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第一章
第19話 ローザ、一夜の過ちをする
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(な、なんでこんなことに……!?)
ローザが朝起きると、ローザはブラッドリーにうしろから抱きしめられていた。
ブラッドリーは寝ているらしく、静かな吐息が首筋にくすぐったい。
アーサーはいない。
昨夜はローザとブラッドリーのふたりきりで寝る日だった。
だが、当然ベッドは別々のはずだ。
なのに、大きな方のベッドで、ふたりして寝ている。
これは一体……?
(いたっ……!)
ローザの頭に未知の頭痛が走った。
ローザは、ブラッドリーのたくましい腕に抱かれてピクリとも動けないまま、昨日一体何があったのか、必死に思い出そうとした。
ローザは侍女のニコラを伴って、近隣の村を訪ねていた。
特に何か用があるわけでもないが、いろいろと知っておいたほうが何かといいだろうと思い、度々出かけているのである。
一応、領主の妻だし。
「あっ!見て、ニコラ!こんなに大きいカエル初めて見たわ!」
ローザは太った猫くらいあるカエルを捕まえて、ニコラに近づけた。
「ひっ!?お、奥様、今すぐ放してください!」
「えー、かわいいのに……」
怒られたので、ローザは素直にカエルを放した。
カエルは大きくジャンプして、茂みのなかに逃げていく。
「奥様、よく平気ですね……」
ニコラが心臓の辺りをおさえて、深呼吸しながら言った。
「面白いじゃない。王都にはいなかったわ!」
「北方にもいませんでしたよ……」
ローザは元王都暮らしの公爵令嬢とは思えないほどの順応ぶりを見せていた。
「あー!お姫様だー!」
「また来てるー!」
「ねー!アーサー様はー?」
村の子どもたちが寄ってくる。すでに顔なじみだ。
「アーサー様は今日はお勉強なのよ……。はあ……」
だれより悲しそうにローザがため息を吐く。
アーサーには座学や剣術の家庭教師が付けられていて、週に何度かローザは遊んでもらえない日があるのだった。
しゃがんでいじけているローザに、ウェンディという名の村人の女の子(5歳)が肩にポンと手を乗せる。
「あたちたちが遊んであげるから、ね?」
「……うん」
こうしてローザは領民と親睦を深めていった。
そのなかでわかってきたことの一つとして、ブラッドリーの評判がすこぶる良いということがある。
税は最低限しか取らず、私腹を肥やさずに、災害などがあった時のための備蓄になるべく回している。
それだけでも領主としては信頼がおけるが、困窮している家庭には減税や必要な手当てをしている。
城内に勤める侍女などの使用人たちも、なるべく領民から雇用することで、税を再分配しようとしているらしい。
つまり、ローザが当初考えていたような貴族の子女や愛人の子どもが使用人をしているというケースはほとんどなかった。
(王都とは全然ちがうのよね……。使用人たちの仕事の大半は、兵士たちのお世話みたいだし)
ローザは子どもたちとケンケンパをしながら、ちらっとアッシャー城を眺めて、思考を巡らす。
アッシャー城は、両翼にとてつもなく長い壁が伸びている石造りの城だ。
隣国との境を隔て、防衛するためのものであり、端が視認できないほどだった。
城の本体はむしろこの壁である。
王都での主役は華美な貴族たちだったが、アッシャー城での主役をあえて言えば、兵士たちだった。
辺境の役割から言えば、当然といえば当然のことと言える。
(かといって、兵士たちも偉ぶってる感じじゃないし……)
兵士たちの2割くらいは、ブラッドリーが傭兵時代に率いていた“黒狼旅団”のメンバーだ。
残り8割の半分くらいは王都や近隣の諸侯たちから派遣されてきた兵であり、もう半分は領民のなかから志願した兵から成っていた。
志願兵の多くは剣も握ったことのない平民たちであることに驚くが、過去に侵略された苦い記憶が動機にあることは想像に難くない。
これだけ雑多な兵士たちであるから、様々な軋轢が生まれそうなものだが、意外なほどまとまっていて、質実剛健で親切でさえあると評判だった。
それはブラッドリーの側近たちによる地獄の訓練で育まれる兵士同士の絆も無関係ではないだろうが(絶対に受けたくない!)、なによりブラッドリーの存在が大きかった。
ブラッドリーは、救国の英雄である。
領地奪還を成し遂げたことで志願兵たちの尊敬を勝ち得ていたのはもちろん、かつて王都にまで迫っていた敵の軍勢をたった一人で撃退したことがあるらしい。
(いや、さすがにたった一人というのは、ちょっと信じられないけれど……)
だが、国を救ったのは事実であるし、血気盛んな兵士たちは生ける伝説を憧れの目で眺め、彼に恥じないよう振る舞っている。
それはなかなか尊いことのように思われた。
領民たちに益するところが多いのだから、なおのこと良い。
彼らは長城で防衛任務を務めるばかりでなく、領民たちの壊れた家を直したり、回復魔法の心得があるものは無償で治癒して回っている。
これらのことがすべてブラッドリーの評判に直結して、それはもう物凄い人気だった。
さらには現在、ブラッドリーは教会と交渉して、領民が学べる場を拡充しようと建物を建設中らしい。
だれも“血に飢えた黒狼”やましてや“奴隷辺境伯”などと蔑むものはいなかった。
“戦神”くらいは言っているかもしれないが、それは褒め言葉のニュアンスだろう。
もちろん領主の妻の前で、領主の悪口を言うものなどいないとも考えられるが、そうではない気がした。
「ブラッドリー様のことどう思う?」
ケンケンパの丸を増設中のウェンディに聞いてみた。
「んー?」
ウェンディはグルグル回りながら言った。
「顔がいい!ブアイソだけど!」
領民からのブラッドリー人気は絶大である。
ブラッドリーは、執務室でため息を吐いていた。
側近たちとの3ヶ月に一度の会議中である。
「だから、サーベルシロクマが最強だって言ってんだろー?5メートルあるんだぞ?牙入れたら7メートルある」
領地の北方拠点を取り仕切る、ロイ・ナッシュが眉間にシワを寄せて言った。
長い金髪を一本の太い三つ編みにして、肩から垂らしている美男子であり、弓を引かせれば右に出るものはいない。
貴族より貴族らしい優雅な見た目をしていて、貴婦人と浮名を流し続けている。
わざわざ王都から通ってくる貴婦人もいるそうだ。
「……ヘラクレスパンダの方が強い。爪を入れれば、10メートル級もいる」
南方拠点を取り仕切るコーディ・フォークナーが、素朴な人柄を感じさせる声で反論する。
コーディはとにかくでかくて太い。
傍らにはコーディくらいしか振れるものはいないだろう巨大なハンマーを常に携えている。
「いやいや、シンプルにクリムゾンヒグマだろ?最近ヴァーミリオンヒグマとのハイブリッドが出てきてて、ヤバいって言うぜ?」
リュックが参戦する。
なにげにリュックも側近の一人であり、それなりの地位がある。
遊撃部隊隊長であり、各拠点との連絡役も務める部隊であるため、中央であるアッシャー城に詰めている。
「マジかよー、そりゃやべえな!」
「訓練に最適だな……」
ロイが素直に反応し、コーディが厳しい顔でハンマーを握る。
「いやいや、死ぬだろ……。俺達の時とはちがうんだから、訓練で死人出さないでくれよ?なあ、ブラッド」
彼ら側近は全員、戦争奴隷時代からの仲間である。
「……クマの話はもういい」
ブラッドリーは疲れた様子で、目頭の辺りをもみながら聞いた。
「 ……“北の王国”の件に進展は?」
「ないなー。ルーシーの報告待ちだ」
ルーシーというのは、もう一人の側近であるルーシー・ダイアモンドのことだった。
彼女は極秘任務中であった。
もちろんブラッドリーたちも関わっている。
実は現在、彼らは国を左右する大きな計画に携わっているのだった。
「そうか……」
「ま、ルーシーなら心配いらないだろー」
ソファにふんぞり返って座っていたロイが、身を乗り出して言った。
「それより今話すべき問題は、ローザ・ゼファニヤ、お前の嫁だろー?」
ロイが急に核心を突き、にわかに緊迫した空気になる。
「このタイミングであのゼファニヤ家から送り込まれて来たんだぜー?なんかあるに決まってるだろ」
「……獅子身中の虫だな」
コーディも厳しい顔でつぶやく。
「コートニーさんの件もあるしよー。まー、コートニーさんから事情は聞いたから、悪いのはコートニーさんだっていうのはわかってるけど、なんかイヤな感じだぜー?わかってるだろ?」
「まあ、な……」
歯切れの悪いブラッドリーに、ロイは目を細めて自前の三つ編みをなでる。
「……まさか、蛇の毒牙にやられちまったわけじゃないよなー?」
「バカな……!」
「王都の貴族共の腐臭を忘れたわけじゃねーだろー?私腹を肥やすためなら民の命は潰して当然って連中だぜー?」
軽い口調とは裏腹に、ロイの瞳には常に貴族に対する静かな怒りが燃えている。
コーディもロイと同じ思いなのか、両手で祈るようにハンマーを握りしめた。
「ま、まあまあ!」
緊迫した空気を和らげようと、リュックが努めて明るい声で言った。
「俺はあのお姫様をずいぶん監視してきたけど、そんな危険な人じゃないと思うぜ?」
「はあー?マジかよ。つーか、お姫様ってなんだよ。べつにお姫様じゃねーだろ」
たしかにローザは元公爵令嬢で、現辺境伯夫人であるが、お姫様ではない。
「あー、その、なんていうか……、あの人ってお姫様って感じなんだよ!頭は良いんだろうけど、無邪気で世間知らずなトコとか……。直感でしかないんだけど、あの人って実は何も知らされてないんじゃないかなあ……?」
(そうなのだ!そこが一番の問題なのだ!)
ブラッドリーは内心、全力でうなずいた。
“蛇のゼファニヤ”としての密命を帯びているのではないか?と疑わざるを得ない状況であるにも関わらず、ローザは能天気過ぎるのだ!
毎日毎日、寝ても覚めてもアーサーのことばかり!
この前など、「アーサー様……、うふふ、プラムージュースおいしいですわね……むにゃむにゃ」などと夢にまで見ている始末。
そして、何よりもアーサーに向ける本当にうれしそうな笑顔……。
慈愛に満ちたその笑みを目にする度に、ブラッドリーはローザを信じたいと思う。
単に政略結婚の道具として利用されて来ただけで、密命なんて何も帯びていないのではないか。
その可能性は充分にあるとも思う。
だが、信じたいという気持ちが強くなればなるほど、それに比例して疑うべきだという心の声も大きくなった。
ブラッドリーは現在、強烈な板挟み状態にあって、ストレスフルな毎日を送っている。
「はあー?お前まで毒にやられたか?」
「リュックの直感はわりと当たるがなあ……」
ロイが三つ編みを振って、コーディが太い腕を組んで上を向く。
「……ロイの懸念は至極当然だ」
それまで黙って聞いていたブラッドリーが、裁定を下すように言った。
「原因が何にせよ、明らかな不調和がここに来て起こっているのは事実。依然として極秘任務を探るために送られてきたスパイである可能性は否めない。引き続き警戒するべきだろう」
ロイとコーディはうなずき、リュックも渋々ながらうなずく。
「……平和という目的のためなら、慎重になり過ぎるということはあるまい」
ブラッドリーはため息を吐くように言った。
村から帰る際、ローザはお土産にプラムーの実を漬けたシロップをもらった。
プラムーの実とは、丸っこくて緑色でそのまま齧るととても酸っぱい果物だ。
砂糖漬けにしてシロップにしたものをキンキンに冷えた井戸水で割ると、最高のジュースになる。
ウェンディの祖母であるマーリーンがくれたのだが、なぜか2つもくれた。
一方は白い壺、もう一方は黒い壺に入っている。
白い壺はアーサーと、黒い壺はブラッドリーと飲むとよいとのことだった。
白い壺の方が甘口なのかもしれない。何にせよ親切だ。
黒い壺を渡された時、マーリーンにサムズアップをされたので、ローザも返しといた。
夕食の時にアーサーに振る舞ったら、予想通りの大好評。
何杯もおかわりしていて、今度自分でも作りたいと言う。
「いいですね!プラムー採集に今度行きましょう!」
アーサーと行くハイキングを想像して、ローザは今からウキウキする。
「……うん。お父様も行けるといいな」
ブラッドリーは今日も忙しいのか、夕食は執務室でとるとのことだった。
夕食は滅多に一緒にとれなかった。
最近のローザは、ブラッドリーとうまくやれていると自分ながら思っている。
出会って間もない頃は怖いイメージが先行していたり、息子に関心のない父なのかと疑問を抱いたが、今ではそんなことはないと知っていた。
単に身体が大きくて、滅多に笑わない無愛想な顔をしているだけで、本当はすごく誠実だ。
やさしいとも思う。
ちょうど身体は大きいけれどやさしい犬のような感じで、“血に飢えた黒狼”なんかでは断じてない。
アーサーにもちゃんと関心があるし、愛もある。
でないと、自分に教育を依頼したりしないだろう。
そういうわけで、ローザは寝室でブラッドリーを待ち構えていた。
黒い壺に入ったプラムージュースをぜひ振る舞って、忙しいブラッドリーをすこしでも労いたいという気持ちになったのだった。
ついでにハイキングの約束も取り付けようと企んでいる。
だが、今日はいつも以上に忙しいのか、日付が変わってもブラッドリーは寝室に現れない。
(……今日は諦めよう。明日もあるしね)
ローザは大きい方のベッドに入る。
以前、小さい方のベッドでいいと言ったのだが、ブラッドリーは「大きい方を気に入っているのならどうぞ使ってください」と譲らなかった。
そんなことを思い出し、ローザは微笑ましい気持ちで眠りについた。
すこし時間が経って、ブラッドリーが寝室に入ってくるのが気配でわかった。
ブラッドリーは疲れているのか、すぐにベッドに入り、眠ってしまったようだ。
ローザは半覚醒の意識のまま(おつかれさまです……)と心の中で唱え、再び眠った。
またすこし時間が経って、ブラッドリーが急に跳ね起きたのがわかった。
ローザの意識は、今度はちゃんと覚醒している。
というのも、ブラッドリーは跳ね起きる前から、明らかにうなされていたからだ。
「……だいじょうぶですか?」
ローザは肩で息をしているブラッドリーに声をかける。
月の明るい夜で幸いだったと言えるのか、ブラッドリーの表情は何かに怯え、冷や汗を大量にかいているのが見て取れた。
「あ、ああ……だいじょうぶです……」
ブラッドリーは辛うじて言うが、真紅の瞳はまるで焦点が合っていない。
「すこし、奴隷の頃の夢を見ただけです……。たまにあるのです……」
普段ならば、絶対に素直には言わないだろうに、まるで不安定な少年のような口ぶりでブラッドリーは言った。
寒いのか、すこし震えてさえいる。
何かできることはないかと思ったローザの視界に、黒い壺が映った。
「ファイアボール」
ローザの人差し指の先に小さな火球が出現する。
ローザはそれを、用意していた井戸水に入れてお湯にした。
(アーサー様と一緒にお勉強してて良かった……!)
火属性の初等魔法は回復魔法とは違い、魔力をわずかに消耗するだけなので、倒れる心配もなかった。
プラムーのお湯割りを作って、ローザはブラッドリーに渡す。
「熱いですから気を付けて、すこしずつ飲んでください」
ブラッドリーは無言でうなずく。
ローザはブラッドリーが落ち着くまで、タオルで汗をふいてやった。
「……ありがとうございます。もう大丈夫です」
いつもの様子に戻り、ブラッドリーは言った。
「あの……、服を着替えたほうがよろしいかと。風邪をひいてしまいますから」
ローザが言うと、ブラッドリーは素直にうなずき立ち上がった。
「……うしろを向いててもらえますか?」
「あ、あはは、そうですわよね」
ローザは慌ててターンしたが、目の端にブラッドリーの背中がチラリと見えてしまう。
(やっぱり……)
ブラッドリーの背中には、火傷の跡や鞭で打たれたような傷跡が残っていた。
さっき汗を拭いた時、タオル越しの感触に違和感があったのだ。
それは戦場で負った傷ではないように思われた。
ローザは鼓動が速くなるのを感じ、自分も落ち着くためにプラムーのお湯割りを作って飲んだ。
お湯は適温になっていたから、グッ!と一気に飲む。
すると、お湯以上の温度を感じ、喉がカッー!と熱くなった。
(……ブラッドリー様用だから、スパイスでも入っているのかしら?)
なんとなく味も濃い気がする。
すこし驚いたがローザはグイグイ飲んだ。
こちらの方が好みかもしれない。
「……ローザさん」
「はい……!」
心に響くような低い声に反射的に振り返ると、そこには信じられないほどの美丈夫がいた。
当たり前だが、ブラッドリーである。
だが、不思議なことにいつものブラッドリーよりも、色気があった。
匂い立つような色気というのはこのことか、はだけた胸元のたくましさや、長い手足が今のローザには異様に意識される。
真紅の瞳に見つめられて、ローザは目を離すこともできない。
散々飲んだはずなのに、喉が渇く。
ブラッドリーの眼差しは熱く、ローザのサファイア色の瞳を溶かすようだった。
「ローザさん……」
ブラッドリーにまた名を呼ばれ、ローザの身体がビクンと反応する。
「……なんでしょう?」
ローザは不安と待ち切れない気持ちがないまぜになって、続きの言葉を促した。
ふたりきりの寝室は、これまでにないほど張り詰めていたはずである。
だが、ブラッドリーは出し抜けにニコリと微笑んだ。
「これからデートに出かけませんか?」
無邪気な少年のような笑みだった。
ローザが朝起きると、ローザはブラッドリーにうしろから抱きしめられていた。
ブラッドリーは寝ているらしく、静かな吐息が首筋にくすぐったい。
アーサーはいない。
昨夜はローザとブラッドリーのふたりきりで寝る日だった。
だが、当然ベッドは別々のはずだ。
なのに、大きな方のベッドで、ふたりして寝ている。
これは一体……?
(いたっ……!)
ローザの頭に未知の頭痛が走った。
ローザは、ブラッドリーのたくましい腕に抱かれてピクリとも動けないまま、昨日一体何があったのか、必死に思い出そうとした。
ローザは侍女のニコラを伴って、近隣の村を訪ねていた。
特に何か用があるわけでもないが、いろいろと知っておいたほうが何かといいだろうと思い、度々出かけているのである。
一応、領主の妻だし。
「あっ!見て、ニコラ!こんなに大きいカエル初めて見たわ!」
ローザは太った猫くらいあるカエルを捕まえて、ニコラに近づけた。
「ひっ!?お、奥様、今すぐ放してください!」
「えー、かわいいのに……」
怒られたので、ローザは素直にカエルを放した。
カエルは大きくジャンプして、茂みのなかに逃げていく。
「奥様、よく平気ですね……」
ニコラが心臓の辺りをおさえて、深呼吸しながら言った。
「面白いじゃない。王都にはいなかったわ!」
「北方にもいませんでしたよ……」
ローザは元王都暮らしの公爵令嬢とは思えないほどの順応ぶりを見せていた。
「あー!お姫様だー!」
「また来てるー!」
「ねー!アーサー様はー?」
村の子どもたちが寄ってくる。すでに顔なじみだ。
「アーサー様は今日はお勉強なのよ……。はあ……」
だれより悲しそうにローザがため息を吐く。
アーサーには座学や剣術の家庭教師が付けられていて、週に何度かローザは遊んでもらえない日があるのだった。
しゃがんでいじけているローザに、ウェンディという名の村人の女の子(5歳)が肩にポンと手を乗せる。
「あたちたちが遊んであげるから、ね?」
「……うん」
こうしてローザは領民と親睦を深めていった。
そのなかでわかってきたことの一つとして、ブラッドリーの評判がすこぶる良いということがある。
税は最低限しか取らず、私腹を肥やさずに、災害などがあった時のための備蓄になるべく回している。
それだけでも領主としては信頼がおけるが、困窮している家庭には減税や必要な手当てをしている。
城内に勤める侍女などの使用人たちも、なるべく領民から雇用することで、税を再分配しようとしているらしい。
つまり、ローザが当初考えていたような貴族の子女や愛人の子どもが使用人をしているというケースはほとんどなかった。
(王都とは全然ちがうのよね……。使用人たちの仕事の大半は、兵士たちのお世話みたいだし)
ローザは子どもたちとケンケンパをしながら、ちらっとアッシャー城を眺めて、思考を巡らす。
アッシャー城は、両翼にとてつもなく長い壁が伸びている石造りの城だ。
隣国との境を隔て、防衛するためのものであり、端が視認できないほどだった。
城の本体はむしろこの壁である。
王都での主役は華美な貴族たちだったが、アッシャー城での主役をあえて言えば、兵士たちだった。
辺境の役割から言えば、当然といえば当然のことと言える。
(かといって、兵士たちも偉ぶってる感じじゃないし……)
兵士たちの2割くらいは、ブラッドリーが傭兵時代に率いていた“黒狼旅団”のメンバーだ。
残り8割の半分くらいは王都や近隣の諸侯たちから派遣されてきた兵であり、もう半分は領民のなかから志願した兵から成っていた。
志願兵の多くは剣も握ったことのない平民たちであることに驚くが、過去に侵略された苦い記憶が動機にあることは想像に難くない。
これだけ雑多な兵士たちであるから、様々な軋轢が生まれそうなものだが、意外なほどまとまっていて、質実剛健で親切でさえあると評判だった。
それはブラッドリーの側近たちによる地獄の訓練で育まれる兵士同士の絆も無関係ではないだろうが(絶対に受けたくない!)、なによりブラッドリーの存在が大きかった。
ブラッドリーは、救国の英雄である。
領地奪還を成し遂げたことで志願兵たちの尊敬を勝ち得ていたのはもちろん、かつて王都にまで迫っていた敵の軍勢をたった一人で撃退したことがあるらしい。
(いや、さすがにたった一人というのは、ちょっと信じられないけれど……)
だが、国を救ったのは事実であるし、血気盛んな兵士たちは生ける伝説を憧れの目で眺め、彼に恥じないよう振る舞っている。
それはなかなか尊いことのように思われた。
領民たちに益するところが多いのだから、なおのこと良い。
彼らは長城で防衛任務を務めるばかりでなく、領民たちの壊れた家を直したり、回復魔法の心得があるものは無償で治癒して回っている。
これらのことがすべてブラッドリーの評判に直結して、それはもう物凄い人気だった。
さらには現在、ブラッドリーは教会と交渉して、領民が学べる場を拡充しようと建物を建設中らしい。
だれも“血に飢えた黒狼”やましてや“奴隷辺境伯”などと蔑むものはいなかった。
“戦神”くらいは言っているかもしれないが、それは褒め言葉のニュアンスだろう。
もちろん領主の妻の前で、領主の悪口を言うものなどいないとも考えられるが、そうではない気がした。
「ブラッドリー様のことどう思う?」
ケンケンパの丸を増設中のウェンディに聞いてみた。
「んー?」
ウェンディはグルグル回りながら言った。
「顔がいい!ブアイソだけど!」
領民からのブラッドリー人気は絶大である。
ブラッドリーは、執務室でため息を吐いていた。
側近たちとの3ヶ月に一度の会議中である。
「だから、サーベルシロクマが最強だって言ってんだろー?5メートルあるんだぞ?牙入れたら7メートルある」
領地の北方拠点を取り仕切る、ロイ・ナッシュが眉間にシワを寄せて言った。
長い金髪を一本の太い三つ編みにして、肩から垂らしている美男子であり、弓を引かせれば右に出るものはいない。
貴族より貴族らしい優雅な見た目をしていて、貴婦人と浮名を流し続けている。
わざわざ王都から通ってくる貴婦人もいるそうだ。
「……ヘラクレスパンダの方が強い。爪を入れれば、10メートル級もいる」
南方拠点を取り仕切るコーディ・フォークナーが、素朴な人柄を感じさせる声で反論する。
コーディはとにかくでかくて太い。
傍らにはコーディくらいしか振れるものはいないだろう巨大なハンマーを常に携えている。
「いやいや、シンプルにクリムゾンヒグマだろ?最近ヴァーミリオンヒグマとのハイブリッドが出てきてて、ヤバいって言うぜ?」
リュックが参戦する。
なにげにリュックも側近の一人であり、それなりの地位がある。
遊撃部隊隊長であり、各拠点との連絡役も務める部隊であるため、中央であるアッシャー城に詰めている。
「マジかよー、そりゃやべえな!」
「訓練に最適だな……」
ロイが素直に反応し、コーディが厳しい顔でハンマーを握る。
「いやいや、死ぬだろ……。俺達の時とはちがうんだから、訓練で死人出さないでくれよ?なあ、ブラッド」
彼ら側近は全員、戦争奴隷時代からの仲間である。
「……クマの話はもういい」
ブラッドリーは疲れた様子で、目頭の辺りをもみながら聞いた。
「 ……“北の王国”の件に進展は?」
「ないなー。ルーシーの報告待ちだ」
ルーシーというのは、もう一人の側近であるルーシー・ダイアモンドのことだった。
彼女は極秘任務中であった。
もちろんブラッドリーたちも関わっている。
実は現在、彼らは国を左右する大きな計画に携わっているのだった。
「そうか……」
「ま、ルーシーなら心配いらないだろー」
ソファにふんぞり返って座っていたロイが、身を乗り出して言った。
「それより今話すべき問題は、ローザ・ゼファニヤ、お前の嫁だろー?」
ロイが急に核心を突き、にわかに緊迫した空気になる。
「このタイミングであのゼファニヤ家から送り込まれて来たんだぜー?なんかあるに決まってるだろ」
「……獅子身中の虫だな」
コーディも厳しい顔でつぶやく。
「コートニーさんの件もあるしよー。まー、コートニーさんから事情は聞いたから、悪いのはコートニーさんだっていうのはわかってるけど、なんかイヤな感じだぜー?わかってるだろ?」
「まあ、な……」
歯切れの悪いブラッドリーに、ロイは目を細めて自前の三つ編みをなでる。
「……まさか、蛇の毒牙にやられちまったわけじゃないよなー?」
「バカな……!」
「王都の貴族共の腐臭を忘れたわけじゃねーだろー?私腹を肥やすためなら民の命は潰して当然って連中だぜー?」
軽い口調とは裏腹に、ロイの瞳には常に貴族に対する静かな怒りが燃えている。
コーディもロイと同じ思いなのか、両手で祈るようにハンマーを握りしめた。
「ま、まあまあ!」
緊迫した空気を和らげようと、リュックが努めて明るい声で言った。
「俺はあのお姫様をずいぶん監視してきたけど、そんな危険な人じゃないと思うぜ?」
「はあー?マジかよ。つーか、お姫様ってなんだよ。べつにお姫様じゃねーだろ」
たしかにローザは元公爵令嬢で、現辺境伯夫人であるが、お姫様ではない。
「あー、その、なんていうか……、あの人ってお姫様って感じなんだよ!頭は良いんだろうけど、無邪気で世間知らずなトコとか……。直感でしかないんだけど、あの人って実は何も知らされてないんじゃないかなあ……?」
(そうなのだ!そこが一番の問題なのだ!)
ブラッドリーは内心、全力でうなずいた。
“蛇のゼファニヤ”としての密命を帯びているのではないか?と疑わざるを得ない状況であるにも関わらず、ローザは能天気過ぎるのだ!
毎日毎日、寝ても覚めてもアーサーのことばかり!
この前など、「アーサー様……、うふふ、プラムージュースおいしいですわね……むにゃむにゃ」などと夢にまで見ている始末。
そして、何よりもアーサーに向ける本当にうれしそうな笑顔……。
慈愛に満ちたその笑みを目にする度に、ブラッドリーはローザを信じたいと思う。
単に政略結婚の道具として利用されて来ただけで、密命なんて何も帯びていないのではないか。
その可能性は充分にあるとも思う。
だが、信じたいという気持ちが強くなればなるほど、それに比例して疑うべきだという心の声も大きくなった。
ブラッドリーは現在、強烈な板挟み状態にあって、ストレスフルな毎日を送っている。
「はあー?お前まで毒にやられたか?」
「リュックの直感はわりと当たるがなあ……」
ロイが三つ編みを振って、コーディが太い腕を組んで上を向く。
「……ロイの懸念は至極当然だ」
それまで黙って聞いていたブラッドリーが、裁定を下すように言った。
「原因が何にせよ、明らかな不調和がここに来て起こっているのは事実。依然として極秘任務を探るために送られてきたスパイである可能性は否めない。引き続き警戒するべきだろう」
ロイとコーディはうなずき、リュックも渋々ながらうなずく。
「……平和という目的のためなら、慎重になり過ぎるということはあるまい」
ブラッドリーはため息を吐くように言った。
村から帰る際、ローザはお土産にプラムーの実を漬けたシロップをもらった。
プラムーの実とは、丸っこくて緑色でそのまま齧るととても酸っぱい果物だ。
砂糖漬けにしてシロップにしたものをキンキンに冷えた井戸水で割ると、最高のジュースになる。
ウェンディの祖母であるマーリーンがくれたのだが、なぜか2つもくれた。
一方は白い壺、もう一方は黒い壺に入っている。
白い壺はアーサーと、黒い壺はブラッドリーと飲むとよいとのことだった。
白い壺の方が甘口なのかもしれない。何にせよ親切だ。
黒い壺を渡された時、マーリーンにサムズアップをされたので、ローザも返しといた。
夕食の時にアーサーに振る舞ったら、予想通りの大好評。
何杯もおかわりしていて、今度自分でも作りたいと言う。
「いいですね!プラムー採集に今度行きましょう!」
アーサーと行くハイキングを想像して、ローザは今からウキウキする。
「……うん。お父様も行けるといいな」
ブラッドリーは今日も忙しいのか、夕食は執務室でとるとのことだった。
夕食は滅多に一緒にとれなかった。
最近のローザは、ブラッドリーとうまくやれていると自分ながら思っている。
出会って間もない頃は怖いイメージが先行していたり、息子に関心のない父なのかと疑問を抱いたが、今ではそんなことはないと知っていた。
単に身体が大きくて、滅多に笑わない無愛想な顔をしているだけで、本当はすごく誠実だ。
やさしいとも思う。
ちょうど身体は大きいけれどやさしい犬のような感じで、“血に飢えた黒狼”なんかでは断じてない。
アーサーにもちゃんと関心があるし、愛もある。
でないと、自分に教育を依頼したりしないだろう。
そういうわけで、ローザは寝室でブラッドリーを待ち構えていた。
黒い壺に入ったプラムージュースをぜひ振る舞って、忙しいブラッドリーをすこしでも労いたいという気持ちになったのだった。
ついでにハイキングの約束も取り付けようと企んでいる。
だが、今日はいつも以上に忙しいのか、日付が変わってもブラッドリーは寝室に現れない。
(……今日は諦めよう。明日もあるしね)
ローザは大きい方のベッドに入る。
以前、小さい方のベッドでいいと言ったのだが、ブラッドリーは「大きい方を気に入っているのならどうぞ使ってください」と譲らなかった。
そんなことを思い出し、ローザは微笑ましい気持ちで眠りについた。
すこし時間が経って、ブラッドリーが寝室に入ってくるのが気配でわかった。
ブラッドリーは疲れているのか、すぐにベッドに入り、眠ってしまったようだ。
ローザは半覚醒の意識のまま(おつかれさまです……)と心の中で唱え、再び眠った。
またすこし時間が経って、ブラッドリーが急に跳ね起きたのがわかった。
ローザの意識は、今度はちゃんと覚醒している。
というのも、ブラッドリーは跳ね起きる前から、明らかにうなされていたからだ。
「……だいじょうぶですか?」
ローザは肩で息をしているブラッドリーに声をかける。
月の明るい夜で幸いだったと言えるのか、ブラッドリーの表情は何かに怯え、冷や汗を大量にかいているのが見て取れた。
「あ、ああ……だいじょうぶです……」
ブラッドリーは辛うじて言うが、真紅の瞳はまるで焦点が合っていない。
「すこし、奴隷の頃の夢を見ただけです……。たまにあるのです……」
普段ならば、絶対に素直には言わないだろうに、まるで不安定な少年のような口ぶりでブラッドリーは言った。
寒いのか、すこし震えてさえいる。
何かできることはないかと思ったローザの視界に、黒い壺が映った。
「ファイアボール」
ローザの人差し指の先に小さな火球が出現する。
ローザはそれを、用意していた井戸水に入れてお湯にした。
(アーサー様と一緒にお勉強してて良かった……!)
火属性の初等魔法は回復魔法とは違い、魔力をわずかに消耗するだけなので、倒れる心配もなかった。
プラムーのお湯割りを作って、ローザはブラッドリーに渡す。
「熱いですから気を付けて、すこしずつ飲んでください」
ブラッドリーは無言でうなずく。
ローザはブラッドリーが落ち着くまで、タオルで汗をふいてやった。
「……ありがとうございます。もう大丈夫です」
いつもの様子に戻り、ブラッドリーは言った。
「あの……、服を着替えたほうがよろしいかと。風邪をひいてしまいますから」
ローザが言うと、ブラッドリーは素直にうなずき立ち上がった。
「……うしろを向いててもらえますか?」
「あ、あはは、そうですわよね」
ローザは慌ててターンしたが、目の端にブラッドリーの背中がチラリと見えてしまう。
(やっぱり……)
ブラッドリーの背中には、火傷の跡や鞭で打たれたような傷跡が残っていた。
さっき汗を拭いた時、タオル越しの感触に違和感があったのだ。
それは戦場で負った傷ではないように思われた。
ローザは鼓動が速くなるのを感じ、自分も落ち着くためにプラムーのお湯割りを作って飲んだ。
お湯は適温になっていたから、グッ!と一気に飲む。
すると、お湯以上の温度を感じ、喉がカッー!と熱くなった。
(……ブラッドリー様用だから、スパイスでも入っているのかしら?)
なんとなく味も濃い気がする。
すこし驚いたがローザはグイグイ飲んだ。
こちらの方が好みかもしれない。
「……ローザさん」
「はい……!」
心に響くような低い声に反射的に振り返ると、そこには信じられないほどの美丈夫がいた。
当たり前だが、ブラッドリーである。
だが、不思議なことにいつものブラッドリーよりも、色気があった。
匂い立つような色気というのはこのことか、はだけた胸元のたくましさや、長い手足が今のローザには異様に意識される。
真紅の瞳に見つめられて、ローザは目を離すこともできない。
散々飲んだはずなのに、喉が渇く。
ブラッドリーの眼差しは熱く、ローザのサファイア色の瞳を溶かすようだった。
「ローザさん……」
ブラッドリーにまた名を呼ばれ、ローザの身体がビクンと反応する。
「……なんでしょう?」
ローザは不安と待ち切れない気持ちがないまぜになって、続きの言葉を促した。
ふたりきりの寝室は、これまでにないほど張り詰めていたはずである。
だが、ブラッドリーは出し抜けにニコリと微笑んだ。
「これからデートに出かけませんか?」
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