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6層攻略

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「今日の晩飯は豆だ!ほら!存分に食え!」
「頑張って収穫しました!」

 もう腹パンパンだが見ているとよだれが垂れそうだ。早く慣れないと売る前に全部食っちまうぞ。

「豆?豆だけ?しかもこれ調理もしてないよね?」
「………」
「お?なんだその態度は。俺への侮辱は許すが豆さんへの侮辱は許さねぇぞ」
「え、えぇぇ。何言ってんの……」

「ポール様が育てたんです!凄く美味しいから食べてみてください!」
「う、うん。確かにいい香りがするね。まぁ一つ……う、うんまぁぁぁぁぁ!」
(っ!もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ)
「はははっ、そうじゃろうそうじゃろう。豆様に感謝していただくのじゃぞ」

 もう豆だけでいいよ。我が家の食卓は豆で完成した。

「そら豆がこんなに美味しいなら、他の野菜もすごいんだろうね。あの美味しいお肉を新鮮なレタスで巻いて食べたら、すっごく美味しいだろうなぁ」
「なん・・・だと?」

 組み合わせ!そうだ、野菜とはそれのみで完成するものにあらず。この豆も調理すればもっと美味くなる可能性があるんだ!
 俺はなんて愚かなんだ。実りをそのまま貪るだけで満足してしまうなんて。俺は恥ずかしい。

「それでは誰かこの豆を調理してくれるか?」
「………」
「………」
「………」

 美少女じゃなくていいよ、コックを見つけよう。
 この日も風呂を我慢して寝た。





 翌日。
「今日は特にやってもらう事が浮かばないな。適当に家の管理をしといてくれ」
「ダンジョンに行くんでしょ。一緒に行くよ」
「いやいい。もう2.3日して用事が済んだらまた行こう。お前らを強化したいしな」
 そろそろ釣れる頃だ。それまではソロがいい。



 今日は6層にやってきた。
 以前に倒したメタルアリゲーターから鉄を集める。鉄は石の上位互換な所があるからな、ぜひ大量に欲しい。
 前回と同じく餌で釣るつもりだったが、ふと思いついて水溜まりに手を突っ込んだ。
「【水】よ出ろ、ありったけだ」
 ごろごろ転がる翠珠、水は一瞬にして干上がった。そしてそこには数匹のメタルアリゲーターが驚いた様子で転がっていた。

「轟槌《ごうつい》」
【石】翠珠を握り、拳を振り上げる。細く長い柄が伸び、その先には空中に生み出される巨大な石槌。拳を振り下ろすと同時に槌が地面に向かって振り下ろされ、空気が割れるような爆音が響き渡った。

 バガァァァン!!

 巨大な槌が地面に叩きつけられ、衝撃がダンジョンを揺らす。
 圧倒的な質量がメタルリザードの群れを一撃で粉砕した。鱗が硬かろうと関係ない、鱗を残したまま潰れるだけだ。
 使い終わった石槌を【石】に戻すと変わらず綺麗な翠色だった。
 大変満足な結果である。スターライトシュートとは方向性が違うが、これもかなりのチート攻撃だわ。何よりコスパが最高だ。

 メタルリザードから【鉄】と【肉】を回収し、水は少しを残して元に戻しておいた。また育ってくれ。


 この後も6層を巡って【鉄】を集めた。最初の水場は前回同様にメタルリザードが出たが、この層には他にも数種類の魔物が生息している。
 と言っても多くは蛇と蛙だ。たまにヌートリアみたいな獣がいるが、魔物なのに積極的に襲ってこない。
 攻撃してこないヌートリアをこちらから積極的に攻撃するやつおる?俺は無理だ。
 コイルスネークをスターライトシュートで撃ち抜いたが、そばにいたヌートリア?にそのまま譲ってしまったぜ。

 6層の凶悪モンスターとして、メタルリザードと双璧であるスラブトードという蛙がいる。人間サイズの巨大蛙で、粘着力の高い舌が長く伸びて、捕まると丸呑みされるという悪夢のようなやつだ。
 近寄ると飲み込まれて毒と圧力で抵抗出来ない。遠くから攻撃しても粘液に守られた分厚い皮が攻撃を弾く。
 魔法使いが居ないなら逃げた方がいい相手だ。魔法使いなんて滅多にいないけどな。
 一応火に弱いという特性があるので、松明でも持っていれば対処は出来るぞ。

『ゲコォッ!』

「スターライトシュート・トリプル」

 チュチュチュインと小気味のいい音がして終了。一応俺も魔術師の端くれである。
 分厚い皮で知られる蛙なので【皮】を取ってみた。取れたのは青珠20個分ほど、これはかなり多い。
 大きさもそれなりにあるが、良質な皮だから沢山取れたのかな。オークの巨体から肉が30個だった事を考えるとかなり効率がいい。残った蛙の体は経験値だ。
 6層も完全攻略だな。余裕をもって6層を巡ることができた。


 さて、そろそろ夕方かな。【鉄】も【皮】も翠珠がいくつか取れて満足だ。
 ちょっと休憩してから遅めに外に出ることにした。

 これが功を奏した。人が少し減っていたのがポイントだな。



「忘れてねぇだろうなガキぃ。ずっとお前をやれる機会を待ってたぜ」
「奇遇だな。俺もお前たちを待ってたんだ」

 何をしても俺の心が傷つかない生きた体の登場だ。
 心配するな、今後の事を考える必要だけは絶対に無い。
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