異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ

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第2章  新しい生活

9話

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「ココロー、おわったよー」

ブラッシングを終えて外へ出ると、ルトとグリが報告にやってきた。

「ありがとう、ふたりとも」

お礼が嬉しいのか、キャッキャと笑いながら他の妖精の中へ交じる。
確認すると、しっかり耕してあり、土もフワフワと柔らかい。これなら芽も出やすいだろう。
草木灰だけでは栄養が足りないかもと追加の肥料も買ってきてあるが、何やらルトが「すごいすごい!」と盛り上がっているので、このままで充分だと判断する。失敗したときはその時だと思うが、あまりそうならないと言う確信がココロにはあった。

じゃあ次はと移動しようとする前に、足を止める。
妖精たちは全員、自分にできる事はないかと待ち構えている状態だ。可愛いのだが…申し訳ないが、この後お願いするとしたらルトを筆頭に、スイとグリ。あとはフウだろうか。
その間待っていてもらうのも申し訳ないので、お使いをお願いする事にした。

「昨日の果実畑に行って、実ってる果物あったら取ってきてもらってもいい?大きいのは無理せず協力してね」
「はーい!」
「わかったー!」
「いってきまーす!」

ココロのお願いを聞いて、意気揚々と飛び去っていく妖精達。
何を言ったわけではないが、この後作業に必要になる妖精達は残っている。

「じゃあ、こっちも始めようか」
「はーい」
「なんでもいってー」

なんとも頼もしい上に可愛らしい返事に小さく笑みを零しながら、妖精達を連れて行く。
グラウンド2つ分の大体真ん中の位置へ立ち、完成風景を思い浮かべる。

ココロが立っている位置から、まだ草地のままの状態の場所へ向かってあぜを作る。四角く囲うように、草地の真横にも同じく。そして中央部分にも境界線を入れるように、けれど両端を少し空けた状態で畦を作った。
土は畦で囲った内側から持ってきたので、周りに比べると少し深くなっている。

「このなかにいれていいの?」
「お願いね。ただ、溢れさせないように、この辺りまで」

スイに、どれぐらい水を入れてほしいのか手で指し示す。
微調整を入れながら丁度いい水位になるのを確認する。

「うん、これぐらいでいいかな。じゃあ、水と土をかき混ぜて」
「「はーい」」

今作っているのは田んぼだ。この広さは畑だけにすると勿体ない。
とは言え、『田んぼ』を作るのは初めてだからこれで合ってるかは分からない。おまけに、田植え時期がもう過ぎていることは昨日の行き帰りで理解していた。
けれど、昨日の果実畑を見るに、この土地の中は気候季節問わずなのが見て取れた。
みどりさんの能力か何かは当然知る由もないが、それが影響しているのは分かる。
稲の苗は買ってきていないが、精米前の、籾つきのお米が売っていたので、それから作ることは可能だった。

「よし、じゃあしばらく掛かりそうだから、グリには畝を作ってもらおうかな」
「わかったー!」

広いのを一人では大変かもしれないと思ったが、グリは疲れを見せずどんどん畝を作っていく。
それを見ながら、マルチシートを引くかどうか考える。念の為買ってきてはいるが、絶対に引かないと駄目というものでもない。
マルチシートでできる事は、妖精達の力を借りれば代用は可能だろう。
今回は様子を見るために使わずに、必要な野菜があれば次回から使うことにする。

「よし!じゃあ久しぶりの種蒔きを…」

何から埋めようかと、タブレットを取り出す。
種や苗が入っている所を表示し、外へ出そうと操作すると、ウインドウが浮かび上がった。

『自動で種の採取、苗作りを行いますか?』
「…うん?」

一体どういう事だろうか。いや、意味は勿論分かる。種が出来たら自動で採取して、次に蒔くときに使える。そして苗から育てる必要がある物はそこから。…うん、一体誰がそれを?
その疑問に加えて既視感。一瞬なんだっけ?と思ったけれど、昨日の馬車の事だとすぐに思い出す。

「あーあれかぁ。詳しい正体の分からない謎のチートっぽいの。そう言えば、昨日もこんなウインドウだったっけ」

それならもう、ね?望んだわけじゃ無いけれど、貰ったものを使わない術は無い。と言う事で、ポチッと『はい』を選択。
さぁ次は何が起こるんだと身構えたら、新しいウインドウに切り替わっただけで拍子抜けした。

「おおぅ、そのパターンは想像出来なかった…えーっと、何々?」
『自動で採取、苗作りをする種を選択してください』
「そしてまさかの選択式って」

もうそこは全部でいいんだけど、と思いつつ、一緒に表示されたリストを確認する。
けれどそこには、昨日買ってきた種や苗以外にも、豊富な野菜が表示されていた。中には聞いたことの無い物もあった。
けれど、選べるのは持っている種だけ。『キャベツ』を選択すれば、キャベツの苗が買った分現れて、土へ植えられていく。

一つの畝の1/3ほどがキャベツの苗で埋まったかと思うと、残った畝の一部が失くなった。5cm位?そんなに大きくない。
ウインドウに変化が現れる。

『こちらはキャベツ畑になりました。植える野菜を変更する際は…』

少し長かったがいずれ必要な時があるかもしれないと、頭の中で要約しながら読み進める。ふむ、自動栽培を停めても、その時点で栽培途中の野菜は収穫まで待つ必要があるのと、自動栽培停止する時、種を残す選択をしないといけないと言う事ぐらいだろうか、覚えておく必要がありそうなのは。
以後表示しない、のチェックボックス(よく見るヤツ)にチェック入れ、表示を閉じる。

「よし、この調子なら無理なく色々作れそう。チートは望んでないって言葉、取り消そう。これは有り難すぎる」

直接は言えないが、思えば届くかな?地球の女神様か、この世界の意思様(?でいいのか不明だが)に感謝の念を送る。

「じゃあ、買ってきたの全部植えていこう!」
「おー!」

いつの間にか作業を終えていた妖精達(全員)が、掛け声を返してくれた。小さな拳を突き上げて(ココロのマネ)いるのを微笑ましく思いながら、次は何を植えようかとウインドウへ目を落とした。
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