上 下
246 / 280

246

しおりを挟む
「アイスキャッスルね…それはフェルが付けたのか?」

俺は十中八九そうだろうと思いながらも女性にそう質問をする。

女性の話の感じから集落の中は女性の様にフェルのことを崇拝している奴がいっぱい居るはずだ。

そんな人たちがフェルの居住に名前を付けるとなった場合、アイスキャッスルなんて名前を付けるわけが無い。

氷で出来た城でアイスキャッスル…なんてなんの捻りもないからな。

逆にそんな名前を付けようとしたら周りにいる信者たちにボコボコにされるのが目に見えている。

俺の想像だと偉大なる主人の住まいになんて名前を付けようとしている!って感じになると思う。

だけど、実際にフェルが住んでいるというあの氷の城の名前はアイスキャッスルだ。

普通に考えてもあの城の名前はフェルが付けたと分かるだろう。

フェルの意見に反対する様な奴は居ないだろうからな。

「はい、その通りです…あの城を作った時に問題が起こったらしく、その問題を解決する為に主人が名前を付けたらしいのです」

「問題が起こった?」

あの城を作った時に問題が起こったのか?

「はい、これから主人の住まいになる城の名前を決める…という事になり、どんな名前にするのか…というので少し喧嘩が起こってしまったらしいんです」

「あぁ~成る程、そういう事か」

俺は女性の言葉を聞いてどんな問題が起こったのか、大体想像出来た。

多分…というか殆ど確定だろうが、誰があの城に名前を付けるのか、という所で喧嘩が起こったのだろう。

集落の人たちが皆この女性の様な人だと考えると、フェルの居住になる城に名前を付けるというのは名誉な事だ。

誰が名前を付けるか、そしてどんな名前をあの城に付けるのかで揉めて、それが大ごとになったって感じか?

俺は話の流れからどんな事が起こったのかを想像した。

「まぁ結局の所、皆が喧嘩をしているのを見た主人が喧嘩をするくらいなら自分で決める、と言ってあの名前を付けたらしいです」

「へぇ~、そうだったのか」

「はい、主人は自分のために皆が争っているのを止めるためにあの様な名前を付けたのだと私は聞いています」

自分の為に起こっている喧嘩を止めるために…か、それは違うな。

俺は女性の言った言葉を聞いてそう判断した。

確かにフェルは城に名前を付けようとしていた人達の喧嘩を止める為に自分であの城の名前を決めたのだろう。

だが、その理由は自分の為に人が争っているのを見るのが嫌だから…というものではない事は確実だ。

フェルの性格を考えて、自分に害が無いのなら他人がいくら争っていても自分からは関わったりしない。

以前に、フェルが配下にしていたホーリーウルフ達の中で大きな喧嘩が起こった時、フェルは争いを止めるでもなく傍観していた。

その時になんで喧嘩を止めなんだ?とフェルに聞いた事がある。

その時にフェルは自分が関わって問題が解決したとしても根本的な解決にはならないからって言ってたからな。

フェルは自分に害が及ばない時は自分から争いには関わらない、喧嘩が人を成長させる事もあるからな。
 
でもそう考えるとなんでフェルが城の名前を自分で決めたのかが気になるな。

さっきも言った様に、フェルは自分に害が無いのなら自分から争いには関わらない。

でもフェルが関わったって事ななんらかの理由でフェルに害が及ぶ可能性が有ったって事だろ?

城の名前をどうするかって言うだけでフェルが関わらないといけない様になる事ってあるのか?

そう考えた俺はどんな状況ならフェルが関わらざるを得ないかを考える。

「う~ん?」

だが、城の名前を決めるというだけでそんな大ごとになるというイメージが湧かない。

「どうしました?」

俺が考え事をしていたからなのだろう、女性は何か問題があったのかを聞いてきた。

「いやなんでも無い、少し考え事をしていただけだよ」

「そうなのですか?なら良かったです、何か気分を害する様なことををしてしまったのかとおもってしまいました」

俺が女性に何も問題は無いと答えると女性は安心した様に息を吐いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした

せんせい
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ―――

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

処理中です...