26 / 85
第2章 新しい生活
4話
しおりを挟む
「えっ、売ってないんですか?」
「はい、申し訳ございません」
「あ、いえ。ありがとうございました」
買えるものだけ買って、一度エントランスフロアへ戻ってきた。
中央のデスクにようしのある人の列に並び、数分後。
ようやく順番が回ってきたので、種や苗について訪ねた所だ。
回答はこうだった。
ここ、中央の国で農業を営む人はいないので、売っていない。過去に一度売りに出した事はあるが、一切売れなかったのだそうだ。
ちなみに、他で売ってる店がないか念の為確認はしてみたが、答えは同じだった。
そんな話を聞いても、ちょっとだけ驚いただけで悲観する事は無い。存在しない訳ではないのだ。
そしておそらくだが、南の国では手に入れられる可能性は大きいだろう。
とにかく、今ここで購入予定だった物は全て買えたので、帰路につく。
来た時の道を迷うことなく戻り、南の国へ続いているドアを通る。
馬小屋のある裏口へ足を向けると、後ろから声をかけられた。
「ココロ」
「え?あ、ハロルド」
扉の閉まる音でも聞こえたのだろうか。ハロルドと、彼の弟がやってきた。
いつもと様子の変わらないハロルドと、少し申し訳無さそうにしている弟の様子に、どうしたのだろうと思う。
「ココロが来てたって聞いて、待ってたんだ。不思議な話も聞いたし」
「不思議な話?」
「そう、弟のリックから」
どうやら弟の名前はリックと言うらしい。朝は急いで(と言うより急かされて)中へ入ったから、聞いていなかった。
ハロルドに何かを言われて、馬小屋に入っていくリック。それを見ながら、不思議な話とはなんの事だろうと考える。
すぐに預けた馬を連れたリックが出てきた。
「朝の話を、ココロにも話して」
ハロルドに促され、リックが見たままに話す。
それを聞いたココロは、驚いて目を見開いた。
「は、え!?馬車が、鞍の形に!?一体なんで、どうやって!」
「んー、それはこっちが聞きたいぐらいなんだけど」
少し混乱するココロに、ハロルドは困った顔を向ける。リックは二人に挟まれる形で、オドオドとしていた。
「所で、馬車の使い方はまだ教えてないけど、どうやって接続したの?」
「え、どうやってって」
タブレットがが反応してウインドウが表示され、そこに表示されていた選択肢に応えたら妖精が馬車へ近づき、気が付いたら完成していた。
簡潔にそう答えると、ハロルドは苦笑いを浮かべ、リックは「妖精!?」と驚きの声をあげていた。
一方で、ココロはそれがこの世界の普通なのかと思っていたものだから、2人(主にハロルド)の反応を見て、尻込みする。
「え、もしかして…」
「どうやら、ココロは妖精の力を借りれる以外に、とんでもスキルを持っているみたいだね」
「うわぁ…」
昨日一昨日と見た妖精の能力の時点でチートを感じていたが、どうやらそれだけではなかったようだ。
「そんなの望んでない!」と心の中で叫びながら、がっくりと肩を落とした。
気を取り直したところで、馬車の形にどう戻せば良いのかと馬に近づいた所でウインドウが現れ、『形状を変更しますか?』という問にYESを選択すれば鞍が自動的に馬車へ変形する。
「ロボットか!」と突っ込みたくなったのは、やはり兄と見ていたアレの影響だろうか。
一緒に見ていたハロルドやリックも、目を耀かせてみている辺り、男の子だなぁ、なんて思う。
「あ、そうだ」
さて帰ろうと思った所で、まだ大事な用事が残っていた事を思い出した。
「ねえハロルド、野菜の種や苗買えるところって、どこかに無い?」
「種や苗?あぁ、そう言えば昨日そんな事言ってたっけ」
「うん。今日も昨日行ったショッピングモール行ったんだけど、そこには売ってなくて…」
売っていない理由は、特に並べなかった。ハロルドがそれを知らない訳が無いという思いからだ。そしてそれは、間違っていない。
そして、ココロの最初の問には、ハロルドではなくリックが答えた。
「あ、それなら、この国のどの街でも売ってますよ」
「本当!?」
この国で買えるだろうと言う考えも、どうやら間違いではなかったようだ。それもどうやら、この街でも買えるらしい。
遠い街だったらどうしようかと思っていた所だから、それは有り難い。
ハロルドもリックも、これから用事があるという事で、場所だけ聞いてから馬車へ乗り込む。
朝と同じようにウインドウが現れて、家の他に『農業センター』と表示されているので、そちらを選ぶ。
馬が動き出したのを確認してから2人におれを言おうと振り返ると、何やら微妙な顔をしているのが見えた。
「き、今日はありがとう!また何かあればお願いします!」
また自分は、何かやらかしたんだなーと思いながら、手を振る二人に、苦笑いを浮かべながら振り返した。
「はい、申し訳ございません」
「あ、いえ。ありがとうございました」
買えるものだけ買って、一度エントランスフロアへ戻ってきた。
中央のデスクにようしのある人の列に並び、数分後。
ようやく順番が回ってきたので、種や苗について訪ねた所だ。
回答はこうだった。
ここ、中央の国で農業を営む人はいないので、売っていない。過去に一度売りに出した事はあるが、一切売れなかったのだそうだ。
ちなみに、他で売ってる店がないか念の為確認はしてみたが、答えは同じだった。
そんな話を聞いても、ちょっとだけ驚いただけで悲観する事は無い。存在しない訳ではないのだ。
そしておそらくだが、南の国では手に入れられる可能性は大きいだろう。
とにかく、今ここで購入予定だった物は全て買えたので、帰路につく。
来た時の道を迷うことなく戻り、南の国へ続いているドアを通る。
馬小屋のある裏口へ足を向けると、後ろから声をかけられた。
「ココロ」
「え?あ、ハロルド」
扉の閉まる音でも聞こえたのだろうか。ハロルドと、彼の弟がやってきた。
いつもと様子の変わらないハロルドと、少し申し訳無さそうにしている弟の様子に、どうしたのだろうと思う。
「ココロが来てたって聞いて、待ってたんだ。不思議な話も聞いたし」
「不思議な話?」
「そう、弟のリックから」
どうやら弟の名前はリックと言うらしい。朝は急いで(と言うより急かされて)中へ入ったから、聞いていなかった。
ハロルドに何かを言われて、馬小屋に入っていくリック。それを見ながら、不思議な話とはなんの事だろうと考える。
すぐに預けた馬を連れたリックが出てきた。
「朝の話を、ココロにも話して」
ハロルドに促され、リックが見たままに話す。
それを聞いたココロは、驚いて目を見開いた。
「は、え!?馬車が、鞍の形に!?一体なんで、どうやって!」
「んー、それはこっちが聞きたいぐらいなんだけど」
少し混乱するココロに、ハロルドは困った顔を向ける。リックは二人に挟まれる形で、オドオドとしていた。
「所で、馬車の使い方はまだ教えてないけど、どうやって接続したの?」
「え、どうやってって」
タブレットがが反応してウインドウが表示され、そこに表示されていた選択肢に応えたら妖精が馬車へ近づき、気が付いたら完成していた。
簡潔にそう答えると、ハロルドは苦笑いを浮かべ、リックは「妖精!?」と驚きの声をあげていた。
一方で、ココロはそれがこの世界の普通なのかと思っていたものだから、2人(主にハロルド)の反応を見て、尻込みする。
「え、もしかして…」
「どうやら、ココロは妖精の力を借りれる以外に、とんでもスキルを持っているみたいだね」
「うわぁ…」
昨日一昨日と見た妖精の能力の時点でチートを感じていたが、どうやらそれだけではなかったようだ。
「そんなの望んでない!」と心の中で叫びながら、がっくりと肩を落とした。
気を取り直したところで、馬車の形にどう戻せば良いのかと馬に近づいた所でウインドウが現れ、『形状を変更しますか?』という問にYESを選択すれば鞍が自動的に馬車へ変形する。
「ロボットか!」と突っ込みたくなったのは、やはり兄と見ていたアレの影響だろうか。
一緒に見ていたハロルドやリックも、目を耀かせてみている辺り、男の子だなぁ、なんて思う。
「あ、そうだ」
さて帰ろうと思った所で、まだ大事な用事が残っていた事を思い出した。
「ねえハロルド、野菜の種や苗買えるところって、どこかに無い?」
「種や苗?あぁ、そう言えば昨日そんな事言ってたっけ」
「うん。今日も昨日行ったショッピングモール行ったんだけど、そこには売ってなくて…」
売っていない理由は、特に並べなかった。ハロルドがそれを知らない訳が無いという思いからだ。そしてそれは、間違っていない。
そして、ココロの最初の問には、ハロルドではなくリックが答えた。
「あ、それなら、この国のどの街でも売ってますよ」
「本当!?」
この国で買えるだろうと言う考えも、どうやら間違いではなかったようだ。それもどうやら、この街でも買えるらしい。
遠い街だったらどうしようかと思っていた所だから、それは有り難い。
ハロルドもリックも、これから用事があるという事で、場所だけ聞いてから馬車へ乗り込む。
朝と同じようにウインドウが現れて、家の他に『農業センター』と表示されているので、そちらを選ぶ。
馬が動き出したのを確認してから2人におれを言おうと振り返ると、何やら微妙な顔をしているのが見えた。
「き、今日はありがとう!また何かあればお願いします!」
また自分は、何かやらかしたんだなーと思いながら、手を振る二人に、苦笑いを浮かべながら振り返した。
20
お気に入りに追加
431
あなたにおすすめの小説

転生したアラサーオタク女子はチートなPCと通販で異世界でもオタ活します!
ねこ専
ファンタジー
【序盤は説明が多いので進みがゆっくりです】
※プロローグを読むのがめんどくさい人は飛ばしてもらっても大丈夫です。
テンプレ展開でチートをもらって異世界に転生したアラサーオタクOLのリリー。
現代日本と全然違う環境の異世界だからオタ活なんて出来ないと思いきや、神様にもらったチートな「異世界PC」のおかげでオタ活し放題!
日本の商品は通販で買えるし、インターネットでアニメも漫画も見られる…!
彼女は異世界で金髪青目の美少女に生まれ変わり、最高なオタ活を満喫するのであった。
そんなリリーの布教?のかいあって、異世界には日本の商品とオタク文化が広まっていくとかいかないとか…。
※初投稿なので優しい目で見て下さい。
※序盤は説明多めなのでオタ活は後からです。
※誤字脱字の報告大歓迎です。
まったり更新していけたらと思います!

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~
夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。
が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。
それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。
漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。
生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。
タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。
*カクヨム先行公開
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる