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対峙
伍
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「空亡の残穢を取り込んで、私は力を得るんです。そして、誰も私を蔑まない強さを手に入れる。私は特別になる……ッ!」
拳を握り高らかに笑うその横顔にかける言葉が出てこなかった。
はじめは勤勉で努力家で真っ直ぐな少年だった。けれど努力も孤独も報われず、その結果道を誤ってしまった。
そしてそうなってしまった原因に、私たちがいたなんて。
「方賢さん……ッ! あんた間違ってる、そんなんで強くなったって!」
「うるさい、黙れ! そんな風に私を呼ぶなッ!」
泰紀くんの言葉を遮って方賢さんが吠えるように叫んだ。
顔の前で蜜柑を握りつぶすように腕に力をいれれば、泰紀くんを抑えていた形代が彼の頭を押さえつけて捻り潰そうと動いた。
次の瞬間、私の悲鳴は突然の爆発音でかき消された。
背中にのしかかっていた形代の重みが消えて、ハッと振り返れば形代が頭から燃えている。
「巫寿!」
慶賀くんだ。差し出された手を握って立ち上がる。
引っ張られるままに走り柱の影に滑り込めば、私の肩を引っ張った嘉正くんによって壁側へ追いやられる。
続々とみんなが滑り込んできて、形代はボンッと音を立てて燃え尽きた。
「皆大丈夫!?」
「どう見てもだいじょばないだろうがアホ慶賀! 背中燃えるかと思ったぞ!」
「あれ何したんだよッ!」
額に脂汗をかいた来光くんが目を見開きながら問いただす。
「亀世パイセンと作ったなんちゃって漢方爆弾! 前回の失敗を反省して作った!」
「反省してたら爆弾なんて作らないだろ!」
「今はそれどころじゃない!」
嘉正くんの怒鳴る声に二人は「分かってるよ!」と半ば噛み付くように返した。
「みんな、来光の御札の効果は?」
ポケットの上から触れて小さく頭を振る。皆同じように苦い顔で首を振った。
そっと柱から除けば、燃え尽きた形代の灰を指でなぞった方賢さんの怒りで染った目と目があった。
「まさか、方賢さんが真犯人だったなんて」
「悲しいけど、目の前で起きてることが事実だ」
「……うん」
厄除けの御札を渡してしまったこともあって、来光くんはかなりショックを受けているようだった。
他のみんなも困惑の色が顔に滲み出ている。
私だって、あの方賢さんが真犯人だったなんて信じたくなかった。
「どうする? すんなり解散とは行かなさそうだぜ」
ごうごうと音を立て瘴気を吹き出す鳥居、その下に立ちこちらを睨む方賢さん。
方賢さんたちは、私たちに「口封じ」すると言った。つまり私たちをここから生きて逃がすつもりはないということだ。
「もしあの鳥居の奥にあるものが空亡の残穢で間違いないなら、本当に僕達じゃ手に負えないよ!」
「ああ。だからっていつ来るのか来てくれるのかすら分からない助けを待っている時間も無いよ。俺たちでどうにかするしかない」
薫先生に連絡入れた。禄輪さんへも事情を話すよう眞奉にお願いもした。
眞奉なら必ず伝えてくれるだろうけれど、それがいつになるかなんて分からない。
ここから逃げ出すには、やっぱり私たちで何とかするしかないんだ。
「とりあえずこれ以上封印を破られないように方賢さんを取り押さえて、封印の御札を貼り直そう」
「よし、方賢さんは俺と慶賀でやる」
泰紀くんがそう名乗り出てた。
「分かった。俺も加わる、三人で行こう。その間に来光は封じの御札を作って。作ったことある?」
「ない、けど……本で読んだことはある。でもごめん、袱紗に入ってる予備の和紙しか持ってない。書くものがない」
あ、それなら、と自分の胸ポケットを探って「はい」とボールペンを差し出した。
神話舞の最終確認で打ち合わせをした時に、台本に書き込むために使ったのをポッケに入れたままにしていた。
「ボールペンでも大丈夫?」
「書ければ何でも大丈夫、ありがとう巫寿ちゃん」
よし、と嘉正くんがひとつ頷く。
「巫寿は瘴気を祓ってほしい。あの鳥居の封印、方賢さんが呪詞を奏上しなくても、もうすぐ破れるかもしれない」
険しい顔で鳥居を見上げそう言う。鳥居に残された御札はあと十枚くらい。溢れる瘴気に煽られて、音を立ててバタバタと音を立てている。
何もしなくても、瘴気の勢いだけで破れてしまいそうだった。
自分ひとりで出来るかどうかは不安だったけれど、私がやらなければいけないんだと自分奮い立たせた。
わかった、とひとつ頷いた。
「一斉に飛び出して一気に片をつけるよ」
みんなの顔つきが変わる。
さん、に────いちの瞬間、皆は強く床を蹴って柱の影から飛び出した。
慶賀くんと泰紀くんが先頭になって飛び出した。見計らったように方賢さんは形代に息を吹きかけ、私たちに向かって放つ。
むくむくと人の大きさなると、さっきと同じように私たちを押さえ込もうと迫ってくる。
「同じ手に何度も引っかかるかっての!」
そう叫んだ泰紀くんが拳を大きく振りかぶって、形代のど真ん中に打ち込む。ばり、と音を立てて穴が開けば、形代はポンと音を立てて元の大きさに萎んだ。
形代は便利だけれど外からの攻撃、とりわけ水や衝撃に弱い。押さえ込まれる前にこちらが攻撃できれば、大した敵にはならないんだとか。
ち、と舌打ちした方賢さんは次々と新しい形代を投げる。
その形代が目の前で大きくなり私に向かって手を広げた。「きゃっ」と悲鳴を上げてその瞬間、
「しゃがんで!」
嘉正くんの声に、咄嗟に頭を庇うようにしてその場に小さくなる。
聞いたことのない祝詞が聞こえたかと思えば、目の前の形代がぼうっと炎に包まれて燃えた。
「巫寿は俺たちの後ろにいて!」
「わ、わかった!」
前に出て戦う3人に心の中でお礼を叫ぶ。
3人が戦ってくれているんだから私も自分のすべきことをしなきゃ。
あたりを見回した。紫暗色の靄が鳥居の奥から吹き出し、霧がかかったように視界が悪い。
吸い込めば背筋がぞわりとして、皮膚が針で刺されるように痛む。瘴気は残穢の一種、長時間体に取り込めば死にいたることだってある。
私の役目はこの瘴気を祓うこと。
胸の前で2回鋭い柏手を打った。この瘴気を打ち祓う祝詞は、天地一切清浄祓だ。
「天清浄 地清浄 内外清浄 六根清浄と 祓給う」
全ての不浄を祓い清める、言祝ぎの祝詞。
「天清浄とは 天の七曜 九曜 二十八宿を 清め 地清浄とは 地の神 三十六神を 清め 内外清浄とは 家内三宝」
全ての不浄を洗い流してください、心地よい空気で満たしてください。
心の中でそう強く願う。
「大荒神を清め 六根清浄とは 其身 其體の 穢を 祓い給へ────!」
合わせる手のひらに力を込めた。
「あ、れ……?」
なにも変わらない目の前の景色に、戸惑い気味にそう呟いた。
瘴気は変わらずにごうごうと音を立てて溢れ出し、充満する空気はピリピリと肌を指す。
「なんで……!」
その瞬間、パン!と何かが弾ける音がして身体中に強い圧力がかかった。立っていられなくなって、その場に膝をついた。
目の前が回ってジェットコースターが落ちる時のように内臓がふわりと浮かぶ感覚がする。誰かが肩にのしかかっているみたいだ、うまく立ち上がることができない。
う、と誰かのうめき声がして震えながら顔を上げる。みんなが床に倒れ込んでいるのが見えた。
結界の御札が、また破れたんだ。
轟音が響き渡り、瘴気は決壊したダムから流れ出る水のように吹き出した。
「ああ、素晴らしい……ッ! もう少し、あと少しで封印が解ける!」
恍惚とした表情で方賢さんは諸手を広げた。
どうして?
祝詞は一言一句間違いなく奏上した。前はこの祝詞を唱えれば、全ての瘴気を払うことが出来たはずなのに。
「巫寿さん、私は唯一あなたの存在を恐れていたんです。でも、大したことは無かったようですね」
光の灯らない瞳が私を見据える。方賢さんは嬉しそうににこりと笑った。
「これなら、簡単に始末できそうだ」
殺意の籠った視線に、喉の奥がひゅっと鳴る。
頭の中が真っ白になった。
「犬な鞍掛けて 猫な其り引かち」
聞いた事のないリズムの祝詞が方賢さんによって紡がれる。その声は怒りに震えるように太く低く、負の感情で満ちていた。
呪歌だとすぐに分かった。
なんで、どうして。どうしてこんなことになってしまったの? 何とかしなきゃ、この瘴気を祓わなきゃ。方賢さんを止めなきゃ。でも祝詞は効かなかった。じゃあどうしたらいい? 私に何が出来る?
「死旗押し立てて イラブドウかち────!」
「巫寿ちゃんあぶないッ!」
名前が呼ばれたと同時に強く背中を押された。前のめりになって床の上に倒れこめば、すぐ隣からうめき声が聞こえる。
はっと振り返れば、来光くんが左肩を抑えて蹲っていた。
「来光くん……っ!」
「だ、大丈夫! 左腕だけで済んだ……っ! でもごめん、柏手が打てないから、これを貼るのは厳しいかも……っ」
私が立ち竦んだせいで、来光くんが呪いを被ったんだ。
額に汗を浮かべてそれでも笑顔をうかべる来光くんに涙がこぼれそうになった。
私は皆に守られてばかりだ。お兄ちゃんの時も、お父さんとお母さんの時も、禄輪さんと出会った時も。
みんなが必死になって戦っているのに、何一つ役に立てていない。
私を助けてくれたみんな、仲間に引き入れてくれたみんな。
私の言葉を信じてくれたみんなまで、また失うの?
────そんなの、絶対に嫌だ。
滲む目頭を手の甲で拭った。
「来光くん、この御札どうしたらいい!?」
来光くんが右手に握っていた御札を受け取て、自分を奮い立たせるように大きな声でそう尋ねた。
「鳥居に、貼り付けるだけで良い……! 上手くいけば、結界が瘴気を封じてくれるっ」
「わかった……っ!」
まるで台風の中にいるみたいだ。少しでも気を許せば、吹き出す瘴気に煽られて体が飛ばされてしまいそうだ。
震える膝に力を込めて立ち上がった。
「ああ、大人しく倒れて死ねばいいものを」
憎しみの籠った声が忌々しそうに私の名前を呼んだ。
胸の前で手を合わせた方賢さん。
「ムゾや死んだかの 生まれ稲刈りが……」
地を這うような低い声、その声が紡ぐのは呪歌だ。
まともに受ければ来光くんのように呪いを被ってしまう。けれどその呪歌に対応する術を私は知らない。このままじゃ、私まで動けなくなってしまう。
く、と歯を食いしばって御札を強く握りしめる。
「吾ぬや奥山に 霧に又なりが!」
最後の一言が読まれるのとほぼ同時に、エネルギーを凝縮させたようなどす黒い塊が、一気に放出される。
くる、と身構えたその瞬間、別の声が響いた。
「だまが歌うたいや 歌やりばきくしが 鶏ぬ卵なてが しむるいちゃまし……ッ!」
その声の主を振り返った。
苦しげに顔を歪めた嘉正くんが、頭だけを起こして叫ぶようにそれを唱えていた。詞は呪歌と同じ調子だけれど、唱える声は陽だまりのように心地よい。
その凝縮された呪いの塊は、私の目の前でパン!と弾け飛んだ。
光の粒となり空気中に溶けるそれに、嘉正くんがその呪いを霧散させたのだと気が付く。
「巫寿……っ!」
顔を顰めた嘉正くんが叫んだ。ごほっ、と咳込めば口のすみに赤い血が流れる。
夢で見た景色と重なって、心臓がぎゅっと締め付けられる感覚に陥った。
「行け、巫寿!」
その言葉に両頬を叩かれたような心地がして手足に力が宿った。
夢で見た景色とは違う。嘉正くんはあの夢で、私に「逃げろ」と行った。そうだ。あの夢通りには行かせない。
膝の裏に力を込めて一歩一歩と前に進む。激しい瘴気の力に、自分が立っているのか歩いているのかも分からない。
「あああああッ! 忌々しい忌々しい忌々しい! なぜお前たちは、いつも私の邪魔をするッ!」
髪をかき乱した方賢さんの周りをまるで燃え盛る炎のように瘴気が渦巻いた。まるで負の感情に、瘴気が寄せ集められているようだった。
周囲に溢れかえっているだけでも私たちは身動きすらままならないのに、あんなにも身体中に集まれば想像を絶する痛みや苦しみがあるはずだ。
「方賢さんもうやめて、このままだと方賢さんもっ」
「黙れ! 死ね、死ね、死ねッ!」
怒りに満ち溢れたその怒号がどうしてか胸に突き刺さる。
まるで今にも泣き出しそうなのを隠して、叫んでいるように聞こえたからだ。
「方賢さん……ッ!」
その瞬間、パン!とまた御札が弾け飛ぶ音がして、上から叩き潰されるような圧力がかかった。
「……く、ああッ!」
方賢さんの悲鳴が聞こえたかと思えば、抗うことも出来ず床に叩きつけられた。まるで岩の下敷きにでもなったかのように指ひとつ動かせない。
目だけで鳥居を確認すれば、残された札は1枚になっていた。
方賢さんは床に倒れている。まるで蛆虫が集るかのように倒れた方賢さんの周りに瘴気が渦巻いた。かろうじて見えたその指先はどす黒く染まり、ぴくりとも動かない。
身体中を駆け巡る不快な感覚に目尻から涙がこぼれた。息が出来ない、苦しい。全身に針を刺されているようだ。目が回る、気持ち悪い。視界が徐々に狭まっていく。気が遠くなる。
もう駄目だ、一歩も動けない。
皆が繋いでくれた道なのに、私はまた何も出来ず終わってしまうんだ。
私が倒れれば、この後どうなってしまうんだろうか。
この瘴気が溢れ出して学者も社頭も包み込まれて、奥に封印されていた空亡の残穢が表へ出てきてしまうんだ。
そうしたら……どうなる?
きっと大丈夫だ。薫先生や禄輪さんが駆けつけてくれるに違いない。社頭には沢山の神職さまがいる。誰かがこの事態をおさめてくれるはずだ。
でも、それが間に合わなければ……?
また誰かが犠牲になる。
もしかしたら私のように誰かの大切な人が傷付くかもしれない。誰かは大切な人を失って、心に深い傷を負うかもしれない。
お父さんとお母さんを失って、お兄ちゃんまで失いかけた。私はその苦しみや悲しみを誰よりも知っているはずだ。
何よりも私はこれ以上、大切な人を失いたくない。
守りたい。強くなりたい。大切な人たちを守れるだけの強さが欲しい。
変わりたい。成長したい。守ってもらってばかりの自分から、大切な人たちを守れるだけの強い人間に。
渾身の力を振り絞って、震える指で柏手を打った。
「掛けまくも畏き 学起神社の大前を 拝み奉りて 恐み恐みも白さく……ッ!」
動けないなら精一杯手を伸ばせ。
「大神等の広き厚き……ッ、御恵を 辱み奉り 高き尊き神教のまにまに 天皇を仰ぎ奉り────」
祝詞の効果が効かないなら、知っている祝詞を叫び続けろ。
響け、届け。
「直き正しき眞心もちて 誠の道に違ふことなく 負ひ持つ業に励ましめ給ひ 家門高く身健に 世のため人のために尽さしめ給へと 恐み恐みも白す────!」
りん、と鈴の音が響いた。まるで頭の中に直接響いたかのようにそれはクリアに聞こえた。
次の瞬間、瘴気の圧力とは違うとてつもない圧迫感を感じて息を詰まらせた。
世界が生まれた瞬間に吹き抜けたような何にも染まらない清浄な風がどこからともなく吹き抜ける。それは春風のように温かく秋風のように冴え渡り、清水のように清らかで子守唄のように心地よい。
その風は瘴気を吹き飛ばすのではなく、まろい光を発しながら柔らかく包み込んだ。光は細かい粒になって、小雨のように降り注ぐ。その光の粒がまた瘴気を包み込み消えてゆく。
浄化の雨のようだ、とそれをぼんやり見上げた。
りん、りん、とまるで足音のようにすずが鳴り響き近付いてくる。その度に胸が詰まり、圧迫感を感じる。
瘴気の時とは違う、それは畏怖で体が強ばるような感覚だった。
抗えない巨大な力が、迫ってきている。
やがて頭の横で鈴の音がやんだ。
気配を感じるが、それはまるで濁流の中にいるような激しいエネルギーを発している。
人ならざるものなのだとすぐに分かった。
圧迫感が強すぎるあまり、顔を動かすことすら出来ない。するとその人は、すうっと手を差し伸べて私の額に触れた。
まるで泉の中に手を入れた時のように、ひんやりと心地よい感覚がした。
『ようやった、巫寿』
木管楽器のような心地よい響きの声だった。
それを聞いた瞬間、ああ、もう大丈夫なのだと身体中の力が抜ける。
『愛い子らよ。今しばし、深い眠りに』
その指が私の瞼にそっと触れた瞬間、意識が頭の奥底へ引っ張られる感覚がして誘われる眠気に身を任せた。
「空亡の残穢を取り込んで、私は力を得るんです。そして、誰も私を蔑まない強さを手に入れる。私は特別になる……ッ!」
拳を握り高らかに笑うその横顔にかける言葉が出てこなかった。
はじめは勤勉で努力家で真っ直ぐな少年だった。けれど努力も孤独も報われず、その結果道を誤ってしまった。
そしてそうなってしまった原因に、私たちがいたなんて。
「方賢さん……ッ! あんた間違ってる、そんなんで強くなったって!」
「うるさい、黙れ! そんな風に私を呼ぶなッ!」
泰紀くんの言葉を遮って方賢さんが吠えるように叫んだ。
顔の前で蜜柑を握りつぶすように腕に力をいれれば、泰紀くんを抑えていた形代が彼の頭を押さえつけて捻り潰そうと動いた。
次の瞬間、私の悲鳴は突然の爆発音でかき消された。
背中にのしかかっていた形代の重みが消えて、ハッと振り返れば形代が頭から燃えている。
「巫寿!」
慶賀くんだ。差し出された手を握って立ち上がる。
引っ張られるままに走り柱の影に滑り込めば、私の肩を引っ張った嘉正くんによって壁側へ追いやられる。
続々とみんなが滑り込んできて、形代はボンッと音を立てて燃え尽きた。
「皆大丈夫!?」
「どう見てもだいじょばないだろうがアホ慶賀! 背中燃えるかと思ったぞ!」
「あれ何したんだよッ!」
額に脂汗をかいた来光くんが目を見開きながら問いただす。
「亀世パイセンと作ったなんちゃって漢方爆弾! 前回の失敗を反省して作った!」
「反省してたら爆弾なんて作らないだろ!」
「今はそれどころじゃない!」
嘉正くんの怒鳴る声に二人は「分かってるよ!」と半ば噛み付くように返した。
「みんな、来光の御札の効果は?」
ポケットの上から触れて小さく頭を振る。皆同じように苦い顔で首を振った。
そっと柱から除けば、燃え尽きた形代の灰を指でなぞった方賢さんの怒りで染った目と目があった。
「まさか、方賢さんが真犯人だったなんて」
「悲しいけど、目の前で起きてることが事実だ」
「……うん」
厄除けの御札を渡してしまったこともあって、来光くんはかなりショックを受けているようだった。
他のみんなも困惑の色が顔に滲み出ている。
私だって、あの方賢さんが真犯人だったなんて信じたくなかった。
「どうする? すんなり解散とは行かなさそうだぜ」
ごうごうと音を立て瘴気を吹き出す鳥居、その下に立ちこちらを睨む方賢さん。
方賢さんたちは、私たちに「口封じ」すると言った。つまり私たちをここから生きて逃がすつもりはないということだ。
「もしあの鳥居の奥にあるものが空亡の残穢で間違いないなら、本当に僕達じゃ手に負えないよ!」
「ああ。だからっていつ来るのか来てくれるのかすら分からない助けを待っている時間も無いよ。俺たちでどうにかするしかない」
薫先生に連絡入れた。禄輪さんへも事情を話すよう眞奉にお願いもした。
眞奉なら必ず伝えてくれるだろうけれど、それがいつになるかなんて分からない。
ここから逃げ出すには、やっぱり私たちで何とかするしかないんだ。
「とりあえずこれ以上封印を破られないように方賢さんを取り押さえて、封印の御札を貼り直そう」
「よし、方賢さんは俺と慶賀でやる」
泰紀くんがそう名乗り出てた。
「分かった。俺も加わる、三人で行こう。その間に来光は封じの御札を作って。作ったことある?」
「ない、けど……本で読んだことはある。でもごめん、袱紗に入ってる予備の和紙しか持ってない。書くものがない」
あ、それなら、と自分の胸ポケットを探って「はい」とボールペンを差し出した。
神話舞の最終確認で打ち合わせをした時に、台本に書き込むために使ったのをポッケに入れたままにしていた。
「ボールペンでも大丈夫?」
「書ければ何でも大丈夫、ありがとう巫寿ちゃん」
よし、と嘉正くんがひとつ頷く。
「巫寿は瘴気を祓ってほしい。あの鳥居の封印、方賢さんが呪詞を奏上しなくても、もうすぐ破れるかもしれない」
険しい顔で鳥居を見上げそう言う。鳥居に残された御札はあと十枚くらい。溢れる瘴気に煽られて、音を立ててバタバタと音を立てている。
何もしなくても、瘴気の勢いだけで破れてしまいそうだった。
自分ひとりで出来るかどうかは不安だったけれど、私がやらなければいけないんだと自分奮い立たせた。
わかった、とひとつ頷いた。
「一斉に飛び出して一気に片をつけるよ」
みんなの顔つきが変わる。
さん、に────いちの瞬間、皆は強く床を蹴って柱の影から飛び出した。
慶賀くんと泰紀くんが先頭になって飛び出した。見計らったように方賢さんは形代に息を吹きかけ、私たちに向かって放つ。
むくむくと人の大きさなると、さっきと同じように私たちを押さえ込もうと迫ってくる。
「同じ手に何度も引っかかるかっての!」
そう叫んだ泰紀くんが拳を大きく振りかぶって、形代のど真ん中に打ち込む。ばり、と音を立てて穴が開けば、形代はポンと音を立てて元の大きさに萎んだ。
形代は便利だけれど外からの攻撃、とりわけ水や衝撃に弱い。押さえ込まれる前にこちらが攻撃できれば、大した敵にはならないんだとか。
ち、と舌打ちした方賢さんは次々と新しい形代を投げる。
その形代が目の前で大きくなり私に向かって手を広げた。「きゃっ」と悲鳴を上げてその瞬間、
「しゃがんで!」
嘉正くんの声に、咄嗟に頭を庇うようにしてその場に小さくなる。
聞いたことのない祝詞が聞こえたかと思えば、目の前の形代がぼうっと炎に包まれて燃えた。
「巫寿は俺たちの後ろにいて!」
「わ、わかった!」
前に出て戦う3人に心の中でお礼を叫ぶ。
3人が戦ってくれているんだから私も自分のすべきことをしなきゃ。
あたりを見回した。紫暗色の靄が鳥居の奥から吹き出し、霧がかかったように視界が悪い。
吸い込めば背筋がぞわりとして、皮膚が針で刺されるように痛む。瘴気は残穢の一種、長時間体に取り込めば死にいたることだってある。
私の役目はこの瘴気を祓うこと。
胸の前で2回鋭い柏手を打った。この瘴気を打ち祓う祝詞は、天地一切清浄祓だ。
「天清浄 地清浄 内外清浄 六根清浄と 祓給う」
全ての不浄を祓い清める、言祝ぎの祝詞。
「天清浄とは 天の七曜 九曜 二十八宿を 清め 地清浄とは 地の神 三十六神を 清め 内外清浄とは 家内三宝」
全ての不浄を洗い流してください、心地よい空気で満たしてください。
心の中でそう強く願う。
「大荒神を清め 六根清浄とは 其身 其體の 穢を 祓い給へ────!」
合わせる手のひらに力を込めた。
「あ、れ……?」
なにも変わらない目の前の景色に、戸惑い気味にそう呟いた。
瘴気は変わらずにごうごうと音を立てて溢れ出し、充満する空気はピリピリと肌を指す。
「なんで……!」
その瞬間、パン!と何かが弾ける音がして身体中に強い圧力がかかった。立っていられなくなって、その場に膝をついた。
目の前が回ってジェットコースターが落ちる時のように内臓がふわりと浮かぶ感覚がする。誰かが肩にのしかかっているみたいだ、うまく立ち上がることができない。
う、と誰かのうめき声がして震えながら顔を上げる。みんなが床に倒れ込んでいるのが見えた。
結界の御札が、また破れたんだ。
轟音が響き渡り、瘴気は決壊したダムから流れ出る水のように吹き出した。
「ああ、素晴らしい……ッ! もう少し、あと少しで封印が解ける!」
恍惚とした表情で方賢さんは諸手を広げた。
どうして?
祝詞は一言一句間違いなく奏上した。前はこの祝詞を唱えれば、全ての瘴気を払うことが出来たはずなのに。
「巫寿さん、私は唯一あなたの存在を恐れていたんです。でも、大したことは無かったようですね」
光の灯らない瞳が私を見据える。方賢さんは嬉しそうににこりと笑った。
「これなら、簡単に始末できそうだ」
殺意の籠った視線に、喉の奥がひゅっと鳴る。
頭の中が真っ白になった。
「犬な鞍掛けて 猫な其り引かち」
聞いた事のないリズムの祝詞が方賢さんによって紡がれる。その声は怒りに震えるように太く低く、負の感情で満ちていた。
呪歌だとすぐに分かった。
なんで、どうして。どうしてこんなことになってしまったの? 何とかしなきゃ、この瘴気を祓わなきゃ。方賢さんを止めなきゃ。でも祝詞は効かなかった。じゃあどうしたらいい? 私に何が出来る?
「死旗押し立てて イラブドウかち────!」
「巫寿ちゃんあぶないッ!」
名前が呼ばれたと同時に強く背中を押された。前のめりになって床の上に倒れこめば、すぐ隣からうめき声が聞こえる。
はっと振り返れば、来光くんが左肩を抑えて蹲っていた。
「来光くん……っ!」
「だ、大丈夫! 左腕だけで済んだ……っ! でもごめん、柏手が打てないから、これを貼るのは厳しいかも……っ」
私が立ち竦んだせいで、来光くんが呪いを被ったんだ。
額に汗を浮かべてそれでも笑顔をうかべる来光くんに涙がこぼれそうになった。
私は皆に守られてばかりだ。お兄ちゃんの時も、お父さんとお母さんの時も、禄輪さんと出会った時も。
みんなが必死になって戦っているのに、何一つ役に立てていない。
私を助けてくれたみんな、仲間に引き入れてくれたみんな。
私の言葉を信じてくれたみんなまで、また失うの?
────そんなの、絶対に嫌だ。
滲む目頭を手の甲で拭った。
「来光くん、この御札どうしたらいい!?」
来光くんが右手に握っていた御札を受け取て、自分を奮い立たせるように大きな声でそう尋ねた。
「鳥居に、貼り付けるだけで良い……! 上手くいけば、結界が瘴気を封じてくれるっ」
「わかった……っ!」
まるで台風の中にいるみたいだ。少しでも気を許せば、吹き出す瘴気に煽られて体が飛ばされてしまいそうだ。
震える膝に力を込めて立ち上がった。
「ああ、大人しく倒れて死ねばいいものを」
憎しみの籠った声が忌々しそうに私の名前を呼んだ。
胸の前で手を合わせた方賢さん。
「ムゾや死んだかの 生まれ稲刈りが……」
地を這うような低い声、その声が紡ぐのは呪歌だ。
まともに受ければ来光くんのように呪いを被ってしまう。けれどその呪歌に対応する術を私は知らない。このままじゃ、私まで動けなくなってしまう。
く、と歯を食いしばって御札を強く握りしめる。
「吾ぬや奥山に 霧に又なりが!」
最後の一言が読まれるのとほぼ同時に、エネルギーを凝縮させたようなどす黒い塊が、一気に放出される。
くる、と身構えたその瞬間、別の声が響いた。
「だまが歌うたいや 歌やりばきくしが 鶏ぬ卵なてが しむるいちゃまし……ッ!」
その声の主を振り返った。
苦しげに顔を歪めた嘉正くんが、頭だけを起こして叫ぶようにそれを唱えていた。詞は呪歌と同じ調子だけれど、唱える声は陽だまりのように心地よい。
その凝縮された呪いの塊は、私の目の前でパン!と弾け飛んだ。
光の粒となり空気中に溶けるそれに、嘉正くんがその呪いを霧散させたのだと気が付く。
「巫寿……っ!」
顔を顰めた嘉正くんが叫んだ。ごほっ、と咳込めば口のすみに赤い血が流れる。
夢で見た景色と重なって、心臓がぎゅっと締め付けられる感覚に陥った。
「行け、巫寿!」
その言葉に両頬を叩かれたような心地がして手足に力が宿った。
夢で見た景色とは違う。嘉正くんはあの夢で、私に「逃げろ」と行った。そうだ。あの夢通りには行かせない。
膝の裏に力を込めて一歩一歩と前に進む。激しい瘴気の力に、自分が立っているのか歩いているのかも分からない。
「あああああッ! 忌々しい忌々しい忌々しい! なぜお前たちは、いつも私の邪魔をするッ!」
髪をかき乱した方賢さんの周りをまるで燃え盛る炎のように瘴気が渦巻いた。まるで負の感情に、瘴気が寄せ集められているようだった。
周囲に溢れかえっているだけでも私たちは身動きすらままならないのに、あんなにも身体中に集まれば想像を絶する痛みや苦しみがあるはずだ。
「方賢さんもうやめて、このままだと方賢さんもっ」
「黙れ! 死ね、死ね、死ねッ!」
怒りに満ち溢れたその怒号がどうしてか胸に突き刺さる。
まるで今にも泣き出しそうなのを隠して、叫んでいるように聞こえたからだ。
「方賢さん……ッ!」
その瞬間、パン!とまた御札が弾け飛ぶ音がして、上から叩き潰されるような圧力がかかった。
「……く、ああッ!」
方賢さんの悲鳴が聞こえたかと思えば、抗うことも出来ず床に叩きつけられた。まるで岩の下敷きにでもなったかのように指ひとつ動かせない。
目だけで鳥居を確認すれば、残された札は1枚になっていた。
方賢さんは床に倒れている。まるで蛆虫が集るかのように倒れた方賢さんの周りに瘴気が渦巻いた。かろうじて見えたその指先はどす黒く染まり、ぴくりとも動かない。
身体中を駆け巡る不快な感覚に目尻から涙がこぼれた。息が出来ない、苦しい。全身に針を刺されているようだ。目が回る、気持ち悪い。視界が徐々に狭まっていく。気が遠くなる。
もう駄目だ、一歩も動けない。
皆が繋いでくれた道なのに、私はまた何も出来ず終わってしまうんだ。
私が倒れれば、この後どうなってしまうんだろうか。
この瘴気が溢れ出して学者も社頭も包み込まれて、奥に封印されていた空亡の残穢が表へ出てきてしまうんだ。
そうしたら……どうなる?
きっと大丈夫だ。薫先生や禄輪さんが駆けつけてくれるに違いない。社頭には沢山の神職さまがいる。誰かがこの事態をおさめてくれるはずだ。
でも、それが間に合わなければ……?
また誰かが犠牲になる。
もしかしたら私のように誰かの大切な人が傷付くかもしれない。誰かは大切な人を失って、心に深い傷を負うかもしれない。
お父さんとお母さんを失って、お兄ちゃんまで失いかけた。私はその苦しみや悲しみを誰よりも知っているはずだ。
何よりも私はこれ以上、大切な人を失いたくない。
守りたい。強くなりたい。大切な人たちを守れるだけの強さが欲しい。
変わりたい。成長したい。守ってもらってばかりの自分から、大切な人たちを守れるだけの強い人間に。
渾身の力を振り絞って、震える指で柏手を打った。
「掛けまくも畏き 学起神社の大前を 拝み奉りて 恐み恐みも白さく……ッ!」
動けないなら精一杯手を伸ばせ。
「大神等の広き厚き……ッ、御恵を 辱み奉り 高き尊き神教のまにまに 天皇を仰ぎ奉り────」
祝詞の効果が効かないなら、知っている祝詞を叫び続けろ。
響け、届け。
「直き正しき眞心もちて 誠の道に違ふことなく 負ひ持つ業に励ましめ給ひ 家門高く身健に 世のため人のために尽さしめ給へと 恐み恐みも白す────!」
りん、と鈴の音が響いた。まるで頭の中に直接響いたかのようにそれはクリアに聞こえた。
次の瞬間、瘴気の圧力とは違うとてつもない圧迫感を感じて息を詰まらせた。
世界が生まれた瞬間に吹き抜けたような何にも染まらない清浄な風がどこからともなく吹き抜ける。それは春風のように温かく秋風のように冴え渡り、清水のように清らかで子守唄のように心地よい。
その風は瘴気を吹き飛ばすのではなく、まろい光を発しながら柔らかく包み込んだ。光は細かい粒になって、小雨のように降り注ぐ。その光の粒がまた瘴気を包み込み消えてゆく。
浄化の雨のようだ、とそれをぼんやり見上げた。
りん、りん、とまるで足音のようにすずが鳴り響き近付いてくる。その度に胸が詰まり、圧迫感を感じる。
瘴気の時とは違う、それは畏怖で体が強ばるような感覚だった。
抗えない巨大な力が、迫ってきている。
やがて頭の横で鈴の音がやんだ。
気配を感じるが、それはまるで濁流の中にいるような激しいエネルギーを発している。
人ならざるものなのだとすぐに分かった。
圧迫感が強すぎるあまり、顔を動かすことすら出来ない。するとその人は、すうっと手を差し伸べて私の額に触れた。
まるで泉の中に手を入れた時のように、ひんやりと心地よい感覚がした。
『ようやった、巫寿』
木管楽器のような心地よい響きの声だった。
それを聞いた瞬間、ああ、もう大丈夫なのだと身体中の力が抜ける。
『愛い子らよ。今しばし、深い眠りに』
その指が私の瞼にそっと触れた瞬間、意識が頭の奥底へ引っ張られる感覚がして誘われる眠気に身を任せた。
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