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第10章 日常の出来事
パパの風邪
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私が朝、起きると体が重かった。それだけではない。関節痛はするし寒気もする。熱も上がってきているようだ。ベッドから起き上がったらふらふらした。
(まずい。風邪でも引いたか・・・)
病気一つしたことがないのが自慢だった私もいよいよ風邪を引いたようだ。しかし寝てがいられない。結奈のために朝食を作らないと・・・。だが1階まで下りるのがやっとだった。
やがて結奈が降りてきた。キッチンの椅子に座り込んでいる私を見てびっくりしたようだった。
「パパ。どうしたの?」
「いや、ちょっと・・・」
私はそうしか答えられなかった。その様子を見て結奈は私が病気だとすぐにわかったようだ。
「パパ。病院に行ったら?」
「そうするよ。」
「じゃあ、寝てて。自分でパンを焼いていくから。」
「すまないね。」
それでも私はパンだけは焼いて出した。後は結奈の言葉に甘えて部屋に戻った。体温計で測ると39℃はある。
「こりゃ、だめだ。寝ておくか・・・」
職場に病欠の電話を入れて、ベッドに入った。そこからはよく覚えていない。ずっとおぼろげな意識の中で過去のことを再現しているような夢をずっと見ていた。
その中には理恵と結奈を3人で珍しく食卓を囲み、いろんな話をしていた夢もあった。仕事が忙しくあったが、たまに早く帰ることができれば家族3人で夜を楽しく過ごした。それが再び現実の出来事のように体験しているのだ。もちろん夢の中だから理恵が死んだことなどは忘れてしまっている。違和感などは全く覚えず、ただいつもの日常のように過ごしていた。
だが突然、視界から理恵の姿が消えた。
「ママが消えた!」
「本当だ! どこに行った?」
私と結奈は辺りを見渡して探し回った。しかし見つからない。忽然と消えているのだ。
「理恵! 理恵!」
私は思わず叫んでいた。言いようのない不安が私にのしかかってきていた。だがその時右手にぬくもりを感じた。それは安らぎを与えてくれるものだった。私は徐々に気を落ち着けた・・・。
気が付くと私は部屋で寝ていた。ほっと息をつくと人の気配を感じた。
「目が覚めたのですね。よく眠っていましたよ。」
それは理恵の声ではなかった。もちろん結奈の声でもない。顔を上げて見るとそれは山中先生だった。横には結奈が心配そうに見ていた。
「先生。どうして?」
「結奈さんが病気でパパが心配だというので見に来たのです。」
山中先生は笑顔で答えた。
「これはどうもすいません。」
そう言った私はまだ右手のぬくもりを感じていた。「えっ!」と思うと山中先生と結奈が手をつないでくれていたのだ。
「うなされていたから結奈さんが心配して…」
山中先生は恥ずかしそうに手を放した。
「ご気分はどうですか?」
「ええ、寝たら気分がよくなりました。」
熱も下がったようだ。元通りとはいかないが、朝より動けるようになっている。
「もう大丈夫です。わざわざ来ていただいてすいません。」
「いえ、いいんです。でもまだ無理しないでくださいね。それよりおかゆを作りましたからあとで食べてください。私はこれで・・・」
山中先生は帰って行った。結奈が先生を玄関まで送っていってからまた部屋に戻ってきた。
「パパ。元気になってよかった。」
「ああ。半日寝ていたら治ったよ。」
「でもママがいなかったらだめね。パパが理恵、理恵ってうなされていたもの。」
そう言って、結奈はいたずらっぽく笑ってまた部屋から出て行った。私はそのことを聞いて後ろめたい気持ちだった。死んだ妻の名前を呼びながら山中先生の手を握っていたのだから・・・。
その日の結奈の日記にはこう書かれていた。
『パパが病気になって昼間寝ていたんだよ。それで「理恵、理恵。」ってうなされていたんだ。やっぱりママがいなくてはだめだよ。夢の中でもいいからパパに会いに来てね。』
『パパは大丈夫よ。ずっとパパの心の中にはママがいるから・・・』
私はママの言葉をそう書いた。
(まずい。風邪でも引いたか・・・)
病気一つしたことがないのが自慢だった私もいよいよ風邪を引いたようだ。しかし寝てがいられない。結奈のために朝食を作らないと・・・。だが1階まで下りるのがやっとだった。
やがて結奈が降りてきた。キッチンの椅子に座り込んでいる私を見てびっくりしたようだった。
「パパ。どうしたの?」
「いや、ちょっと・・・」
私はそうしか答えられなかった。その様子を見て結奈は私が病気だとすぐにわかったようだ。
「パパ。病院に行ったら?」
「そうするよ。」
「じゃあ、寝てて。自分でパンを焼いていくから。」
「すまないね。」
それでも私はパンだけは焼いて出した。後は結奈の言葉に甘えて部屋に戻った。体温計で測ると39℃はある。
「こりゃ、だめだ。寝ておくか・・・」
職場に病欠の電話を入れて、ベッドに入った。そこからはよく覚えていない。ずっとおぼろげな意識の中で過去のことを再現しているような夢をずっと見ていた。
その中には理恵と結奈を3人で珍しく食卓を囲み、いろんな話をしていた夢もあった。仕事が忙しくあったが、たまに早く帰ることができれば家族3人で夜を楽しく過ごした。それが再び現実の出来事のように体験しているのだ。もちろん夢の中だから理恵が死んだことなどは忘れてしまっている。違和感などは全く覚えず、ただいつもの日常のように過ごしていた。
だが突然、視界から理恵の姿が消えた。
「ママが消えた!」
「本当だ! どこに行った?」
私と結奈は辺りを見渡して探し回った。しかし見つからない。忽然と消えているのだ。
「理恵! 理恵!」
私は思わず叫んでいた。言いようのない不安が私にのしかかってきていた。だがその時右手にぬくもりを感じた。それは安らぎを与えてくれるものだった。私は徐々に気を落ち着けた・・・。
気が付くと私は部屋で寝ていた。ほっと息をつくと人の気配を感じた。
「目が覚めたのですね。よく眠っていましたよ。」
それは理恵の声ではなかった。もちろん結奈の声でもない。顔を上げて見るとそれは山中先生だった。横には結奈が心配そうに見ていた。
「先生。どうして?」
「結奈さんが病気でパパが心配だというので見に来たのです。」
山中先生は笑顔で答えた。
「これはどうもすいません。」
そう言った私はまだ右手のぬくもりを感じていた。「えっ!」と思うと山中先生と結奈が手をつないでくれていたのだ。
「うなされていたから結奈さんが心配して…」
山中先生は恥ずかしそうに手を放した。
「ご気分はどうですか?」
「ええ、寝たら気分がよくなりました。」
熱も下がったようだ。元通りとはいかないが、朝より動けるようになっている。
「もう大丈夫です。わざわざ来ていただいてすいません。」
「いえ、いいんです。でもまだ無理しないでくださいね。それよりおかゆを作りましたからあとで食べてください。私はこれで・・・」
山中先生は帰って行った。結奈が先生を玄関まで送っていってからまた部屋に戻ってきた。
「パパ。元気になってよかった。」
「ああ。半日寝ていたら治ったよ。」
「でもママがいなかったらだめね。パパが理恵、理恵ってうなされていたもの。」
そう言って、結奈はいたずらっぽく笑ってまた部屋から出て行った。私はそのことを聞いて後ろめたい気持ちだった。死んだ妻の名前を呼びながら山中先生の手を握っていたのだから・・・。
その日の結奈の日記にはこう書かれていた。
『パパが病気になって昼間寝ていたんだよ。それで「理恵、理恵。」ってうなされていたんだ。やっぱりママがいなくてはだめだよ。夢の中でもいいからパパに会いに来てね。』
『パパは大丈夫よ。ずっとパパの心の中にはママがいるから・・・』
私はママの言葉をそう書いた。
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