闇の者

広之新

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特別章 西暦3009年 地球

地球上のデモ

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------10年前の出来事ーーーーー 

 西暦3009年の地球。各国政府が統合して地球政府となり銀河帝圏に加盟できたものの、世界中でまだ争いが続いていた。それを憂慮した主要惑星の代表が地球を調査するに至った。その結果は思わしくなく。有力な主要惑星であるマコウ人が指導に当たることになった。それを円滑に行うためには、地球人から自治権を奪って統治することが望ましいと言えた。だがそれは地球を保護惑星としてマコウ人の支配下に置くことを意味していた。もちろんそれに反対するマコウ人もいた。そのためマコウ本星から調査団が送られた。彼らの目的は地球を保護惑星にするかどうかを判定することだった。

「異星人は出て行け!」
「地球は地球人の手で!」
「銀河帝圏の干渉は無用だ!」

大声で訴えながら、プラカードを立てて人々が大通りを行進していた。地球人から自治が取り上げられ、地球が異星人の手にゆだねられるなど彼らにとって到底受け入れられるものではなかった。その運動は日々、激しさを増していた。

 デモが行進する近くのビルの1室で3人のマコウ人が集まっていた。
「今日も騒がしいな。」ショーン副代表が眉をひそめた。
「仕方がないだろう。彼らの星にとっては一大事だからな。」リカード代表は窓からそのデモを眺めていた。
「さっさとかたづけたらどうですか?ここは野蛮な星です。保護惑星として総督府を置いて自治を取り上げた方がいいと思いますが。」。地球指導部のドグマ主任が言った。
「ドグマ君。何度も言うようだが、ことは急いではならない。地球人をもっと知らなければ。」リカード代表は不快そうに言った。彼はこのドグマという男を好きにはなれなかった。マコウから地球に派遣され、陰で強権を振るっているように感じていた。しかも独断で。
「ドグマ君もここで色々見て来たのだろう。彼の意見も大事だ。リカード、心配するな。きっといい方向に行く。」ショーン副代表は険悪な雰囲気にならぬようにそう言った。ショーン副代表は親友のリカード代表を心配していた。リカード代表は真っすぐで誠実な性格だったが、その正直さ故に敵も多かった。
「ああ、わかっている。」リカード代表はうなずいた。
「とにかく調査を進めよう。この地球が自治をするのがふさわしいか、マコウにより治められるのがいいか。ドグマ君。地球側に準備をするように言ってくれ。」ショーン副代表は言った。
「わかりました。」ドグマ主任は立ち上がって部屋を出て行った。ドアを閉める音が強く部屋に響いた。
「君はどう思っているのか?」ショーン副代表はドグマ主任が出て行くとすぐにリカード代表に尋ねた。
「私はまだ決めかねている。資料を見る限り、確かに地球は野蛮な星だ。だが可能性を秘めている。地球人に自治権を渡しても彼らは立派にやっていけるかもしれない。」リカード代表は答えた。
「だがドグマをはじめ、地球を保護惑星にしようと考える者たちが多い。」
「彼らの多くはマコウに都合の良いように考えている。地球のこと、いや銀河全体のことについて思いを巡らせている者はいない。」リカード代表はきっぱりと答えた。
「そして彼らの中には君をよく思わないものも多い。とにかく注意した方がいい。」ショーン副代表は心配そうに言った。
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