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第8章 真実への道
王宮のミラウス
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ミラウスはサランサの部屋に連れて行かれた。その前かがみで顔を伏せて歩く姿は農夫のようであったが、サランサの部屋に入ると背筋を伸ばして、きりっとした魔騎士にふさわしい姿になった。そしてサランサの前に片膝をついて頭を下げた。
「サランサ様。魔騎士のミラウスです。マークス様から王宮の異変を探るように言われました」
「ミラウス殿。王宮では父のワーロンが陰謀を企てております」
「ワーロン将軍が!」
ミラウスはあまりのことに衝撃を受けた。リーカー追討の命令を出した本人が陰謀の元だったとは・・・
「お恥ずかしいことに私は止めることができなかった。父は女王様が病に臥せっているのをいいことにこの王宮で好き放題しております。ザウス隊長もそうです。2人は大きな企みをしております」
サランサは目を伏せて悲しそうに言った。
「それは? ワーロン将軍はいかなることを企んでいるのですか?」
「女王様の妹君のマデリー様を次期女王にしようとしております」
「なんと! そんなことが!」
ミラウスは驚いた。そんな大それたことが起こっていようとは・・・。
「ええ、そうです。それでアーリー様とエミリー様が邪魔になった。そこでお2人を闇から闇に葬ろうとしました。しかしリーカー様がエミリー様を守り、父が差し向けた魔騎士たちから逃げていたのです」
「そうでしたか・・・私も他の魔騎士も、マークス様もその陰謀の片棒を担がされていたのか!」
ミラウスはあまりの悔しさに唇をかんだ。
「ミラウス殿。お願いです。リーカー様をお助け下さい。父の野望をくじいてください」
サランサは頭を下げて頼んだ。しかしミラウスは仲間の魔騎士を次々と倒したリーカーに味方をするのは気が進まなかった。
「サランサ様。お気持ちはわかります。しかしリーカーに味方することはできない。それより私は女王様に忠誠を尽くす魔騎士。その女王様をないがしろにするワーロン将軍の悪事を糾弾するのが本筋というもの。証拠を集めて魔騎士の仲間、そしてマークス様とともに立ち上がるつもりです」
ミラウスはきっぱり言った。
「それではリーカー様が・・・」
サランサが言いかけたが、ミラウスはそれを遮った。
「リーカーは所詮、追われる身。今さら期待できません。我々がこの国を正します」
ミラウスはそれだけ言って部屋を出て行った。
◇◇◇◇
ワーロン将軍の執務室に歴戦の魔騎士が一人、入って行った。そこにはワーロン将軍とザウス隊長が待っていた。
「ヤギシ副隊長。よく来た。お前を見込んでやってほしいことがある」
ワーロン将軍が声をかけた。ヤギシ副隊長がそれに答えた。
「お呼びいただき光栄です。何なりとお申し付けください」
「お前の腕前は儂がよく知っている。やれるな?」
ワーロン将軍が値踏みするように尋ねた。ヤギシ副隊長はニヤリと笑った。
「ええ、もちろんです。」
「わかっているな。リーカーはもちろん。エミリーもだ。奴らは邪魔だ」
「はい。すべてはマデリー様のために」
ヤギシ副隊長も最初からワーロン将軍の陰謀に加担していたのだ。早速、ザウス隊長が命じた。
「では早速だがすぐに任務に出てくれ。魔法の黒カラスが今頃、リーカーを捕捉しているはずだ」
「わかりました。もう一人、魔騎士を連れて行きます。どうしてもリーカーと戦いたいと志願する者がおりますので」
ヤギシ副隊長はそう言って頭を下げて部屋を出て行った。
◇◇◇◇
ミラウスはマークスに魔法の黒カラスを放った。そこに王宮の陰謀が渦巻く状況を言葉として納めた。それでマークスが女王様のために動いてくれることを願っていた。
(もうすこし内情を調べておくか・・)
ミラウスは姿を魔法で隠し、ワーロン将軍の執務室まで言った。すると中から人の声が聞こえていた。彼はドアの近くまで行き、魔法を使って中を透視した。
すると中ではワーロン将軍が片膝をついていた。その前に誰かがいるようだった。ミラウスは耳を澄ませた。
「ワーロン将軍! どうなっておるのだ!」
それはしわがれた老女の声のようだった。
「申し訳ありません。マークスまでやられました。しかしご安心ください。副隊長のヤギシを派遣しました。すぐにいい報告ができると思います」
「うむ。ならばよい。それでエリザリーの方はどうだ?」
「一時は弱られていたのですが、最近なぜか元気を取り戻されております」
「なんだと! それでは何にもならぬ。何とかならぬのか!」
ワーロン将軍を叱る声が大きくなっていた。
「しかしこればっかりは・・・」
「待てぬ。待てぬぞ。お前も腹をくくるのだ。エリザリーを一思いに・・・」
「しかしそれは・・・マデリー様」
ワーロン将軍のその言葉で、ミラウスは、ワーロン将軍の前にいる者がエリザリー女王の妹、マデリーであることを知った。マデリーはエリザリー女王から嫌われていたので、王宮に入りことは許されなかった。だからここにいるというのは、魔法を使って無理に入ってきたということだった。しかもワーロンたちと図って陰謀を企てている。女王の暗殺も。
「なんということを・・・」
ミラウスは驚いて思わず声を出してしまった。すると中で、
「外で聞いていた者がいるぞ!」
とマデリーが声を上げた。
「すぐに亡き者にします!」
ワーロン将軍はすぐに立ち上がってドアの方に向かって来た。ミラウスは恐ろしくなり、そのままそこから走って逃げた。ドアを開けたワーロン将軍は確かにその後ろ姿を見た。
「ミラウスか! なぜ、あ奴がここに? 聞かれたからには消さねばならぬ」
ワーロン将軍は魔法の黒カラスを呼び寄せ、言葉を収めて外に放った。
ミラウスは必死に逃げた。多分、ワーロン将軍に姿を見られている。この王宮を抜けなければ殺される・・・彼は門を目指した。とにかく魔法で姿をくらませば、門を通り抜けて外に逃げられる・・・もう門が見えてきていた。
「どこへ行く?」
その前に立ちふさがったのはザウス隊長だった。ミラウスはザウス隊長も陰謀に加担していることを直感した。
「いえ、リーカーを討つために戻ろうとしまして・・・」
ミラウスはそう言いながらいつでも剣が抜けるように構えていた。
「ほう、そうか。しかしお前にここに来るように命令した覚えはない。何か探っておるな!」
ザウス隊長は言った。
(こうなっては隠しきれない。いきなり斬りかかれば、いくらザウス隊長でも倒せるかもしれない。)
ミラウスはそう思って一か八かの手に打って出ようとした。
「まさか、そんな・・・。わたしがどうしてそんなことを・・・」
ミラウスは笑顔を作りながらザウス隊長に近づくと、いきなり剣を抜いて、
「ザウス隊長! 覚悟!」
と斬りかかった。しかしザウス隊長はそれをやすやすと避けると、剣を抜いて振り下ろしてきた。ミラウスはその剣を受け止めた。ザウス隊長は鬼のような表情で問いかけた。
「誰に頼まれたのだ? 言え!」
「貴様などに誰が言うか!」
ミラウスは剣で押し返すと距離を置いた。
「貴様らがしている悪だくみを許さぬ!」
今度はミラウスが剣で斬りかかった。だがザウス隊長はその剣を払うと、そのままミラウスを斬りつけた。
「ううっ・・・」
ミラウスは左肩を深く斬られてしまった。血がどくどくと流れて体の力が抜けてきている。ミラウスはザウス隊長に全く歯が立たないことを悟った。しかしこのまま死ぬわけにはいかない。何とか生き延びてマデリーたちの陰謀を伝えなければ・・・。ミラウスは深手を負ったまま王宮の方に逃げた。
「ふふふ。逃げよったか。だがあの深手、もう長いことはあるまい」
そう言ってザウス隊長は引き上げていった。
ミラウスは何とか王宮の廊下を歩いていたが、力尽きて倒れた。もう先がないことがよく分かった。その時、そこを通りかかった者があった。その者は瀕死のミラウスの姿を見て駆け寄ってきた。
「ミラウス殿! しっかりなさってください!」
それはサランサだった。彼女はミラウスの体を抱き起こした。
「サ、サランサ様。陰謀はマデリーから出ております。リーカーやエミリー様を亡き者にし、女王様の命まで狙っております・・・」
それだけ言ってミラウスはこと切れた。それを聞いてしまったサランサは目の前が真っ暗になる気がした。女王様まで手にかけようとしているのか・・・彼女はミラウスを下ろすと急いで部屋に戻っていった。
「サランサ様。魔騎士のミラウスです。マークス様から王宮の異変を探るように言われました」
「ミラウス殿。王宮では父のワーロンが陰謀を企てております」
「ワーロン将軍が!」
ミラウスはあまりのことに衝撃を受けた。リーカー追討の命令を出した本人が陰謀の元だったとは・・・
「お恥ずかしいことに私は止めることができなかった。父は女王様が病に臥せっているのをいいことにこの王宮で好き放題しております。ザウス隊長もそうです。2人は大きな企みをしております」
サランサは目を伏せて悲しそうに言った。
「それは? ワーロン将軍はいかなることを企んでいるのですか?」
「女王様の妹君のマデリー様を次期女王にしようとしております」
「なんと! そんなことが!」
ミラウスは驚いた。そんな大それたことが起こっていようとは・・・。
「ええ、そうです。それでアーリー様とエミリー様が邪魔になった。そこでお2人を闇から闇に葬ろうとしました。しかしリーカー様がエミリー様を守り、父が差し向けた魔騎士たちから逃げていたのです」
「そうでしたか・・・私も他の魔騎士も、マークス様もその陰謀の片棒を担がされていたのか!」
ミラウスはあまりの悔しさに唇をかんだ。
「ミラウス殿。お願いです。リーカー様をお助け下さい。父の野望をくじいてください」
サランサは頭を下げて頼んだ。しかしミラウスは仲間の魔騎士を次々と倒したリーカーに味方をするのは気が進まなかった。
「サランサ様。お気持ちはわかります。しかしリーカーに味方することはできない。それより私は女王様に忠誠を尽くす魔騎士。その女王様をないがしろにするワーロン将軍の悪事を糾弾するのが本筋というもの。証拠を集めて魔騎士の仲間、そしてマークス様とともに立ち上がるつもりです」
ミラウスはきっぱり言った。
「それではリーカー様が・・・」
サランサが言いかけたが、ミラウスはそれを遮った。
「リーカーは所詮、追われる身。今さら期待できません。我々がこの国を正します」
ミラウスはそれだけ言って部屋を出て行った。
◇◇◇◇
ワーロン将軍の執務室に歴戦の魔騎士が一人、入って行った。そこにはワーロン将軍とザウス隊長が待っていた。
「ヤギシ副隊長。よく来た。お前を見込んでやってほしいことがある」
ワーロン将軍が声をかけた。ヤギシ副隊長がそれに答えた。
「お呼びいただき光栄です。何なりとお申し付けください」
「お前の腕前は儂がよく知っている。やれるな?」
ワーロン将軍が値踏みするように尋ねた。ヤギシ副隊長はニヤリと笑った。
「ええ、もちろんです。」
「わかっているな。リーカーはもちろん。エミリーもだ。奴らは邪魔だ」
「はい。すべてはマデリー様のために」
ヤギシ副隊長も最初からワーロン将軍の陰謀に加担していたのだ。早速、ザウス隊長が命じた。
「では早速だがすぐに任務に出てくれ。魔法の黒カラスが今頃、リーカーを捕捉しているはずだ」
「わかりました。もう一人、魔騎士を連れて行きます。どうしてもリーカーと戦いたいと志願する者がおりますので」
ヤギシ副隊長はそう言って頭を下げて部屋を出て行った。
◇◇◇◇
ミラウスはマークスに魔法の黒カラスを放った。そこに王宮の陰謀が渦巻く状況を言葉として納めた。それでマークスが女王様のために動いてくれることを願っていた。
(もうすこし内情を調べておくか・・)
ミラウスは姿を魔法で隠し、ワーロン将軍の執務室まで言った。すると中から人の声が聞こえていた。彼はドアの近くまで行き、魔法を使って中を透視した。
すると中ではワーロン将軍が片膝をついていた。その前に誰かがいるようだった。ミラウスは耳を澄ませた。
「ワーロン将軍! どうなっておるのだ!」
それはしわがれた老女の声のようだった。
「申し訳ありません。マークスまでやられました。しかしご安心ください。副隊長のヤギシを派遣しました。すぐにいい報告ができると思います」
「うむ。ならばよい。それでエリザリーの方はどうだ?」
「一時は弱られていたのですが、最近なぜか元気を取り戻されております」
「なんだと! それでは何にもならぬ。何とかならぬのか!」
ワーロン将軍を叱る声が大きくなっていた。
「しかしこればっかりは・・・」
「待てぬ。待てぬぞ。お前も腹をくくるのだ。エリザリーを一思いに・・・」
「しかしそれは・・・マデリー様」
ワーロン将軍のその言葉で、ミラウスは、ワーロン将軍の前にいる者がエリザリー女王の妹、マデリーであることを知った。マデリーはエリザリー女王から嫌われていたので、王宮に入りことは許されなかった。だからここにいるというのは、魔法を使って無理に入ってきたということだった。しかもワーロンたちと図って陰謀を企てている。女王の暗殺も。
「なんということを・・・」
ミラウスは驚いて思わず声を出してしまった。すると中で、
「外で聞いていた者がいるぞ!」
とマデリーが声を上げた。
「すぐに亡き者にします!」
ワーロン将軍はすぐに立ち上がってドアの方に向かって来た。ミラウスは恐ろしくなり、そのままそこから走って逃げた。ドアを開けたワーロン将軍は確かにその後ろ姿を見た。
「ミラウスか! なぜ、あ奴がここに? 聞かれたからには消さねばならぬ」
ワーロン将軍は魔法の黒カラスを呼び寄せ、言葉を収めて外に放った。
ミラウスは必死に逃げた。多分、ワーロン将軍に姿を見られている。この王宮を抜けなければ殺される・・・彼は門を目指した。とにかく魔法で姿をくらませば、門を通り抜けて外に逃げられる・・・もう門が見えてきていた。
「どこへ行く?」
その前に立ちふさがったのはザウス隊長だった。ミラウスはザウス隊長も陰謀に加担していることを直感した。
「いえ、リーカーを討つために戻ろうとしまして・・・」
ミラウスはそう言いながらいつでも剣が抜けるように構えていた。
「ほう、そうか。しかしお前にここに来るように命令した覚えはない。何か探っておるな!」
ザウス隊長は言った。
(こうなっては隠しきれない。いきなり斬りかかれば、いくらザウス隊長でも倒せるかもしれない。)
ミラウスはそう思って一か八かの手に打って出ようとした。
「まさか、そんな・・・。わたしがどうしてそんなことを・・・」
ミラウスは笑顔を作りながらザウス隊長に近づくと、いきなり剣を抜いて、
「ザウス隊長! 覚悟!」
と斬りかかった。しかしザウス隊長はそれをやすやすと避けると、剣を抜いて振り下ろしてきた。ミラウスはその剣を受け止めた。ザウス隊長は鬼のような表情で問いかけた。
「誰に頼まれたのだ? 言え!」
「貴様などに誰が言うか!」
ミラウスは剣で押し返すと距離を置いた。
「貴様らがしている悪だくみを許さぬ!」
今度はミラウスが剣で斬りかかった。だがザウス隊長はその剣を払うと、そのままミラウスを斬りつけた。
「ううっ・・・」
ミラウスは左肩を深く斬られてしまった。血がどくどくと流れて体の力が抜けてきている。ミラウスはザウス隊長に全く歯が立たないことを悟った。しかしこのまま死ぬわけにはいかない。何とか生き延びてマデリーたちの陰謀を伝えなければ・・・。ミラウスは深手を負ったまま王宮の方に逃げた。
「ふふふ。逃げよったか。だがあの深手、もう長いことはあるまい」
そう言ってザウス隊長は引き上げていった。
ミラウスは何とか王宮の廊下を歩いていたが、力尽きて倒れた。もう先がないことがよく分かった。その時、そこを通りかかった者があった。その者は瀕死のミラウスの姿を見て駆け寄ってきた。
「ミラウス殿! しっかりなさってください!」
それはサランサだった。彼女はミラウスの体を抱き起こした。
「サ、サランサ様。陰謀はマデリーから出ております。リーカーやエミリー様を亡き者にし、女王様の命まで狙っております・・・」
それだけ言ってミラウスはこと切れた。それを聞いてしまったサランサは目の前が真っ暗になる気がした。女王様まで手にかけようとしているのか・・・彼女はミラウスを下ろすと急いで部屋に戻っていった。
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