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第54話 懐かしいツノ
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チュンチュン、チチチ、チーチチチチチッチー!
朝だ。温かいベッドに眩しい光が差し込み、外ではスズメが鳴いている。
まさしく朝チュンだ。ミチミチに満ちた筋肉盛り盛りの肉体にしなだれかかる彼女の腕をのけて立ち上がる。
今日も完璧な朝だ。神聖おねショタ儀式のお陰で俺の心身は常に最高のコンディションを維持し続けている。アホな勇者が食い逃げしていても、アホな商人が大損アピをしながら買い叩こうとしてきても、全てを尻叩き一発で許せる余裕が俺にはある。
「毎日毎日アンナと寝やがって…、手を出したら殺してやるぜ…」
宿の階段を降りると余裕の無いハゲが居た。嫌だねこうはなりたく無い、俺は余裕のあるクールかつダンディズムを理解する男なのだ。
「俺を見ろよ、まだ下の毛も生えてねぇんだぞ」
「そういう発言が信用ならねぇんだよ!」
困ったんもんだ。今日は特にうるさいから外で飯を食おう。
「おはよう!アレキサンダー!」
『おはようなのです』
「あぁおはよう。何か食いたいものあるか」
「焼いたお肉!」
『果物がいいのです』
「俺はシチューだな」
シチューの美味い店に行く。躾は厳しく行う派だ。
目についた店に入ってシチューと焼き立てパンを注文する。この町はクソだが金さえ払えばいいサービスと美味い飯が出てくるんだ。それで十分である。
「ここのシチューはカリカリの何かが入っててうめぇんだよ。何かは知らねぇがうまい」
『それは木の中にいる虫を揚げた物なのです』
「これ美味しいよねー」
「ははは、これこれ、そんなわけなかろう」
そんなわけない。そんなわけないさ。でもちょっとよく見てみようかな。
運ばれてきた物を口に運ぶべきか悩んでいたら声が聞こえた。近頃はよく聞く声だ。
「おっさん!これ虫が入ってるじゃねぇか!」
「何だぁ小僧!このシャコ虫の幼虫は樹液しか食ってねぇ上等品だぞ!」
「誰が虫なんか食うか!ふざけんじゃねぇぞ!」
「ちょっとやめなさいよ、虫くらい村でも食べたでしょ」
「俺は食ってねぇ!食わされてたまるか!」
バンバンと机を叩いてドッタンバッタン大騒ぎする二人組というか一人の少年。
「あいつほんと元気だよな。そんでしょっちゅう見かけるんだから恐ろしいわ。俺の見てない所で何人かヤっちまってるんじゃないか」
「いっつも怒ってるよね」
『下品なのです』
どうもシチューの中の虫について文句を言ってるらしい。虫が入ってるなら虫だと分かるようにしておくべきだよな。俺も激しく同意するところなので店主をぶん殴っちまえと思いながら見てたんだが。
「てめぇ謝らないつもりか!許さねぇ!俺の正義が許さねぇ!」
大声で叫びながら抜きやがった。
「あれって血の気が多いとか喧嘩っ早いとは別の症状だと思わね?俺、すぐに武器を抜くやつって脅しが目的だと思ってたんだけど、あいつまじで切る気なのよな」
『早く止めたほうがいいのです。隣の女の子はいつも見ているだけなのです』
「あの子も変だよね!」
「常識人ぶってるが完全にお似合いの二人だぜ。まぁ嫌いじゃねぇんだが……、殺しは嫌いだな」
勇者のやつが剣を振り上げた所で尻をしばいてやめさせた。半分荒くれみたいな店主は力が抜けて床にへたり込んでいる。勇者の加護の影響だろう。
へたり込んだ料理店の店主相手に武器を振り上げて斬りつけようとした。殺意までは分からんが、一般人と生活が出来る精神状態じゃない。
「いってぇぇぇ!またお前か!毎回尻を叩くなよ!一緒に飯食おうぜ!」
「止めてくれてありがとう。いつも助かるわ」
一転して笑顔で話しかけてくる二人。俺は背中が冷たくなっていた。
そのまま二人と共に飯を食い、店主にはたっぷりと金貨を握らせてあいつには関わるな煽てておけと忠告しておいた。これで何件目だろうか。
「何がどうなってるんだろうか」
「なにがー?」
『元々勇者はあんなものなのです。頭がおかしいのです』
「フレアは素直なのに、ケトはどんどん口が悪くなっていくな。フレアはそのままでいろよ」
「うんー!」
『ケロッ!』
トラブルはあったものの、朝飯を済ませていつものダンジョンへ。
転移魔法陣、いわゆるポータルを使って最深攻略層へと飛ぶ。現在の階層は932階層だ。
随分深く潜ったがまだ終わりは見えない。俺の常識ではマントルとかの単語が浮かんでしまうくらいの位置だと思うんだが、それでもダンジョン内は高い天井と薄明るい空間が広がっている。
考えるまでもなく通常の空間ではない。馬鹿みたいに広いし、天井までは100メートルくらいあるだろう。だだっ広い中を走り回って進んでいく。
ビュオッ!
突然視界の先から巨大な槍が飛んで来たのを回避した。見えてから到達まで瞬きの間も無い猛烈な速度、しかし回避した槍は俺の後ろでピタリと静止。反転して再び襲ってくる。
「アレキサンダー流・ジェットストリームパンチ!」
大きく捻り込んだ拳からトルネードが発生して槍とぶつかり合う。その瞬間、槍が爆発し、半径1000メートルに達する巨大な火球が全てを焼き尽くす。衝撃波は空間そのものを揺さぶり、酸素は全て燃焼に費やされた。束の間の真空状態からの猛烈な圧力。生物の存在を許さない地獄の誕生だ。
『やったか!』
「やったよ」
ドシュ!
槍を投げた本人。身の丈3メートルは超える男の分厚い胸を後ろから手刀で貫いた。貫通した先で抉り抜いた心臓を握りつぶす。
この程度の環境を乗り越えられなければ、この場に立つことは出来ない。
『見事……!』
男は満足そうな顔で消えていく。ケトの話では本体ではなくダンジョンに生み出された複製という話であるが、こんなものをホイホイ複製するんじゃねぇよ。
男が消えた後に残るのは大玉スイカサイズの魔石。それと禍々しい槍と弓。そして金塊だ。ある程度深く潜ると金塊が落ちるようになり、換金の手間が大幅に下がって助かっている。この辺りの武器は売りたくないし。
ベッタリと付いた返り血も煙の様に消えていく。なんとなく惜しい気がして、拳の中のそれをベロリと舐めた。
『やめるのです。アレキサンダー、またおかしくなり始めているのです。アンナがいて本当によかったのです』
「む。まぁ、そうだな。あいつには感謝している」
「ぼくが一緒に寝てあげるのに―!」
「ガキには興味ねぇんだ。さあ、土産も欲しいし先に進むぞ」
たまに設置されている宝を探しつつ次の階層へのポータルを探す。結局この日も進めたのは1階層のみ。数百キロの金塊といくつかの武器、防具、魔道具を入手して脱出した。
「もうちょっとヤっていかねぇか?俺は寝なくていいしちょっと運動だけしてこようかな」
『アンナが待っているのです。最近1人じゃ寂しくて眠れないって言ってたのです』
「かーっ!仕方ねぇなぁ!姉ちゃんがそういうなら仕方ねぇ!仕方ねぇなぁ!」
「うるさいー」
宿に戻るのは面倒なんだが仕方ない、いつも通り魔石を1つだけ換金に出して帰る。折角クッソでかいのにほぼ毎日持ってくるせいで希少価値が無くなってしまった。実用価格ではあるが、お一つ金貨1000枚は超えるのだ。これは国に持って帰る用だな。
宿への道すがら、持ち帰る食料を購入していると声をかけられた。
「血舐めの旦那!相変わらず羽振りがいいスね、ちょいといい話があるんですが聞いてくれやせんか」
「誰だお前、羽振りがいい相手にいい話持ってきたって聞く必要ねぇだろ。金に困ってそうな奴のとこに行け」
「たはは!いやね、旦那の強さが必要なんで!3日後に30階層を突破するための大規模レイドパーティを募集してるんですよ。是非お力を貸してくだせぇ」
レイドパーティー、手強い守護者を大人数で倒して突破しようって奴だ。30階層と言えば何度も狩って売りつけた竜だ。俺がソロで何度も売りに行くもんだから勘違いしているのか?
「ブレスを止める方法はあるのか?言っておくが通路の全てを埋め尽くす規模のブレスだぞ。あれを受け止められないならその時点で全滅確定だ」
「それを旦那に止めてもらいたいんですよ!旦那なら簡単でしょ?」
「やだよ。お前らの戦いを見物出来るなら金を払うが、俺が前面に立つんじゃ意味がない。勇者の方に頼んだらどうなんだ、あいつもとっくに攻略済みだろ」
そこら中で勇者勇者と騒ぐので、町ではもう勇者という渾名で呼ばれている。本気で勇者と信じているやつはいないかも。
「あいつはちょっと…、みんなやり難いんですよ。旦那だって知ってるでしょ、この町の連中ですらあいつは避けてますよ」
「うーん。悪いやつでは、あるんだが、悪いやつだらけだしなんとかならない…か?無理か。この町でも殺しまでしようとする奴は少ないからなぁ」
「殺すやつは殺されやすからね、目につかねぇだけでしっかり処分されてますよ。へへっ、その点旦那は安心だ」
「調子のいい事を言うな。とにかく俺はお前たちを守る気はない。戦うならブレス対策は絶対に必要だぞ、盾や火除の魔道具で防ごうと思っているならその時点で全滅だ。魔法で防げ、それも10人20人合わせた魔法だ。」
「そんなにですかい?」
「信じないなら俺の言葉を舐めたという事だ。勝手に死ね」
「………肝に銘じやす」
買い物を済ませて宿に戻った。しっかり忠告したしあいつは真に受けた感じがしたが、……止まるのかねぇ。
その日もお姉ちゃん体温の幸せ布団で眠り、ダンジョンでの汚れを120%打ち払う事に成功した。お土産は身につけると空を飛べるようになるペンダントだ。ふわふわした感覚が面白かったが時速200キロくらいしか出ないしイラネ。500カラットくらいありそうな巨大な宝石で出来ていて、重いから売っちゃおうと言っていたが、果たして適正に買い取れる店は存在するんだろうか?
その3日後、結局レイドパーティが気になって見に来てしまった。
本来は国に帰らないといけない日だ。フレアとケトには謝罪して二人で帰ってもらった。出稼ぎの上がりを納品するのは王の努めなのだ。
そうして休みの日を潰し、鎧の大男に変身してやってきたレイドパーティ。
そこには懐かしいルバンカの姿があった。
朝だ。温かいベッドに眩しい光が差し込み、外ではスズメが鳴いている。
まさしく朝チュンだ。ミチミチに満ちた筋肉盛り盛りの肉体にしなだれかかる彼女の腕をのけて立ち上がる。
今日も完璧な朝だ。神聖おねショタ儀式のお陰で俺の心身は常に最高のコンディションを維持し続けている。アホな勇者が食い逃げしていても、アホな商人が大損アピをしながら買い叩こうとしてきても、全てを尻叩き一発で許せる余裕が俺にはある。
「毎日毎日アンナと寝やがって…、手を出したら殺してやるぜ…」
宿の階段を降りると余裕の無いハゲが居た。嫌だねこうはなりたく無い、俺は余裕のあるクールかつダンディズムを理解する男なのだ。
「俺を見ろよ、まだ下の毛も生えてねぇんだぞ」
「そういう発言が信用ならねぇんだよ!」
困ったんもんだ。今日は特にうるさいから外で飯を食おう。
「おはよう!アレキサンダー!」
『おはようなのです』
「あぁおはよう。何か食いたいものあるか」
「焼いたお肉!」
『果物がいいのです』
「俺はシチューだな」
シチューの美味い店に行く。躾は厳しく行う派だ。
目についた店に入ってシチューと焼き立てパンを注文する。この町はクソだが金さえ払えばいいサービスと美味い飯が出てくるんだ。それで十分である。
「ここのシチューはカリカリの何かが入っててうめぇんだよ。何かは知らねぇがうまい」
『それは木の中にいる虫を揚げた物なのです』
「これ美味しいよねー」
「ははは、これこれ、そんなわけなかろう」
そんなわけない。そんなわけないさ。でもちょっとよく見てみようかな。
運ばれてきた物を口に運ぶべきか悩んでいたら声が聞こえた。近頃はよく聞く声だ。
「おっさん!これ虫が入ってるじゃねぇか!」
「何だぁ小僧!このシャコ虫の幼虫は樹液しか食ってねぇ上等品だぞ!」
「誰が虫なんか食うか!ふざけんじゃねぇぞ!」
「ちょっとやめなさいよ、虫くらい村でも食べたでしょ」
「俺は食ってねぇ!食わされてたまるか!」
バンバンと机を叩いてドッタンバッタン大騒ぎする二人組というか一人の少年。
「あいつほんと元気だよな。そんでしょっちゅう見かけるんだから恐ろしいわ。俺の見てない所で何人かヤっちまってるんじゃないか」
「いっつも怒ってるよね」
『下品なのです』
どうもシチューの中の虫について文句を言ってるらしい。虫が入ってるなら虫だと分かるようにしておくべきだよな。俺も激しく同意するところなので店主をぶん殴っちまえと思いながら見てたんだが。
「てめぇ謝らないつもりか!許さねぇ!俺の正義が許さねぇ!」
大声で叫びながら抜きやがった。
「あれって血の気が多いとか喧嘩っ早いとは別の症状だと思わね?俺、すぐに武器を抜くやつって脅しが目的だと思ってたんだけど、あいつまじで切る気なのよな」
『早く止めたほうがいいのです。隣の女の子はいつも見ているだけなのです』
「あの子も変だよね!」
「常識人ぶってるが完全にお似合いの二人だぜ。まぁ嫌いじゃねぇんだが……、殺しは嫌いだな」
勇者のやつが剣を振り上げた所で尻をしばいてやめさせた。半分荒くれみたいな店主は力が抜けて床にへたり込んでいる。勇者の加護の影響だろう。
へたり込んだ料理店の店主相手に武器を振り上げて斬りつけようとした。殺意までは分からんが、一般人と生活が出来る精神状態じゃない。
「いってぇぇぇ!またお前か!毎回尻を叩くなよ!一緒に飯食おうぜ!」
「止めてくれてありがとう。いつも助かるわ」
一転して笑顔で話しかけてくる二人。俺は背中が冷たくなっていた。
そのまま二人と共に飯を食い、店主にはたっぷりと金貨を握らせてあいつには関わるな煽てておけと忠告しておいた。これで何件目だろうか。
「何がどうなってるんだろうか」
「なにがー?」
『元々勇者はあんなものなのです。頭がおかしいのです』
「フレアは素直なのに、ケトはどんどん口が悪くなっていくな。フレアはそのままでいろよ」
「うんー!」
『ケロッ!』
トラブルはあったものの、朝飯を済ませていつものダンジョンへ。
転移魔法陣、いわゆるポータルを使って最深攻略層へと飛ぶ。現在の階層は932階層だ。
随分深く潜ったがまだ終わりは見えない。俺の常識ではマントルとかの単語が浮かんでしまうくらいの位置だと思うんだが、それでもダンジョン内は高い天井と薄明るい空間が広がっている。
考えるまでもなく通常の空間ではない。馬鹿みたいに広いし、天井までは100メートルくらいあるだろう。だだっ広い中を走り回って進んでいく。
ビュオッ!
突然視界の先から巨大な槍が飛んで来たのを回避した。見えてから到達まで瞬きの間も無い猛烈な速度、しかし回避した槍は俺の後ろでピタリと静止。反転して再び襲ってくる。
「アレキサンダー流・ジェットストリームパンチ!」
大きく捻り込んだ拳からトルネードが発生して槍とぶつかり合う。その瞬間、槍が爆発し、半径1000メートルに達する巨大な火球が全てを焼き尽くす。衝撃波は空間そのものを揺さぶり、酸素は全て燃焼に費やされた。束の間の真空状態からの猛烈な圧力。生物の存在を許さない地獄の誕生だ。
『やったか!』
「やったよ」
ドシュ!
槍を投げた本人。身の丈3メートルは超える男の分厚い胸を後ろから手刀で貫いた。貫通した先で抉り抜いた心臓を握りつぶす。
この程度の環境を乗り越えられなければ、この場に立つことは出来ない。
『見事……!』
男は満足そうな顔で消えていく。ケトの話では本体ではなくダンジョンに生み出された複製という話であるが、こんなものをホイホイ複製するんじゃねぇよ。
男が消えた後に残るのは大玉スイカサイズの魔石。それと禍々しい槍と弓。そして金塊だ。ある程度深く潜ると金塊が落ちるようになり、換金の手間が大幅に下がって助かっている。この辺りの武器は売りたくないし。
ベッタリと付いた返り血も煙の様に消えていく。なんとなく惜しい気がして、拳の中のそれをベロリと舐めた。
『やめるのです。アレキサンダー、またおかしくなり始めているのです。アンナがいて本当によかったのです』
「む。まぁ、そうだな。あいつには感謝している」
「ぼくが一緒に寝てあげるのに―!」
「ガキには興味ねぇんだ。さあ、土産も欲しいし先に進むぞ」
たまに設置されている宝を探しつつ次の階層へのポータルを探す。結局この日も進めたのは1階層のみ。数百キロの金塊といくつかの武器、防具、魔道具を入手して脱出した。
「もうちょっとヤっていかねぇか?俺は寝なくていいしちょっと運動だけしてこようかな」
『アンナが待っているのです。最近1人じゃ寂しくて眠れないって言ってたのです』
「かーっ!仕方ねぇなぁ!姉ちゃんがそういうなら仕方ねぇ!仕方ねぇなぁ!」
「うるさいー」
宿に戻るのは面倒なんだが仕方ない、いつも通り魔石を1つだけ換金に出して帰る。折角クッソでかいのにほぼ毎日持ってくるせいで希少価値が無くなってしまった。実用価格ではあるが、お一つ金貨1000枚は超えるのだ。これは国に持って帰る用だな。
宿への道すがら、持ち帰る食料を購入していると声をかけられた。
「血舐めの旦那!相変わらず羽振りがいいスね、ちょいといい話があるんですが聞いてくれやせんか」
「誰だお前、羽振りがいい相手にいい話持ってきたって聞く必要ねぇだろ。金に困ってそうな奴のとこに行け」
「たはは!いやね、旦那の強さが必要なんで!3日後に30階層を突破するための大規模レイドパーティを募集してるんですよ。是非お力を貸してくだせぇ」
レイドパーティー、手強い守護者を大人数で倒して突破しようって奴だ。30階層と言えば何度も狩って売りつけた竜だ。俺がソロで何度も売りに行くもんだから勘違いしているのか?
「ブレスを止める方法はあるのか?言っておくが通路の全てを埋め尽くす規模のブレスだぞ。あれを受け止められないならその時点で全滅確定だ」
「それを旦那に止めてもらいたいんですよ!旦那なら簡単でしょ?」
「やだよ。お前らの戦いを見物出来るなら金を払うが、俺が前面に立つんじゃ意味がない。勇者の方に頼んだらどうなんだ、あいつもとっくに攻略済みだろ」
そこら中で勇者勇者と騒ぐので、町ではもう勇者という渾名で呼ばれている。本気で勇者と信じているやつはいないかも。
「あいつはちょっと…、みんなやり難いんですよ。旦那だって知ってるでしょ、この町の連中ですらあいつは避けてますよ」
「うーん。悪いやつでは、あるんだが、悪いやつだらけだしなんとかならない…か?無理か。この町でも殺しまでしようとする奴は少ないからなぁ」
「殺すやつは殺されやすからね、目につかねぇだけでしっかり処分されてますよ。へへっ、その点旦那は安心だ」
「調子のいい事を言うな。とにかく俺はお前たちを守る気はない。戦うならブレス対策は絶対に必要だぞ、盾や火除の魔道具で防ごうと思っているならその時点で全滅だ。魔法で防げ、それも10人20人合わせた魔法だ。」
「そんなにですかい?」
「信じないなら俺の言葉を舐めたという事だ。勝手に死ね」
「………肝に銘じやす」
買い物を済ませて宿に戻った。しっかり忠告したしあいつは真に受けた感じがしたが、……止まるのかねぇ。
その日もお姉ちゃん体温の幸せ布団で眠り、ダンジョンでの汚れを120%打ち払う事に成功した。お土産は身につけると空を飛べるようになるペンダントだ。ふわふわした感覚が面白かったが時速200キロくらいしか出ないしイラネ。500カラットくらいありそうな巨大な宝石で出来ていて、重いから売っちゃおうと言っていたが、果たして適正に買い取れる店は存在するんだろうか?
その3日後、結局レイドパーティが気になって見に来てしまった。
本来は国に帰らないといけない日だ。フレアとケトには謝罪して二人で帰ってもらった。出稼ぎの上がりを納品するのは王の努めなのだ。
そうして休みの日を潰し、鎧の大男に変身してやってきたレイドパーティ。
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