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 丈士の腕枕でまどろみながら、七瀬はピロートークを楽しんだ。

 朝ご飯、僕が作ってあげる。
 本当? 嬉しいね。
 好き嫌いはある?
 無いよ。七瀬の作ったものなら、何でも食べるよ。
 丈士さんが大学に行ってる間、僕は何をして待っていようかな。
 淋しい? ネコでも飼おうか。

「丈士さん、大学出た後はどうするの? 就職?」
「そうだな。できれば……」
 ふと、丈士は物思いに耽った。
 以前なら、巨悪になりたかった。
 どうせ生きるなら、大きく生きたかった。
 莫大な資産を得て、思うがままに生きたかった。
 だが、今は違う。
 何より心地よい幸せを、安らぎを覚えていた。

「できれば、就職して、働いて、サラリーを貰って」
「普通だねぇ」
「そんなこと、ないさ。傍に七瀬がいてくれれば、人生バラ色なんだから」
「そ、そんなこと言っても、何にも出ないんだからね?」
 照れる七瀬をそっと抱き寄せ、丈士ははっきり口にした。

「愛してるよ、七瀬」
「僕も、丈士さんのこと大好き」
 悪から離れた二人は、人として歩み始めた。
 普通の暮らし。
 だがそれは、かけがえのない宝物だった。


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