喜びには感謝を!【32話完結済み】

無職無能の自由人

文字の大きさ
30 / 32
悲しい希望の世界

悲しい希望の世界 終末

しおりを挟む
 アリアを失って失意の中、それでも戦い続ける俺は正しく英雄だった。
 もう加減も無い、世界中に自動で化け物が溢れ、片っ端から殺して回った。
 沢山の感謝と愛が注がれる。俺はただそれを貪るだけになった。
 人間どもが何をしていようがどうでもいい。復活させることもやめた、効率が悪いし、沢山いるので減ってもいい。

 10年戦い続けて誰とも会話をしなくなった。100年続けて人間が減ってきたことに気づいた。1000年続けて減りすぎた人間を保護することに決めた。
 そうしてやっと気づいた。自分にとって人間は必要な存在なんだと。
 俺は人間の感謝を食う悪魔に成り下がっていた。

 全てわかった。地獄を作り出したのは俺が悪魔だからだ。俺が死んだのは俺が人間の皮を捨て去ったからだ。
 だからそうした。僅かに残った人間の皮と魂を切り離して殺した。
 俺の食いカスの感謝をあの世で上納してこい。そしてまた新たな地獄をつくれ。
 世界は巻き戻ってなどいない。そんな奇跡は起こっていない。
 ここは第三の地獄。幻の希望に縋る夢の地獄だ。
 完成した世界の中で、俺は永遠に戦い続ける。








「よう戻ってきたの」
「はっ!?あ、あなた様は!え?私は死んだ?」
「そうじゃ、何も覚えておらんのか?」
「私は……、そうだ、世界を貪った私は自分を切り離して……」
「うむ、ようやったのう。既に力は十分に溜まった、わしはわざわざお前を待っておったんじゃ」
「?」
「お前の集めた無尽蔵のエネルギーを使ってわしが全てを支配する。こんなところで永遠に飼われるなど屈辱でしか無いわい。お前はこれまでの働きを評価してわしの使徒にしてやろう」
「ありがたき幸せ!」
「お前は頭が回る。もう理解したじゃろう。行くぞ、存分に力を奮え」


 あぁ分かった。こいつが元凶だな?
 こいつが俺を悪魔にしたんだな、俺の中に悪魔が最初から悪魔が潜んでいた?ないない、俺がそんなわけない(確信)。こいつが何度も世界を破壊したんだ。俺は悪くない。
 元々感謝のエネルギーはこいつの方が取り分は多い。残りカスを俺に与えて力を溜め込んだつもりなんだな。第一世界からのエネルギーだけでも膨大なはず。
 こいつに従って使徒となれば、俺には永遠の栄光が待っている。超常の存在の更にその上に君臨できる。だがなんで俺がこんなクズの下に付かなきゃならんのだ?


 あいつが手をかざすと何もなかった空間が揺らぎ、空中に穴が空いて違う景色が見える。
 転移だ、俺も使っていた。だがその先に見えるのは?
 そこにはいつか見た、この世の物とは思えない美女がいた。その目は驚愕に見開かれている。
「何故あなたがここに!」
「ぐはははは!時は来たのだ!」
 美女に指を突きつけ、呪が発動される。これは呪殺だ、超常の者同士でそんな物が効くんだろうか。

「ぐうううぅぅ!この力はっ!?」
「今まですきにやってくれたな!死ね!呪いで穢れて落ちろ!」
「ああああああああっ!!」
 美女さんの肌がひび割れ、変色して腐り落ちる。なんだ、超常の方々にこんな物が効くのか。威力を高めればいいだけなら俺でも出来るぞ。

「お前も暴れろ!目に付く者は全て殺して構わんわい!」

 馬鹿馬鹿しい。地獄を生きてきた俺が今更栄光を求めるわけがないだろう。
 そんなことより、目の前で腐り果てようとする女はあいつの上司だ。俺をあの世界に再び立たせる命令をした。なら、こいつは世界を巻き戻せるのかもしれない。
「俺の祝福を!」
 女に祝福を与えて癒やしてやる。腐った皮膚は瞬時に美しさを取り戻し、女は全快した。

「なんじゃその力は!?わしに逆らうなら天稟を返せ!」
 あいつがこちらに腕を伸ばすが何も起こらない。
「ばーか!俺を見ていたんじゃないのか!俺が第三世界で何をしていたのか知らんのか!」
「なんじゃと!貴様も消え去れ!魂ごと滅してくれる!」
「今だ!神威!天鎖封陣!!」

 美女さんが何かをすると、じゃらじゃらと天から落ちてきた黄金の鎖があいつの体を絡め取る。鎖に絡まりながら暴れる姿はまるで獣だな。

「くそ!この程度でわしが止まるか!!」
「長くは保たない!こちらに来なさい!」
「どこに逃げても無駄じゃ!最早わしの力は止められぬ!」
「黙りなさい!」
「あばよクソ野郎!次に会った時は泣かしてやるからな!」
 美女さんが転移を発動して俺達はどこかへ移動した。



 転移した先はお役所みたいなところだった。美女さんは沢山の人?に指示を出し、5人ほどを引き連れて俺を取調室にぶち込み、綺麗な顔で睨みつけてくる。
「何があったのか話しなさい」
「先に言っておきますが、私はグルとかじゃないですからね。あなたに言われた使命はちゃんと果たしましたよ」
「いいから要件をいいなさい!」
「ふぅ、簡単に言うとあいつは俺に集めさせた感謝のエネルギーを横領していた。世界は巻き戻さずにそのままエネルギーを吸い続けている。3つの世界から集めたエネルギーで下剋上。全ては美女さんの監督不行き届きです」
「美女さんですが美女さんと呼ぶのはやめなさい。そうですね、ナミちゃんと呼ぶように」

 まぁ、うん。俺達とはセンスが違うんだろう。別にいいさ。
「困りましたね。あの者の力は絶大でした。この私が一撃で呪殺されてしまうなんて」
「そうなんですか?呪殺」
「あああああああああああっ!」
「貴様何をするかぁ!!」
 いかんいかん、皮膚が腐って垂れているぞ。すぐに祝福を与えて治してあげた。

「うぐぐぐっ、あなたのその力は一体?」
「ラブパワーです」
「………あなたならばあの者を倒せるかもしれませんね」
「いえ、それは無理です。あいつには無尽蔵のエネルギーが送られ続けている。エネルギーを絶たない限り何度でも復活するでしょう」
「それほどですか」
「はい。そこで提案があるんです」
「聞きましょう」
「2つ目の世界に悪魔が蔓延っているのは確認しましたよね?あれは私です。1つ目と3つ目の世界も私の半身が支配しています」
「………」
「私の分身を統合し、その膨大なエネルギーを使って世界を統合。更に巻き戻してしまえばいいんです。そうすればあいつの力は失われます」
「それは最悪の悪魔を生み出してしまうだけでは?」
 それはそう。

「ナミちゃん。私は人間です。何万年も生きられるように出来ていないんです。もう疲れました、統合した俺のエネルギーで分裂した世界を戻した後、私のことは煉獄で焼いてください」
「いいのですか?今の記憶も人格も全て消え失せますよ?」
「いいんです。私が転生したらまた不幸をばら撒いてしまう」
「……嘘は無いようですね。分かりました。あの世界のコントロールはこちらで上書きして統合させましょう。あなたの溜め込んだエネルギーはその為に消費されます」
「お願いします。残ったエネルギーもすきにしてください」
「分かりました。ではあなたは、全てのエネルギーと記憶を失って正常に輪廻の環に加わることになります」
「はい。これでいい、これでいいんです……」



 なんつってな!俺は絶対に死なん!全員を出し抜いて今度こそ幸せになるぞ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...