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第8章 ストーカー
不気味な道
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それは珍しく残業で遅くなった日だった。それも夕食の買い物をしてすっかり遅くなってしまった。
(結奈がお腹を空かして待っている。早く帰ってやらないと・・・)
そこで普段は通らない近道をすることにした。鬱蒼とした木々の間を進んでいく。そこは人通りも少なく電灯もあまりない暗い道で、昼間通って気味が悪いのに夜ならなおさら不気味だった。しかも横手に墓地まで見える。さすがの私もいつもはそこを避けている。
(今日だけだ・・・今日だけだ・・・何もない・・・)
なぜかそう思いながら家路を急いでいた。すると後ろから足音が聞こえる。
(誰かが歩いてくる。それも早足で・・・)
いつもなら気にしなかったのかもしれないが、今日は不気味に感じていた。私も追いつかれないように早足になった。しかし後ろからの足音はもっと早くなり、駆け足になっていた。
(お、追いつかれる・・・)
人間だったら怖くもないが、もし幽霊だったらどうしよう・・・いい大人がそう考えていた。こうなったら・・・私は逃げようと思った。その足音は間近まで迫っていたのを感じていたから・・・。
「藤田さん。」
それは若い女性の声だった。私は一瞬、ぞくっとしたがその声には聞き覚えがあった。私は振り返った。
「山中先生!」
それは結奈の担任の山中先生だった。彼女は小走りで追いかけてきたせいか、息が乱れている。
「どうしたんですか?」
「今日は遅くなってしまって・・・でもいつものように誰かにつけられている気がしたんです。怖くなってしまって。」
「いつものように?」
私はふっと頭に浮かんだ。それはストーカーではないかと。それならば彼女の身が危ない可能性がある。
「ええ、このところ誰かにつけられているような・・・。それだけじゃないんです。郵便物が荒らされていたり、無言電話がかかってきたり・・・」
まさにそれはストーカーの仕業と思われた。
「ちょうど藤田さんの姿が見えたから追いかけたらここまで来てしまって・・・」
私が彼女を危ない道に引っ張ってしまったようだった。
「とにかくご自宅まで送りましょう。」
一度、山中先生を送ったことがあるから場所は覚えていた。あのマンションならセキュリティーはしっかりしているから安心だろう。
「警察に相談された方がいいですよ。ストーカーに対してはちゃんと対処ができるようになっていますから。」
「ええ、そうします。毎日が怖いですから。」
別れ際にそう伝えた。マンションに入って行く彼女を見送った後、私は辺りを見渡した。
(やはり誰か見ている。)
私も何者かの視線を感じていた。だがそれが何者ものなのか、どこから見ているのかはわからない。署のストーカー対策の専門家の意見を聞いた方がいいようだ。
家に帰ると結奈が待っていた。
「パパ。遅い!」
「ごめんね。途中で山中先生に会ったんだ。暗くて危ないからマンションまで送っていったんだよ。」
「ふ~ん。それだけ?」
「それだけだよ。どうして?」
「だってパパ、怪しいんだもの。」
どうも結奈は私が山中先生に下心があると思っているようだ。あの初詣の一件から。まだ9歳なのにませているのか・・・。
「そんなこと言うなよ。ママの前で。それよりご飯にしよう。今日は買ってきたおかずだけど我慢してね。」
「は~い。」
それきり山中先生の話は出なかった。ママの写真のある前でそんなことを言ってはいけないと思ったのか・・・。
だがそうではなかった。結奈の日記にはちゃんと書かれてあった。
『ママ。聞いて。パパが浮気しそうだよ。山中先生に気があるようなの。怒ってあげて。』
これにはまいった。ママの言葉をどうやって書こうかと頭を悩ました。あまりにかばいすぎると私が書いていることがばれてしまう。こんな時、理恵なら・・・いや、思い出そうとしてもそんなことはなかったし、考えられなかった。これはまずいかなと思いつつ、やっとのことで書いた。
『パパは私たちのパパよ。でも警察官だからみんなを守っているのよ。もちろん山中先生も。誤解しないで見ていてあげて。』
(結奈がお腹を空かして待っている。早く帰ってやらないと・・・)
そこで普段は通らない近道をすることにした。鬱蒼とした木々の間を進んでいく。そこは人通りも少なく電灯もあまりない暗い道で、昼間通って気味が悪いのに夜ならなおさら不気味だった。しかも横手に墓地まで見える。さすがの私もいつもはそこを避けている。
(今日だけだ・・・今日だけだ・・・何もない・・・)
なぜかそう思いながら家路を急いでいた。すると後ろから足音が聞こえる。
(誰かが歩いてくる。それも早足で・・・)
いつもなら気にしなかったのかもしれないが、今日は不気味に感じていた。私も追いつかれないように早足になった。しかし後ろからの足音はもっと早くなり、駆け足になっていた。
(お、追いつかれる・・・)
人間だったら怖くもないが、もし幽霊だったらどうしよう・・・いい大人がそう考えていた。こうなったら・・・私は逃げようと思った。その足音は間近まで迫っていたのを感じていたから・・・。
「藤田さん。」
それは若い女性の声だった。私は一瞬、ぞくっとしたがその声には聞き覚えがあった。私は振り返った。
「山中先生!」
それは結奈の担任の山中先生だった。彼女は小走りで追いかけてきたせいか、息が乱れている。
「どうしたんですか?」
「今日は遅くなってしまって・・・でもいつものように誰かにつけられている気がしたんです。怖くなってしまって。」
「いつものように?」
私はふっと頭に浮かんだ。それはストーカーではないかと。それならば彼女の身が危ない可能性がある。
「ええ、このところ誰かにつけられているような・・・。それだけじゃないんです。郵便物が荒らされていたり、無言電話がかかってきたり・・・」
まさにそれはストーカーの仕業と思われた。
「ちょうど藤田さんの姿が見えたから追いかけたらここまで来てしまって・・・」
私が彼女を危ない道に引っ張ってしまったようだった。
「とにかくご自宅まで送りましょう。」
一度、山中先生を送ったことがあるから場所は覚えていた。あのマンションならセキュリティーはしっかりしているから安心だろう。
「警察に相談された方がいいですよ。ストーカーに対してはちゃんと対処ができるようになっていますから。」
「ええ、そうします。毎日が怖いですから。」
別れ際にそう伝えた。マンションに入って行く彼女を見送った後、私は辺りを見渡した。
(やはり誰か見ている。)
私も何者かの視線を感じていた。だがそれが何者ものなのか、どこから見ているのかはわからない。署のストーカー対策の専門家の意見を聞いた方がいいようだ。
家に帰ると結奈が待っていた。
「パパ。遅い!」
「ごめんね。途中で山中先生に会ったんだ。暗くて危ないからマンションまで送っていったんだよ。」
「ふ~ん。それだけ?」
「それだけだよ。どうして?」
「だってパパ、怪しいんだもの。」
どうも結奈は私が山中先生に下心があると思っているようだ。あの初詣の一件から。まだ9歳なのにませているのか・・・。
「そんなこと言うなよ。ママの前で。それよりご飯にしよう。今日は買ってきたおかずだけど我慢してね。」
「は~い。」
それきり山中先生の話は出なかった。ママの写真のある前でそんなことを言ってはいけないと思ったのか・・・。
だがそうではなかった。結奈の日記にはちゃんと書かれてあった。
『ママ。聞いて。パパが浮気しそうだよ。山中先生に気があるようなの。怒ってあげて。』
これにはまいった。ママの言葉をどうやって書こうかと頭を悩ました。あまりにかばいすぎると私が書いていることがばれてしまう。こんな時、理恵なら・・・いや、思い出そうとしてもそんなことはなかったし、考えられなかった。これはまずいかなと思いつつ、やっとのことで書いた。
『パパは私たちのパパよ。でも警察官だからみんなを守っているのよ。もちろん山中先生も。誤解しないで見ていてあげて。』
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