わるのが苦手な私にとって学校は地獄、とまではいかないが、まあ、そのくらいの認識の場所なんだから。

恐怖を覚えるよ。

一瞬フラッシュバックしそうになった過去の記憶をなんとか心の奥底に閉じこめる。

嫌だなんだと言っていたってなにも変わらない。どんなに私が足掻いたって師匠の命令が変更されることなんて、まず有り得ない。
・・・・・・うん、関わっていかざるを得ない人たちがいい人だということを祈ろう。

命令は絶対。私の意思は反映されない。
そんなことがあったら、きっと次の日には小惑星でも落ちて来ちゃうだろうな。

うん、前向きに、前向きに。と思ってはみるけれど、やっぱり心は晴れなかった。
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