上 下
16 / 32

Cランク

しおりを挟む
 6層から引き返して5層でオークを狩った。しかしここからが問題だ。

「これを持っていくのかい?とんでもなく重いんだけど」
「あの、なにかソリみたいな物があれば」
「そんな物は無い。お前が持ち上げて運ぶんだ」
「そ、そんなぁ」
「情けない顔をするな」

 この為に【力】を取っておいたんだ。デイガンを励ますように肩に触れて【力】青珠を3つ埋め込んだ。
「ほら、足の方を持ち上げてみろ」
「うぅ、い、いきます!セイッ!」
 デイガンが持ち上げるとオークの尻まで浮き上がった。これなら二人で運べそうだな。

「うわぁ!すごいです!何故か力が溢れてくるみたいです!」
「ふふふ。そうだろう、では頭の方は俺が」
 大丈夫な様なので自分にも【力】を埋め込んだ。こうして行けばすぐに世界最強になれそうだなぁおい!
「いくぞぉ、フン!フン!フング!」
「どうしたんですか?」
 あ、上がらん!どゆこと?モグラって元からすごい力だったの?

「ちょっとタイミングが合わなかったな、じゃあもう一度」
 悔しいので追加で埋め込む。合計青珠8個だ。オーク丸々1体の力より上だぜ!
「3.2.1.ハイ!ハイ!ハァァァァァイ!!」
「あ、あの」
 な、なぜ!?なぜだ!

「あーいや、ミミナと二人で運ぶ方が息が合いそうだと思ってな。ほら、頼むぞ」
 身体全体を使って「無理っすよ!」と示すミミナを促しつつ【力】青珠を4つ埋め込んだ。これでどうなるか。
「ミミナ行くぞ、せーのっ!」
「!??!?」

 見事に持ち上がるオークの巨体。二人の様子を見るに最初から力が強かったという事も無さそう。
 俺にだけ効果が無い?そんな馬鹿な、それではあの埋めた文珠はどこに?
 吸収されちまったのか?魔石の時みたいに?それだったら俺だけ強くなれないじゃねぇか!
「帰るんじゃないの?」
「あ、あぁ行こう」


 運び込んだ冒険者ギルドでは暇な冒険者たちがオークを運ぶデイガン達を見てざわついている。屈強な冒険者でもバラして運ぶ物なのに、小さな子供が2人で丸ごと運ぶ姿は異常だ。獣人には見えないしな。
「すげぇガキだな」
「ポーターなのか?あれなら相当な冒険者になるぞ」
「可愛いなぁ、俺も運んでくれないかなぁ」
 あぁ俺もすげぇって言われてぇぇぇぇぇ!すごい漢だって言われてぇぇぇよぉぉぉ!
 俺の自己顕示欲が悲鳴を上げる!俺を見ろと轟き唸る!

「トトリさん、オーク狩ってきましたよ。依頼処理お願いします」
「トトナです。まさか丸ごと持ってくるなんて、優秀なポーターを抱えていますね」
 違うんだ優秀なのは俺なんだよ。お前らも誇らしげな顔をするんじゃねぇ。
「それではこちらが依頼達成の報奨金です。Cランクの冒険者証は今日お持ちになりますか?」
「んー明日また来ます」
「ありがとうございます。オーク肉もまた取ってきていただけると助かります」
「もうちょい高かったらいいんですけど」
「規則ですから」
 にっこりと返されてしまった。慣れてるんだろうな。
 オークを運んできた駄賃は銀貨5枚。数人使ってこれだ。他に仕事がなけりゃやるが、進んでやりたい物じゃないな。


「さて、金も出来たし小熊のアトリエに行くか」
「え、あ~、ちょっと気まずいんだけど」
「しらねぇよ。他に奴隷も手に入ったし、お前の奴隷紋はとっくに無くなってるんだ。アリサお姉さんにでも相談してさっさと仕事探せ」
「暫く僕を使ってくれないか?仕事をするにしても装備も住むところもないんだ。冒険者登録もやり直しだし」
「それこそ知らねぇよ。自分でなんとかしろ」
「君はなんとも思ってないみたいだけど、僕は本当に感謝しているんだ。恩返しをさせてくれないか?君たちを見ていると危なっかしくてね」
「騙されて奴隷落ちした癖に何言ってんだ」
「うぐっ!」


 うーん、あの家に4人は無理だ。というか俺1人でもきついってのに。あ。

「家買うか」
 金ならある!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

異世界でスローライフを満喫する為に

美鈴
ファンタジー
ホットランキング一位本当にありがとうございます! 【※毎日18時更新中】 タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

前世で裏切られ死んだ俺が7年前に戻って最強になった件 ~裏切り者に復讐して、美少女たちと交わりながら自由気ままな冒険者ライフを満喫します~

絢乃
ファンタジー
【裏切りを乗り越えた俺、二度目の人生は楽しく無双する】 S級冒険者のディウスは、相棒のジークとともに世界最強のコンビとして名を馳せていた。 しかしある日、ディウスはジークの裏切りによって命を落としてしまう。 何の奇跡か冒険者になる前にタイムリープしたディウスは、ジークへの復讐を果たす。 そして前世では救えなかった故郷の村を救い、一般的な冒険者としての人生を歩み出す。 だが、前世の記憶故に規格外の強さを誇るディウスは、瞬く間に皆から注目されることになる。 多くの冒険者と出会い、圧倒的な強さで女をメロメロにする冒険譚。 ノクターンノベルズ、カクヨム、アルファポリスで連載しています。 なお、性描写はカクヨムを基準にしているため物足りないかもしれません。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...