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第1章 新しい世界で
3話
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「ま、正しくは次期導き手兼、現導き手の代弁者ね。今はまだ俺の曾祖父さんが担ってるけど、もう歳だから引き継ぎも兼ねてる所」
もう何を聞いても驚かない自信は早くも崩壊した。
謎の声…ハロルドが言うには恐らく世界の声は、何と言っていただろうか。記憶が間違っていなければ、導き手を「探しなさい」ではなかっただろうか。
探す所か、真っ先に遭遇したのが導き手とはどういう事か。
あれ、もしかしたら「会いなさい」と聞き間違えた?「なさい」だけ聞き取れて前半はよく聞き取れなかった。うん、そういう事にしておこう。
瞬時に自己完結させ、まだ続いているハロルドの話へ意識を戻す。
「で、導き手のやるべき事はこの世界について説明する事、能力を定着させる事、能力に見合った仕事と、住むところが決まるまでサポートする事」
なんとまぁ至れり尽くせりでは無いか
能力に関してはよく分からないが、どうやら路頭に迷うような事は無いらしい。
「で、俺の仕事は能力の定着以外。ちなみにまだ説明半分も言ってないけど、続き聞く?」
「あ、はい。お願いします」
どこまで聞いたんだったか。そうだ、なんでネコミミが生えたかまでだ。
ハロルドは確か、遺伝するからとも言っていたはずだ。
「ココロのように、異世界からやってきた人はさっき説明したように、魂を補う為。この世界で生まれ育った俺がこれを持ってるのは遺伝するから。ちなみに能力も遺伝するけど、この2つは必ずペアになってて、どっちかだけ遺伝するということは無い」
「はい、質問」
「はいどうぞ」
先程から何回か聞こえる単語に、思わず話を止める。
おそらく先に聞いておかないと話についていけなくなりそうな気がした。
「能力って、何?」
「あぁ、そっか。能力っていうのは、転移者に与えられる特別な力のこと。女神や世界は”加護”って呼んでるけど、それを体に定着させると能力になって、それを使って生活できるようになる。どんな能力になるかは、定着させないと分からないけど」
「なるほ…ど?」
分かったようなよく分からないような…
事務処理能力みたいな感じだろうか。一先ずそれで納得した事にしておく。
「話を戻すけど、能力の強さによって遺伝のしやすさが変わってくる。遺伝しやすいのは子供、孫と遺伝するけど、能力は失われやすい。逆に遺伝しにくいのは数世代後にようやく遺伝して、能力は失われる事はない。ちなみに導き手っていうのは後者の能力になる」
話が進むにつれて、彼の先祖が転生(転移?)してきた人だということは気がついていた。
「ちなみに初代の導き手はこの世界にまだ国が無かったころにやってきた、俺の先祖。発展するのに貢献した功労者。導き手が居なくなるのはNGだから、交代できるタイミングに能力を受け継いだのが産まれてくる。それが今だと俺がそれに当たる」
そこまで言い終えて、ハロルドは一息つく。
「大体理解出来た?」
「まぁ、なんとか?」
「そう、良かった。じゃあ次、この世界について」
この世界には、大きく分けて国は5つ。
東の国、西の国、南の国、北の国、それから中央国家。それぞれ王家が収めている。
中央国家以外はそこからさらに小国に別れており、それぞれに領主が存在する。
国によって生産される物が違うが、国同士の関係も良好な所が多いため交易が盛んで、人の行き来も多い。
中央国家はこの世界唯一の大都市であり、それぞれの国から移住する者もいるという。主に情報の発信源となる国でもある。
ちなみに今居るのは東の国で、北の国と中央国家寄りの位置にある街のハロルドの家だと言う。
「とまぁ、大まかに話すとこんな感じ。国の特徴とかは住み始めてから知れば良いし、気になることあれば簡単に調べられるから、そろそろ次に行こうか」
そう言いながらハロルドは店の奥へと進んでいくので、その後を追いかける
「次って、能力の…?」
「そ。それを済ませないとなんにもならないしね」
「じゃ、その奥にハロルドの曾祖父さんが?」
「違う違う。曾祖父さんは中央国家にいるから、そこまで行かないといけない」
それなら外へ出るべきでは、と思いながらもついて行くと、扉が5つ並んでいるのが見えた。
左端は普通の開き扉だが、他の扉は不思議なことにドアノブが2つずつ、左側と右側に付いている。ハロルドは迷うことなく、中央の右側の扉を開けた
「ここ通ると近道になるんだ」
キィと、少し軋んだ音を立てて扉が開く。扉の先は何も見えない。
ハロルドはドアノブを持ったまま、ココロが扉をくぐるのを待っている。
「大丈夫。何も無いから」
「……」
優しい言葉に促されるように、扉へ足を踏み入れた。
もう何を聞いても驚かない自信は早くも崩壊した。
謎の声…ハロルドが言うには恐らく世界の声は、何と言っていただろうか。記憶が間違っていなければ、導き手を「探しなさい」ではなかっただろうか。
探す所か、真っ先に遭遇したのが導き手とはどういう事か。
あれ、もしかしたら「会いなさい」と聞き間違えた?「なさい」だけ聞き取れて前半はよく聞き取れなかった。うん、そういう事にしておこう。
瞬時に自己完結させ、まだ続いているハロルドの話へ意識を戻す。
「で、導き手のやるべき事はこの世界について説明する事、能力を定着させる事、能力に見合った仕事と、住むところが決まるまでサポートする事」
なんとまぁ至れり尽くせりでは無いか
能力に関してはよく分からないが、どうやら路頭に迷うような事は無いらしい。
「で、俺の仕事は能力の定着以外。ちなみにまだ説明半分も言ってないけど、続き聞く?」
「あ、はい。お願いします」
どこまで聞いたんだったか。そうだ、なんでネコミミが生えたかまでだ。
ハロルドは確か、遺伝するからとも言っていたはずだ。
「ココロのように、異世界からやってきた人はさっき説明したように、魂を補う為。この世界で生まれ育った俺がこれを持ってるのは遺伝するから。ちなみに能力も遺伝するけど、この2つは必ずペアになってて、どっちかだけ遺伝するということは無い」
「はい、質問」
「はいどうぞ」
先程から何回か聞こえる単語に、思わず話を止める。
おそらく先に聞いておかないと話についていけなくなりそうな気がした。
「能力って、何?」
「あぁ、そっか。能力っていうのは、転移者に与えられる特別な力のこと。女神や世界は”加護”って呼んでるけど、それを体に定着させると能力になって、それを使って生活できるようになる。どんな能力になるかは、定着させないと分からないけど」
「なるほ…ど?」
分かったようなよく分からないような…
事務処理能力みたいな感じだろうか。一先ずそれで納得した事にしておく。
「話を戻すけど、能力の強さによって遺伝のしやすさが変わってくる。遺伝しやすいのは子供、孫と遺伝するけど、能力は失われやすい。逆に遺伝しにくいのは数世代後にようやく遺伝して、能力は失われる事はない。ちなみに導き手っていうのは後者の能力になる」
話が進むにつれて、彼の先祖が転生(転移?)してきた人だということは気がついていた。
「ちなみに初代の導き手はこの世界にまだ国が無かったころにやってきた、俺の先祖。発展するのに貢献した功労者。導き手が居なくなるのはNGだから、交代できるタイミングに能力を受け継いだのが産まれてくる。それが今だと俺がそれに当たる」
そこまで言い終えて、ハロルドは一息つく。
「大体理解出来た?」
「まぁ、なんとか?」
「そう、良かった。じゃあ次、この世界について」
この世界には、大きく分けて国は5つ。
東の国、西の国、南の国、北の国、それから中央国家。それぞれ王家が収めている。
中央国家以外はそこからさらに小国に別れており、それぞれに領主が存在する。
国によって生産される物が違うが、国同士の関係も良好な所が多いため交易が盛んで、人の行き来も多い。
中央国家はこの世界唯一の大都市であり、それぞれの国から移住する者もいるという。主に情報の発信源となる国でもある。
ちなみに今居るのは東の国で、北の国と中央国家寄りの位置にある街のハロルドの家だと言う。
「とまぁ、大まかに話すとこんな感じ。国の特徴とかは住み始めてから知れば良いし、気になることあれば簡単に調べられるから、そろそろ次に行こうか」
そう言いながらハロルドは店の奥へと進んでいくので、その後を追いかける
「次って、能力の…?」
「そ。それを済ませないとなんにもならないしね」
「じゃ、その奥にハロルドの曾祖父さんが?」
「違う違う。曾祖父さんは中央国家にいるから、そこまで行かないといけない」
それなら外へ出るべきでは、と思いながらもついて行くと、扉が5つ並んでいるのが見えた。
左端は普通の開き扉だが、他の扉は不思議なことにドアノブが2つずつ、左側と右側に付いている。ハロルドは迷うことなく、中央の右側の扉を開けた
「ここ通ると近道になるんだ」
キィと、少し軋んだ音を立てて扉が開く。扉の先は何も見えない。
ハロルドはドアノブを持ったまま、ココロが扉をくぐるのを待っている。
「大丈夫。何も無いから」
「……」
優しい言葉に促されるように、扉へ足を踏み入れた。
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