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第6章 違法捜査の果て
ペリー取締官
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最近、街中が騒がしかった。それは一人の取締官と多くのバイオノイドが走り回っていたからだった。彼らの行く先々で、
「やめてくれ。」
「俺じゃない。そんなことはしていない。」
「私は関係ないわ。」
多くの地球人の悲鳴が響いていた。しかしバイオノイドたちが否応もなく、その地球人を引っ張っていった。それを遠巻きにしていた人たちは、逮捕された人はただではすむまいと、同情の目で見ていた。
「次、いくぞ!」一人の取締官がバイオノイドを連れて3軒隣の雑貨店に入った。
「地球取締局のペリーだ。」
「何でございましょうか?」主人が不安な顔をして出て来た。
「ここに例の忍者が出現したな?」ペリー取締官は携帯機器を見ながらそう言った。
「ええ、そうですが・・・」
「ではお前を逮捕する。治安防止法違反だ。」ペリー取締官はバイオノイドに右手で指示した。
「やめてくれ!」バイオノイドに捕らえられた主人はそう叫びながら連れて行かれた。
「では次・・・」ペリー取締官はまた歩き出した。
「おやじさん。連れていかれたのか・・・」雑貨店に配達に来た令二がつぶやいた。店の中には誰もおらず、がらんとしていた。ただ、街行く人たちはうわさだけは令二の耳に入った。
「例の忍者と関わったかららしいよ。」
「かわいそうに・・・。」
「今頃、きつい取り調べを受けているかも・・・。」
(我々に関わったために? 取締局はこんなことまでして我々を追い詰めようとしているのか・・・)令二はそう思った。そこに雑貨店を心配していた飛鳥も通りかかった。
(何か知っているか?)令二は目で瞬きをして合図を送った。だが彼女は令二を見て、
(知らない)と目を動かして合図を送った。
「奴は正気じゃない。そんな大勢、逮捕してどうするつもりなんですか!」ジャコー取締官が局長室まで押しかけてきていた。彼は新しく加わったペリー取締官のことで文句を言いに来たのだった。
「落ち着きたまえ。ただペリー君は職務に熱心なだけじゃないか?」サンキン局長はなだめるように言った。彼は本当にところ、ジャコー取締官と同じ意見であったが、立場上、そう言うしかなかった。
「だからと言って街の者たちを大勢逮捕して牢に入れておくとはどうなのですか? いくら忍者たちを捕まえるためだからと言ってこれはやり過ぎです。」
「まあまあ。彼はマコウ星から来たばかりだからよくわからないのかもしれない。」
「とにかく奴を止めてください。このままではどんな騒ぎになるかわかりません!」ジャコー取締官はそれだけ言うと怒ったような態度で部屋を出て行った。
「どいつも、こいつも、誰も吐きやがらない!」ペリー取締官は忌々しそうにつぶやいていた。彼は捜査のために取締局とは別に古いビルを徴発して、第3部局として使っていた。そこはコンクリートむき出しの無機質の壁で寒々としており、窓も少なくて薄暗かった。そこに多くの逮捕者のための牢を設置していた。
この地球に来て彼の目に留まったのは正体不明の忍者だった。レーザー刀を振り回し、電子手裏剣を投げるとの証言があり、取締官の中にも口に出さないものの危害を加えられた者がいるようだった。ジャコー取締官たちが捜査をしていたが、手がかりすらつかんでいなかった。
この忍者を捕まえれば大手柄になることは間違いない。だから彼は、先に捜査しているジャコー取締官を差し置いて、独断で捜査していた。そのことは彼の後ろ盾のおかげでサンキン局長も口を出すのをためらわれた。
「俺は必ず奴らを挙げる。きっと・・・」ペリー取調官はここに逮捕した者をすべて収容し、他の取締官の手伝いを受けずに、自分とバイオノイドだけで取り調べを進めていた。脅迫し拷問し、何とか口を割らそうとしたが、何ら有力な情報を引き出すことはできなかった。逮捕した者たちは隠しているというより、もとより忍者たちのことを知らないようだった。
「それでもいい。ここで厳しい取り調べをしていたら必ず奴らの耳に入る。そうなれば必ず来る!」ペリー取調官は胸に手を当てた。そこには首からぶら下げたロケットの手触りがあった。
(待っていてくれ・・・)彼は心の中で呼びかけていた。
「やめてくれ。」
「俺じゃない。そんなことはしていない。」
「私は関係ないわ。」
多くの地球人の悲鳴が響いていた。しかしバイオノイドたちが否応もなく、その地球人を引っ張っていった。それを遠巻きにしていた人たちは、逮捕された人はただではすむまいと、同情の目で見ていた。
「次、いくぞ!」一人の取締官がバイオノイドを連れて3軒隣の雑貨店に入った。
「地球取締局のペリーだ。」
「何でございましょうか?」主人が不安な顔をして出て来た。
「ここに例の忍者が出現したな?」ペリー取締官は携帯機器を見ながらそう言った。
「ええ、そうですが・・・」
「ではお前を逮捕する。治安防止法違反だ。」ペリー取締官はバイオノイドに右手で指示した。
「やめてくれ!」バイオノイドに捕らえられた主人はそう叫びながら連れて行かれた。
「では次・・・」ペリー取締官はまた歩き出した。
「おやじさん。連れていかれたのか・・・」雑貨店に配達に来た令二がつぶやいた。店の中には誰もおらず、がらんとしていた。ただ、街行く人たちはうわさだけは令二の耳に入った。
「例の忍者と関わったかららしいよ。」
「かわいそうに・・・。」
「今頃、きつい取り調べを受けているかも・・・。」
(我々に関わったために? 取締局はこんなことまでして我々を追い詰めようとしているのか・・・)令二はそう思った。そこに雑貨店を心配していた飛鳥も通りかかった。
(何か知っているか?)令二は目で瞬きをして合図を送った。だが彼女は令二を見て、
(知らない)と目を動かして合図を送った。
「奴は正気じゃない。そんな大勢、逮捕してどうするつもりなんですか!」ジャコー取締官が局長室まで押しかけてきていた。彼は新しく加わったペリー取締官のことで文句を言いに来たのだった。
「落ち着きたまえ。ただペリー君は職務に熱心なだけじゃないか?」サンキン局長はなだめるように言った。彼は本当にところ、ジャコー取締官と同じ意見であったが、立場上、そう言うしかなかった。
「だからと言って街の者たちを大勢逮捕して牢に入れておくとはどうなのですか? いくら忍者たちを捕まえるためだからと言ってこれはやり過ぎです。」
「まあまあ。彼はマコウ星から来たばかりだからよくわからないのかもしれない。」
「とにかく奴を止めてください。このままではどんな騒ぎになるかわかりません!」ジャコー取締官はそれだけ言うと怒ったような態度で部屋を出て行った。
「どいつも、こいつも、誰も吐きやがらない!」ペリー取締官は忌々しそうにつぶやいていた。彼は捜査のために取締局とは別に古いビルを徴発して、第3部局として使っていた。そこはコンクリートむき出しの無機質の壁で寒々としており、窓も少なくて薄暗かった。そこに多くの逮捕者のための牢を設置していた。
この地球に来て彼の目に留まったのは正体不明の忍者だった。レーザー刀を振り回し、電子手裏剣を投げるとの証言があり、取締官の中にも口に出さないものの危害を加えられた者がいるようだった。ジャコー取締官たちが捜査をしていたが、手がかりすらつかんでいなかった。
この忍者を捕まえれば大手柄になることは間違いない。だから彼は、先に捜査しているジャコー取締官を差し置いて、独断で捜査していた。そのことは彼の後ろ盾のおかげでサンキン局長も口を出すのをためらわれた。
「俺は必ず奴らを挙げる。きっと・・・」ペリー取調官はここに逮捕した者をすべて収容し、他の取締官の手伝いを受けずに、自分とバイオノイドだけで取り調べを進めていた。脅迫し拷問し、何とか口を割らそうとしたが、何ら有力な情報を引き出すことはできなかった。逮捕した者たちは隠しているというより、もとより忍者たちのことを知らないようだった。
「それでもいい。ここで厳しい取り調べをしていたら必ず奴らの耳に入る。そうなれば必ず来る!」ペリー取調官は胸に手を当てた。そこには首からぶら下げたロケットの手触りがあった。
(待っていてくれ・・・)彼は心の中で呼びかけていた。
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