死んだと思ったら異世界に

131

さて、まさか最初から有力な情報を得ることが出来るとは…幸先が良いな。

商人から情報を聞いた俺は先程と同じように商人が扱っている物を買って、話を聞くという方法で情報を集めていく…が、やはり最初の情報より有力そうな物は無かった。

というより、ここに集まっている商人達は公国で戦争をするための道具を売りさばく為に来た人ばっかりだったから、四大貴族の動向を知らないという情報が多いのだ。

「う～ん、まだ時間に余裕が有るな」

最初の情報だけでも十分だとは思うが、やはり話してくれた本人が噂で聞いたと言っていた事もあり、裏付けをしたい。

となると次に話を聞くべきは商人ではなく、この国に住んでいる、又はこの国を拠点にして生活している人という事になる。

だけど確か一般人は皆後方支援の為に何処かに避難しているんだっけか？

話を聞こうにも俺は避難場所を知らないしな。

商人でも一般人でもなく、公国を拠点として暮らしている人達…冒険者だな。

うん、冒険者なら公国を拠点に活動している人も居るだろうし、戦争をすると言っても国の周りに居る魔物たちを倒す冒険者が居なければ魔物が増えるから、一緒に避難させているという事もない。

まぁ冒険者ギルドが活動しているのだから冒険者も活動しているのだろう。

よし、そうと決まれば冒険者たちに話を聞きに行く事にするか。

冒険者が集まる場所と言えば…カジノや酒場、娼館だな。

冒険者は常に死の危険性がある職業だからその分ストレスも溜まりやすく、冒険者たちはそのストレスが発散出来るところに集まりやすいからな。

だから、酒場やカジノに行けば最低1人は冒険者が見つかるだろう。

そして今回俺が冒険者に情報を聞くために向かう場所は…よし、酒場にしよう。

時計を見て時間を確認すると現在の時間は10時を少し過ぎた頃だ。

俺が酒場で情報収集をしようと考えた理由は、こんな時間から酒場で酒を飲んでいる様な冒険者なら、多少酒を奢ったり金を渡せば素直に情報を提供してくれると思ったからだ。

と言うわけで早速俺は近くに酒場が無いかを探す事にした。

と言っても一般人が皆避難している様な状況で営業している店は少なく、営業している店を探せば直ぐに酒場を見つける事が出来た。

俺は早速酒場の中に入る事にする。

扉を開けるとカランカランと鈴の様な音がなる。

酒場に居た冒険者らしき人達は軽く俺の方を見るが、すぐに視線を戻し酒盛りを再開し始める。

俺は迷いなくカウンターの方に向かう事にする。

いきなり集団で飲んでいる所に入って情報を集めるなんて方法もあるが、出来るなら1人で飲んでいる人に話を聞きたいからだ。

俺はカウンター席で1人で飲んでいる人をターゲットに定め、その人の隣に座る事にした。

「隣、よろしいですか？」

俺は座る前に一言声をかける。

「ああ？オレァ今機嫌が悪いんだ、悪いが他の所に…って兄ちゃんじゃねぇか」

知人に会った様な反応をする男性の声を聞き、俺は隣から男性の顔を見る。

「ブラットさん？」

数日間を一緒に過ごし、昨日別れた筈のブラットさんがそこに居た。

「おう、兄ちゃん昨日ぶりだな」

ブラットさんは俺に向かって軽い挨拶をした。

「ええ、そうですね…ところだ、ブラットさんは何でこんな時間にこんな所に？」

昨日別れる時は、彼女さんに会うと言っていた。

だから、帰ってきたばかりだから、彼女さんと過ごしていると思っていたのに、何故こんな酒場にブラットさんが居るのか不思議に思った俺はブラットさんに質問をする。

 さっきは機嫌が悪いんと言っていたし、彼女さんと喧嘩でもしてしまったのだろうか？

「あぁ、それか…なぁ兄ちゃん、少し話を聞いてくれるかい？」

そう言うとブラットさんは昨日起きた出来事について話し始めた。