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しおりを挟む「源家に入る御方に、こんな小さな喫茶店でバイトしてもらうのは気が引けるなぁ」
カフェ・せせらぎのマスターは、沙穂から受け取った披露宴の招待状を頭上に掲げて見せた。
「僕がお願いして、雇っていただいてるんですよ」
でも、とマスターは沙穂の方を見た。
「結構長く勤めてもらってるんだ。自動車学校の資金は、もう貯まったんじゃない?」
「はい。おかげさまで」
「結婚して、ここのバイトを辞めた後は、どうするの?」
「大学に進学させてもらおうと思ってたんですけど、やめました」
「過保護な源さまが、許してくれなかった、とか?」
いいえ、と沙穂は首を横に振った。
「真輝さんは、大賛成してくれたんです。でも……」
「でも?」
「昨日、病院へ行ったら」
そこで言葉を区切って、沙穂は腹に両手を当てた。
大切そうに、そっと。
「もしかして、赤ちゃん!?」
「……はい」
マスターの顔は、ぱっと晴れ渡った。
「おめでとう、白洲くん!」
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沙穂もまた、武井が真輝を見守ってきたように、この男性に見守られていたのだ。
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