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炭酸とバニラアイス
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喫茶店の中はいつも品のいいコーヒー豆の香りに満ちている。
大学に入学してここで働き始めてからも変わらずコーヒーは飲めないくせに、この香りだけは気に入っていた。息を深く吸い込めばぐちゃぐちゃと要らないことを考える思考がリセットされて、見える世界がクリアになる。夏の終わりに吹く、秋を孕んだ涼しい風。
その次に好きな香りだった。
先程まで人がいた席を片付けて濡らした布巾でテーブルを拭いていると、カランとドアの開閉を知らせる音が鳴る。
「いらっしゃいませーって、わーい美好くんじゃん!」
「どーも」
振り向いた先で立っていたのは、相変わらず不機嫌そうな顔をした美好くん。
最早これがデフォなのかと思うけど、悲しいことにこれは対俺へのデフォである。大学内で友達と一緒にいるのを見かけた時はこんなに眉間に皺は寄ってなかったし、なにより会話の中で普通に笑う。
自分から俺のバイト先に来ておいてその態度はなんだと言ってやりたいところだけど、美好くんからしてみればお気に入りの喫茶店で苦手な俺が働いてるという背に腹は変えられない、みたいな状況らしいのでそれも仕方がないのか。
ちなみに美好くんがここに通い始めたのと俺が働き始めたのとでは、俺の方が早いので決してストーカーではない。
「お好きな席どうぞ」
「じゃあいつものとこで」
いつものとこ、と言えば店の奥にある窓際の席が美好くんの定位置だ。
席に着いた美好くんの隣に立って注文をとる。
「ご注文は?」
「ブレンドコーヒー。ブラックで」
「かしこまりましたー」
さらさらと手元の伝票に注文を書き込んで一旦下がる。取り出したグラスの中に氷を落としてシュワシュワと弾けるエメラルドを注いだら、最後にポンと丸めたバニラアイスと真っ赤なさくらんぼを一つ乗っけてはい完成。作り慣れたそれをテーブルの上に置いた途端、美好くんはわかりやすく嫌な顔をして大きくため息を吐いた。
「店員が客の注文を勝手に捻じ曲げるのどうかと思うんですよね、マジで」
「こちら美好くんの大好物くまさんクリームソーダでございまーす」
このくまさんがどこから来ているのかといえば、浮かべたバニラアイスの上に小さく掬ったアイスをさらに二つ乗っけて、くまの耳っぽく演出してるっていうただそれだけだ。それ以外にくまの要素なんてない。俺が美好くん限定で提供してるお遊びメニュー。
「大好物じゃねえし」
「前はいつもこれだったじゃん」
「いつの話だよ。好みが変わったんです」
「じゃあ捨てる?」
あ、今イラってした。
俺のことなんか見たくもないというように視線をテーブルに落とした美好くんが、グラスに手を伸ばす。
「…飲めばいいんでしょ飲めば。アンタほんとウザイ」
カラン、と持ち上げられたグラスの中で氷が音を立てた。
毎回店に来る度にこの流れをやってるんだから美好くんもそろそろ諦めればいいと思うし、俺もそろそろ大人しく注文通りのものを出してあげればいいのにと思う。
なんて、思うだけだ。
「美好くんてさ、かわいいよね」
「はあ?」
店内にいる客は美好くんだけだった。
店主の暁人さんは新しいメニューを開発すると言ったきり奥の厨房に籠っている。
例えカウンターの中にいたとしても見咎められることはないと知っていたし、なによりやることがなくて暇だったので、俺はそのまま美好くんの向かいの席に座った。
頬杖をついてニヒッと笑ってみせれば、反対に美好くんは僅かに眉根を寄せて、だけど何も言わなかった。これも割と毎回のことだからいちいち文句を言うのにも疲れたのかもしれない。わかりやすくウザイと言われるよりも、疲れたような対応をされる方が案外傷付く。
「初恋の人がくれた花を栞にして、いつまでも大事に取っておく女の子みたいだ」
「馬鹿にされてることはわかりました」
「なんで、褒めてるよ」
「それで褒めてるつもりなら一回死んだ方がいいですね」
「めっちゃ言うじゃん」
細くて長い綺麗な指先がスプーンを手に取って、俺が丁寧に丸くしてくまの耳までつけてあげたバニラアイスを何の感慨もなくメロンソーダの海に沈めていく。
崩れて、溶けて、なくなって。
もっと大切にしてくれればいいのに、と思う。
冷凍庫に入れられてるアイスって結構硬いんだよ、それをディッシャーで掬うのも、ガチャガチャやって丸めるのも意外と大変だし疲れるワケ。
くまの耳だって、わざわざスプーンで別に作ってるんだ。
美好くんはそんなことも知らない。
「夏目漱石はI love youを月が綺麗ですねって訳した。でもそれって、意味を知らない人に言ってもただ頷かれて終わりだよね」
「急になんですか」
「…伝わらないのに無駄だよなと思って」
あのバニラアイスがそうだった。
どんなに綺麗に形作っても、望んだものは返ってこない。呆気なくスプーンで崩されて炭酸の中に溶けて消える。きっとそれが正しいのに、いつまでもくだらないものに固執し続けている。
遠回しな告白なんて、ただの独り善がりな自己満足だ。そこにあるのは伝わらなくてもいいっていう諦めと、言えないくせに気付かれたいっていうあわよくばを期待した卑怯さ。
「わかる人にだけ伝わる告白っていいんじゃないですか、ロマンチックで」
ぐるぐるぐる。
手持ち無沙汰な指先が、アイスを崩した後も無意味にメロンソーダをかき混ぜている。
グラスの中でぶつかる氷がカラカラと鳴った。
夏みたいな音。
6月の終わり、梅雨が明ければ本格的な夏が来る。
「美好くんて意外とそういうところあるよね」
「これでも文学部なんで、美しいものは好きですよ。言葉も、物語も。」
「…美しい人も?」
首を傾けてわざと試すように笑う。
いっそわかりやすく歪んだ顔が見たいなんて、だから嫌われるんだよな。
でも俺の思惑とは裏腹に、美好くんは小さく笑った。
「うん、そう。」
ここじゃないどこか、俺じゃない誰かを思い出すように長いまつ毛を伏せて、普段なら俺の前では絶対に見せないような表情をする。
それが当てつけのように思えたのは、きっと余計な感情が息をしているせいだ。
「…綺麗な告白って、たとえば?」
自分から吹っ掛けたくせに痛いなんて、馬鹿すぎて救えない。
素直に認められたら返す言葉もなくて強引に話題を戻す。
「そこ突っ込むんだ」
「うん、教えてよ参考にするから」
「なんのだよ。……最近読んだ小説でまさにそういう場面がありましたよ。風景画しか描かない画家が言うんです。〝ねえ今度、君の絵を描いてもいい?〟って」
「なにそれ」
「先輩、読解力ないですね」
嘲りと呆れが混ざったような顔をされた。
美好くんは年下のくせにいつも生意気だ。
相手が俺だからかもしれない。
「…風景以外のものは一切描かない画家が、わざわざ自分の絵を描きたいって言うんですよ。そんなの、愛してるって言われるよりも響くでしょ。先輩の言うように相手がその事実を知らなければその絵は無駄になるけど、相手がそれを知っているなら、言葉がなくてもそれは愛の告白になり得る」
淡々と、弾ける炭酸を見つめていた瞳がふっと俺に向けられる。
美好くんはそのまま頬杖をついて誘うように笑みを浮かべた。
「素敵でしょ?」
薄く開いた唇と、綺麗に細まる瞳。
眩暈がする美しさ。
きっと珍しく純粋に笑みを向けられただけなのに、そういえば悪魔はその美貌を使って人間を騙すんだっけ、とか。
頭の片隅でそんなことを思い出す。
惑わされてまんまと奪い取られた魂は、その後どうなるんだろう。
「I love youを訳すなら回りくどい方がいいんですよ、切実さが出るから。愛してるなんて安っぽいでしょ。そんなの誰にでも言える」
皮肉めいた口調が誰に宛てたものなのか。
いつもの余裕が少し崩れて下手くそに笑うのも、わかりやすくて嫌になる。
「すごい感性だな、さすが秀才は違うわ。…でも、受け取られないならやっぱり無駄だよ。綺麗にしたって意味がない、全部ゴミだ」
自嘲のつもりで言った言葉が思ったよりも強く響いて、勘違いさせたかもしれないって遅れて気付く。
傷付けたかったわけじゃないのに、美好くんは少し俯いて「そうですね」って薄く笑った。
流れ落ちた前髪に隠されて目元はよく見えない。
でもそれでよかった。
悲しそうな顔も、諦めたような顔も、見たくなんてない。いつでも笑っていてほしい、それだって別に嘘じゃないけど。ただ他の奴に揺さぶられてる姿を見たくないだけだ。
「向井先輩」
「なに?」
「しばらく俺のところ来ないでね」
ウザイもん、アンタ。
息をこぼすように笑う姿があまりに脆く映った。
憎まれ口は相変わらずなのに、なんて頼りない顔をするんだろう。
「なんだよ急に」
「急って、前からずっと言ってるけど。その分話し相手になってやっただろ、ストーカーさん」
「うわ、珍しく話してくれると思ったら」
「じゃあそういうことで、ごちそうさまでした」
一方的に告げた後、ピッタリの金額をテーブルの上に置いて美好くんは店を出て行く。
カラン、と鳴ったベルの音がなんだか物寂しい。
あんなに嫌がっていたクリームソーダはきちんと飲み切ってあるし、俺のことをウザイウザイって言いながら、「もう来ないで」じゃなくて「しばらく来ないで」って言う。
結局君はいつもやさしい。
やさしい、から、また胸の奥に捨てられないゴミが積もって行く。
大学に入学してここで働き始めてからも変わらずコーヒーは飲めないくせに、この香りだけは気に入っていた。息を深く吸い込めばぐちゃぐちゃと要らないことを考える思考がリセットされて、見える世界がクリアになる。夏の終わりに吹く、秋を孕んだ涼しい風。
その次に好きな香りだった。
先程まで人がいた席を片付けて濡らした布巾でテーブルを拭いていると、カランとドアの開閉を知らせる音が鳴る。
「いらっしゃいませーって、わーい美好くんじゃん!」
「どーも」
振り向いた先で立っていたのは、相変わらず不機嫌そうな顔をした美好くん。
最早これがデフォなのかと思うけど、悲しいことにこれは対俺へのデフォである。大学内で友達と一緒にいるのを見かけた時はこんなに眉間に皺は寄ってなかったし、なにより会話の中で普通に笑う。
自分から俺のバイト先に来ておいてその態度はなんだと言ってやりたいところだけど、美好くんからしてみればお気に入りの喫茶店で苦手な俺が働いてるという背に腹は変えられない、みたいな状況らしいのでそれも仕方がないのか。
ちなみに美好くんがここに通い始めたのと俺が働き始めたのとでは、俺の方が早いので決してストーカーではない。
「お好きな席どうぞ」
「じゃあいつものとこで」
いつものとこ、と言えば店の奥にある窓際の席が美好くんの定位置だ。
席に着いた美好くんの隣に立って注文をとる。
「ご注文は?」
「ブレンドコーヒー。ブラックで」
「かしこまりましたー」
さらさらと手元の伝票に注文を書き込んで一旦下がる。取り出したグラスの中に氷を落としてシュワシュワと弾けるエメラルドを注いだら、最後にポンと丸めたバニラアイスと真っ赤なさくらんぼを一つ乗っけてはい完成。作り慣れたそれをテーブルの上に置いた途端、美好くんはわかりやすく嫌な顔をして大きくため息を吐いた。
「店員が客の注文を勝手に捻じ曲げるのどうかと思うんですよね、マジで」
「こちら美好くんの大好物くまさんクリームソーダでございまーす」
このくまさんがどこから来ているのかといえば、浮かべたバニラアイスの上に小さく掬ったアイスをさらに二つ乗っけて、くまの耳っぽく演出してるっていうただそれだけだ。それ以外にくまの要素なんてない。俺が美好くん限定で提供してるお遊びメニュー。
「大好物じゃねえし」
「前はいつもこれだったじゃん」
「いつの話だよ。好みが変わったんです」
「じゃあ捨てる?」
あ、今イラってした。
俺のことなんか見たくもないというように視線をテーブルに落とした美好くんが、グラスに手を伸ばす。
「…飲めばいいんでしょ飲めば。アンタほんとウザイ」
カラン、と持ち上げられたグラスの中で氷が音を立てた。
毎回店に来る度にこの流れをやってるんだから美好くんもそろそろ諦めればいいと思うし、俺もそろそろ大人しく注文通りのものを出してあげればいいのにと思う。
なんて、思うだけだ。
「美好くんてさ、かわいいよね」
「はあ?」
店内にいる客は美好くんだけだった。
店主の暁人さんは新しいメニューを開発すると言ったきり奥の厨房に籠っている。
例えカウンターの中にいたとしても見咎められることはないと知っていたし、なによりやることがなくて暇だったので、俺はそのまま美好くんの向かいの席に座った。
頬杖をついてニヒッと笑ってみせれば、反対に美好くんは僅かに眉根を寄せて、だけど何も言わなかった。これも割と毎回のことだからいちいち文句を言うのにも疲れたのかもしれない。わかりやすくウザイと言われるよりも、疲れたような対応をされる方が案外傷付く。
「初恋の人がくれた花を栞にして、いつまでも大事に取っておく女の子みたいだ」
「馬鹿にされてることはわかりました」
「なんで、褒めてるよ」
「それで褒めてるつもりなら一回死んだ方がいいですね」
「めっちゃ言うじゃん」
細くて長い綺麗な指先がスプーンを手に取って、俺が丁寧に丸くしてくまの耳までつけてあげたバニラアイスを何の感慨もなくメロンソーダの海に沈めていく。
崩れて、溶けて、なくなって。
もっと大切にしてくれればいいのに、と思う。
冷凍庫に入れられてるアイスって結構硬いんだよ、それをディッシャーで掬うのも、ガチャガチャやって丸めるのも意外と大変だし疲れるワケ。
くまの耳だって、わざわざスプーンで別に作ってるんだ。
美好くんはそんなことも知らない。
「夏目漱石はI love youを月が綺麗ですねって訳した。でもそれって、意味を知らない人に言ってもただ頷かれて終わりだよね」
「急になんですか」
「…伝わらないのに無駄だよなと思って」
あのバニラアイスがそうだった。
どんなに綺麗に形作っても、望んだものは返ってこない。呆気なくスプーンで崩されて炭酸の中に溶けて消える。きっとそれが正しいのに、いつまでもくだらないものに固執し続けている。
遠回しな告白なんて、ただの独り善がりな自己満足だ。そこにあるのは伝わらなくてもいいっていう諦めと、言えないくせに気付かれたいっていうあわよくばを期待した卑怯さ。
「わかる人にだけ伝わる告白っていいんじゃないですか、ロマンチックで」
ぐるぐるぐる。
手持ち無沙汰な指先が、アイスを崩した後も無意味にメロンソーダをかき混ぜている。
グラスの中でぶつかる氷がカラカラと鳴った。
夏みたいな音。
6月の終わり、梅雨が明ければ本格的な夏が来る。
「美好くんて意外とそういうところあるよね」
「これでも文学部なんで、美しいものは好きですよ。言葉も、物語も。」
「…美しい人も?」
首を傾けてわざと試すように笑う。
いっそわかりやすく歪んだ顔が見たいなんて、だから嫌われるんだよな。
でも俺の思惑とは裏腹に、美好くんは小さく笑った。
「うん、そう。」
ここじゃないどこか、俺じゃない誰かを思い出すように長いまつ毛を伏せて、普段なら俺の前では絶対に見せないような表情をする。
それが当てつけのように思えたのは、きっと余計な感情が息をしているせいだ。
「…綺麗な告白って、たとえば?」
自分から吹っ掛けたくせに痛いなんて、馬鹿すぎて救えない。
素直に認められたら返す言葉もなくて強引に話題を戻す。
「そこ突っ込むんだ」
「うん、教えてよ参考にするから」
「なんのだよ。……最近読んだ小説でまさにそういう場面がありましたよ。風景画しか描かない画家が言うんです。〝ねえ今度、君の絵を描いてもいい?〟って」
「なにそれ」
「先輩、読解力ないですね」
嘲りと呆れが混ざったような顔をされた。
美好くんは年下のくせにいつも生意気だ。
相手が俺だからかもしれない。
「…風景以外のものは一切描かない画家が、わざわざ自分の絵を描きたいって言うんですよ。そんなの、愛してるって言われるよりも響くでしょ。先輩の言うように相手がその事実を知らなければその絵は無駄になるけど、相手がそれを知っているなら、言葉がなくてもそれは愛の告白になり得る」
淡々と、弾ける炭酸を見つめていた瞳がふっと俺に向けられる。
美好くんはそのまま頬杖をついて誘うように笑みを浮かべた。
「素敵でしょ?」
薄く開いた唇と、綺麗に細まる瞳。
眩暈がする美しさ。
きっと珍しく純粋に笑みを向けられただけなのに、そういえば悪魔はその美貌を使って人間を騙すんだっけ、とか。
頭の片隅でそんなことを思い出す。
惑わされてまんまと奪い取られた魂は、その後どうなるんだろう。
「I love youを訳すなら回りくどい方がいいんですよ、切実さが出るから。愛してるなんて安っぽいでしょ。そんなの誰にでも言える」
皮肉めいた口調が誰に宛てたものなのか。
いつもの余裕が少し崩れて下手くそに笑うのも、わかりやすくて嫌になる。
「すごい感性だな、さすが秀才は違うわ。…でも、受け取られないならやっぱり無駄だよ。綺麗にしたって意味がない、全部ゴミだ」
自嘲のつもりで言った言葉が思ったよりも強く響いて、勘違いさせたかもしれないって遅れて気付く。
傷付けたかったわけじゃないのに、美好くんは少し俯いて「そうですね」って薄く笑った。
流れ落ちた前髪に隠されて目元はよく見えない。
でもそれでよかった。
悲しそうな顔も、諦めたような顔も、見たくなんてない。いつでも笑っていてほしい、それだって別に嘘じゃないけど。ただ他の奴に揺さぶられてる姿を見たくないだけだ。
「向井先輩」
「なに?」
「しばらく俺のところ来ないでね」
ウザイもん、アンタ。
息をこぼすように笑う姿があまりに脆く映った。
憎まれ口は相変わらずなのに、なんて頼りない顔をするんだろう。
「なんだよ急に」
「急って、前からずっと言ってるけど。その分話し相手になってやっただろ、ストーカーさん」
「うわ、珍しく話してくれると思ったら」
「じゃあそういうことで、ごちそうさまでした」
一方的に告げた後、ピッタリの金額をテーブルの上に置いて美好くんは店を出て行く。
カラン、と鳴ったベルの音がなんだか物寂しい。
あんなに嫌がっていたクリームソーダはきちんと飲み切ってあるし、俺のことをウザイウザイって言いながら、「もう来ないで」じゃなくて「しばらく来ないで」って言う。
結局君はいつもやさしい。
やさしい、から、また胸の奥に捨てられないゴミが積もって行く。
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