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フェルが周囲にいる人たちに声を掛けて、俺を自分の家…氷城に連れて行こうとした時、突然後ろの方から待ってくれ、という声が聞こえてきた。

声の聞こえた方を向くとそこには眼鏡を掛けた男性が立っていた。

「お前は確か…リョウだったか?」

男性の姿を見たフェルは確認する様に男性に向かってそう聞いた。

「…はっ、主人様に失礼ながら一言申し上げたい事が有るのです」

すると男性は名前を呼ばれた時に喜んだ表情をしたが、直ぐに表情を作り、フェルに向かってそう話しかけた。

「今はあまり時間を使いたく無いのだが…まぁいい、それで、私に言いたい事とは何だ?」

呼び止められたフェルは男性に早く要件を言うように言った。

男性に言った言葉からして何か用事でもあるのかな?急いでる様な感じがする。

「はい、先程主人様はそこの人間を主人様の居城に連れて行くと言いましたが、流石に誰も側に連れずに2人だけで、というのはいけないかと、万が一にもあり得ないとは思いますが、そこの人間が主人様に不貞を働かないという確証も無いです」

男性がそうフェルに言うと周囲に居た人たちもウンウンと頷いた。

まぁそうだよな…ここに居る人たちは俺とフェルの関係なんて知らないし…俺がフェルと友好関係が有るって言うのも信じて無かったからな。

どこの馬の骨かも分からない奴と自分の主人が2人っきりになるってのを放っておく訳が無い。

暗殺やらなんやらの危険性が一切無いって訳じゃ無いし、護衛や監視役を付けたいと考えるのは当たり前だよな。

そして男性の言葉を聞いたフェルは何かを黙って考え始めた。

大方どうすれば護衛を付けずにあの城に戻れるか…とか考えているのだろう。

フェルからしたら20年振りに俺と再開したのだから邪魔の入らない状況で話しをしたいって考えてるんじゃないか?

積もる話もあるだろうし、それに他の人が居たら話せない様な事もあるだろうからな。

俺もフェルに会うのは何十年振りになるから、フェルと2人で話したいことはいっぱいあるし、フェルもそう考えてくれていると思いたい。

俺がそんな事を考えている間にも時間進み、フェルが言葉を発さないまま数十秒の時間が経った。

「も、勿論!主人様がそこの人間に襲われたとしても負けるなどと言う事はあり得ないと我々は思っています、ですがそこの人間は人間ではあり得ない魔力を持っています、万が一…億が一にも主人様が傷つく様な状況になる事は避けなければいけないのです」

フェルが話さないのを機嫌が悪いと思ったのか、リョウと言われた男性はフェルに慌ててそう釈明し始めた。

「あ~、コレってフェルの奴、完全に誤解されてるな」

俺は男性の慌てっぷりを見てそう思った。

フェルって何かを考える時に真顔になるからな、怒ってるって誤解されやすいんだよな。

まぁ男性が誤解した理由は大体は分かる…

男性が誤解した理由としてはフェルが真顔で何も話さないって言うのも有るだろうけど、やっぱりここら辺の風習が関わってると思う。

ここら辺は強いやつが偉いって風習が有るってフォルテが言っていたからな。

多分だけど男性はフェルが人間の俺に負けるかも…的な事を言われたのを怒ってると考えたんじゃないか?

「…リョウよ」

「は、はい!」

そして数十秒間真顔で何かいい方法が無いか考えていたフェルはいい案が思い浮かんだのだろう、一瞬ニヤリと笑うと先程から慌ててフェルに釈明していた男性の名前を呼んだ。

「つまりお前は万が一にでも私がそこに居る人間に傷つけられる可能性を考えて護衛を付けよと言っているのだろう?」

そしてフェルは男性に向かってさっき言っていた事を確認をし始めた。

「は、はい、その通りでございます、主人様のお強さは知っていますが極寒地帯を治める事が出来るのは主人様だけ、万が一が起こらない様にしなければなりません」

フェルに聞かれた男性は慌てた様子でフェルにそう説明をする。

「成る程、お前たちの懸念は最もだ、万が一が起きてからでは遅いというのも同意しよう」

男性の言葉を聞いたフェルは男性にそう話す。

フェルの言葉を聞いた男性はフェルが怒ってない事に気づいたのかホッとした表情をする。

だがその表情もフェルの次の言葉で変わった。

「だがお前の提案は却下だ、私に護衛をつける必要はない」
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