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第1章 結奈と私の今
ママの返事
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空は晴れ渡っていた。開けた窓からキッチンにそよそよと風が吹き込んでくる。さわやかな朝を迎えていた。私はいつもより早起きして娘のお弁当を作っていた。小学3年生だが、いろいろ注文がうるさい。でも私はそれを喜んで引き受ける。
「トントントン・・・」
せわしない音が聞こえてきた。2階の娘の結奈の足音だ。喜び勇んで飛ぶように階段を駆け下りてくる。
「パパ、おはよう!」
元気な声を出して結奈が顔を出す。そこにはあふれんばかりの笑顔があった。
「おはよう! 今日はウキウキだね。」
私はお弁当を詰めながら結奈に言った。
「もちろんよ! 今日は遠足なんだから! ほら! 見て!」
結奈は窓の外を指さした。そこには雲一つない空が広がっていた。
「ママがね。晴れにしてくれたのよ!」
結奈は私に言った。確かにそうだった。昨日の天気予報では雨だった。だが予報が外れて今日は快晴になった。絶好の遠足日和だ。
「よかったね。」
「うん! 日記に書いたのよ。ママがお願いを聞いてくれたのよ。」
結奈はそう言ってお弁当をのぞきこんだ。
「卵焼きにソーセージ、から揚げにコロッケか! まあ、パパにしてはがんばったね。」
今日は結奈の遠足だということで私は早起きしてお弁当をこしらえた。普段は給食なのだが、今日はお弁当を持っていかなくてはいけない。友達と見せ合いっこするようだから、無様なお弁当を持たすわけにはいかない。なんとかがんばって作り上げた。素晴らしいとは言えないが、そこそこには仕上がっただろう。本当なら結奈が好きなキャラクターを模したキャラ弁を作りたがったが、私にはハードルが高すぎた。慣れない家事も最近ではなんとか、こなせるようにはなっていた。
「さあ、早くしないと遅れるよ。」
「はあい!」
結奈は身支度をしに行った。その間に私はパンを焼き、朝食の準備をする。それはもう手慣れたものだ。この一年で結奈も身支度など一人で色々なことができるようになり、お手伝いまでしてくれるようになった。
テーブルの上に朝食を並び終えると、結奈が来た。その手には大きな日記帳を抱えている。
「これを見て! 昨日、ママにお願いしたのよ!」
結奈が広げた日記帳は昨日の日付のページだった。そこには子供の字で一日の出来事が書かれていた。そしてその末尾には、
『あしたは遠足でそうごう公園に行くの。たのしみだけど天気がどうかな。どうか晴れにして。ママ。』
と書かれてあった。確かに昨日の夜、窓から空を見て、
「晴れにならないかな。」
とつぶやきながら、てるてる坊主をつるしていた。それだけでなくママにもお願いしていたようだ。その結奈の文字の後には大人の字で書かれていた。
『それはたのしみね。あしたは結奈のために晴れにしてあげる。かえってきたらママに教えてね。』
結奈は毎日、日記を書いていた。そしてその後には必ず。言葉が添えられていた。ママからの・・・。私はうなずきながら結奈に言った。
「よかったね。それじゃあ、また日記に遠足のことを書くんだよ。ママが喜ぶよ。」
「うん! 行ってきます!」
結奈は飛び出すように元気に出かけて行った。そんな結奈を見て私はうれしかった。1年前は暗い顔をして淋しそうだったのに・・・。私はキッチンに飾られている妻の理恵の写真を見た。
「結奈は元気だよ。あの日記のおかげで・・・。君の代わりだけど・・・。」
写真の理恵は何か微笑んでいるように見えた。彼女はいつもそうやって私と結奈を見守ってくれているのかもしれない。
「トントントン・・・」
せわしない音が聞こえてきた。2階の娘の結奈の足音だ。喜び勇んで飛ぶように階段を駆け下りてくる。
「パパ、おはよう!」
元気な声を出して結奈が顔を出す。そこにはあふれんばかりの笑顔があった。
「おはよう! 今日はウキウキだね。」
私はお弁当を詰めながら結奈に言った。
「もちろんよ! 今日は遠足なんだから! ほら! 見て!」
結奈は窓の外を指さした。そこには雲一つない空が広がっていた。
「ママがね。晴れにしてくれたのよ!」
結奈は私に言った。確かにそうだった。昨日の天気予報では雨だった。だが予報が外れて今日は快晴になった。絶好の遠足日和だ。
「よかったね。」
「うん! 日記に書いたのよ。ママがお願いを聞いてくれたのよ。」
結奈はそう言ってお弁当をのぞきこんだ。
「卵焼きにソーセージ、から揚げにコロッケか! まあ、パパにしてはがんばったね。」
今日は結奈の遠足だということで私は早起きしてお弁当をこしらえた。普段は給食なのだが、今日はお弁当を持っていかなくてはいけない。友達と見せ合いっこするようだから、無様なお弁当を持たすわけにはいかない。なんとかがんばって作り上げた。素晴らしいとは言えないが、そこそこには仕上がっただろう。本当なら結奈が好きなキャラクターを模したキャラ弁を作りたがったが、私にはハードルが高すぎた。慣れない家事も最近ではなんとか、こなせるようにはなっていた。
「さあ、早くしないと遅れるよ。」
「はあい!」
結奈は身支度をしに行った。その間に私はパンを焼き、朝食の準備をする。それはもう手慣れたものだ。この一年で結奈も身支度など一人で色々なことができるようになり、お手伝いまでしてくれるようになった。
テーブルの上に朝食を並び終えると、結奈が来た。その手には大きな日記帳を抱えている。
「これを見て! 昨日、ママにお願いしたのよ!」
結奈が広げた日記帳は昨日の日付のページだった。そこには子供の字で一日の出来事が書かれていた。そしてその末尾には、
『あしたは遠足でそうごう公園に行くの。たのしみだけど天気がどうかな。どうか晴れにして。ママ。』
と書かれてあった。確かに昨日の夜、窓から空を見て、
「晴れにならないかな。」
とつぶやきながら、てるてる坊主をつるしていた。それだけでなくママにもお願いしていたようだ。その結奈の文字の後には大人の字で書かれていた。
『それはたのしみね。あしたは結奈のために晴れにしてあげる。かえってきたらママに教えてね。』
結奈は毎日、日記を書いていた。そしてその後には必ず。言葉が添えられていた。ママからの・・・。私はうなずきながら結奈に言った。
「よかったね。それじゃあ、また日記に遠足のことを書くんだよ。ママが喜ぶよ。」
「うん! 行ってきます!」
結奈は飛び出すように元気に出かけて行った。そんな結奈を見て私はうれしかった。1年前は暗い顔をして淋しそうだったのに・・・。私はキッチンに飾られている妻の理恵の写真を見た。
「結奈は元気だよ。あの日記のおかげで・・・。君の代わりだけど・・・。」
写真の理恵は何か微笑んでいるように見えた。彼女はいつもそうやって私と結奈を見守ってくれているのかもしれない。
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