I love youの訳し方

おつきさま。

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炭酸とバニラアイス

いつか君が負けたら

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今週中には梅雨も明けると、今朝テレビの中のお天気お姉さんは言っていたけれど、今日の空も相変わらずの曇天で今にも雨が降り出しそうな色をしている。

「あーあ、こうも毎日天気が悪いと気が滅入るな」

ガヤガヤと人の多い昼休みの食堂で、食べ終わったばかりの定食のトレーを横にズラして空いた隙間にぺたりと頬をくっつけた。
たっぷりとクーラーの風を吸い込んだテーブルの表面はひんやりとしていて気持ちいい。
あー極楽、と至福に目を閉じると隣からケラケラと笑う声がした。

「え、なんかちづがまともなこと言っててウケる」

はあ?
バフバフと頭を叩いてくる手がこのうえなくうざいので遠慮なく払い落として、右隣に座るいかにも軽薄そうな男を睨み付ける。

「うざい紫」
「いったぁー。二人もそう思うだろ?」

そう言いながら紫が前に座る二人に目配せをする。

「そうか?向井って晴れてると機嫌良いし、雨ばっかだと元気でないのは納得だけど。っあー!クソ、今めっちゃ惜しかった」
「顔が濡れて力が出ないー的な」
「おーそれそれ!永瀬からベストアンサーでた」
「俺が間違ってたわ。ごめんねちづ、雨って元気出ないよね」

うるうると隣から憐れむような目線を送ってくる紫。どうしよう殴っていいかな。

「いい加減にしろよお前ら。誰があんパンだって!?俺は人間だぞ!」
「ぶはっ…!おれは、人間だぞって…っく、ははっ、見ればわかりますけど」
「そこは疑ってない」
「だからユカちゃんに遊ばれるんだよなー向井は」

こ、こいつらマジで…。
握った拳がわなわなと怒りに震える。ほんと疲れるこいつら。なんで俺友達やってんだろう。
隣で爆笑し続けるゆかりと正面の席でクールな顔して巨大パフェを頬張る永瀬ながせ。その隣でスマホゲームをしながらちょくちょく失礼な言動を挟んでくる真白ましろ
三者三様、いや俺も入れたら四者四様にでもなるのか。趣味も性格も見事にバラバラな4人だが、一年の時のグループワークをきっかけになんとなく今の今までダラダラと一緒に大学生活を過ごしている。
が、それも今日で終わりだ。
俺をいじる時だけ徒党を組むこいつらにはもう付き合いきれない。堪忍袋の尾が切れた。

「もう絶交だ絶交!お前らとの縁は今日ここで断ち切ってやる!いいか、明日から声かけて来んなよ」
「はーい出た出た。ちづの絶交宣言、これで何回目?」
「541回目」
「すぐ絶交って言うのガキっぽいからやめれば?うわ、まって、キタキタキター!」

俺か、俺がおかしいのかこれは。
そんなはずはない、俺はこいつらの中で一番まともな人間だ。絶対に今度こそこいつらと離れて、今からでもまともな友達を、って。

「っ!」

ふと窓の向こうに見つけた姿に俺は勢い良く立ち上がった。倒れそうになった椅子がガタリと音を立てたがそれに構っている暇はない。

「うわ、ビビったー。なんだよちづ」
「ごめん用事できた!それ片しといて!」
「は?おい」

まだ何か言おうとしていた紫を置いて走り出した。
見失うわけにはいかない。
あの雨の日から一週間。あれ以来晴れの日はなく、喫茶店に来ることもなかったおかげで美好くんには一度も会えていなかった。
今を逃したらもうチャンスはないような気がして、必死に足を動かす。

「美好くん…!」

全力疾走の先でようやく見えた背中を呼ぶと、無視をされるかもしれないという俺の思いとは裏腹に、振り返った美好くんは静かにその場で足を止めた。

「…っはあ、は、み、みよしくん…」
「なんですか。…てか、必死かよ」
「いや、必死に決まってる…あー疲れた」
「何の用」
「用っていうか、その、会いたくて…?」
「はあ?俺に?」
「美好くんに」
「なんだそれ」

はっ、と吐き出すように笑う顔を見て悟る。
あ、これはダメなやつだ。
あれから一週間。そんなもんで綺麗に治る傷じゃなかった。きっと今までだって、無理矢理にでも慣らしてきただけなのだと気付く。
俺を通り過ぎてぼんやりと遠くに投げられた視線が、不安を覚えるほどに諦めの色を宿していた。
焦燥感に駆られるまま、俺は美好くんの手首を掴んだ。


「美好くん!海、行こう!」

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