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第7章 2月
バレンタインデー
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今日は2月14日だ。世間はバレンタインデーということだが、私にはあまり関係がない。義理チョコをもらうのがせいぜいか・・・。
ところが結奈は日記にびっくりしたことを書いていた。
『もうすぐバレンタインデーだよ。私は手作りのチョコレートをあげようと思った。そこでチョコレート作りにために留美ちゃんの家にみんなで集まった。みんなで買ったチョコレートを溶かして型に入れて箱に詰めた。留美ちゃんのお母さんが手伝ってくれたからうまくいった。そこで密かにだれに渡すかを聞いた。留美ちゃんは山口君に、陽菜ちゃんは竹田君に、美穂ちゃんは古賀君にあげるようだ。「結奈ちゃんはだれにあげるの?」と聞かれたけど「ないしょ」と答えておいた。ママにもないしょよ。』
結奈がチョコレートをあげる相手がいる・・・そう思うと、私は無性に腹が立ってきた。それはどんな奴だ? まさかふざけた奴じゃないだろうな!・・・などと言いたくなる。バレンタインデーにチョコレートを渡す男の子がいるくらいなんでもないと思おうとするが、やはり許せない。
だがその私の心のままに日記にママの返事を書いたら大変だ。私は深呼吸して気を落ち着けてから書いた。
『結奈が誰に渡すか、ママは楽しみだわ。また教えてね・・・』
当たり障りのないことを取り敢えず書いた。さて、とにかく結奈がチョコレートを渡す相手をどう探そうか・・・。
私はその日、気が気でなかった。職場で義理チョコをたくさんもらったが、そんなことより結奈の作ったチョコレートの行方が気になった。
(山中先生にメールで聞いてみるか・・・いやいや、そんなことを聞くわけにはいかない。)
私はもやもやした気持ちで家に帰った。すると結奈が笑顔で迎えてくれた。
「パパ。お帰り。」
「ただいま。何か、うれしそうだね。」
「パパ、わかる?」
結奈は意味ありげに言う。そして私が持っている紙袋を奪い取って中のものをテーブルにぶちまけた。それは職場の女性陣からもらった義理チョコだった。
「パパ、すごい。もてるのね。」
「そうだろう! パパは人気があるんだ。」
私はそう見栄を張った。しかし結奈には見抜かれていた。
「嘘! みんな義理チョコでしょ。でもおいしそう。結奈がもらうわ。」
「ああ、いいよ。食べ過ぎないようにね。」
結奈はいつになく上機嫌だ。もしかしたらバレンタインデーで本命の男の子に渡してうまくいったのかもしれない・・・結奈に聞けばはっきりするかもしれないが、もしそうなら私の心の動揺はとんでもないことになる。だからそれはじっと我慢する。
しかし聞きたいという誘惑は何よりも強かった。夕食の時、結奈は友達の留美ちゃんたちが男の子にチョコレートを渡した話をしていた。私は話しを聞きながら、何気なく結奈に聞いた。
「結奈は誰かに渡したの?」
「私? 私もみんなと集まって留美ちゃんちでチョコレーを作ったのよ。」
その先を聞きたいような、聞きたくないような・・・。
「渡す相手は決まっているよ!」
私は絶望的な気持ちに襲われた。これが結婚で相手の男に娘を取られる父の心境と同じなのだろうか・・・。
結奈は椅子から降りるとリビングの隅に隠してあった包みを私に差し出した。
「それはパパだよ!」
「そうか! パパにくれるのか!」
私は飛び上がりたいくらいうれしかった。結奈が私のためにチョコレートを手作りしていたなんて・・・。
「去年はママと作ったのだけど、今年は留美ちゃんのお母さんに手伝ってもらって作ったの。」
そう言えば去年は理恵とママからチョコレートをもらった。その時はあまり感動しなかったが、今年は大いにうれしい。
「結奈のチョコだ! 結奈のチョコだ!」
私は年がいもなくはしゃいでいた。
ところが結奈は日記にびっくりしたことを書いていた。
『もうすぐバレンタインデーだよ。私は手作りのチョコレートをあげようと思った。そこでチョコレート作りにために留美ちゃんの家にみんなで集まった。みんなで買ったチョコレートを溶かして型に入れて箱に詰めた。留美ちゃんのお母さんが手伝ってくれたからうまくいった。そこで密かにだれに渡すかを聞いた。留美ちゃんは山口君に、陽菜ちゃんは竹田君に、美穂ちゃんは古賀君にあげるようだ。「結奈ちゃんはだれにあげるの?」と聞かれたけど「ないしょ」と答えておいた。ママにもないしょよ。』
結奈がチョコレートをあげる相手がいる・・・そう思うと、私は無性に腹が立ってきた。それはどんな奴だ? まさかふざけた奴じゃないだろうな!・・・などと言いたくなる。バレンタインデーにチョコレートを渡す男の子がいるくらいなんでもないと思おうとするが、やはり許せない。
だがその私の心のままに日記にママの返事を書いたら大変だ。私は深呼吸して気を落ち着けてから書いた。
『結奈が誰に渡すか、ママは楽しみだわ。また教えてね・・・』
当たり障りのないことを取り敢えず書いた。さて、とにかく結奈がチョコレートを渡す相手をどう探そうか・・・。
私はその日、気が気でなかった。職場で義理チョコをたくさんもらったが、そんなことより結奈の作ったチョコレートの行方が気になった。
(山中先生にメールで聞いてみるか・・・いやいや、そんなことを聞くわけにはいかない。)
私はもやもやした気持ちで家に帰った。すると結奈が笑顔で迎えてくれた。
「パパ。お帰り。」
「ただいま。何か、うれしそうだね。」
「パパ、わかる?」
結奈は意味ありげに言う。そして私が持っている紙袋を奪い取って中のものをテーブルにぶちまけた。それは職場の女性陣からもらった義理チョコだった。
「パパ、すごい。もてるのね。」
「そうだろう! パパは人気があるんだ。」
私はそう見栄を張った。しかし結奈には見抜かれていた。
「嘘! みんな義理チョコでしょ。でもおいしそう。結奈がもらうわ。」
「ああ、いいよ。食べ過ぎないようにね。」
結奈はいつになく上機嫌だ。もしかしたらバレンタインデーで本命の男の子に渡してうまくいったのかもしれない・・・結奈に聞けばはっきりするかもしれないが、もしそうなら私の心の動揺はとんでもないことになる。だからそれはじっと我慢する。
しかし聞きたいという誘惑は何よりも強かった。夕食の時、結奈は友達の留美ちゃんたちが男の子にチョコレートを渡した話をしていた。私は話しを聞きながら、何気なく結奈に聞いた。
「結奈は誰かに渡したの?」
「私? 私もみんなと集まって留美ちゃんちでチョコレーを作ったのよ。」
その先を聞きたいような、聞きたくないような・・・。
「渡す相手は決まっているよ!」
私は絶望的な気持ちに襲われた。これが結婚で相手の男に娘を取られる父の心境と同じなのだろうか・・・。
結奈は椅子から降りるとリビングの隅に隠してあった包みを私に差し出した。
「それはパパだよ!」
「そうか! パパにくれるのか!」
私は飛び上がりたいくらいうれしかった。結奈が私のためにチョコレートを手作りしていたなんて・・・。
「去年はママと作ったのだけど、今年は留美ちゃんのお母さんに手伝ってもらって作ったの。」
そう言えば去年は理恵とママからチョコレートをもらった。その時はあまり感動しなかったが、今年は大いにうれしい。
「結奈のチョコだ! 結奈のチョコだ!」
私は年がいもなくはしゃいでいた。
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