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昔の話(上)

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銀行勤めの厳格な父と結婚前は高校教師だった母。誰がどう見てもお堅い職業に就いていた両親は絵に描いたような学歴主義人間だった。

三歳で大学までエスカレーター式の幼稚園にお受験して合格、両親の望むとおりに入学した僕。しかし入学してたったの半年で父の転勤が決まってしまい、両親はそれはそれは大喧嘩をしたらしい。

それでも父の転勤先に付き添うことに決めた母は幼い自分を連れて地方へ引越し、散々文句を言いながら公立の幼稚園へ通わせた。

幼稚園が終わって昼過ぎに家へ帰ってくるとすぐさま習い事教室に放り込まれた。ピアノ、そろばん、プールに英会話、小学校受験用の学習塾。

もちろん帰宅すれば父が買ったドリルが待っていて、決められたページを終わらせない限り夕飯も風呂も寝ることも許されなかった。

母は「私立の子達は幼稚園で学ぶ事なの! 同い年なのに遅れをとって恥ずかしくないの!?」とよく叱っていた。

その頃は言葉の意味が理解出来ていなかったからただ叱られたことが悲しくて泣いていたのだけれど、今思えば幼稚園児に遅れるものにもないだろと冷静に思う。

とにかく両親は僕が他よりも劣っていることが許せなくて先を進んでいることが当たり前で、ほかと少しでも違うことがあれば狂ったように声を荒らげた。

そんな環境にいたせいからか、心の内をノートに綴るようになったのは割と早い段階からだった。恐らくそれを日記と呼ぶんだと知る前から何かしらノートに綴っていた気がする。

とにかく夜に机に向かって入れば両親の機嫌が良くて、でも勉強するのは嫌だったからノートに色な事を綴るようになっていた。


日記を書くようになった理由は、もう一つ心当たりがある。

小さい頃から自分にだけ見えていた"怖くて恐ろしいものの"せいだ。

小さい子供が暗闇や人気のない場所を怖がるのはよくある事だと考えていた両親は自分のことを"怖がりで臆病な繊細な子供"だと思ったらしい。

だからか、根性を叩き直すためと空手道場の体験に連れていかれた事もあった。幸いな事に僕があまりにも向いていなかったので、監督が「息子さんは他のスポーツの方が向いてますよ」と言ってくれて習い事が増えることはなかった。

まぁとにかく未就学児は自分以外の人には見えないイマジナリーフレンドがいるものだし、僕もその類だと思われたようだ。

怖いと泣けば呆れた顔で手を引いてくれたのを何となく覚えている。その頃はまだ良かった。まだ、幸せな記憶があった。けれど小学校へ入学した年に両親は態度を変えた。

小学校受験は父の3度目の転勤と被ってしまい、引越し先の公立の小学校に進学した入学式の日だった。

小学校は公立ながらに創立100年を超える伝統ある学校で、僕が見てきた"怖くて恐ろしいもの"が至る所に住み着いていた。

恐ろしさのあまり校舎の中へ入ることも出来ず、先生に宥められても頑なに入ろうとしない自分に、母は顔を真っ赤にして「いい加減にしなさい!」と高い声で怒鳴りつけ僕の頬を叩いた。

その日を境に僕が"怖くて恐ろしいもの"の話をすると、両親は僕を叩くようになった。そうして僕は"怖くて恐ろしいもの"は口にしてはいけないと学んだ。

けれどその記憶をただ自分の心の中や頭の中に留めておくのは恐ろしくて、恐ろしい記憶を頭の中から移そう必死にノートに綴っていたんだろう。


毎朝、登校班の六年生に手を引かれて泣きながら通ったその小学校は二年生の三学期で転校する事になった。

両親から転校の話をされた時は、もうあの学校へいかないでいいという事に飛び跳ねて喜んだ気がする。三年生に進級するタイミングで、今度は愛媛にある小学校へ入学した。

進学先の学校は前に比べると小綺麗で、創立されてからまだ十数年という事で怖いものはあまり住み着いていなかった。恐らくこの頃から、自分に見えていないそれが妖怪と呼ばれるものなのだと理解していたはずだ。

帰宅して習い事に行くまでの間の許された時間で見ていた妖怪アニメに登場する妖怪に何となく似ていたからだ。

妖怪を上手くスルーする方法も編み出した。

まず目を合わせないこと、目が合ってしまっても見えていないフリをすること、あからさまに怖がらないこと。あからさまに怖がれば奴らは近付いてきて、もっと怖がらせようとしてくるからだ。

そしてどうしても怖くて仕方ない時は「あっち行け!」と大きな声で叫べば、奴らは鉄板に落ちた水滴みたいにジュワッと弾けて消えてしまう。

そうやって独自の対応術を編み出した僕は、新しい学校で新しい友達にも恵まれ、それなりに楽しく過ごしていた。

事件が起きたのはその年の二学期、社会科見学で訪れた郷土史資料館でだった。


電車に乗ってやってきた町外れの郷土史資料館は五十年前からそこにあるらしく、入る前から何となく嫌な感じを感じていた。

嫌な感じ、というのはその場所やその建物、たまに人間なんかにもまとわりついている紫暗の靄のことだ。

まだ約八年程度しか生きていないけれど、これまでの経験からその禍々しい色をした靄がまとわりついている所には必ず妖怪がいるか悪いことが起きる。

前の小学校がそうだった。

入口で立ち止まっていれば先生から「松山くん、ちゃんと列に並んで」と注意を受けた。その隣には怖いと有名な学年主任の先生もいて、ぎゅっと掌を握る。


「松山くんどうしたの? 先行っちゃうよ?」


クラスの最後尾の女の子が不思議そうな顔をしながら通り過ぎた。

それでもその場から動こうとしない自分に困ったように眉を下げた担任は助けを求めるように学年主任へ視線を送り、その視線はやがて「さっさと歩け松山!」という学年主任の怒鳴り声に変換された。

怒鳴られたことで帰って弾みがついたのか、ぎゅっと目を瞑り中へ駆け込む。

恐る恐る目を開けると、そこには何の変哲もないよくある少し寂れた公民館のような施設が広がっているだけだった。


「あれ……?」


もっとおどろおどろしい光景を覚悟していたのに紫暗の靄は外に広がっていただけで、施設の中は埃臭い乾いた空気が広がっているだけだった。

確かに空気は重苦しいけれど、こういう施設は何処もこんな感じなんだろう。

少し拍子抜けしながらも用心深く周りを見渡せば、確かに影やすみに小さな妖がいる。けれどこちらには目もくれず、こそこそと影から影へ移っては物陰に身を潜めている。

彼らは自分たちに興味がないらしい。むしろ自分たちから隠れるように隅へ隅へと逃げていく。

どういうこと?と不思議に思いながらも、ちょっかいをかけてこないなら好都合だ。

何度か深呼吸をして自分を落ち着けて、いつものように知らないフリ見えないフリを決め込み歩き出した。


グループでの課題学習もお昼に近くの公園でお弁当を食べた時も何も問題はなかった。

視界の隅を妖怪たちがちょこちょこと走っているのは見えたけれど、やっぱり自分達には興味がないのか振り向きもしなかった。

昼食後は自由行動で館内を好きに見て回って良い事になっていたので、その頃登校班が同じという事で仲の良かった友達二人と見て回る事にした。

郷土史資料館は思ったより退屈な場所ではなく、昔の家屋や食事のレプリカ、社会の教科書でしか見ないような古い機械や道具、とにかく不思議なものが沢山があって面白かった。


「ねぇ、僕トイレ行ってくる。ここで待ってて!」

「なんだよー、分かったから早くしろよ!」

「まだ江戸時代のエリア行けてないんだからな!」

「分かってるよ、急ぐから絶対待っててよ!」


文句を言う二人に念を押して、天井から吊るされた誘導看板を頼りに走り出した。

トイレの前まで来て紫暗の靄がかかった扉を前に、やっぱり二人も誘えばよかったと顔を顰めて一歩後ずさる。


他の場所でも平気だったんだからこの場所も大丈夫だよね? でもやっぱり一人で中へ入るのは。我慢して戻る? でも……。


ぐるぐると悩んでいた丁度その時、別のクラスの同級生たちが走りながらトイレへ飛び込んだ。

あ、と小さく声を上げていそいそとそれに続き中へ入る。


恐る恐る中を見渡すもどこにも妖怪の姿はなく、堪らず安堵の息を吐いた。

一人きりにならないように急いで用を済ませて手を洗って外に出る。

小走りで元いた「鎌倉時代」のエリアへ戻る。他のクラスの同級生は何人か見かけたけれど、友達の姿はない。置いて行かれたらしい。

待っててって言ったのに、と唇をとがらせてずんずんと大股で「江戸時代」のエリアへ向かう。


ひどいや二人とも。いつもは僕のこと待たせるくせに、先に行っちゃうなんて。帰りのバスで絶対おかし交換してやんないんだから。


イーッと歯をむき出して頼りない白熱灯がチカチカする薄暗い廊下を突き進む。

「江戸時代エリア」と書かれた看板が見えたその時だった。


冷たい風が吹いた訳でもないのに、身体中がぶるりと震えて肌の表面が粟立った。

足が固まった。まるで縫い付けられたかのようにその場から動けなくなった。喉の奥が震えて「あ」と情けない声が漏れる。

いる、間違いなくそこにいる。これまで見てきたものとは比べ物にならないものがそこにいる。


行っちゃダメだ、すぐに逃げなきゃ。

振り返って、走り出さなきゃ。


膝の後ろががくがく震えて、それでも何とか一歩二歩と後ずさる。

振り返って駆け出そうとしたその時、背中にトンと何かが触れた。


「うわぁッ!」


悲鳴をあげてそのまま後ろへ転びそうになった所を、すんでのところで誰かに手首を捕まれ体勢を立て直した。

ズレたメガネの先に居たのは、呆れた顔をした担任の先生だった。


「ビックリするじゃない松山くん」


先生は僕の手を離すと息を吐いた。


「暗いんだから気を付けて。一緒に回ってた子達は?」

「あ……あの……僕」

「置いていかれちゃった? 一緒に探そうか?」

「あの、僕、戻るから」

「あら駄目よ。あそこに"この通路は一方通行です"って書いてあるでしょ? 戻っちゃ駄目って事よ。きっと皆先で待ってるから、先生と一緒に行こう」


ほらと肩を掴まれて背を押された。大人の力に抗えるはずもなくどんどん通路の終わりに近付いていく。


身体中が先へ進むなと言っている気がする。空気が重い、背中に岩を乗せられたような気分だ。


この先は危険だ。進んじゃダメだ。今すぐ逃げなきゃ。


「先生……ッ! やめて!」


咄嗟にきつく目を閉じた。


「大丈夫大丈夫。ほら、みんな待っててくれたじゃない」


担任のお気楽な声がして薄ら目を開けた。


「あ、やっと帰ってきた来光!」

「遅いから先行った! なにお前うんこー?」

「ほら松山くん、皆呼んでるわよ」



とん、と背中を押されてでも足は動かなかった。というか動けなかった。代わりに半開きの口から「あ……」と息が漏れる。

確認しなくてもわかる、妖怪だ。それも今まで見てきたものとは比べ物にもならないほと、凶悪で危険な妖怪だ。

人の姿をしている。人間の女の姿だ。白いボロ切れみたいな着物を着て、展示ケースの向こう側で俯いて座っている。髪が異常に長い。長いだけじゃない、伸び続けている。しゅるしゅると音を立てて蛇がとぐろを巻くように長い髪が展示ケースの中で溢れている。

何よりもその女から紫暗の靄が湧き出るように溢れ出していた。

ミシ、ミシ、とガラスが音を立てている。女の髪が中から展示ケースの保護ガラスを押している。

髪の隙間から見えた赤い目と目が合った。その瞬間全身の肌が泡立ち無意識に息が止まる。


『口惜しい、口惜しい口惜しい口惜しい。なぜこんな事に』


その女の色のない唇がそう動いた。その声はまるで黒板を爪で引っ掻いた時のような耳障りで背筋が凍る音だった。


『殺してやる、殺してやる、殺してやるッ!』


女が立ち上がった。ふらりと揺れるように一歩踏み出したかと思えば、バンッ!と音を立てて保護ガラスを叩いた。


「ほら松山くん、行くよ」

「来光ー! 早く来いよ面白いのあるぞ!」

「江戸時代のクシだってさクシ! 赤いんだぜ、うげぇキッショ~!」


女が展示ケースを覗き込む友人たちを睨んだ。



『────貴様らも私を愚弄するか』


背筋が凍った。まるで喉元にナイフを突きつけられているような緊迫感を感じる。

これは、殺気だ。


どうしよう、足が動かない。声が出ない。怖い。逃げたい。嫌だ嫌だ嫌だ。


『お前ら全員殺してやる! 殺してやる殺してやる殺してやるッ!』


女が保護ガラスを叩いた。ミシ、と音を立ててヒビが入る。

友人たちがやっとその異変に気が付いた。


「センセー、なんか今変な音した!」

「あそこのガラス割れてね!?」

「本当に?」


先生が二人に駆け寄った。二人はヒビが入ったガラスの隅を指差す。あらほんと、と先生は目を瞬かせた。


「スタッフの人呼んでくるから、離れて待ってて」

「はーい!」


友人二人と先生がこちらへ歩いてくる。

女がガラスにグッと体を寄せた。


『呪ってやる、殺してやる!』


ミシミシ、音を立ててガラスのひびが広がる。のんびり歩いてくる友人たちと先生。

危ない、割れる。割れたら、死ぬ。


「は、走って……」


絞り出した声はあまりにも情けない。声が震えてみんなに届かない。


「なにー? 何か言った?」

「どうしたの松山くん」


みんなが不思議そうな顔をした。

ガラスのヒビがどんどん広がる。

女が目を見開いた、血走った目だ。

また強くガラスを叩いた。蜘蛛の巣みたいに細かい線が走る。女の髪がぶわりと持ち上がったかと思うと、ヒビの入ったガラスの隙間からその細い髪が飛び出した。

ヒッ、と息を飲んだ。思わず後ろ尻もちをつく。



「どした来光?」

「何やってんだよー、大丈夫か?」



友人たちが笑いながら歩いてくる。

女のガラスを叩く手がどんどん激しくなる。


「はやく、にげて……ッ」


声が震えてやっぱり声が届かない。


「何言ってんだ?」

「松山くんどうしたの?」


皆が不思議そうに自分を見た。

次の瞬間、バキバキッと音を立てて展示ケース一面にひび割れが広がった。その音に気付いた皆が「え?」と戸惑うように振り返る。


「来るな、来るな……ッ!」


ガラスが弾ける硬質な音が響いた。展示場を悲鳴が劈く。


『お前ら全員殺してやる────!』

「あっちいけ、くるな、きえろぉおッ!」


きつく目を閉じ力の限りそう叫んだ。


────おそらくこれが、初めて言霊の力を使った日のことだ。それ以前もおそらく使っていたようだけれど、覚えている範囲で初めて力を使ったのは間違いなくこの時だった。

今ならわかるけれど、あの妖は付喪神だった。悲惨な死を遂げた持ち主の想念があの櫛に宿ったのだろう。

その後のことはあんり覚えていない。覚えてないというか記憶が無いからだ。あの後目が覚ますと僕は病院のベッドの上にいた。

友人二人と担任の先生も揃って気を失って近くの病院へ運び込まれたらしい。


ただ検査入院が明けて学校へ登校すると、仲の良かったクラスメイトはちらりと僕を見るなりすぐに目を逸らし、ほかの友達とヒソヒソ何かを喋っていた。

その日を境に僕に話しかけるクラスメイトはいなくなった。

最初は訳が分からなくて必死に自分から皆に話しかけたりしたけれど、なんの意味もなさなかった。僕は教室の中の幽霊になった。


何故そうなってしまったのかが分かったのは、転校してきて一年が経とうとしていた三学期の終わり頃だった。


────ガラスが割れそうだった時、友達と先生に「こっちに来るな」「きえろ」って言ったんだって。自分だけ助かろうとして、サイテーだよな。


放課後に忘れ物を取りに教室へ戻ってきた時、ほかのクラスの友達と喋っていたクラスメイトの会話を偶然聞いた。

それは違う、あの場に妖怪がいて皆を襲おうとしていたんだ、ガラスの奥にいたんだ本当だよ、だから僕はその妖怪に言ったんだ、こっちに来るなきえろって、先生と友達に言ったんじゃないよ。


必死に弁解した次の日、学校に来ると机の上が落書きだらけになっていた。休み時間にトイレに行けば、教科書とノートが落書きだらけになった。

「うそつき」「サイテー」「クズ」

小三の思いつく罵詈雑言なんてそんなものだけど、当時の自分の首を絞めるには十分すぎる言葉だった。

そして四年生になる前に、また転校が決まった。




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