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十二ノ天人

第五話 後悔

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━ヒロ視点━

「…ジャック・ザ・リッパー……貴様を一時も忘れた事はない。」

ヒロは正宗を構えいつでも目の前の敵を切り殺せるようにした。

「お前が…ソウカを!神ノ器とか呼ぶヤツをさらい、俺の恋人を……ハクアを…殺した……」

━エミリー視点━

「…ソウカ……それがぼくの…名前?」

少年は摩訶不思議そうに首を傾げた。

「…まぁ…ぼくに名前はいらないですけど。悪魔の子に生きる理由はありませんから」

「そ…そんな事……」

「ぼくはもう2人くらいは殺してます。それがぼくの」

「止めて!これ以上自分を傷つけないで!」

エミリーは昔の自分を思い出した。虐められ、嫌われ、嫉妬され、蔑まれていた自分を。

━数十年前━

━ 私はこの世界が嫌いだった。この世界は私が嫌いだった

「……こんな世界…嫌いだ…」

私はこの景色のいい場所を「自分だけの秘密基地」としていつも居た。そこしか私の居場所はなかったから。

「みんな…死んじゃえばいいのに」

私は世界を呪った。

「…ねぇ。ここで何してるの?」

ふと後ろから少年の声が聞こえ私は後ろを振り返った。

後ろには青い髪にサファイアのように透き通った水色の瞳とルビーのように美しい瞳の少年が心配そうに立っていた。

私は突き放す様に「別に」と言った。けどその少年は「ここの景色綺麗だよね」と私には到底真似出来ないほど愛おしい笑みを浮かべた。

それに私は少し苛立った。

その少年を憎んだ。

そして私はこの場から離れて欲しくて

「さっさとここから離れて!じゃないと怪我するよ!」

と少年に言い放った。

私は少し後悔した。なにせ初めておばあちゃん以外に優しくしてくれた子だったからだ。

だけどどんだけ強く言っても少年は「イヤだ」と駄々をこねる子供のように離れようとしなかった。

当たり前だろう。だって目の前の木にロープを結び、死のうとしてるのだから。

「……さっさとどっか行って。」

「イヤだ。だって、君死のうとしてるじゃん。」

「あんたには関係ないでしょ!」

「…そうかもしれないけど……でも自分で自分を傷つけないで。」

少年は何故か少し泣きそうな顔だった。

「……クッ!『異ノッ……『異能力・創槍』!」

私は何を思ったのか少年に攻撃をした。

「ヒッ!」

少年は情けない声を上げたが、槍は無情にも少年に近づいていった。

ジャキッ

幸いにも槍は少年の腕をかすっただけだった。いや、幸いでもなんでもない。

「えへへ…君…強いね」

少年は少し苦しそうにしながらも苦笑いを浮かべ、私に優しくしようとした。

「……ちがっ…私じゃ…」

私は優しくしてくれた少年を傷つけてしまった罪悪感に苛まれ、崖に近づいた。

「……」

私は覚悟を決めた。

少年は

「な…何をするの?冗談……だよね」

そう言い手を伸ばした。

「来ないで!私は、みんなから嫌われていの!だからいない方がいいの!」

崖の下を見つめた。

怖かった。

死ぬのが、

高いから、

もし、目の前の少年が自分のせいだって気負ってしまったら…

躊躇っていると崖が崩れた。

「あっ」

私は諦めたつもりだった。「死ねる」そう思ったつもりだった。

けど、私は無意識に手を伸ばしていた。

…誰も助けるわけない。

私はそう思った。なぜならいつもそうだったからだ。

誰も助けない。

私は知っている。父上が私に優しくするのは、王族の「ソウカ」とか言う子供と結婚させられるから、だから王様とかに不快な思いさせないために、自分の地位を守るために、私が女王になった時のために、そう接してる。

母上が優しくしくするのは……そもそも母上は優しくなんて無い。母上は私が嫌いだ。

「お前は!ワタシより恵まれた容姿!能力!お前のせいだ!お前のせいで!お前が生まれたせいでワタシは王族に選ばれなかった!」

そうイチャモンつけて私を殺そうとしてくる。

フッ、笑えてくる、勝手に私の運命決めて、罵って、恵まれただの、ふざけるな!

そんな事を落ちながら考えていた。

ろくな走馬灯も見れないで。

あ~あ…少し怖いな。

そんなに事を思った。

「くっ!」

少年の声が聞こえた。そりゃそうだ、少年は私と一緒に落ちてるのだから。抱きついてるのだから。

「なんで!あんた死ぬよ!」

「死なない!死なせない!」

少年は優しく笑いかけた。

「い…『異能力・創破そッ…ゲホッ…う…せい……うグッ…」

少年は異能力を使おうとした。きっと私を助けるためだろう。

私は少年と同じ異能力だった。

「あんたの…能力…『創破双星創リ壊レル双子ノ星』」

私は少年を死なせたくなかった。だからクッション代わりになる

「…私の名前はエミリー。エミリー……ソザリア。」

私はこの「ロザリア」が嫌いだった。「エミリー」の名が嫌いだった。

それでも少年は優しく笑い、少し頬を赤らめ

「可愛い名前だね!!」

そう言ってくれた。初めてだった。

いつもなら

「どこにでもいる名前じゃねぇーかよ!」

とか言われ笑われたり。

「平凡だな」

と冷たくあしらわれる。

「……可愛い。あそ。あんたの名前は」

私は少年の名前を聞いた。

「ぼくはソウカ。ソウカマミキだよ」

ソウカは優しい笑みを浮かべていた。

「ッ!マミキ!」

私はその名を聞いて驚いた。

「お前、王族か?」

ソウカは

「…あ……」

ともごもごして何も言わなかった。

それを見て私はイラついた。

「あんたら王族のせいで私は散々さ。」

「……な、なんの…こと?」

ソウカの顔が一気に曇った。
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