上 下
20 / 27
生か死か

第十九話 憎しみを持って

しおりを挟む
少女は嫌悪の表情を浮かべ言った。

「あの女はいきなり戦場に現れ、人間を虐殺し、その悲鳴を愉しむ。

ライアは一昔の思い出のように語った。

「あの娘は強かったわね~性格が腐っても、アレは嘘偽りなく化け物だったわ~」

ライアは短い自慢話を終え立った。

「セイラくんの食べれるの探してくるわ~」

部屋から出たライアはニヤッと笑った。

「…セイラ」

エミリーはセイラの看病を続けていた。

「…エミリ」

「セイラ!」

セイラは目を開けた。

「う…頭痛い…」

「まぁあの女の子に死にはしないけど何かを感染させたからね。症状的にはほぼ風邪らしいけど…」

遺跡でセイラが起きた事を知った少女がくるりと回った。

奇魅は「なぜそれが分かる」と問いかけた。

少女は「ウイルスだよ」と答えた。

「あたしの能力で感染性、寄生性の小さい生き物を創ったの。多少風邪に似た症状が出るだけで死にはしないけどね。だから遠くにいても分かるの」

両手を腰に当てドヤ顔で説明した。

「…さて!寄魅。仕事に取り掛かろか」

奇魅と少女の後ろには鎧を着た兵士がたくさん居た。

数日後、町ではセイラはかなり回復しエミリーと歩いていた。

「エミリー…少し疲れた…少し休も…」

セイラはとても足が痛くて仕方なかった。

「いいよ。休もっか」

エミリーは優しく微笑み答えた。

遠くから少女がエミリー達を見ていた。

「…へぇ。回復したんだ。遅かったな」

エミリーは立ち上がりセイラに言った。

「ちょっと食べ物買ってくるよ!何がいい?」

セイラは「僕も行くよ」というとエミリーは「休んでて」と言いそのままセイラから離れた。

屋台が並び人が多い場所で聞き覚えのある声がした。

「やっほー数日後ぶりだね。エミリー・ロザリア」

その声は「少女」の声だった。

エミリーは腰に差してある剣に手を掛けた。

「まぁまぁ落ち着け。あたしは攻撃するつもり無いしね」

「どーゆつもり?」

「てかさっきまで腰に剣なんてなかったのにいつの間に。いい反応速度だね。」

「さっさと要件言って」

「良いけどーここで殺し合うと面倒事になるよ?だから剣から手を離しな?話はそれからだ」

エミリーは剣から手を離した。

「いい子だ」

「さてと、あたしは警告をしに来ただけだよ。ライアに関するね」

「何を言ってるの…」

「ライア・ラーザスから離れろって事だよ。」

「理由は」

「どうせ何言っても信じないでしょ?だから言わない。でも、警戒するに越したことはないと思うよ。」

少女は背を向けた。

エミリーは剣を握り目の前の少女を斬るか躊躇った。

「殺したくば殺せ。君を助けた優しい村長はあたしが殺したし、数日前にセイラを傷付け恐怖を与えたのも紛うことなくあたしだ。」

「知ってるよ!」

エミリーの叫びは人混みにかき消された。

「一度剣を握れば躊躇うな!」

少女は叫んだ。

怒りからか、それとも教訓を教えるためか

「剣は脅しの道具か?いや違う!そこでいつまでも躊躇うな!躊躇っているとその間に大切な人が死んでいく!貴様が一度剣を握るだけでそこは戦場になる!戦場では一瞬の躊躇いが己の、最愛の人の命を決める!何かを護りたくばすぐさま握り締めた剣を抜け!」

少女は少女らしからぬ表情だった。

「…チッ。厄介な事になったな…めんどくせぇ」

少女はエミリーに近づいた。

「え?なに何?」

エミリーが戸惑っていると少女は大声で言った。

「お前ら!今すぐに?この町離れろ!じゃねぇと死ぬぞ!」

周りの人は少女を見つめた。

周りの人達は皆、不思議そうに少女を見ていた。

やがて周囲の空間は歪み、暑くなっていった。

「…エミリー。セイラを連れてここから離れなさい。」

周りの人達は慌てて逃げて行った。エミリーもセイラの居た場所へ走った。

「…はぁ。」

少女は刀を抜いた。

「あの村を壊した時に現れた余所者か…ここにいる低級から中級の冒険者じゃ手に余る相手だねぇ」

少女の前に大鎌を持ちまるで死神を彷彿とさせる風貌の怪物が大量に現れた。

「悪魔種・死神リーパー。ほんっとに面倒事だ。」

少女は刀を腰に差し薙刀を創り出した。

薙刀の刀身は淡く藍色の光を纏った。

「ココ最近、あたしずっと戦ってんだけど…休みくらい戦いたかないわ」

セイラはいきなり現れた死神リーパーを引き付けていた。

「こ…こっちだ!化け物!」

「…ギ…ギィィギ……ギィャァアァ!」

死神リーパーはセイラに標的を変え一直線に突進した。

「…」

死神リーパーの大鎌はセイラの首を捉えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉

ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。 餌食とするヒトを。 まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。 淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…

入れ替わった二人

廣瀬純一
ファンタジー
ある日突然、男と女の身体が入れ替わる話です。

調教専門学校の奴隷…

ノノ
恋愛
調教師を育てるこの学校で、教材の奴隷として売られ、調教師訓練生徒に調教されていくお話

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...