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第二章
第36話 ウィルの失恋
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教会での闘いから3日が経っていた。
「やあやあ!どうも!」
執務室のソファに座っているのは、めずらしい桃色の髪をした若者。ウィル・キゼンヤ司祭だった。
ところどころに包帯を巻いているが、残念なことに元気そうだ。
「……なぜいる?」
ブラッドリーは不機嫌につぶやいた。
伸びた髪や爪は切り、肌の色も元通りになっている。いつものブラッドリーだった。
「ハッハッハ、そう暗い顔をなさらずに。この地を担当する司祭ですからね、領主様に会いに来てもなんら不自然じゃないでしょう?」
「……用件は?」
「単刀直入に言いましょう。アーサー君の件は黙っています。はい、これ契約書」
そう言って出してきた契約書には、アーサーが“魔に愛されし者”であることは教会上層部に報告しないこと、先の闘いで壊れた教会の修繕費はキゼンヤ家が負うことが記されていた。
ご丁寧にすでにサインも済ませてある。
「我がキゼンヤ家は何よりも契約を尊びますから、どうぞご信用ください。何しろ『実利のみが真の友なり』が家訓でしてね。つまるところ、真の友以外とは契約を結ばないということでして、ハイ」
「……」
たしかにこの契約書を見ると、信用できそうだとも思う。
というのも、わざわざ教会の上層部に黙っているとか、『先の闘い』で教会が壊れただとか書いてあるからだ。
公的には、教会は突発的に起こった竜巻により壊れたことになっているのにもかかわらず。
外に漏れればキゼンヤ家が不利になることが書いてあるということは、リスクを負うポーズを見せることで信用を得ようということだろう。
「実利とはいかないまでも、投機対象くらいにはなったということですかな?」
意地の悪いことを言ってやると、うさんくさい笑顔を向けていたウィルはため息をついて苦笑した。
「……まあ、正直に申し上げますと、若輩ながら私はこれでも教会最大戦力でしてね。もしも辺境伯と事を構えるとなると、またコテンパンにされなければならないわけですよ。そんなのは御免被りたいという個人的思惑があるのです」
懲りました、とふんぞり返って言う。
「さて、長居は無用ですね」
ウィルは立ち上がった。
「ああ、最後にひとつ。教会の上層部は現在主戦派と和平派で均衡しています。しかし、時が経てば主戦派が伸長し、より権力に近づいていこうとすることでしょう。方策があるのなら、なるべくお早めに……」
そう言って去っていった。
主戦派とは国王派であり、和平派とは王子派のことだ。ブラッドリーたちは王子派である。
つまりなにが言いたいかと言えば、ウィルのところでアーサーが“魔に愛されし者”であるという情報は止めておくが、それにも限界があるということだろう。
取り急ぎ使用人たちには箝口令をしくとしても、先日アーサーは派手な火球を誰もが目にすることができる空に出現させていたわけだし、人の口に戸を立てられるものではない。
いくら辺境でのことはいえ、いずれ情報は漏れるだろう。
それにしても、教会が“魔に愛されし者”を集めて阿呆なことをしようとしているというのは今回初めて知ったが、強い力に羽虫が寄ってくるのは十分に予見できたことだ。
ブラッドリーは息子に対して、またひとつ負債を負うような気分だった。
ウィルは『方策があるのなら、なるべくお早めに……』とも言った。
どれだけブラッドリーたちの計画を知っているのか不明だが、猶予のあるうちにアーサーを取られない環境を作れということだ。
なるほど。まったくその通りだ。急がねばならない。しかし……。
「まったく、余計なお世話だ……」
ブラッドリーはウィルのことを改めて気に喰わない男だと思った。
いろいろと気に喰わない要因はあるが、それはもう心の底から気に喰わないと思った。
「ウィル」
「……ローザ」
城の庭園を通り過ぎようとした時、ローザが青々とした木の枝を掻い潜って現れた。頭に葉っぱが乗っているが、ウィルは一々指摘しなかった。
似合っているとも思ったから。
「ブラッドリー様に謝って来たの?」
「まあね……」
「そっか。えらいえらい。あ、これ、ずっと返しそびれてたわ」
ローザは古い写真を取り出した。
そこには幼いウィルとローザが写っている。
ウィルは女装させられていて、そんなウィルの肩を組んでローザはご機嫌にピースサインをしていた。
「ああ……」
何度見返したか知れないその写真を、ウィルは胸の痛みを覚えながら眺めた。
「捨ててくれて良かったのに……」
「ほんと?じゃ、燃やしちゃう?」
ローザが指先からファイアボールを出す。
「……嘘。返して」
危うく燃やされそうだったのを、ウィルは慌てて取り返した。
「まったく、あんたは素直になりなさいよね~」
「繊細なんだ。ローザとちがって」
「何言ってんだか」
ローザが鼻で笑った。
「……ごめんよ。いろいろと」
ウィルは謝った。小さい声で。
ローザの顔も見ることができない。
今更だけど、嫌われているのを確認するのが怖かった。
もしもローザに汚らしい虫でも見るような顔をされたらと思うと、恐ろし過ぎる。
でも、ローザはカラッとした声で言った。
「そうね。でも、許すわ」
「は?」
驚いてつい顔をあげると、ローザはサファイア色の瞳を陽の光に煌めかせて微笑んでいた。
「よくよく考えてみて思ったんだけど、わたしを守ってくれようとしたんでしょ?回復魔法を使えなくなれば、戦場に行かなくて済むものね……」
「……」
ローザは幼い頃から、家の利益のために戦場に行かされていた。
死にかけた兵たちをその莫大な魔力で治しては感謝され、感謝した兵たちはまた戦場に投入されていった。
運が良ければ兵士たちは死に、運が悪ければまたローザに治される。
貴族たちから見ればすばらしいことで、“戦場の聖女”だの“救国の癒やし手”だの称揚されもするが、当の兵士たちからすれば終わりのない苦しみを齎す悪魔だと言えた。
そんなふうに指摘する兵士はひとりもいなかったが。
だが、だれも指摘せずとも、ローザ自身が自分のことを悪魔だと気づいていた。
快活な少女だったローザの心を、地獄のような仕事が蝕んでいった。
「ううん、回復魔法だけじゃない。あんたは戦争の思い出も弱めてくれてたでしょ?今思えば、怖い夢を見ることがなくなってたわ。すごく助かった」
自分のことをいつも引っ張り回していた姉のような少女が泣きじゃくっていた時、ウィルの“魔に愛されし者”としての力は目覚めたのだ。
力のコントロールは未熟だったけれど、やれることは最初からわかっていた。
だから、ライトニングボールと偽って、ローザに回復魔法の力を失わせるための魔法球をプレゼントしたのだった。
『安心して、怖くないよ』
だが、子どもの浅知恵だった。
まさか、力を失ったローザが幽閉されることになるとは。
しかし、同時に変な虫がつかない安心感はあった。
あとは、自分が迎えに行くだけだとばかり思っていた。
それすらも子どもの浅知恵だったが。
「ありがとう。今まで守ってくれて。でも、もうだいじょうぶみたい」
ローザは頭に葉っぱを乗っけたまま、子どものように無邪気に笑った。
「そっか……。何のことだかわからないけど、良かったね」
「またとぼけちゃって。やたらと能天気だとか呑気だとか言われる性格はアンタのせいだってことよ?わかってる?」
「……何のことだかわからないけど、それは絶対ちがうと思う」
「なにー?じゃあ、なんだって言うのよ?」
「生まれつきでしょ。ローザは生まれつき能天気なんだよ」
「まあ!それって褒め言葉?」
ローザがニヤリといたずらっぽく笑う。
「……そうだよ。ローザは褒めるとこしかないよ」
ウィルが呆れたように失笑する。
ふたりは静かに微笑んだ。
「ま、そんなわけで今回は許すから。もうしないように。わかった?」
「……わかった」
「約束ね!」
「……ああ」
アーサーが待っているのだろう。また枝をかき分けて庭園へと戻っていくローザの背中を、ウィルは見送った。
ウィルは吹き抜けになった教会にいた。目の前には崩れた祭壇がある。
半壊している長椅子に座り、自分とは無関係に思える青空をふんぞり返って見上げた。
「……」
(生きてる意味、あるのかなあ……)
ぼうっとしていたら、いきなり隣にウェンディが出現していて、だまってウィルのことを見上げていた。
近くの村の小さな女の子。
この地方の人に多い、黒髪につぶらな瞳をしている。
いつも楽しそうにしてはいるのだが、なぜか無表情なのが特徴的だ。
「……ウェンディくん、なにをしているのかな?」
「おべんきょう、おしえてもらおうとおもって」
勉強熱心なのは結構なことだが、今は教える気が起きなかった。
いや、今後もう起きることはないかもしれない。
ローザが結婚したと聞いて、ウィルはそれまで隠していた“魔に愛されし者”としての力を周囲に明かし、“魔法塔”を飛び級して卒業した経緯があった。
その際、“魔法塔”最強とされるナンバーズという思い上がった連中を軒並み倒してまで、自身の力を証明するという暴挙にまで出ていた。
ローザと静かな人生を歩むべく、なるべく目立たないよう心がけていたというのに。
家族たちにすら、力のことは教えていなかった。家族とはいえ信用ならない連中であるから、なるべく教えたくなかったのだ。
きっと利用しようとしてきたり、疑心暗鬼に駆られれば毒殺でも企図することだろう。
だから、先手を打ってキゼンヤ家の連中には全員魔法を施している。
今やキゼンヤ家はウィルの掌中にあった。
だが、そんなことには何の意味も価値もない。
すべてはローザを手に入れてこそ……。
魔法塔最強という馬鹿らしい権力を得たことで、元々他の人物に決まっていた辺境での司祭という地位を奪い取ることができた。
やっとローザを不幸な政略結婚から救い、幸せに暮らすことができると思った。
だが、予想外のことが起こった。
なんとローザは幸せだったのだ!
さっき目にした、子ども時代を彷彿とさせる無邪気な笑み。
以前に聞いた、今が一番幸せだという言葉。
あの言葉を聞いた時は冗談めかして笑ったが、本当はショックだった。
その言葉に嘘偽りがないのは、実はすんなり理解できてしまったから。
(……いや、本当は再会した時からわかっていた。自分の知らない連中と楽しそうにしているローザを見て、もう彼女の居場所はここなのだと……、ボクはもう必要ないのだと……。なのに、無様な悪あがきをしてしまった……)
「せんせー?」
(いや、それどころか、本当は嫌な予感が最初からあったのだ……。だから、わざわざ司祭なんかになって、自然を装って会いにきたのだ。いきなり現れて、奪い取るような度胸もなかった……)
「ねえ、せんせーってばー?」
うでを引かれて、現実に引き戻される。
「あ、ああ……、そっか、えらいね勉強熱心で。でも、今日のところは……」
「せんせー、ないてるの?」
ウェンディはつぶらな黒目がちな瞳で、ウィルのブラウンの瞳を見上げてくる。
「は?泣いてないよ」
実際、ウィルの目は心の虚しさを表すように渇いていた。
「ふーん……、なきそうならね、おいのりしたらいいんだよ」
「……プライベートでは祈らない主義なんだ」
神など最大の嘘のひとつだ。
愛と同じく。
ローザのことだって、ただ欲しかっただけだ。
欲望を愛という嘘で塗り固めているに過ぎない。そんなことはとっくに自覚している。
「じゃあ、あたちがかわりにおいのりしてあげる」
「いや、いいよ……」
いいというのに、ウェンディは目を閉じて、壊れた祭壇に向けてお祈りをしてくれる。
その表情は真剣で、何か神聖な雰囲気すら醸し出していた。
「……いや、ほんといいよ。やめてくれ」
「なんで?」
「なんでって……」
きみに祈られる資格なんてないから。
「めいわく?」
「いや、迷惑じゃないけど……。ほら、そんなことしても勉強教える気もないしさ。キミは何の得もしないよ?」
「じぶんのとくになるから、おいのりしてるんじゃないもん!せんせーがげんきだしてほしいから、おいのりしてるんだもん!だから、しずかにしてて!」
たどたどしい口調で怒られてしまった。
「は、はい……、ごめんなさい」
たとえ報われることがなくとも、誰かのために祈ることに意味はあるのか?
それは何の利益も出ないし、時間の無駄だ。
ローザに対する自分の行為はまさに時間の無駄だったし、なんなら損失だろう。
損失はさっさと切り捨てるべきだ。
それでも、感情は、想いは自由にできない。
不利益だとわかっていても、不合理に働いてしまう。
「……くっ、うぐっ……!」
気づくと涙が出ていた。
目を閉じて祈っていたウェンディが気づき、呆気に取られている。
子どもの前で泣くなんて恥ずかしくて、止めようとするが止まらない。
「……」
ウェンディはなにを思ったのか、その小さな手を精一杯伸ばして、ウィルの頭をなではじめた。
「よしよし」
「……やめてくれ」
「ないていいよ。ヒミツにするから」
「……ないでないし、そんなの信じられない」
「うたがわないでいいよ」
「むり」
鼻水まで垂らして、子どもに意固地になっている司祭をまじまじと見て、ウェンディは呆れたようにため息をついた。
「やくそくするよ。やくそくしたら、ホントだよ」
小さな子どもに言い聞かせるように微笑んで、ウェンディはウィルの桃色の髪をかき混ぜるようになでたのだった。
「げんきになーれ!げんきになーれ!」
「……ボクはシチューか何かか?」
涙は止まらず、さらに溢れてきて、熱くなった頭はつい昔のことを思い出してしまう。
『もう!また泣いてるの?』
ふわふわの金髪のお転婆な女の子だった。
『だって……!だって……!』
桃色の髪をした少年は、よくイジメられていた。
家が金貸し業であることから伝統ある貴族の子弟たちには蔑まれ、またそういった連中の家にはたいてい貸し付けていたから変に恨まれてもいた。
母は流行り病ですでに亡くなっていたし、妾の子という出自もあるからか、家族も使用人すらも助けてくれなかった。
そんななか唯一仲良くしてくれたのがローザであり、ローザも不吉な噂の絶えない“蛇のゼファニヤ”の一族だからか友達はいなかったが、彼女は気にする様子も見せなかった。
むしろ何かちょっかいをかけてくる連中がいれば、ローザは倍以上にやり返していて、そんな勇ましいローザにウィルは憧れてもいた。
『はいはい、しょうがないわねー。ほら、おいで』
呆れたように言うし、たまに女装もさせられるが、ウィルはそれでもうれしかった。
『お姉ちゃんがなぐさめてあげる!』
別に本当の姉でもないのだが、そう言って浮かべる屈託のない笑顔は頼もしくて、なにより美しかった。
幼いウィルはローザの胸に抱かれ、一時の安心を得た。クッキーのような匂いがしたのを覚えている。
『……ねえ、ウィル。今のわたしたちはイヤな世の中で生きてくしかないわ。まだ小さいもの。だけど、きっと良い世の中もこの世界のどこかにはあるはずよ。だから、大人になったらきっとそういうところで生きましょうね!』
『……うん』
ウィルを包んで微笑む幼いローザこそが、彼にとってのたどり着くべき世界だった。
「あーあ、ボクのほうが先に好きだったのになー……」
壊れた天井から射してくる陽だまりのなか、ウィルはつぶやくのだった。
「約束しとくんだったかな……?」
夜。
「ふふふ~ん」
ローザは鼻歌を歌っていた。
「ふふっ、ずいぶん機嫌が良さそうですね」
ブラッドリーが微笑んで言う。
「ええ。ウィルと仲直りしましたから」
ローザも微笑みを返す。ふたりきりの寝室だった。
「……会ったんですか?ひとりで?」
しかし、ローザの返事を聞いて、空気が一変した。
「え、ええ……?」
ブラッドリーの声に不穏な色が含まれているのにローザは気付いた。
「……危険だとは考えなかったのですか?」
「そんな、もう大丈夫ですよ。もうしないって約束しましたし……」
答えるローザに対して、ブラッドリーは真紅の瞳を光らせる。
「ローザさん……、あなたは何もわかっていないようですね……!」
ブラッドリーは、ローザに近づいていった。その足取りは重苦しく、どこか怒りが滲んでいた。
「やあやあ!どうも!」
執務室のソファに座っているのは、めずらしい桃色の髪をした若者。ウィル・キゼンヤ司祭だった。
ところどころに包帯を巻いているが、残念なことに元気そうだ。
「……なぜいる?」
ブラッドリーは不機嫌につぶやいた。
伸びた髪や爪は切り、肌の色も元通りになっている。いつものブラッドリーだった。
「ハッハッハ、そう暗い顔をなさらずに。この地を担当する司祭ですからね、領主様に会いに来てもなんら不自然じゃないでしょう?」
「……用件は?」
「単刀直入に言いましょう。アーサー君の件は黙っています。はい、これ契約書」
そう言って出してきた契約書には、アーサーが“魔に愛されし者”であることは教会上層部に報告しないこと、先の闘いで壊れた教会の修繕費はキゼンヤ家が負うことが記されていた。
ご丁寧にすでにサインも済ませてある。
「我がキゼンヤ家は何よりも契約を尊びますから、どうぞご信用ください。何しろ『実利のみが真の友なり』が家訓でしてね。つまるところ、真の友以外とは契約を結ばないということでして、ハイ」
「……」
たしかにこの契約書を見ると、信用できそうだとも思う。
というのも、わざわざ教会の上層部に黙っているとか、『先の闘い』で教会が壊れただとか書いてあるからだ。
公的には、教会は突発的に起こった竜巻により壊れたことになっているのにもかかわらず。
外に漏れればキゼンヤ家が不利になることが書いてあるということは、リスクを負うポーズを見せることで信用を得ようということだろう。
「実利とはいかないまでも、投機対象くらいにはなったということですかな?」
意地の悪いことを言ってやると、うさんくさい笑顔を向けていたウィルはため息をついて苦笑した。
「……まあ、正直に申し上げますと、若輩ながら私はこれでも教会最大戦力でしてね。もしも辺境伯と事を構えるとなると、またコテンパンにされなければならないわけですよ。そんなのは御免被りたいという個人的思惑があるのです」
懲りました、とふんぞり返って言う。
「さて、長居は無用ですね」
ウィルは立ち上がった。
「ああ、最後にひとつ。教会の上層部は現在主戦派と和平派で均衡しています。しかし、時が経てば主戦派が伸長し、より権力に近づいていこうとすることでしょう。方策があるのなら、なるべくお早めに……」
そう言って去っていった。
主戦派とは国王派であり、和平派とは王子派のことだ。ブラッドリーたちは王子派である。
つまりなにが言いたいかと言えば、ウィルのところでアーサーが“魔に愛されし者”であるという情報は止めておくが、それにも限界があるということだろう。
取り急ぎ使用人たちには箝口令をしくとしても、先日アーサーは派手な火球を誰もが目にすることができる空に出現させていたわけだし、人の口に戸を立てられるものではない。
いくら辺境でのことはいえ、いずれ情報は漏れるだろう。
それにしても、教会が“魔に愛されし者”を集めて阿呆なことをしようとしているというのは今回初めて知ったが、強い力に羽虫が寄ってくるのは十分に予見できたことだ。
ブラッドリーは息子に対して、またひとつ負債を負うような気分だった。
ウィルは『方策があるのなら、なるべくお早めに……』とも言った。
どれだけブラッドリーたちの計画を知っているのか不明だが、猶予のあるうちにアーサーを取られない環境を作れということだ。
なるほど。まったくその通りだ。急がねばならない。しかし……。
「まったく、余計なお世話だ……」
ブラッドリーはウィルのことを改めて気に喰わない男だと思った。
いろいろと気に喰わない要因はあるが、それはもう心の底から気に喰わないと思った。
「ウィル」
「……ローザ」
城の庭園を通り過ぎようとした時、ローザが青々とした木の枝を掻い潜って現れた。頭に葉っぱが乗っているが、ウィルは一々指摘しなかった。
似合っているとも思ったから。
「ブラッドリー様に謝って来たの?」
「まあね……」
「そっか。えらいえらい。あ、これ、ずっと返しそびれてたわ」
ローザは古い写真を取り出した。
そこには幼いウィルとローザが写っている。
ウィルは女装させられていて、そんなウィルの肩を組んでローザはご機嫌にピースサインをしていた。
「ああ……」
何度見返したか知れないその写真を、ウィルは胸の痛みを覚えながら眺めた。
「捨ててくれて良かったのに……」
「ほんと?じゃ、燃やしちゃう?」
ローザが指先からファイアボールを出す。
「……嘘。返して」
危うく燃やされそうだったのを、ウィルは慌てて取り返した。
「まったく、あんたは素直になりなさいよね~」
「繊細なんだ。ローザとちがって」
「何言ってんだか」
ローザが鼻で笑った。
「……ごめんよ。いろいろと」
ウィルは謝った。小さい声で。
ローザの顔も見ることができない。
今更だけど、嫌われているのを確認するのが怖かった。
もしもローザに汚らしい虫でも見るような顔をされたらと思うと、恐ろし過ぎる。
でも、ローザはカラッとした声で言った。
「そうね。でも、許すわ」
「は?」
驚いてつい顔をあげると、ローザはサファイア色の瞳を陽の光に煌めかせて微笑んでいた。
「よくよく考えてみて思ったんだけど、わたしを守ってくれようとしたんでしょ?回復魔法を使えなくなれば、戦場に行かなくて済むものね……」
「……」
ローザは幼い頃から、家の利益のために戦場に行かされていた。
死にかけた兵たちをその莫大な魔力で治しては感謝され、感謝した兵たちはまた戦場に投入されていった。
運が良ければ兵士たちは死に、運が悪ければまたローザに治される。
貴族たちから見ればすばらしいことで、“戦場の聖女”だの“救国の癒やし手”だの称揚されもするが、当の兵士たちからすれば終わりのない苦しみを齎す悪魔だと言えた。
そんなふうに指摘する兵士はひとりもいなかったが。
だが、だれも指摘せずとも、ローザ自身が自分のことを悪魔だと気づいていた。
快活な少女だったローザの心を、地獄のような仕事が蝕んでいった。
「ううん、回復魔法だけじゃない。あんたは戦争の思い出も弱めてくれてたでしょ?今思えば、怖い夢を見ることがなくなってたわ。すごく助かった」
自分のことをいつも引っ張り回していた姉のような少女が泣きじゃくっていた時、ウィルの“魔に愛されし者”としての力は目覚めたのだ。
力のコントロールは未熟だったけれど、やれることは最初からわかっていた。
だから、ライトニングボールと偽って、ローザに回復魔法の力を失わせるための魔法球をプレゼントしたのだった。
『安心して、怖くないよ』
だが、子どもの浅知恵だった。
まさか、力を失ったローザが幽閉されることになるとは。
しかし、同時に変な虫がつかない安心感はあった。
あとは、自分が迎えに行くだけだとばかり思っていた。
それすらも子どもの浅知恵だったが。
「ありがとう。今まで守ってくれて。でも、もうだいじょうぶみたい」
ローザは頭に葉っぱを乗っけたまま、子どものように無邪気に笑った。
「そっか……。何のことだかわからないけど、良かったね」
「またとぼけちゃって。やたらと能天気だとか呑気だとか言われる性格はアンタのせいだってことよ?わかってる?」
「……何のことだかわからないけど、それは絶対ちがうと思う」
「なにー?じゃあ、なんだって言うのよ?」
「生まれつきでしょ。ローザは生まれつき能天気なんだよ」
「まあ!それって褒め言葉?」
ローザがニヤリといたずらっぽく笑う。
「……そうだよ。ローザは褒めるとこしかないよ」
ウィルが呆れたように失笑する。
ふたりは静かに微笑んだ。
「ま、そんなわけで今回は許すから。もうしないように。わかった?」
「……わかった」
「約束ね!」
「……ああ」
アーサーが待っているのだろう。また枝をかき分けて庭園へと戻っていくローザの背中を、ウィルは見送った。
ウィルは吹き抜けになった教会にいた。目の前には崩れた祭壇がある。
半壊している長椅子に座り、自分とは無関係に思える青空をふんぞり返って見上げた。
「……」
(生きてる意味、あるのかなあ……)
ぼうっとしていたら、いきなり隣にウェンディが出現していて、だまってウィルのことを見上げていた。
近くの村の小さな女の子。
この地方の人に多い、黒髪につぶらな瞳をしている。
いつも楽しそうにしてはいるのだが、なぜか無表情なのが特徴的だ。
「……ウェンディくん、なにをしているのかな?」
「おべんきょう、おしえてもらおうとおもって」
勉強熱心なのは結構なことだが、今は教える気が起きなかった。
いや、今後もう起きることはないかもしれない。
ローザが結婚したと聞いて、ウィルはそれまで隠していた“魔に愛されし者”としての力を周囲に明かし、“魔法塔”を飛び級して卒業した経緯があった。
その際、“魔法塔”最強とされるナンバーズという思い上がった連中を軒並み倒してまで、自身の力を証明するという暴挙にまで出ていた。
ローザと静かな人生を歩むべく、なるべく目立たないよう心がけていたというのに。
家族たちにすら、力のことは教えていなかった。家族とはいえ信用ならない連中であるから、なるべく教えたくなかったのだ。
きっと利用しようとしてきたり、疑心暗鬼に駆られれば毒殺でも企図することだろう。
だから、先手を打ってキゼンヤ家の連中には全員魔法を施している。
今やキゼンヤ家はウィルの掌中にあった。
だが、そんなことには何の意味も価値もない。
すべてはローザを手に入れてこそ……。
魔法塔最強という馬鹿らしい権力を得たことで、元々他の人物に決まっていた辺境での司祭という地位を奪い取ることができた。
やっとローザを不幸な政略結婚から救い、幸せに暮らすことができると思った。
だが、予想外のことが起こった。
なんとローザは幸せだったのだ!
さっき目にした、子ども時代を彷彿とさせる無邪気な笑み。
以前に聞いた、今が一番幸せだという言葉。
あの言葉を聞いた時は冗談めかして笑ったが、本当はショックだった。
その言葉に嘘偽りがないのは、実はすんなり理解できてしまったから。
(……いや、本当は再会した時からわかっていた。自分の知らない連中と楽しそうにしているローザを見て、もう彼女の居場所はここなのだと……、ボクはもう必要ないのだと……。なのに、無様な悪あがきをしてしまった……)
「せんせー?」
(いや、それどころか、本当は嫌な予感が最初からあったのだ……。だから、わざわざ司祭なんかになって、自然を装って会いにきたのだ。いきなり現れて、奪い取るような度胸もなかった……)
「ねえ、せんせーってばー?」
うでを引かれて、現実に引き戻される。
「あ、ああ……、そっか、えらいね勉強熱心で。でも、今日のところは……」
「せんせー、ないてるの?」
ウェンディはつぶらな黒目がちな瞳で、ウィルのブラウンの瞳を見上げてくる。
「は?泣いてないよ」
実際、ウィルの目は心の虚しさを表すように渇いていた。
「ふーん……、なきそうならね、おいのりしたらいいんだよ」
「……プライベートでは祈らない主義なんだ」
神など最大の嘘のひとつだ。
愛と同じく。
ローザのことだって、ただ欲しかっただけだ。
欲望を愛という嘘で塗り固めているに過ぎない。そんなことはとっくに自覚している。
「じゃあ、あたちがかわりにおいのりしてあげる」
「いや、いいよ……」
いいというのに、ウェンディは目を閉じて、壊れた祭壇に向けてお祈りをしてくれる。
その表情は真剣で、何か神聖な雰囲気すら醸し出していた。
「……いや、ほんといいよ。やめてくれ」
「なんで?」
「なんでって……」
きみに祈られる資格なんてないから。
「めいわく?」
「いや、迷惑じゃないけど……。ほら、そんなことしても勉強教える気もないしさ。キミは何の得もしないよ?」
「じぶんのとくになるから、おいのりしてるんじゃないもん!せんせーがげんきだしてほしいから、おいのりしてるんだもん!だから、しずかにしてて!」
たどたどしい口調で怒られてしまった。
「は、はい……、ごめんなさい」
たとえ報われることがなくとも、誰かのために祈ることに意味はあるのか?
それは何の利益も出ないし、時間の無駄だ。
ローザに対する自分の行為はまさに時間の無駄だったし、なんなら損失だろう。
損失はさっさと切り捨てるべきだ。
それでも、感情は、想いは自由にできない。
不利益だとわかっていても、不合理に働いてしまう。
「……くっ、うぐっ……!」
気づくと涙が出ていた。
目を閉じて祈っていたウェンディが気づき、呆気に取られている。
子どもの前で泣くなんて恥ずかしくて、止めようとするが止まらない。
「……」
ウェンディはなにを思ったのか、その小さな手を精一杯伸ばして、ウィルの頭をなではじめた。
「よしよし」
「……やめてくれ」
「ないていいよ。ヒミツにするから」
「……ないでないし、そんなの信じられない」
「うたがわないでいいよ」
「むり」
鼻水まで垂らして、子どもに意固地になっている司祭をまじまじと見て、ウェンディは呆れたようにため息をついた。
「やくそくするよ。やくそくしたら、ホントだよ」
小さな子どもに言い聞かせるように微笑んで、ウェンディはウィルの桃色の髪をかき混ぜるようになでたのだった。
「げんきになーれ!げんきになーれ!」
「……ボクはシチューか何かか?」
涙は止まらず、さらに溢れてきて、熱くなった頭はつい昔のことを思い出してしまう。
『もう!また泣いてるの?』
ふわふわの金髪のお転婆な女の子だった。
『だって……!だって……!』
桃色の髪をした少年は、よくイジメられていた。
家が金貸し業であることから伝統ある貴族の子弟たちには蔑まれ、またそういった連中の家にはたいてい貸し付けていたから変に恨まれてもいた。
母は流行り病ですでに亡くなっていたし、妾の子という出自もあるからか、家族も使用人すらも助けてくれなかった。
そんななか唯一仲良くしてくれたのがローザであり、ローザも不吉な噂の絶えない“蛇のゼファニヤ”の一族だからか友達はいなかったが、彼女は気にする様子も見せなかった。
むしろ何かちょっかいをかけてくる連中がいれば、ローザは倍以上にやり返していて、そんな勇ましいローザにウィルは憧れてもいた。
『はいはい、しょうがないわねー。ほら、おいで』
呆れたように言うし、たまに女装もさせられるが、ウィルはそれでもうれしかった。
『お姉ちゃんがなぐさめてあげる!』
別に本当の姉でもないのだが、そう言って浮かべる屈託のない笑顔は頼もしくて、なにより美しかった。
幼いウィルはローザの胸に抱かれ、一時の安心を得た。クッキーのような匂いがしたのを覚えている。
『……ねえ、ウィル。今のわたしたちはイヤな世の中で生きてくしかないわ。まだ小さいもの。だけど、きっと良い世の中もこの世界のどこかにはあるはずよ。だから、大人になったらきっとそういうところで生きましょうね!』
『……うん』
ウィルを包んで微笑む幼いローザこそが、彼にとってのたどり着くべき世界だった。
「あーあ、ボクのほうが先に好きだったのになー……」
壊れた天井から射してくる陽だまりのなか、ウィルはつぶやくのだった。
「約束しとくんだったかな……?」
夜。
「ふふふ~ん」
ローザは鼻歌を歌っていた。
「ふふっ、ずいぶん機嫌が良さそうですね」
ブラッドリーが微笑んで言う。
「ええ。ウィルと仲直りしましたから」
ローザも微笑みを返す。ふたりきりの寝室だった。
「……会ったんですか?ひとりで?」
しかし、ローザの返事を聞いて、空気が一変した。
「え、ええ……?」
ブラッドリーの声に不穏な色が含まれているのにローザは気付いた。
「……危険だとは考えなかったのですか?」
「そんな、もう大丈夫ですよ。もうしないって約束しましたし……」
答えるローザに対して、ブラッドリーは真紅の瞳を光らせる。
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