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第1章 結奈と私の今
総務課警察官
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結奈が出かけた後、私も後片付けをして仕事に出かけた。それに天気がいいから洗濯までして干してきたのだ。日常の家事はもう苦痛ではない。それどころかそこらの主婦には負けないほどの手際の良さだと思っている。
私の職場は瀬田署の総務課だ。一般的な事務業務を行っている。1年前にこの課の主任としていきなりやってきて、最初は役立たずのお荷物扱いだった。私自身も上司や部下に迷惑をかけて誠に申し訳ないと思っていたほどだ。それがやっと最近になってやっとすべての仕事をこなせるようになった。仕事と家事の二刀流・・・と言えば言い過ぎかもしれないが、自分ながらよくやっていると思っている。
この総務課は、以前の部署と違って日中は忙しいものの夜遅くまで残業ということは少ない。また子供のことでどうしてもという時は、早退や欠勤することもある程度できた。ここは女性の職員、とりわけ主婦が多かったので、お互いに助け合ってカバーしているのだ。この課の人たちに私の家庭事情を理解していただいていることもあって、私も大いに助けられたことがよくあった。それに主婦はいろんなことを知っている。
「あそこのスーパーで特売の肉はおいしいわよ。」
「手提げ袋の作り方はね・・・」
「ミシンでこんなものができるのよ。」
「クッキーが簡単に焼けるのよ。」
家事をするのも情報が大事だ。今まで何もしてこなかったのがおかしいのだが、今からでも十分間に合う。私は結奈と暮らしていくために妻の分まで頑張らねばならない。
総務課には様々な書類が回ってくる。それに目を通し、ハンコを押していく。以前は私服で外での仕事が多かった。聞き込みや現場検証、時には走って犯人を追いつめることもあった。だが最近は一日中、窮屈な制服を着て事務仕事をしている。体がなまってしまうのはもちろんだが、刑事としての勘も鈍ってしまう気がして心配をしている・・・そう思うのは、この職場にいながらも私はまだ捜査課に未練があるのかもしれない。
今日は捜査課の倉田班長が総務課に顔を出してくれた。彼は前にいた捜査課の上司だった。転属して1年過ぎても、私のことを心配して時々、足を運んでくれていた。それにあの事件のことについても・・・。
「藤田。こうして見るとその仕事ぶりも板についてきたな。もう刑事には見えないな。」
倉田班長は冗談めかして言った。班長は私にとって刑事としてのすべてのことを叩き込んでもらった恩人だ。あの事件以来、さらに親身になって相談に乗っていただいた。
「おかげさまで。班長。今日は?」
「いや、近くまで来たんだから、ちょっと寄ってみた。それに耳に入れておきたいことがあって・・・」
班長の目が一瞬、鋭くなった。事件のことで何か動きがあったようだ。
「これはまだ確かでないが、今日の路上の刺殺事件。あの事件の犯人かもしれない。」
「えっ!」
倉田班長の言葉に私はビクッと反応した。そう言えば今日はお弁当作りで朝からバタバタしていて新聞を読んでいなかった。また事件が起こったのだ。私の脳裏にはあの事件のことが鮮明に浮かび上がっていた。そしてあの時のことも・・・私は知らず知らずに拳をギュッと強く握りしめていた。
(やっと犯人が姿を現した。私が・・・)
私は今にも飛び出して行きたい衝動にかられた。だが倉田班長はそれを押さえるように言った。
「犯人はまた動く。今度こそ奴を逮捕する。見ていてくれ!」
倉田班長は私の方をポンと叩いてそのまま出て行った。あの事件を忘れたことはない。何度もこの手で犯人を・・・と思ったことか。しかし当時の私も、今の私もそれをすることはできない。悔しいが班長達に託すことしかないのだ。私はため息をついてまた仕事に戻った。私の机には書類が山のように積まれていた。今日はこれを処理しなければ・・・。
私の職場は瀬田署の総務課だ。一般的な事務業務を行っている。1年前にこの課の主任としていきなりやってきて、最初は役立たずのお荷物扱いだった。私自身も上司や部下に迷惑をかけて誠に申し訳ないと思っていたほどだ。それがやっと最近になってやっとすべての仕事をこなせるようになった。仕事と家事の二刀流・・・と言えば言い過ぎかもしれないが、自分ながらよくやっていると思っている。
この総務課は、以前の部署と違って日中は忙しいものの夜遅くまで残業ということは少ない。また子供のことでどうしてもという時は、早退や欠勤することもある程度できた。ここは女性の職員、とりわけ主婦が多かったので、お互いに助け合ってカバーしているのだ。この課の人たちに私の家庭事情を理解していただいていることもあって、私も大いに助けられたことがよくあった。それに主婦はいろんなことを知っている。
「あそこのスーパーで特売の肉はおいしいわよ。」
「手提げ袋の作り方はね・・・」
「ミシンでこんなものができるのよ。」
「クッキーが簡単に焼けるのよ。」
家事をするのも情報が大事だ。今まで何もしてこなかったのがおかしいのだが、今からでも十分間に合う。私は結奈と暮らしていくために妻の分まで頑張らねばならない。
総務課には様々な書類が回ってくる。それに目を通し、ハンコを押していく。以前は私服で外での仕事が多かった。聞き込みや現場検証、時には走って犯人を追いつめることもあった。だが最近は一日中、窮屈な制服を着て事務仕事をしている。体がなまってしまうのはもちろんだが、刑事としての勘も鈍ってしまう気がして心配をしている・・・そう思うのは、この職場にいながらも私はまだ捜査課に未練があるのかもしれない。
今日は捜査課の倉田班長が総務課に顔を出してくれた。彼は前にいた捜査課の上司だった。転属して1年過ぎても、私のことを心配して時々、足を運んでくれていた。それにあの事件のことについても・・・。
「藤田。こうして見るとその仕事ぶりも板についてきたな。もう刑事には見えないな。」
倉田班長は冗談めかして言った。班長は私にとって刑事としてのすべてのことを叩き込んでもらった恩人だ。あの事件以来、さらに親身になって相談に乗っていただいた。
「おかげさまで。班長。今日は?」
「いや、近くまで来たんだから、ちょっと寄ってみた。それに耳に入れておきたいことがあって・・・」
班長の目が一瞬、鋭くなった。事件のことで何か動きがあったようだ。
「これはまだ確かでないが、今日の路上の刺殺事件。あの事件の犯人かもしれない。」
「えっ!」
倉田班長の言葉に私はビクッと反応した。そう言えば今日はお弁当作りで朝からバタバタしていて新聞を読んでいなかった。また事件が起こったのだ。私の脳裏にはあの事件のことが鮮明に浮かび上がっていた。そしてあの時のことも・・・私は知らず知らずに拳をギュッと強く握りしめていた。
(やっと犯人が姿を現した。私が・・・)
私は今にも飛び出して行きたい衝動にかられた。だが倉田班長はそれを押さえるように言った。
「犯人はまた動く。今度こそ奴を逮捕する。見ていてくれ!」
倉田班長は私の方をポンと叩いてそのまま出て行った。あの事件を忘れたことはない。何度もこの手で犯人を・・・と思ったことか。しかし当時の私も、今の私もそれをすることはできない。悔しいが班長達に託すことしかないのだ。私はため息をついてまた仕事に戻った。私の机には書類が山のように積まれていた。今日はこれを処理しなければ・・・。
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