上 下
79 / 280

79

しおりを挟む
「さて、ここを登れば無事ダンジョンから帰れるな」

あの後、きた道を引き返して無事にダンジョン一階層の外に通じる階段の前に着いた俺はそのまま階段を登り、ダンジョンから脱出しようとする。

「…まてよ、このままダンジョンから出てもし誰かに俺の姿を目撃されたら…」

そうなれば修羅に俺の存在がバレないようにと頼んだ意味が無くなってしまう。

光魔法で光学迷彩を使って人に見られないようにするか…いや、修羅の事だから一応ダンジョンからモンスターが溢れてこないか見張り役を冒険者に頼んでいる筈。

だとすれば光学迷彩でバレずにダンジョンから出たらいつダンジョンから出たのかという話にならないだろうか?

となれば光学迷彩は一旦ボツだな。

となれば後は俺だと分からない程に全身重装備で固めるしか無いか…

俺はストレージの中に何かいい感じの装備が無いかを調べる事にする。

装備の条件は全身が隠れる様な装備で、尚且つ一目見れば上物だと分かるような装備。

ダンジョンのスタンスピードを一人で収めるほどの奴が一級品の装備をしていないと可笑しいと思われる可能性があるからな。

「これなら大丈夫だろう」

探していた条件に合う装備は直ぐに見つかった。

その装備はこの国に来た時にも使った黒騎士装備セットだ。

この装備は性能自体もゲーム内トップだったし、一目で強者感が出るオーラも装備から発せられるので装備自体も一級品だと分かるだろう。

なにより、黒騎士セットを装備した状態ならクリスを王都に連れてきたという功績があるからダンジョンのスタンスピードを一人で解決したとしても説得がしやすい。

考えれば考えるほどこの装備以外に相応しい装備はないんじゃ無いかと思う。

と言うわけで俺は黒騎士装備を装備してからダンジョンを脱出する事にする。

「あ、あ~…よし、こんな感じで良いか」

最後に声質を地声より少し低めにして、俺はダンジョンから脱出した。

「なぁ、あんた」

そして王都の方に向かおうとするとした所で声が掛かった。

多分修羅が配置したダンジョンからモンスターが出てきた時に対処する冒険者だろう。

「何だ?」

「あんたがマスターの言っていたマスターの古い知り合いって奴だね」

女性の冒険者は俺にそう尋ねる。

それにしても古い知り合いか…上手い言い訳を思いついたな。

古い知り合いと言う事で肉体が20歳ぐらいまで若返っている俺の存在は露見し無い。

「そうだ」

俺は短くそう答える。

「そうかい、それで、ダンジョンから出てきたってことはスタンスピードは解決できたって考えて良いのかい?」

俺が頷くと周りに集まってる冒険者達が安心した様に息をつく。

「あんたら!モタモタしてないで早く王都に行ってスタンスピードが収まったって報告してきな!」

女冒険者は近くにいた冒険者にそう言い、言われた冒険者は一瞬止まったが直ぐに行動を開始した。

「あんたらも気を抜くんじゃ無いよ!スタンスピードが収まったとは言え、大量発生したモンスターが出てこないって事は無いんだからな!」

女冒険者は周りにいる冒険者たちに聞こえる様に大声で指示を出した。

周りの冒険者達は文句も言わずに従っているからどうやらここにいる冒険者達はこの女冒険者を慕っているらしい。

「すまないね、あんたの仕事を疑っている訳じゃ無いんだけどね、これも仕事だから」

女冒険者は俺に謝ってきた。

どうやら俺が無言だったせいで冒険者達に最期の警戒をさせた事を怒っていると思ったのだろう。

「気にする事はない、完全に危険性が無いと判断されるまで警戒を怠らないのは基本だからな」

「そう言ってくれると助かるよ…それで、これからあたしらはダンジョンの警戒をする。
あんたはもうソコにあるテントで寝て、英気を養ってくれ」

女冒険者はそう言ってテントの一つを指差した。

俺はああ、と返事をして指定されたテントに入る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

家の猫がポーションとってきた。

熊ごろう
ファンタジー
テーブルに置かれた小さな瓶、それにソファーでくつろぐ飼い猫のクロ。それらを前にして俺は頭を抱えていた。 ある日どこからかクロが咥えて持ってきた瓶……その正体がポーションだったのだ。 瓶の処理はさておいて、俺は瓶の出所を探るため出掛けたクロの跡を追うが……ついた先は自宅の庭にある納屋だった。 やったね、自宅のお庭にダンジョン出来たよ!? どういうことなの。 始めはクロと一緒にダラダラとダンジョンに潜っていた俺だが、ある事を切っ掛けに本気でダンジョンの攻略を決意することに……。

異世界でゆるゆる生活を満喫す 

葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。 もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。 家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。 ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』 俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。 レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。 「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」 レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。 それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。 「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」 狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。 その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった―― 別サイトでも投稿しております。

処理中です...