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第8章 ストーカー
ストーカーの正体
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山中先生は署に相談に行ったようだ。担当の小川さんが話を聞いて、いろいろアドバイスした。だが相手がつかめず、被害もないため、まだ積極的な介入はできないとのことで、ただ警官の見回りを増やすしか・・・そうメールで送られてきた。あとは自分で身を守らねばならないようだ。
それから数日が過ぎた。山中先生の身に何事もなかったので私は安心していた。その矢先、いきなり私のスマホが鳴った。
「すいません。帰ろうとしたら学校の前に怪しい男が待っていて・・・」
「わかりました。すぐに行きます。」
私は帰宅する途中だったので、そのまま学校に急いだ。すると校門前にスーツ姿の若い男が立っていた。
(あの男か!)
やせ形で背筋がピンとのびている。眼鏡をかけているが、その奥の目は鋭い、その男は門の外からじっと校舎の方を見ていた。
「失礼ですが、あなたはどなたですか?」
私は声をかけた。
「いえ、ただ知り合いがここにいると思って・・・。失礼する。」
男はその場を立ち去ろうとした。逃がすものかと私はその男の前に立ちふさがった。
「何なんです!」
男が声を上げた。私は警察手帳を出した。こんなことをするのは久しぶりだった。
「お話を聞かせてください。」
だが男はひるまなかった。
「私にどんな要件ですか? ただ学校を見ていただけですよ。」
「これは職務質問です。質問にお答えいただけますか?」
私はすごみを聞かせた。しかしそれでも男はビビることはない。それどころか私に言った。
「それならばあなたの署と名前を聞かせてください。」
「瀬田署の藤田です。」
「瀬田署? それでは捜査課ではありませんね。そんなあなたが私をどうしようというのです?」
男はなぜか、いろいろと知っているようだった。だが私は引き下がらなかった。
「確かに今は総務課にいます。しかし警察官として当然の行為と思います。」
「そうですか。瀬田署の藤田さんですか。覚えておきましょう。」
男はニヤリと笑った。そして懐に手をやった。私は彼がナイフか拳銃でも出すのではないかと身構えた。
「県警本部付きの青山です。」
男は警察バッジを出した。彼は最近、県警本部に警視庁から研修で派遣されたキャリアの青山直樹警部補だった。うかつにも私は気付かなかったのだ。
「失礼しました。」
私はあわてて敬礼した。青山警部補は薄笑いを浮かべながら私を見ながら言った。
「じゃあ、行きたまえ。このことは秘密にしておいてくれ。それがお互いのためだ。」
その時、校舎からこっちに近づく人影があった。それは山中先生だった。
「直樹。あなただったのね!」
「おう、久しぶり。来たぜ。美南。」
2人は知り合いのようだった。だが険悪な雰囲気があった。
「もう私はあなたと関係がないのよ。」
「そんなこと言うなよ。せっかくここを研修に選んだんだから。」
「私に付きまとわないで!」
私にはわかった。青山警部補がストーカーの正体だった。多分、警察に相談に行ったのを知って自ら乗り込んできたのだろう。この場合は危険だ。私は青山警部補と山中先生の間に入った。
「失礼ですが、彼女は嫌がっています。もうお止めください。」
「これはプライベートのことだ。放っておいてもらおう。君は行きたまえ!」
青山警部補は強い口調で言った。しかし私は引き下がらなかった。
「いえ、行きません。あなたの行動は行き過ぎていると思います。もしこれ以上のことになれば応援を呼ばねばなりません。」
私は厳しい口調で言った。いくらキャリアでもこれは見過ごせない。青山警部補は私が毅然とした態度を取ったので、これ以上は面倒だとばかり、プイと行ってしまった。山中先生はホッとしたようでその場に座り込んだ。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ちょっと立ち眩みしただけ。ありがとうございます。直樹がストーカーだったなんて・・・」
「彼とは知り合いなんですね。」
「ええ、卒業まで付き合っていたんです。でも異常なほど束縛がしてきて怖くなって別れたんです。東京を離れて滋賀に来てやっと切れたと思ったのですが・・・ここまで追ってきていたなんて・・・」
山中先生の顔は青ざめていた。多分、無言電話などで精神的に追い詰められているのかもしれない。ストーカーの正体はわかったが、彼女をこのままにしておけない・・・と私は思った。
「私の家に避難してください。明日になってストーカーの担当者と相談しましょう。」
「えっ? いいのですか。」
「かまいません。いくらセキュリティーがしっかりしたマンションでも不安でしょう。」
私はそう判断してそれがいいと思った。だがよく考えて見ると、若い女性を子供もがいるとはいえ、家に泊めるというのは非常識かもしれない。だが
「お願いします。助かります。」
と山中先生は素直にその提案を受け入れた。私も(今回は非常事態だ。先生に危険が及ぶかもしれないから)と思い込むことにした。
それから数日が過ぎた。山中先生の身に何事もなかったので私は安心していた。その矢先、いきなり私のスマホが鳴った。
「すいません。帰ろうとしたら学校の前に怪しい男が待っていて・・・」
「わかりました。すぐに行きます。」
私は帰宅する途中だったので、そのまま学校に急いだ。すると校門前にスーツ姿の若い男が立っていた。
(あの男か!)
やせ形で背筋がピンとのびている。眼鏡をかけているが、その奥の目は鋭い、その男は門の外からじっと校舎の方を見ていた。
「失礼ですが、あなたはどなたですか?」
私は声をかけた。
「いえ、ただ知り合いがここにいると思って・・・。失礼する。」
男はその場を立ち去ろうとした。逃がすものかと私はその男の前に立ちふさがった。
「何なんです!」
男が声を上げた。私は警察手帳を出した。こんなことをするのは久しぶりだった。
「お話を聞かせてください。」
だが男はひるまなかった。
「私にどんな要件ですか? ただ学校を見ていただけですよ。」
「これは職務質問です。質問にお答えいただけますか?」
私はすごみを聞かせた。しかしそれでも男はビビることはない。それどころか私に言った。
「それならばあなたの署と名前を聞かせてください。」
「瀬田署の藤田です。」
「瀬田署? それでは捜査課ではありませんね。そんなあなたが私をどうしようというのです?」
男はなぜか、いろいろと知っているようだった。だが私は引き下がらなかった。
「確かに今は総務課にいます。しかし警察官として当然の行為と思います。」
「そうですか。瀬田署の藤田さんですか。覚えておきましょう。」
男はニヤリと笑った。そして懐に手をやった。私は彼がナイフか拳銃でも出すのではないかと身構えた。
「県警本部付きの青山です。」
男は警察バッジを出した。彼は最近、県警本部に警視庁から研修で派遣されたキャリアの青山直樹警部補だった。うかつにも私は気付かなかったのだ。
「失礼しました。」
私はあわてて敬礼した。青山警部補は薄笑いを浮かべながら私を見ながら言った。
「じゃあ、行きたまえ。このことは秘密にしておいてくれ。それがお互いのためだ。」
その時、校舎からこっちに近づく人影があった。それは山中先生だった。
「直樹。あなただったのね!」
「おう、久しぶり。来たぜ。美南。」
2人は知り合いのようだった。だが険悪な雰囲気があった。
「もう私はあなたと関係がないのよ。」
「そんなこと言うなよ。せっかくここを研修に選んだんだから。」
「私に付きまとわないで!」
私にはわかった。青山警部補がストーカーの正体だった。多分、警察に相談に行ったのを知って自ら乗り込んできたのだろう。この場合は危険だ。私は青山警部補と山中先生の間に入った。
「失礼ですが、彼女は嫌がっています。もうお止めください。」
「これはプライベートのことだ。放っておいてもらおう。君は行きたまえ!」
青山警部補は強い口調で言った。しかし私は引き下がらなかった。
「いえ、行きません。あなたの行動は行き過ぎていると思います。もしこれ以上のことになれば応援を呼ばねばなりません。」
私は厳しい口調で言った。いくらキャリアでもこれは見過ごせない。青山警部補は私が毅然とした態度を取ったので、これ以上は面倒だとばかり、プイと行ってしまった。山中先生はホッとしたようでその場に座り込んだ。
「大丈夫ですか?」
「ええ、ちょっと立ち眩みしただけ。ありがとうございます。直樹がストーカーだったなんて・・・」
「彼とは知り合いなんですね。」
「ええ、卒業まで付き合っていたんです。でも異常なほど束縛がしてきて怖くなって別れたんです。東京を離れて滋賀に来てやっと切れたと思ったのですが・・・ここまで追ってきていたなんて・・・」
山中先生の顔は青ざめていた。多分、無言電話などで精神的に追い詰められているのかもしれない。ストーカーの正体はわかったが、彼女をこのままにしておけない・・・と私は思った。
「私の家に避難してください。明日になってストーカーの担当者と相談しましょう。」
「えっ? いいのですか。」
「かまいません。いくらセキュリティーがしっかりしたマンションでも不安でしょう。」
私はそう判断してそれがいいと思った。だがよく考えて見ると、若い女性を子供もがいるとはいえ、家に泊めるというのは非常識かもしれない。だが
「お願いします。助かります。」
と山中先生は素直にその提案を受け入れた。私も(今回は非常事態だ。先生に危険が及ぶかもしれないから)と思い込むことにした。
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