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2時間目②

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ハーバートの疑似自慰行為を眺めていると、コリーヌの頬も少し熱くなってしまう。
ああ、もう!授業よ、授業!
コリーヌはなるべく顔色を変えないようにハーバートに質問する。
「こういう時は何かイメージするらしいのですが、あの、例えばでいいのですが…伯爵は何か考えますか?」

「そっ…!そうだな…好きな人、かな?」
ハーバートは頬をピンクに染めながら、じっとコリーヌを見つめてきた。

彼の琥珀色の目と視線が合って、コリーヌは胸がドキリと跳ね、サッと目を逸らした。
え?私?

な、訳がないわよね…
ハーヴィーは今好きな人がいるの?誰なんだろう…?

思考が反れそうになって、コリーヌは頑張って授業に意識を戻す。

「手は綺麗に洗って清潔にして、拭く物を用意して自慰を行うのが正しいようです。そうですよね?モローニ伯爵」
「そうだな」
引き続きゆったりした手つきでハーバートは手を上下させている。
恥ずかしそうにしているので、コリーヌはちょっと申し訳ない気持ちになった。
なぜなら、この後しようとしている事は彼をもっと恥ずかしい気持ちにさせるかもしれないからだ。

「もし、異性に愛撫される時など、他の人に触られる機会があれば、そう言った事にも注意した方が良いですね。では、ちょっと失礼」
そう言って、コリーヌは対面に座っていたハーバートの隣に移動した。

急に近寄って来たコリーヌに驚いたハーバートは体を硬直させていた。
その間に彼女は体を傾けて背もたれに片手をつくと、ハーバートの股の間にある男根を模した張型に口づけた。

「ーーーー!!!」
声にならない声を出して、ハーバートは驚いている様だ。同時にチャールズも息を飲んでいる。
少しだけ顔を上げて、チャールズに説明した。
「次はオーラルセックスというものを紹介します」

「こうやって、女性が男性器を口で愛撫する事をフェラチオと言います。勿論、逆もありますよ、そちらはクンニリングスと言いますね」
チュっと、コリーヌはハーバートの持つ張型にキスをする。少し恥ずかしいが、チャールズの未来のためだ。頑張ろう。
「唇や舌で性感を高めていきます」
ペロリとコリーヌが舌を出して、張型の裏部分を舐め上げる。
その際勢い余って下の方に添えていたハーバートの指に舌が当たってしまった。

バっ!とハーバートはコリーヌの肩を押し上げて除けると、ソファから立ち上がり、張型をテーブルに叩きつけるように置く。
「失礼!」
そう言うと、顔を俯けて速足で部屋を出て行ってしまった。

…あら?

あの…オーラルセックスのやり方や注意事項を…今からやりたかったのですが…
…まあいいか…
でも…顔を赤くさせていたから…彼怒っていたの…?
少し大胆な授業のやり方だったかしら…
それとも急な便意かしら…?

気を取り直して、テーブルに置かれた張型を手に持つと、コリーヌはがぽっと口を開いて咥えてみる。
やはり大きすぎて先端を斜めにして少しだけ口の中に入れることしかできなかった。
その様子をチャールズは呆気にとられた顔で凝視していた。

口から離して、コリーヌは真面目な顔をする。
「これは大きすぎて口に入りませんね。でも、普通のサイズでも口に入れるのはかなり辛いことです。娼婦の方に聞きましたが、フェラチオされ興奮してしまい。女性の髪の毛を掴んで、頭を強引に動かして苦しい思いをさせる男性がいるようです。チャールズ様は絶対にそんなことはなさりませんように」
失敗したわ…もっと小さいサイズにすれば良かった。

「はい…」
チャールズは小さな声で返事をした。
あら、少しやり過ぎたかしら。
「娼婦の方はこう言ったことに慣れていますが、一般の人にもした事が無い人もいるくらいです。更に貴族の令嬢になれば触った事もない方の方が多いでしょう。オーラルセックスに進むにはかなり親密な関係になってからでないといけませんよ。」
「あと、フェラチオ中に令嬢の御髪をみだりに触るのもいけません。とても時間をかけてセットされていますからね。それと苦しくなった女性の顎に力が入った場合、大変な事故になりますからお気をつけ下さい」
「最後に、粘膜の接触は性感染症の心配がありますので、性交渉をしなくても不特定多数とオーラルセックスをしていれば危険です」
チャールズは勉強熱心なので、ただ聞いているだけではなく、とても気になったところを所々メモしているようだ。今もペンを走らせていた。

「では次に…男性が女性器にオーラルセックスするクンニリングスを学んでいきましょう…」
そう言いながら、この場にハーバートが居ないことに、コリーヌは少しがっかりしていた。

だって、私、女性器の模型を手作りしたのよ!

ハーバートから実技無しと言われていたコリーヌは苦肉の策で張型を使うことを考えたが、女性器の模倣品はどこにも無かったのだ。もちろん、穴の中になにか柔らかいものを付けているような物はあったのだが、それでは外性器の形や、位置も想像つかないだろう。だから自分で作ることにした。

コリーヌはお手製の模型をドンとテーブルに置いた。
チャールズは大きく目を開いていた。

ちなみに模倣させてもらったのは、王都3番街の娼館『ヤドリ木』の№3セリーナ嬢の女性器だ。コリーヌは美しいそれを見せて貰ったり、サイズを測らせてもらったり、模写してモデルにした。こんな頼みにも嫌な顔一つせず応えてくれた彼女は女神様だと思う。

太ももを開いた状態のぬいぐるみを作り、そこに布で作った女性器を貼り付けて穴も作ってみた。
なかなかの大作だと思う。

だが、コリーヌは自身の創作センスの無さを自覚していなかった。

チャールズは目をパチクリと瞬いた後、テーブルに置かれた布に綿を詰めた肌色の塊を手に取っていた。

「先生、ここが太ももですか?」
「こっちよ。ここが太ももだけどあまり長くすると邪魔だから、付け根で切ってあって、ここがお尻で、こちらが手前で、陰毛の下に女性器ね。」
「コリーヌ先生…なんでここはこんなに伸びるんですか?」
チャールズは声を震わせながら質問してくる。
「お尻の皮膚はプリッとしてるから伸びる素材にしたんだけど、綿を入れ過ぎたかしら、少し垂れてるわね…」
「ここは何でこんな色にしたんですか?」
「え?だってここが女性器だってわかりやすいかなって…黄色は変だったかしら?あ、実物はもっと肌色と肉の色をしているわよ?」

「…先生……もうっ…ダメだ…!」
そう言うとチャールズは「あっははっ!っはははは!」と腹を抱えて笑いだした。
我慢していた笑いが噴き出すように溢れたのか、チャールズは苦しげに涙を流して笑い転げていた。

「そんなに変だったかしら…」
コリーヌはしょんぼりした。


チャールズの笑いが治まった後、コリーヌは黄色にしてしまった女性器の各部説明と、クンニリングスのやり方をチャールズに話した。衛生面や、更に指を入れる際の注意点は特に念入りに指導した。
チャールズは勉強熱心にそれを聞いていたが、どうしてもダルダルの模型のお尻部分を手にすると、口の端を緩めていた。
もう!小さい頃のハーバートと似たような顔をして…貴方、私の作った模型を笑っているでしょう…と文句を言いたくなったが、コリーヌは大人の矜持でグッと我慢した。


コリーヌ手製の女性臀部の模型の中にチャールズが指を入れている時、ハーバートは戻って来た。

「それはなんだ?」
ハーバートは何故か暗灰色のスーツから、焦げ茶色のスーツに着替えていた。元居たソファに座り、チャールズが中指を入れている肌色の物体を不思議そうに見つめて質問してきた。

「私が作った女性の臀部と女性器の模型です」
コリーヌは真面目にハーバートに答えた。

「……」
ハーバートは目を見開いてそれを凝視している。
「ブフォっ!!……失礼!」
顔を背けてハーバートは噴き出した。そして立ち上がりまた部屋から出て行ってしまう。


しばらくして廊下からハーバートの大笑いする声が聞こえて来たのだった。

なによ!親子してそんなに笑わなくてもいいじゃない!!
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