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第13章 偽りの令嬢
女の罠
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週末になり、また令二はいそいそと出かけた。今度は友人からとびっきりのスポーツカーを借りてきていた。いつも乗っている軽トラとは違って軽快に走った。令二は鼻歌を歌いながら軽やかなハンドルさばきで車を操っていた。
清香の家に行くと、彼女はすでに家の前で待っていた。
「ごめんね。だいぶ待った?」
「いえ、今、出て来たばかりなの。」そう言って清香は車に乗り込んだ。これから彼女は思惑通りに事を運ぼうと考えていた。
ドライブの会話も海の砂浜での戯れも彼女の計算通りだった。目の前の男は自分に惹かれているのははっきりわかった。これで最後だわ・・・と思った時、なぜかむなしい気持ちが広がってきていた。付き合えば付き合うほど令二は悪い者に思えなくなっていた。いや不器用な男なのに憎めず、お人好しでやさしい男だった。もし本当の恋人だったら・・・清香はつい錯覚してしまうこともあった。
だが兄のことを思うとやはり許せなかった。どんないい人であっても・・・
「助けて!」清香は砂浜で姿を隠すとそう叫んだ。誰かに連れ去られているように装ったのだ。
「清香さん!」案の定、令二は追ってきた。清香は令二に姿を見せないように声だけである空き家に入って物陰に隠れた。
「清香さん! どこだ!」令二は一生懸命に追ってきて、空き家のドアを開けて入ってきた。
(今がチャンスよ!)清香はその背後から押しかかり、毒爪を令二に突き立てようとした。
「あっ!」令二は反射的に避けたがその首に傷を負ってしまった。しかしその傷の痛みより清香が自分に襲い掛かってきたことに令二はショックを受けているようだった。
「どうして!」
「お前が兄を殺した忍者の一味だからよ!」清香は言った。
「すると・・・」
「ええ、地球取締局警備部にいたダバは私の兄よ。お前たちに殺された恨みを晴らしてやる!」清香は叫んだ。
「聞いてくれ。ダバは俺の友人に爆弾を作らせて地球取締局を爆破していたんだ。上司を失脚させるために。その爆弾でどれほどの人たちがなくなったり傷ついたことか・・・。俺たちはそれを止めようとした。それでダバは追い詰められて、我らを巻き添えにしようと自ら爆弾を爆破させたんだ。」令二はよろけながらも言った。清香の毒爪のしびれ薬が徐々に令二の体の自由を奪っていた。
「嘘よ! 兄はお前たちの謀略にはまったのよ。同じように仲間を殺されたカイネさんが教えてくれたのよ。」清香は令二に止めを刺そうと毒爪を構えた。
清香の家に行くと、彼女はすでに家の前で待っていた。
「ごめんね。だいぶ待った?」
「いえ、今、出て来たばかりなの。」そう言って清香は車に乗り込んだ。これから彼女は思惑通りに事を運ぼうと考えていた。
ドライブの会話も海の砂浜での戯れも彼女の計算通りだった。目の前の男は自分に惹かれているのははっきりわかった。これで最後だわ・・・と思った時、なぜかむなしい気持ちが広がってきていた。付き合えば付き合うほど令二は悪い者に思えなくなっていた。いや不器用な男なのに憎めず、お人好しでやさしい男だった。もし本当の恋人だったら・・・清香はつい錯覚してしまうこともあった。
だが兄のことを思うとやはり許せなかった。どんないい人であっても・・・
「助けて!」清香は砂浜で姿を隠すとそう叫んだ。誰かに連れ去られているように装ったのだ。
「清香さん!」案の定、令二は追ってきた。清香は令二に姿を見せないように声だけである空き家に入って物陰に隠れた。
「清香さん! どこだ!」令二は一生懸命に追ってきて、空き家のドアを開けて入ってきた。
(今がチャンスよ!)清香はその背後から押しかかり、毒爪を令二に突き立てようとした。
「あっ!」令二は反射的に避けたがその首に傷を負ってしまった。しかしその傷の痛みより清香が自分に襲い掛かってきたことに令二はショックを受けているようだった。
「どうして!」
「お前が兄を殺した忍者の一味だからよ!」清香は言った。
「すると・・・」
「ええ、地球取締局警備部にいたダバは私の兄よ。お前たちに殺された恨みを晴らしてやる!」清香は叫んだ。
「聞いてくれ。ダバは俺の友人に爆弾を作らせて地球取締局を爆破していたんだ。上司を失脚させるために。その爆弾でどれほどの人たちがなくなったり傷ついたことか・・・。俺たちはそれを止めようとした。それでダバは追い詰められて、我らを巻き添えにしようと自ら爆弾を爆破させたんだ。」令二はよろけながらも言った。清香の毒爪のしびれ薬が徐々に令二の体の自由を奪っていた。
「嘘よ! 兄はお前たちの謀略にはまったのよ。同じように仲間を殺されたカイネさんが教えてくれたのよ。」清香は令二に止めを刺そうと毒爪を構えた。
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