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十二ノ天人

第六話 希・望

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「私はあんたら王族のせいで!父上のせいで!」

エミリーはソウカを睨んだ。

「……」

ソウカの顔には恐怖があった。

すると遠くから大人の声が聞こえた。

「ここに誰か落ちなかったか?」

「俺は見たぞ!行くぞ!」

私はとっさに父上にバレたら不味いと思った。ただ恐怖で体が動かなかった。

(動け動け動け!)

私は心で必死に願った。

「…静かにね」

ソウカは私の手を握り走り出した。

私は「離して」そう言おうとしたがソウカの顔は必死だった。

しばらく走り人の少ない場所に来ていた。

「ゲホッ…ヴッ……ヴッ…ゲホッゲホッ……ヴェェ……はぁ…はぁ…はぁ……大…丈夫…?」

「……なんでそこまでして私を助けようとすんの。誰も「助けて」とか「助けろ」とか言ってないけど。それに、私はアンタらが嫌いだ。全てが。私に関わらないでくれない?」

私はいい加減ソウカを突き放したかった。なにせ王族と父上が勝手に目の前の少年の「お嫁」にさせられたのだから。

「…君がぼくを嫌っても良いよ。それに、助ける理由は有るよ。」

ソウカの笑顔は悲しそうだった。まるで私を見てるかのような悲しい笑顔だった。

「君がぼくと同じがしたから」

「は?」

私は何を言ってるのか分からなかった。

「ぼく、鼻が良いんだよ。それに…ぼく、嫌われてるから」

「…へぇ。」

私は何も言えなかった。

「……ごめん」

私はこの言葉が今出せる言葉だった。

ソウカは

「ん?」

と首を傾げ「どうしてエミリーが謝るの?」と優しく笑いかけた。

「……」

この時、私の顔はきっと少し赤くなったのかもしれない。

「…君となら……いい…かも幸せになれるかも

私は初めて気にかけてくれるヒトが居てうれしかった。

初めて対等に見てくれたから。

優しくしてくれたから。

助けてくれたから。

私はこの子ソウカ

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