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第2章 事件
学校での結奈
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結奈は学校でも元気がなかったようだ。それを心配して彼女の担任の山中先生に密かに呼び出された。仕事を早引きして小学校に行くと、静まり返った校舎にただ職員室の電気だけが寂し気に点いていた。校長先生と山中先生が迎えてくれて私は校長室に通された。校長先生は人のいい温和な老人という風だった。山中先生はまだ大学を出たばかりの若い女性だが、細い眼鏡をかけてきりりとしていた。
「色々大変だったでしょう。」
「ええ、まあ。私の母が来てくれたので助かってはいますが、このままではいけないと・・・」
私は困っている日常の生活について話すと、校長先生はうなずきながら聞いてくれていた。だがなかなか本題に進まないので山中先生が話しに割り込んできた。
「結奈さんのことですが・・・」
「あっ、すいません。つまらないことを長々と話してしまって・・・」
確かに今日は私の愚痴を言いに来たのではなかった。結奈のことで来たのだ。
「結奈さんは元気がないようです。以前なら周りを明るくするくらい元気だったのに。家でもそうなのですか?」
「はい。・・・」
私は家での結奈の様子を話した。寂し気にソファに座っているか、自分の部屋に閉じこもっている。以前のように私とも話そうとしないことなど・・・。山中先生はメモを取りながら聞いていた。しかしアドバイス的なことは何も言ってくれなかった。私は山中先生が何か結奈が元気が出るようなアドバイスをしてくれるのかと期待していたが、彼女はただ聞いているだけだった。だから私の方から尋ねてみた。
「困ってしまいまして・・・。どうしたらいいのでしょうか?」
「家族の、お父様の温かい・・・愛情をこめて・・・」
山中先生は話し出したが、それは教科書的なアドバイスだった。それではよくわからなかった。
「具体的にどうすればいいのでしょうか?」
「それは・・・」
山中先生は返事に困っていた。多分、彼女の人生経験ではそこまでなのだろう。横から校長先生がにこやかに言った。
「お子さんをよく見てあげることです。どういうことを思っているのかを知るのは重要なことです。まずそこから始められては。」
確かにそうだ。今まで妻に任せっきりで結奈のことを多く知っているわけでもない。妻が死んでからも自分のことで精いっぱいで、結奈のそばにずっといたことはなかった。
「やってみます。ありがとうございました。」
「学校側もできるだけサポートします。だから焦らずに。」
「結奈さんのことはよく注意して見てみます。もし必要なことがありましたらメールでお知らせします。」
校長先生と山中先生はそう言ってくれた。
家に帰ると結奈はやはり寂しそうにソファに座っていた。
(これからは結奈と向かい合って生きよう。それが今まで何もしてやれなかった償いだ。)
私はそう思った。母も気にしてこの家に来てくれているがいつまでも甘えてはいられない。店をしている母もいつまでも閉めたままにしているわけにもいかない。私はその日、決心した。
「色々大変だったでしょう。」
「ええ、まあ。私の母が来てくれたので助かってはいますが、このままではいけないと・・・」
私は困っている日常の生活について話すと、校長先生はうなずきながら聞いてくれていた。だがなかなか本題に進まないので山中先生が話しに割り込んできた。
「結奈さんのことですが・・・」
「あっ、すいません。つまらないことを長々と話してしまって・・・」
確かに今日は私の愚痴を言いに来たのではなかった。結奈のことで来たのだ。
「結奈さんは元気がないようです。以前なら周りを明るくするくらい元気だったのに。家でもそうなのですか?」
「はい。・・・」
私は家での結奈の様子を話した。寂し気にソファに座っているか、自分の部屋に閉じこもっている。以前のように私とも話そうとしないことなど・・・。山中先生はメモを取りながら聞いていた。しかしアドバイス的なことは何も言ってくれなかった。私は山中先生が何か結奈が元気が出るようなアドバイスをしてくれるのかと期待していたが、彼女はただ聞いているだけだった。だから私の方から尋ねてみた。
「困ってしまいまして・・・。どうしたらいいのでしょうか?」
「家族の、お父様の温かい・・・愛情をこめて・・・」
山中先生は話し出したが、それは教科書的なアドバイスだった。それではよくわからなかった。
「具体的にどうすればいいのでしょうか?」
「それは・・・」
山中先生は返事に困っていた。多分、彼女の人生経験ではそこまでなのだろう。横から校長先生がにこやかに言った。
「お子さんをよく見てあげることです。どういうことを思っているのかを知るのは重要なことです。まずそこから始められては。」
確かにそうだ。今まで妻に任せっきりで結奈のことを多く知っているわけでもない。妻が死んでからも自分のことで精いっぱいで、結奈のそばにずっといたことはなかった。
「やってみます。ありがとうございました。」
「学校側もできるだけサポートします。だから焦らずに。」
「結奈さんのことはよく注意して見てみます。もし必要なことがありましたらメールでお知らせします。」
校長先生と山中先生はそう言ってくれた。
家に帰ると結奈はやはり寂しそうにソファに座っていた。
(これからは結奈と向かい合って生きよう。それが今まで何もしてやれなかった償いだ。)
私はそう思った。母も気にしてこの家に来てくれているがいつまでも甘えてはいられない。店をしている母もいつまでも閉めたままにしているわけにもいかない。私はその日、決心した。
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