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第7話 4歳 分からせクソガキムーブ

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「かかって来い鬼共、心の底から屈服させてやる」

「よくもギニイをやりやがったな!」

「待て!こいつは強いぞ!見た目で侮るな!」

「うるさい!人間の餓鬼に侮られてたまるか!」

 襲ってくるのは槍を持った一体、統率は取れてないが馬鹿ばかりというわけじゃないようだな。

 だが遅い、待ってる間に1日分の睡眠を取れちまうぜ。



「お前一人でいいのか?お前はさっきのやつより強いのか?」

「油断したギニイをやったくらいで調子に乗るな!『地獄三連突!』」

 こちらに走っていた鬼の動きが急加速、いや急変動して疾風のような踏み込みから正確な三連突きが繰り出される!

「フン!フン!フン!やるじゃないか!ご褒美のスピニングトゥーホールドだ!」

 手首のスナップで槍を弾き、小外掛で青天させてすかさず片足を捻り上げる!

 グギィン!

「ぎゃあああぁっぁぁ!!やめろ!やめろぉぉ!!ああああぁぁいいいいい!!」

「ふふふ、どうだ痛いだろう?何故だか分かるか?俺に逆らったからだ!」

「ダニイ!!子供っ!ダニイを離せ!何か用があるんじゃないのか!?」

「話はある。だが、分からせてやらないと言うことを聞かないだろ?俺を侮る奴には体で教える必要が有る。ホレホレ」

「ぎえぇぇぇぇぇ!!すびばぜんでじだぁ!!負げばじだぁ!」

「そうかそうか反省したか。二度と俺に逆らうんじゃ…あれ?逆らったっけ?」

 別に逆らって無かったな。まぁいいどうせ分からせが必要だったんだ。



「次はどいつだ?俺としてはいっぺんにかかってくることをお勧めするが」

「待て!話し合おう!我々はこれ以上戦わない」

「駄目だぁ。話し合う気など無い、お前たちが屈服して俺の話を聞くんだよぉ」

 残念だったな、お前らは悪くない。だが盗賊まがいの事をやったんだ、覚悟くらいあるだろう。

「こないならこっちから行くぞ」

 上体を後ろに逸らし、鬼共の視線が僅かに上がった瞬間に最高速度で鬼共の間を抜ける。

 シュン!

「き、消えた!?」

「こっちだぁ」

 背中に飛びついて脇に手を差し込み、首の後ろでガッチリホールド。鬼の恐怖の顔が見れないのが残念だ。

「ひっ!やめろっ!助けてくれ!」

「駄目だね、飛燕飯綱落とし!」

 後ろに引き倒して着地、からの飛び上がり!10mは軽く飛び上がって蜻蛉を切る。後は真っ逆さまに落ちて脳天が砕かれるだけさ。

「2秒有るぞ、念仏を唱えな」

「ひゃいいいいいやああああ!いやだぁぁぁ!」

 ズドォン!!

 地面を揺らし脳天から胴体まで突き刺さり、尻を突き出した形で脚が落ちる。殺しちゃいない、土煙で誤魔化して派手に埋めただけだ。



「な、なんという事を!」

「あぁん?お前らだって抵抗する奴らはやっちまったんだろ?同じ事さ」

「化け物だ・・・」

「化け物?違うな、俺は悪魔だぁ」

 くっくっくっ、なんだか楽しくなってきちゃったなぁ!思っていた分からせショタは駄目になったがこういうのも悪くない。



「二人は逃げろ!父上に知らせるのだ!」

「ひ、姫!そんな事できませんっ!」

「馬鹿者!ここで全滅しては誰がこの危機を伝えるのだ!やつの狙いは私だ!行け!!」

「姫っ……!ご武運をっ!!」

 なんかあっちの方が楽しそうだな。だがそれも駄目だ。

 取り巻きの内の一人が駆け出そうと振り返った瞬間。

 ヒュッ!

 そこにいるのは俺だ。

「逃がすと思っていたのかぁ?」

「ヒッ!スバルカ行け!!」

 側近っぽい鬼は一瞬だけ怯んだが武器を捨ててしがみついてきた。いい覚悟だ、気に入ったぜ。しかもこいつ女か、見分けつかんかったわ。

「んー、もう十分だろう。終わりだ。あの逃げてるやつは止めた方がいいぞ」







 側近っぽい鬼女、略して側鬼をぺりっと剥がして戦闘終了を宣言した。

 目的は力の差を魂に刻むことなので、覚悟の決まってる連中が戦闘を放棄して逃げた時点で目的達成。

 埋まった鬼を引っこ抜き、スピニングトゥーホールドで泣きを入れた鬼を引きずって集める。腕をバキバキにしてしまったやばい状態の鬼はそっと隠す。



「さて話し合いの準備が出来たな。事情を全て話せ」

「お、お前は何を言っているのだ?頭がイカれているのか?」

 礼儀をしらねぇ鬼の姉ちゃんだ、いや姫と呼ばれていたし偉いやつならこんなもんなのか?

 姉ちゃん以外、側鬼達はブルブルガタガタ震えていて話をできる状態じゃないので、鬼姉ちゃんの胆力は相当なもんだ。やはり分からせておいてよかった。



「お前らは攫われた誰かを探しているんだろう?お前らに義理はないがそういうの嫌いでな。舐めた奴らがいるなら俺が潰すから話せ」

「わかった。我らは負けたのだ、勝者に従おう。みなもそうするように」

 鬼共は消沈しているが抵抗は無いようだ。ここまでしなくても勝者には従う奴らだったのかもしれない。



「強い子供。私はここから西にある赤鬼の部族長の娘、ルバンカだ。察しの通り攫われた妹を探している」

「俺はアレキサンダーだ。アレキサンダー大王と呼べ」

「アレキサンダー大王……。申し訳ありません、名のある王だったのですね。ご無礼をお許しください」

「冗談だ、アレキサンダーでいい」

 ちょっと気が早かったな。ぼくまだ4歳だし仕方ないね。

「………」

「いいから続き話せよ…、悪かったよ…」



「えっと、妹を攫ったのは交易に来ていた商人たちなんだ。大きな街に運び込むと考え、街道に張っている。他の街道も仲間たちが見張っている」

「あ~、それバレてるぞ。既に隠しルートで移送したか、お前たちが邪魔で運べないから懸賞金を賭けているのか。どっちか分からんけどな」

「………。そうか」

 俯いて黙りこくってしまった。自分たちでも分かっていたんだろう、こんな事で上手くいく可能性は低い。だからってどうしようもない事もある。







「アレキサンダー。お前はもしかして、勇者なのか?」
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