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少年クレイン
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再び意識を取り戻したオレは周りを見渡した。
瞼はすんなりと開いた。
指も問題無く動く。
辺りは真っ暗闇。
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。
肌寒い。
「ぶえっくしょい!」
「大丈夫ですか?」
間抜けなくしゃみから間髪入れず少年の声。
見やると華奢な、まだほんの子供に感じられる少年が膝を抱えて座りこちらを見ている様だった。
「様だった」というのは、彼の顔面はペストマスクの様なもので覆われ、一切の表情を読み取ることが出来ない為である。
よく見ると、顔面どころか全身一部の隙も無いほど着こまれていた。
それでもわかる線の細さ。
年の頃は中学生くらい。
髪はふわふわの、銀というよりは白。
耳かきに付いてる梵天の様だとぼんやり思った。
「あぁ、まだ傍に居てくれたんだね。」
上体を起こそうとゆっくり身体に力を入れる。
床にはボロボロの薄い毛布が敷いてあったが、毛布越しでもわかる小石や砂利の硬さとひんやりした感覚。
「ごめんなさい、火を熾して上げたかったんですけど煙が見つかるとマズいから・・・。」
申し訳無さそうな少年。
"煙が見つかるとマズい?"
誰に見つかるとマズいのか、どうマズいのか。
戦時でもあるまいし。
ん、いや、もしかしてウルとかいったこの場所は戦争真っ只中なのか?
わからない事が多すぎる。
ひとまずこの場で唯一の情報源である少年から情報を得る事にしよう。
「オレの名前は於東、君は何て呼べば良い?」
「ボクはクレインといいます。おにいさん、じゃなくておとうさん、なんですね。」
自分の駄洒落でクスクスとあどけなく笑う少年クレイン。
オレなら空気を凍らせる自信がある。
「・・・なる程。戦争じゃなく君自身が追われている身である、と。」
「はい・・・。」
こんな年端も行かない少年が追われてるなんて。
少年クレインが何をして追われているのかも当然気になる。
「ごめん、言いたくないなら良いんだけど」
「人を、殺してしまって。」
食い気味で放たれたクレインの言葉に一瞬心臓が飛び跳ねる。
「え?」
こんな少年が・・・人殺し?
「殺さないと、殺されてたから・・・。」
重いトーンでぼそりと呟くクレイン。
「襲われたから反撃して、止むを得ず殺しちゃったって事かい?」
今度はオレが食い気味に。
それなら正当防衛で、と言いかけた矢先
「いえ、
死んで欲しかったので。」
サラリと返って来た氷の言葉。
どういう、こと??
「大丈夫です。万が一見つかって襲われたとしてもおとうさんはボクが守ります。」
更に上乗せどういう事???
自称人殺し中学生に守られて異世界転生おじさんの冒険の始まり始まりである。
瞼はすんなりと開いた。
指も問題無く動く。
辺りは真っ暗闇。
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。
肌寒い。
「ぶえっくしょい!」
「大丈夫ですか?」
間抜けなくしゃみから間髪入れず少年の声。
見やると華奢な、まだほんの子供に感じられる少年が膝を抱えて座りこちらを見ている様だった。
「様だった」というのは、彼の顔面はペストマスクの様なもので覆われ、一切の表情を読み取ることが出来ない為である。
よく見ると、顔面どころか全身一部の隙も無いほど着こまれていた。
それでもわかる線の細さ。
年の頃は中学生くらい。
髪はふわふわの、銀というよりは白。
耳かきに付いてる梵天の様だとぼんやり思った。
「あぁ、まだ傍に居てくれたんだね。」
上体を起こそうとゆっくり身体に力を入れる。
床にはボロボロの薄い毛布が敷いてあったが、毛布越しでもわかる小石や砂利の硬さとひんやりした感覚。
「ごめんなさい、火を熾して上げたかったんですけど煙が見つかるとマズいから・・・。」
申し訳無さそうな少年。
"煙が見つかるとマズい?"
誰に見つかるとマズいのか、どうマズいのか。
戦時でもあるまいし。
ん、いや、もしかしてウルとかいったこの場所は戦争真っ只中なのか?
わからない事が多すぎる。
ひとまずこの場で唯一の情報源である少年から情報を得る事にしよう。
「オレの名前は於東、君は何て呼べば良い?」
「ボクはクレインといいます。おにいさん、じゃなくておとうさん、なんですね。」
自分の駄洒落でクスクスとあどけなく笑う少年クレイン。
オレなら空気を凍らせる自信がある。
「・・・なる程。戦争じゃなく君自身が追われている身である、と。」
「はい・・・。」
こんな年端も行かない少年が追われてるなんて。
少年クレインが何をして追われているのかも当然気になる。
「ごめん、言いたくないなら良いんだけど」
「人を、殺してしまって。」
食い気味で放たれたクレインの言葉に一瞬心臓が飛び跳ねる。
「え?」
こんな少年が・・・人殺し?
「殺さないと、殺されてたから・・・。」
重いトーンでぼそりと呟くクレイン。
「襲われたから反撃して、止むを得ず殺しちゃったって事かい?」
今度はオレが食い気味に。
それなら正当防衛で、と言いかけた矢先
「いえ、
死んで欲しかったので。」
サラリと返って来た氷の言葉。
どういう、こと??
「大丈夫です。万が一見つかって襲われたとしてもおとうさんはボクが守ります。」
更に上乗せどういう事???
自称人殺し中学生に守られて異世界転生おじさんの冒険の始まり始まりである。
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