闇の者

第12章 故郷の土

サンハ取締官

　リカード管理官からの要請で地球取締局からサンハ取締官がこの里にやって来た。地図にも載っていないこの隠れ里を彼は苦心して突き止めた。
「こんな場所があったのか。衛星写真と管理官からの極秘資料がなければわからなかった。」サンハ取締官はつぶやいた。しかし里についたものの人の姿を見ていなかった。里の家々を数軒、回ってみたが人はいなかった。
（リカード管理官にここに行くように言われたが一体何があるというのか？）サンハ取締官は具体的な指示をもらっていなかった。ただこの地に何かが起こると・・・。
「とにかくもう少し当たってみるか・・・」サンハ取締官は目の前の家に向かった。


　笠取荘では4人が集まっていた。
「調べてみたが、まずい奴らが関わっていた。」疾風が言った。
「まずい奴？」児雷也が聞き返した。
「ヤゴール星人だ。」疾風が答えた。
「ヤゴール星人ですって！　奴らまだこの地球にいるの？」霞が驚いて声を上げた。
「ああ。目的はあのXR鉱物だ。どうもあの忍びの里の下に埋蔵されている可能性があるらしい。」疾風が言った。
「じゃあ、また地球人を拉致して掘り出そうっていうの！」霞はヤゴール星人が許せなかった。
「奴らのことだ。どんな手を使ってくるかわからない。」児雷也が言った。
「行きましょう。お頭が心配です。」佐助は言った。
「ああ。それがいい。みんな、それでいいな。」疾風が言うと3人はうなずいた。


「地球取締局の者だ。誰かいないか！」サンハ取締官が甚兵衛の家に来た。彼の後ろにはバイオノイドが5体、護衛のためについていた。
家には半蔵と甚兵衛がいた。ふいの来客に甚兵衛は戸惑っていた。
「取締局？　なぜでしょう？　こんなところに。」甚兵衛は首をひねった。
「とにかく何事もないように出てくれ。ここが忍びの隠し里と知れると厄介だからな。」半蔵はそう言った。
「はい。そういたします。」甚兵衛は土間に降りて玄関の扉を開けた。するとそこに一人のマコウ人が立っていた。
「どうされました？」甚兵衛は尋ねた。
「地球取締局のサンハ取締官だ。話を聞きたい。」
「どういうことでしょうか？」
「他の家々を回ったが人がいない。みんなどうしてしまったのか？」サンハ取締官が尋ねた。
「いえ、この地は不便で離れる者は多く・・・多分、他に移ったのでしょう。」甚兵衛はそう答えた。
「それにしてはおかしい。最近まで生活していた形跡がある。何かあったな？　隠し事をしたらためにならんぞ！」サンハ取締官は脅すように言った。
「そんな・・・嘘なんかついてない・・・儂はただ本当のことを・・・」甚兵衛はおびえたように見せた。ただの田舎のか弱い老人・・・その芝居は真に迫っていた。その哀れな姿を見て、
「いや、いや、脅すつもりはない。ただ・・・」サンハ取締官はやり過ぎたと後悔していた。だがもう少しだけでも、何とかこの老人からもう少し情報を引き出そうと考えていた。その時だった。
「パチパチ・・・」と音が聞こえ、焦げ臭いにおいがしてきた。外から火矢を放たれているようだった。
（火攻めか！　うかつだった。）半蔵は思った。取締官に気を取られて気が付くのが遅れてしまった。
「家に火を放たれたようです。逃げましょう。」半蔵は玄関に飛び出して行った。
「なんだって！」サンハ取締官は声を上げた。一体どうなっているのか彼には全く理解できず、混乱しているようだった。
「とにかく外に逃げましょう。半蔵はそう言って外に出た。