30 / 38
第二章
第30話 ローザ、ついに我慢できなくなる
しおりを挟む
ローザにとって、辛い一日が終わろうとしている。
いや、昨夜のブラッドリーのことを思えば、辛い2日間だった。
だからというわけではないが、癒やしが必要である。
「アーサー様ー!好きです!好き好きー!大好きー!」
「きゃはははは!くすぐったいよぉ、ローザァ!」
寝室である。
ローザはアーサーを抱きしめて、高速微振動頬ずりをしているところだった。
高速は想いの強さを、微振動であることは気遣いを表している。
あまり振動を強くすれば、天使の肌が傷ついてしまうかもしれない。
親しき仲にも礼儀ありだ。
「うぅ~!好きです~!」
「はいはい」
「私、最近発見したんですけど、アーサー様に好きって言うだけで、こう……!なんていうか、こう……!力が溢れてくるんです~!アーサー様、いてくれてありがとうございます~!」
「くふふふふ」
そんな世迷い言を宣うローザの頭を、アーサーはやさしく包み込むようにしてなでた。
そして目を見つめて、無自覚に小悪魔な微笑みを浮かべる。
「……よしよし、ぼくも好きだよ」
「きゃー!!!」
ローザは鼻血が出るのを予見して、サッと回復魔法を自分にかける。
高速微振動頬ずりはさらに加速していった。
「……なーにをしてるんですか?」
心底呆れて言ったのは、ブラッドリーである。
今日は、親子3人で寝る日だった。
ブラッドリーは片肘をついて寝転がり、はだけたシャツからは彫刻のような筋肉が見え隠れしている。
「なにって、栄養補給ですわっ!アーサー様からしかとれない栄養がありますもの!ふんふんふんふんっ!」
「きゃははははは!」
「やめなさい。アーサーが削れてしまいます」
「あら?そんなことを言って、アーサー様を独り占めなさるおつもりでは?」
「そんなことはありません。あなたと一緒にしないでください。心外です。……ふんふんふんふんっ!」
ブラッドリーはアーサーに頬ずりした。
「きゃはははは!お父様、くすぐったい~!」
「ほら見たことですかっ!アーサー様のほっぺたを占領しようとなさって……!おそろしい方です……!」
「ふむ……、たしかにパンのような匂いがしますね……。これがアーサーからしかとれない栄養……?」
「ええ、太陽みたいな匂いがしますわ!」
「ローザはねー、なんか甘いにおいがするよ!」
「そうなんですか?」
「うん!なんかね、おいしそう!お父様もかいでみて!」
またもやアーサーは無邪気に時を止める魔法を使った。
「……ふっ」
ブラッドリーは口の端をあげる。
「アーサー、……そろそろ寝る時間だぞ?」
「そうですわ、アーサー様、ポンポンタイムですわ……!」
しかし、ふたりにはそろそろ耐性がついてきていた。
「えー」
「アーサー様、ポンポン」
「アーサー、ポンポン」
「……んぅ、まだ寝たくない……」
ローザとブラッドリーが、両脇からリズムを合わせてアーサーのお腹をポンポンする。
アーサーの目がとろとろしてくる。
「……ぐー」
まるで催眠術でもかけられたかのように、アーサーは眠りについたのだった。
「うふふ……!」
ローザはその寝顔が本当にうれしくて、ブラッドリーに笑みを向ける。
「ふふっ……」
ブラッドリーは、はにかみながらも微笑みを返した。
(……よかった)
ローザは内心ホッとした。
ブラッドリーが微笑みを返してくれた。もしも二度と微笑んでくれなくなったらと想像すると、それだけで心が痛んだ。
特にアーサーをふたりで寝かしつけた時に、ローザはどうしてもうれしくて喜びを共有したくなる。
最初の頃はそっけなかったが、ブラッドリーもアーサーを寝かしつける至上の喜びに目覚めたのか、最近では返してくれるようになっていた。
なんというか……、こういうことって、とても家族っぽいとも思う。
失われなくてよかった、と心底思った。
(あれ……?)
だが、横向きに寝そべっているブラッドリーの表情が唐突に曇った。
「?どうなさいま……!?」
ブラッドリーの異変に気づき、何事かと聞こうとした時、ローザはさらなる異変に気づいた。
ブラッドリーに手を握られていたのである。
「ブ、ブラッドリー様……!?」
寝入ったばかりのアーサーの丸いお腹のうえで。
ぷくー、ぷくーとふくれてはしぼむそのうえで、大胆にもブラッドリーはローザの手をつかんできたのだった。
(ポ、ポンポンからのギュッ……!)
変な言葉が頭につい浮かぶ。
自分の手汗がつい気になってしまう。
しかし、ふと見ると、大胆な犯行を遂げたはずのブラッドリーの顔はやはり浮かないことに気づく。
いや、浮かないどころではない、いまにも泣き出してしまいそうなほど悲しげだ。
ローザはベッドが揺れてアーサーが起きないように、ゆっくりと体を起こしてブラッドリーの耳元に顔を寄せた。
男性らしい匂いが一瞬香ったが、不快ではなかった。
「……どうなさいました?」
ささやき声で、そっと言う。
ブラッドリーはすこし体を震わせたが、アーサーを起こさないように、やはりささやき声で返答した。
「……私は、謝罪しなければなりません」
ため息まじりの低い声が、ローザの耳元をざらりとなでた。
「……謝罪、ですか?」
「……ええ」
ブラッドリーはローザに懺悔するように告げる。
「……なにをでしょう?」
「……まず、教会で逃げ出したこと」
ローザとウィルがハグしているのを目撃し、話も聞かずに立ち去ったことを言っているようだ。
「それと昨夜、私はあなたにひどい振る舞いをしました……。最低です。私はあなたを傷つけようとしたのです……!」
ローザは言われたことをしっかりと覚えていた。
『そもそも私達は内緒とはいえ離婚した仲です。ただの友達でしかありません。だから、あなたがそんなに必死になって浮気の誤解を解く必要はないのです』
また、こうも言っていた。
『私があなたの浮気を咎める権限もありません。ですが、公の場でああいうことをするのは謹んで頂きたい。建前だけの夫婦とはいえ、建前というのは存外大事ですから』
実に冷たい言い草で、しかも反論の機会さえ許されなかった。
だから、しっかりと言ってやった。
「……ええ。ちゃんと傷つきましたわ」
「!……ごめんなさい……!」
ブラッドリーはまるで無垢な少年のように苦しげな表情を見せる。
自分がしたことに罪悪感を覚え、すなおに反省の意を示しているのだった。
そんなブラッドリーの様子を目の当たりにしてローザは、
(ダメ……!)
大いに煩悶した。
(こんなこと思っちゃダメってことはわかってるのに……!でも、もうダメ……!抑えられない……!)
ローザは異様に渇いてくる喉をなんとか潤すように、生唾を呑み込んだ。
(ブラッドリー様……、可愛いすぎる!まるで大きなワンちゃんみたい……!)
ローザの心の目には、ブラッドリーが反省して肩を落としている巨大犬のように見えていた。
いつもは強くて気高くてかっこいいのに、失敗したらすなおに落ち込むところが可愛い。
“血に飢えた黒狼”などという恐ろしいイメージでは断じてない。
ローザの胸は、ついついキュンと締め付けられてしまう。ズルい。
(ああ……!もう我慢できない……!)
ローザはつないでいた手を離した。
間近で、ブラッドリーの真紅の瞳がショックに揺れるのが見える。振り払われたと勘違いしたのかもしれない。
その様子すら(可愛い……)と思ってしまう。
ローザは微笑み、ブラッドリーの頭をなでた。
ブラッドリーの髪は、アーサーのふわふわの髪とはちがい、男性らしい硬い感触だった。
それでも奥には、やわらかな感触が隠れている。
「ロ、ローザさん……?」
「……ゆるします」
ローザは聖女のように微笑んだ。
ブラッドリーの熱い吐息が首筋に感じられた。なぜかゾクゾクしてしまう。
「……いえ、こんな言い方はフェアじゃありませんね。わたしのほうこそごめんなさい」
「な、なぜ、ローザさんが謝るのですか……?そんな必要は……」
ローザは小さく首を振った。ローザのふわふわの金髪が、ブラッドリーの鼻先をくすぐる。
「ブラッドリー様のことを守るって、わたし言いました。なのに、不安にさせてしまいました。……わたしのこと、ゆるしてくれますか?」
ローザはブラッドリーの真紅の瞳を間近にして、覗き込むように見下ろした。
ブラッドリーの濡れた瞳は揺れていたけれど、逸らすことなくローザの瞳を見つめ返した。
「……はい、ゆるします」
ローザは微笑んで、またブラッドリーの頭をなでた。
「わたしのこと、信じてくれますか?」
重ねて問う。
「はい……!」
またもなでると、ブラッドリーは気持ち良さそうに目を細めた。
ローザはその仕草にすこしドキリとするが、ふと思い出して言う。
「……あっ、ごめんなさい。そういえば、ニコラにわたしたちの秘密を言ってしまいましたわ」
内緒で離婚している件のことだ。
「え!?そんな……!ふたりだけの秘密じゃなかったんですか……?」
「うふふ……、ニコラは口が固いから大丈夫ですよ。ついグチを言ってしまったのです」
「う……、それは、まあ、俺が悪いですから、仕方ありません……」
軽い調子で言ったのだが、ブラッドリーはまたもショボンとしてしまう。
「……ブラッドリー様、ソファに移動しませんこと?アーサー様を起こしてしまうかもしれませんし」
「はい……」
ローザはブラッドリーの耳元により近づいて、内緒話をささやくように言った。
「今夜はもっとおしゃべりしましょ?ね?」
「……わかりました」
ブラッドリーはすなおに返事をするのだった。
ローザはうれしく思い、自然とブラッドリーの頭をなでて、ニコリと微笑んだ。
いや、昨夜のブラッドリーのことを思えば、辛い2日間だった。
だからというわけではないが、癒やしが必要である。
「アーサー様ー!好きです!好き好きー!大好きー!」
「きゃはははは!くすぐったいよぉ、ローザァ!」
寝室である。
ローザはアーサーを抱きしめて、高速微振動頬ずりをしているところだった。
高速は想いの強さを、微振動であることは気遣いを表している。
あまり振動を強くすれば、天使の肌が傷ついてしまうかもしれない。
親しき仲にも礼儀ありだ。
「うぅ~!好きです~!」
「はいはい」
「私、最近発見したんですけど、アーサー様に好きって言うだけで、こう……!なんていうか、こう……!力が溢れてくるんです~!アーサー様、いてくれてありがとうございます~!」
「くふふふふ」
そんな世迷い言を宣うローザの頭を、アーサーはやさしく包み込むようにしてなでた。
そして目を見つめて、無自覚に小悪魔な微笑みを浮かべる。
「……よしよし、ぼくも好きだよ」
「きゃー!!!」
ローザは鼻血が出るのを予見して、サッと回復魔法を自分にかける。
高速微振動頬ずりはさらに加速していった。
「……なーにをしてるんですか?」
心底呆れて言ったのは、ブラッドリーである。
今日は、親子3人で寝る日だった。
ブラッドリーは片肘をついて寝転がり、はだけたシャツからは彫刻のような筋肉が見え隠れしている。
「なにって、栄養補給ですわっ!アーサー様からしかとれない栄養がありますもの!ふんふんふんふんっ!」
「きゃははははは!」
「やめなさい。アーサーが削れてしまいます」
「あら?そんなことを言って、アーサー様を独り占めなさるおつもりでは?」
「そんなことはありません。あなたと一緒にしないでください。心外です。……ふんふんふんふんっ!」
ブラッドリーはアーサーに頬ずりした。
「きゃはははは!お父様、くすぐったい~!」
「ほら見たことですかっ!アーサー様のほっぺたを占領しようとなさって……!おそろしい方です……!」
「ふむ……、たしかにパンのような匂いがしますね……。これがアーサーからしかとれない栄養……?」
「ええ、太陽みたいな匂いがしますわ!」
「ローザはねー、なんか甘いにおいがするよ!」
「そうなんですか?」
「うん!なんかね、おいしそう!お父様もかいでみて!」
またもやアーサーは無邪気に時を止める魔法を使った。
「……ふっ」
ブラッドリーは口の端をあげる。
「アーサー、……そろそろ寝る時間だぞ?」
「そうですわ、アーサー様、ポンポンタイムですわ……!」
しかし、ふたりにはそろそろ耐性がついてきていた。
「えー」
「アーサー様、ポンポン」
「アーサー、ポンポン」
「……んぅ、まだ寝たくない……」
ローザとブラッドリーが、両脇からリズムを合わせてアーサーのお腹をポンポンする。
アーサーの目がとろとろしてくる。
「……ぐー」
まるで催眠術でもかけられたかのように、アーサーは眠りについたのだった。
「うふふ……!」
ローザはその寝顔が本当にうれしくて、ブラッドリーに笑みを向ける。
「ふふっ……」
ブラッドリーは、はにかみながらも微笑みを返した。
(……よかった)
ローザは内心ホッとした。
ブラッドリーが微笑みを返してくれた。もしも二度と微笑んでくれなくなったらと想像すると、それだけで心が痛んだ。
特にアーサーをふたりで寝かしつけた時に、ローザはどうしてもうれしくて喜びを共有したくなる。
最初の頃はそっけなかったが、ブラッドリーもアーサーを寝かしつける至上の喜びに目覚めたのか、最近では返してくれるようになっていた。
なんというか……、こういうことって、とても家族っぽいとも思う。
失われなくてよかった、と心底思った。
(あれ……?)
だが、横向きに寝そべっているブラッドリーの表情が唐突に曇った。
「?どうなさいま……!?」
ブラッドリーの異変に気づき、何事かと聞こうとした時、ローザはさらなる異変に気づいた。
ブラッドリーに手を握られていたのである。
「ブ、ブラッドリー様……!?」
寝入ったばかりのアーサーの丸いお腹のうえで。
ぷくー、ぷくーとふくれてはしぼむそのうえで、大胆にもブラッドリーはローザの手をつかんできたのだった。
(ポ、ポンポンからのギュッ……!)
変な言葉が頭につい浮かぶ。
自分の手汗がつい気になってしまう。
しかし、ふと見ると、大胆な犯行を遂げたはずのブラッドリーの顔はやはり浮かないことに気づく。
いや、浮かないどころではない、いまにも泣き出してしまいそうなほど悲しげだ。
ローザはベッドが揺れてアーサーが起きないように、ゆっくりと体を起こしてブラッドリーの耳元に顔を寄せた。
男性らしい匂いが一瞬香ったが、不快ではなかった。
「……どうなさいました?」
ささやき声で、そっと言う。
ブラッドリーはすこし体を震わせたが、アーサーを起こさないように、やはりささやき声で返答した。
「……私は、謝罪しなければなりません」
ため息まじりの低い声が、ローザの耳元をざらりとなでた。
「……謝罪、ですか?」
「……ええ」
ブラッドリーはローザに懺悔するように告げる。
「……なにをでしょう?」
「……まず、教会で逃げ出したこと」
ローザとウィルがハグしているのを目撃し、話も聞かずに立ち去ったことを言っているようだ。
「それと昨夜、私はあなたにひどい振る舞いをしました……。最低です。私はあなたを傷つけようとしたのです……!」
ローザは言われたことをしっかりと覚えていた。
『そもそも私達は内緒とはいえ離婚した仲です。ただの友達でしかありません。だから、あなたがそんなに必死になって浮気の誤解を解く必要はないのです』
また、こうも言っていた。
『私があなたの浮気を咎める権限もありません。ですが、公の場でああいうことをするのは謹んで頂きたい。建前だけの夫婦とはいえ、建前というのは存外大事ですから』
実に冷たい言い草で、しかも反論の機会さえ許されなかった。
だから、しっかりと言ってやった。
「……ええ。ちゃんと傷つきましたわ」
「!……ごめんなさい……!」
ブラッドリーはまるで無垢な少年のように苦しげな表情を見せる。
自分がしたことに罪悪感を覚え、すなおに反省の意を示しているのだった。
そんなブラッドリーの様子を目の当たりにしてローザは、
(ダメ……!)
大いに煩悶した。
(こんなこと思っちゃダメってことはわかってるのに……!でも、もうダメ……!抑えられない……!)
ローザは異様に渇いてくる喉をなんとか潤すように、生唾を呑み込んだ。
(ブラッドリー様……、可愛いすぎる!まるで大きなワンちゃんみたい……!)
ローザの心の目には、ブラッドリーが反省して肩を落としている巨大犬のように見えていた。
いつもは強くて気高くてかっこいいのに、失敗したらすなおに落ち込むところが可愛い。
“血に飢えた黒狼”などという恐ろしいイメージでは断じてない。
ローザの胸は、ついついキュンと締め付けられてしまう。ズルい。
(ああ……!もう我慢できない……!)
ローザはつないでいた手を離した。
間近で、ブラッドリーの真紅の瞳がショックに揺れるのが見える。振り払われたと勘違いしたのかもしれない。
その様子すら(可愛い……)と思ってしまう。
ローザは微笑み、ブラッドリーの頭をなでた。
ブラッドリーの髪は、アーサーのふわふわの髪とはちがい、男性らしい硬い感触だった。
それでも奥には、やわらかな感触が隠れている。
「ロ、ローザさん……?」
「……ゆるします」
ローザは聖女のように微笑んだ。
ブラッドリーの熱い吐息が首筋に感じられた。なぜかゾクゾクしてしまう。
「……いえ、こんな言い方はフェアじゃありませんね。わたしのほうこそごめんなさい」
「な、なぜ、ローザさんが謝るのですか……?そんな必要は……」
ローザは小さく首を振った。ローザのふわふわの金髪が、ブラッドリーの鼻先をくすぐる。
「ブラッドリー様のことを守るって、わたし言いました。なのに、不安にさせてしまいました。……わたしのこと、ゆるしてくれますか?」
ローザはブラッドリーの真紅の瞳を間近にして、覗き込むように見下ろした。
ブラッドリーの濡れた瞳は揺れていたけれど、逸らすことなくローザの瞳を見つめ返した。
「……はい、ゆるします」
ローザは微笑んで、またブラッドリーの頭をなでた。
「わたしのこと、信じてくれますか?」
重ねて問う。
「はい……!」
またもなでると、ブラッドリーは気持ち良さそうに目を細めた。
ローザはその仕草にすこしドキリとするが、ふと思い出して言う。
「……あっ、ごめんなさい。そういえば、ニコラにわたしたちの秘密を言ってしまいましたわ」
内緒で離婚している件のことだ。
「え!?そんな……!ふたりだけの秘密じゃなかったんですか……?」
「うふふ……、ニコラは口が固いから大丈夫ですよ。ついグチを言ってしまったのです」
「う……、それは、まあ、俺が悪いですから、仕方ありません……」
軽い調子で言ったのだが、ブラッドリーはまたもショボンとしてしまう。
「……ブラッドリー様、ソファに移動しませんこと?アーサー様を起こしてしまうかもしれませんし」
「はい……」
ローザはブラッドリーの耳元により近づいて、内緒話をささやくように言った。
「今夜はもっとおしゃべりしましょ?ね?」
「……わかりました」
ブラッドリーはすなおに返事をするのだった。
ローザはうれしく思い、自然とブラッドリーの頭をなでて、ニコリと微笑んだ。
42
お気に入りに追加
1,785
あなたにおすすめの小説
夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜
梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。
そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。
実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。
悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。
しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。
そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

辺境伯へ嫁ぎます。
アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。
隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。
私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。
辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。
本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。
辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。
辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。
それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか?
そんな望みを抱いてしまいます。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 設定はゆるいです。
(言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)
❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。
(出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる